日本の国民的特撮シリーズとして長きにわたって愛される「スーパー戦隊シリーズ」。
その最新作『王様戦隊キングオージャー』が話題を呼んでいる。去る3月20日に発売された『週刊プレイボーイ14号』は「スーパー戦隊ヒロイン大集合」と題し、歴代のスーパー戦隊ヒロインたちが登場。最新水着グラビアやインタビューを通じて、各々のスーパー戦隊シリーズ愛を披露してくれた。
その特集ではすべてを掲載できなかった歴代ヒロイン4名のインタビュー全文を、撮り下ろし写真とともに週プレNEWSで掲載。今回はシリーズ第29作『魔法戦隊マジレンジャー』(2005~06年)で、小津麗/マジブルー役を演じた甲斐麻美さんが登場。
魔法使いファミリー・小津家の次女(第3子)。母親代わりとして家事を行なうしっかり者で、マジブルーに変身後は水を操る魔法を使い、果敢に戦いに挑む。作品から得たものや当時の心境、そしてスーパー戦隊シリーズの魅力を語る。
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――『魔法戦隊マジレンジャー』は甲斐さんの初仕事だったそうですね。
甲斐 そうなんです。事務所に入ったばかりの頃、オーディションの話を聞いて応募しました。私、小さい頃は男のコに間違われるような子供で毎週、弟と『忍者戦隊カクレンジャー』などのスーパー戦隊シリーズを夢中になって観ていたんですよ。だから受かって、その現場に行けたらいいなって。女優としてではなく単純にすごく興味があったんです。
――オーディションのことは覚えていますか?
甲斐 当時、熊本在住で、東京に行くのにも緊張しちゃって。東映の関係者からはすごい田舎者に見えたと思います。「(東京の)○○へ行くといいよ」とよく言われたし(笑)。
オーディションは緊張のあまり「絶対、役をつかむぞ」みたいな気になれず、ただ楽しもうと思って臨みました。でも気負わなかったのが、結果的にいい印象を与えたのかもしれませんね。
――出演が決まったときの心境は?
甲斐 自宅にいるときに連絡をもらったんですけど、嬉しくてソファーから飛び上がりました。ただ数日後に届いた資料を見たら「甲斐麻美=マジブルー」とあって、「青?」って戸惑いましたけど。
――女性が「青」を演じることはまだ少なかったですよね。
甲斐 そうなんです。でも私、『美少女戦士セーラームーン』のセーラーマーキュリーが好きで、彼女のカラーが青なんですよ。スーパー戦隊とは全然関係ないけど(笑)、「やった、一緒だ!」ってものすごくワクワクしました。
――『マジレンジャー』は、家族全員が魔法使いである小津一家によるスーパー戦隊。甲斐さんの演じた麗(うらら)はお母さんの代わりを務めるしっかり者の次女でした。
甲斐 正直、役作りは難しかったです。麗は冷静で物静かなタイプだけど私は落ち着きがなく、常にハイテンション。「ちゃんとしなさい」と言うより言われる側。まるで正反対でしたから(笑)。
ただ物語が進むにつれて「怒ると怖いタイプ」とか「誰よりも家族思い」など麗の性格がわかってきた。それぞれに共感しながら、徐々に彼女を理解していきましたね。
――スーパー戦隊作品は、一年間にわたる撮影。初のレギュラーですし、苦労はあったんじゃないですか?
甲斐 経験がないから当然ですけど、最初は本当に怒られてばかりでした。それこそ立ち方からダメ出しされましたし。あと運動神経が悪いので、アクションもうまくできずヘコんだことも。
ただメンバーは同い歳が三人、上に二人で、家族という設定に近く、すごくアットホームな雰囲気だったんです。おかげで物語の世界観をうまくつかめて比較的、楽に演じられた気がします。ちなみにメンバーとはご飯にも行くなど、普段から仲が良かったです。現場で騒ぎすぎて怒られたこともありました(笑)。
――初めてのひとり暮らしは、大変じゃなかったですか。
甲斐 撮影所の近くに部屋を借りて通っていたんですけど、毎朝5時集合と極端に早くて。それは大変だったかな。メンバーでは私が最初に遅刻しました(笑)。
普段はそこまで意識していなかったけど、やっぱりストレスはあったみたいで、一時期、太りましたね。当時の映像をたまに見返すと冷や汗が出ます(笑)。
――全49話のうち、特に印象に残っているエピソードは?
甲斐 全部! と言いたいですけど、第1話(「旅立ちの朝~マージ・マジ・マジーロ~」)かな。内容がというのではなく、放送日がたまたまロケで、ケータイでメンバーと見ていたんです。
ぎこちなさはあったけど懸命にお芝居をして、セリフを言って。恥ずかしかったけど、全国放送の番組に映っている自分を見て、不思議な気分になりました。あとは第20話(「キスしてケロ~ゴール・ゴル・ゴルディーロ」)です。
――6人目のメンバー、マジシャイン/ヒカルの登場回ですね。敵の魔法によってカエルにされていた彼を麗がキスをして、人間の姿へ。魔法の先生として小津一家の仲間に迎え入れました。あのキスは本物のカエルにしたんですか?
甲斐 キスしたのはフィギュアです(笑)。本物を手にのせたシーンもありましたけどね。あの話では、この先、麗とヒカル先生との間に何か起こるんじゃないか、麗が大事な役回りになるんじゃないか、そんな予感がしたんです。
それまではやっぱり経験が足りないこともあって、みんなの中でちょっと引け目を感じていたんです。でもそんなこと言っていられないなって。より麗を演じることに気持ちが入りました。あそこは自分の中で大きな転機でしたね。
――やがて麗はヒカル先生を慕うようになり、第47話(「君にかける魔法~ルルド・ゴルディーロ」)でその想いを告白します!
甲斐 自分の中でもすごく特別な回です。魔法の国に帰るというヒカル先生を「今日は一日遊ぼう!」って麗がデートに誘うんです。頑張って彼を楽しませて、最後は勇気を振り絞って「ヒカル先生のことが好きだから」って......。最初に台本を読んだときは、あまりに切なくて泣いちゃいましたよ(笑)。
――そしてヒカル先生は麗を受け入れ、二人はついに結婚します!
甲斐 結婚式のシーンがあったんですけど、ウエディングドレスを着られたのが嬉しかったです。しかも衣装さんが私に好きなデザインのものを選ばせてくれたんです。お気に入りのドレスを着て、化粧して、式場の扉を開けると家族全員が笑顔で迎えてくれて......。
本当に式をあげたような幸せな気持ちになりました(笑)。自分で見てもあの結婚式の麗は一番可愛い笑顔をしていると思います。
――プロポーズのシーンもそうでしたがお父さん、お母さんと再会したり、家族がピンチに遭ったり、その度に麗は本当によく泣いていますよね。あれは本当の涙ですか?
甲斐 リアルに泣いていました(笑)。自然と涙が出ちゃうんですよね。あ、いや、違います! マジブルーは「水」を司る魔法戦士! だからそのパワーが暴走しちゃうんですよね! あははは。
――ではそういうことで(笑)。甲斐さんが考える、スーパー戦隊シリーズの魅力は?
甲斐 何よりも「絆」だと思います。作品によって設定はさまざまですけど仲間だったり、家族だったり。自分一人だけではなくかけがえのない存在と助け合いながら、諦めずに前へ進んでいく。それができるって本当に幸せだし、その姿にみんな憧れるんだと思います。
――改めて、麗を演じたご自身を見返してどう思われますか?
甲斐 最初の頃はとにかく幼いですよね(笑)。でもどんどん変わってって、自分で言うのもあれだけど、最後は本当にいい顔になっています。
17歳で撮影が始まり、イベントも含め19歳まで麗を演じさせていただきましたが、その間の自分はまるでスポンジみたいになんでも吸収しました。あそこまですごい勢いで成長できたのは初めて。人生においても、麗だったあの時期が一番だと思います。
●甲斐麻美(かい・あさみ)
1987年1月9日生まれ。熊本県出身○『魔法戦隊マジレンジャー』でデビューし、女優として活躍。現在は夫と共に豊かな暮らしをSNSで発信し続けている