好評発売中『キン肉マン 四次元殺法殺人事件』の作者おぎぬまX氏 好評発売中『キン肉マン 四次元殺法殺人事件』の作者おぎぬまX氏

3月17日(金)に、『キン肉マン』のアニメ化発表とともに発売されたのがJC『キン肉マン』81巻『キン肉マンジャンプ vol.4「アニメ40周年記念号」』、そして『キン肉マン』初のミステリ小説『キン肉マン 四次元殺法殺人事件』だ。

時はキン肉マンが第58代キン肉星大王に就任した直後。キン肉マンは大王の職務もそっちのけで、地球のどこかへ行方をくらましてしまう。そんなキン肉マンを捜索するミートくんが、キン肉マンのかつての宿敵・キン骨マンと出会い、ふたりはキン肉マンを追いかけるのだが、ゆく先々で「超人殺人事件」が起こってしまい...!? というあらすじで展開していく同作。

この『キン肉マン』×ミステリ小説という一見ミスマッチな食い合わせが意外と面白いと話題となり、なんとこのたび重版が決定! ということで、『四次元殺法殺人事件』の執筆を手掛けた、元お笑い芸人であり大の肉ファンでもある、漫画家、小説家のおぎぬまXに、『キン肉マン』×ミステリ小説の誕生秘話を聞く。

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●心の中で超人に楽屋挨拶!?

――『キン肉マン 四次元殺法殺人事件』発行、そして重版決定おめでとうございます! 反響はいかがですか?

おぎぬまX(以下、おぎ 『キン肉マン』とミステリという組み合わせは異例で、出オチ感や飛び道具感があると思うので、当初は『肉』ファンからもミステリ界隈の方からも受け入れてもらえるか心配ではありました。ただ、いただいた感想を見る限り、多くの読者の方々には納得していただけたようで、「意外とミステリしてるじゃないか」「斬新な特殊設定じゃないか」という意見もあって嬉しいです!

――そもそも『キン肉マン』×ミステリの作品を執筆するに至った経緯は?

おぎ JUMP j BOOKSの担当の方から「『キン肉マン』のミステリ小説を書きませんか?」とお声がけいただきまして、そもそも『キン肉マン』が好きすぎて漫画を描き始め、以前連載していた『謎尾解美の爆裂推理!!』も『キン肉マン』×ミステリをコンセプトにした漫画だったので、「これは!」とすさまじい運命を感じましたね。もちろんプレッシャーはありましたが、喜んでお受けさせていただきました。

――ただ、『キン肉マン』×ミステリというのは、組み合わせとしてはだいぶ異色ですよね?

おぎ そうですね。書き始める前はワクワクしてしょうがなかったですけど、『キン肉マン』という作品は自分にとって特別な作品なのでプレッシャーもありましたし、大好きすぎるがゆえに、「自分ごときが超人たちを勝手に動かしていいのか...?」という葛藤も常にありました。

特にミステリというジャンルは、思い入れのある超人を殺人事件の被害者や容疑者にしなければいけないじゃないですか。テリーマンやロビンマスクに殺しをさせてしまっていいのだろうか...? 下手なことをしたらファンに袋叩きにあうぞ? そういうことは常に頭にありました。

なので当初は、犯人も被害者も全て小説オリジナルの超人で、彼らの罪が今いる超人たちになすりつけられる...というようなプロットも考えたのですが、「そんなの誰が読みたいんだ!?」と思い直して、原作の超人たちを事件に深く関わらせる覚悟をしました。

そもそもパラレル設定とはいえ、派生作品で主要なキャラクターが死亡するなど許されるわけがないのですが、そういう展開すら許される『キン肉マン』という作品のポテンシャルと、「超人による殺人事件」という内容を許諾してくださった、ゆでたまご先生の懐の深さに感嘆せずにはいられません!

――今作には、狂言回しであるミートくんやキン骨マンから、スカル・ボーズやタイルマン、ルピーンといった通好みの超人まで、さまざまな超人が登場します。超人の人選はどう決めましたか?

おぎ 僕が昔、芸人をやっていた影響なのか、心の中のイメージとして楽屋があって、まず最初に「小説に登場していただけませんか?」って各超人に楽屋挨拶をしに行くんです。でも、テリーマンやロビンマスクは大物すぎて、緊張して楽屋のドアを叩くことができない。なので、カナディアンマンやチエの輪マンみたいな、楽屋挨拶するにも気が楽な超人にたくさん登場してもらったというのはあります。

それと同時に、原作ではあまりスポットが当たらない超人にスポットを向けたいという気持ちもありました。キン骨マンからしてそうですよね。「今、キン骨マンが再登場したらどうなるんだろう?」と想像しながらストーリーを考えるのは非常に楽しい作業でした。

――主役のキン肉マンが途中までなかなか登場しないのは?

おぎ やはりキン肉マンというキャラクターが好きすぎて、動かすというのはなかなか大変でした。芸人で言ったらキン肉マンはダウンタウンさんみたいなものですよ。大御所の芸人さんをオープニングからエンディングまで通しで出すわけにはいかない。なので、「ここはいったん下がっていていただいて、のちのち重要な場面でお呼びしますので...!」という感じで、ここぞというところで登場していただきました。

●ことばの意味はわからんが、とにかくすごいタイトルだ!

――ファンの間では「ゆで理論」なんて言葉もありますが、『キン肉マン』の世界では一見ぶっ飛んだロジックで勝つ超人がいたり、死んだ超人が生き返ったりするので、何でもアリすぎて難しさもあったのでは?

おぎ そういった部分はファンの皆様が楽しみにしている部分でもあると思うので、取り上げないわけにはいかないと思っていました。ただ、それを茶化したままで終わってはいけないとも思っていて、原作を読んでいても思わず読者が納得してしまうような、ゆでたまご先生の強い説得力がありますよね。

小説でもそこを目指して、何でもアリだからってただ無茶苦茶をやるのではなく、「その手があったか!」と読者に思わせるようなトリックを書こうというのは徹底していました。

ミステリ小説界には「ノックスの十戒」(推理作家、ロナルド・ノックスが提唱した推理小説の10のルール)なんてものがありますけど、『キン肉マン』に登場する超人たちの中にはそういうミステリ小説のルールを破りまくる存在が多数います。そういったキャラクターを登場させること自体が、ある種の挑戦でしたね。

――1章からいきなり、能力的には割と何でもアリなブラックホールとペンタゴンが登場しますが、この掟破りなところからスタートする構成も素晴らしいと思いました。「四次元殺法殺人事件」というタイトルの理由は?

おぎ この小説は構想に1年ほどかかっているのですが、かなり初期に思いついた段階から「四次元殺法殺人事件」というワードの力強さは感じていました。「殺」という字がふたつ入ってるのは物騒すぎるけど、「どういうこと...!?」というインパクトもありつつ、どこか抜けているこの言葉に魅力があるというのは確信していました。

ブラックホールとペンタゴンを「超人殺人」の最初に登場させたいというのは決まっていましたし、「ただのミステリではないぞ!」というメッセージも込めた、最もいいタイトルだと思ったんですよね。

――まさに「ことばの意味はわからんが」......。

おぎ 「とにかくすごいタイトルだ!」というヤツですね(笑)。

――ミステリ作品としてのフェアさを大事にしつつも、その一方で、「カナディアンマンって和式便器が苦手なんだ!」「ティーパックマンの紅茶のシミって消えないんだ!」「バイクマンは気さくなんだ!」と、原作同様に思わずツッコミを入れたくなるような新設定やトンデモ理論も飛び出します。

おぎ そうですね(笑)。超人たちの日常って意外とナゾに満ちているので、原作にない設定ややりとりを描く、というのはすさまじく難しい部分でして、『キン肉マン』の小説ですから「読者を笑わせたい」という気持ちも大事にしています。

なので、「カナディアンマンは和式便器が苦手」みたいな設定ならありえるんじゃないかなと思って入れました。とはいえ、すべての超人にファンがいるので、その超人が言わないようなことを言わせてはダメですから、みなさんが失望しないように、みなさんが納得できるような範疇(はんちゅう)でやるよう気を付けました。

――「ゲェーッ!?」「ウーム......」など、『キン肉マン』特有の擬音も出てきますね。

おぎ はい(笑)。小説で絵が載せられないので、読者に字面だけで『キン肉マン』だと認識させなければいけないわけで。でも「ゲェーッ!?」と入れるだけで、今読んでるのが『キン肉マン』だとわかる(笑)。これも『キン肉マン』のすごいところだと思いますね。

――そういったリスペクトやアイデアが随所に詰め込まれている本作ですが、そういう発想はいつ思い付くのでしょうか?

おぎ もちろん原作を読み直すというのもあるんですが、ものすごく役に立ったのが、学研の図鑑の『キン肉マン「超人」』ですね。あれを見ていると「あ、こんなことできるヤツいたじゃん!」って発見があったり、原作では描き切れていない生態を知れたりしたので、すごくタメになりました。

あとは4章で、とある館を舞台に物語が進むんですが、実際に間取り図を書いて、その上にキンケシを置いて、自分でいろいろな考察をしてました。なのでキンケシも役に立ちましたね(笑)。もし続編を書かせていただけるなら、付録で間取り図やキンケシが付いたら最高ですね!

もうひとつ付け加えますと、『キン肉マン』のノベライズというのは20年前に小西マサテル先生がやっておられまして(『キン肉マンIISP 伝説超人全滅!』2002年、JUMP j BOOKS刊)、実は今回が2度目の企画であるというのは面白いところですし、奇妙な因縁を感じるところ(*ともに、第21回『このミステリーがすごい!』大賞の最終候補へ)でもあります。

また、今作を執筆するにあたって、『ディープオブマッスル』(*かつて『週プレモバイル』で連載された小説、現在閲覧不可)を読み直させていただいて、こちらもすごく参考にさせていただきました。

もしかしたら『四次元殺法殺人事件』を読んで「え、ルピーンって怪盗だったっけ?」と思う方もいらっしゃるかもしれないですけど、その辺は『ディープオブマッスル』から設定を拝借させていただいています。「あまり活躍の機会がない超人にスポットを当てる」というのは『ディープオブマッスル』の影響が大きいですね。

〇『キン肉マン』好きであることを隠すな!

――嶋田先生と中井先生からは何かアドバイスはありました?

おぎ 中井先生とはまだお会いしたことはなくて、嶋田先生からは赤塚賞の授賞式でお会いして、それ以降SNSで激励のお言葉をいただいたりしました。今回も単行本の折り返し部分のコメントでものすごく熱いコメントをいただいて、本当に光栄ですね。

自分の折り返しコメントも少し長いくらいで、担当の編集者さんに「コメントってこんなに入りますかね」と相談したくらいなのですが、ゆでたまご先生のコメントは僕より長くて熱くて...拝見した時、感動で全身が震えました。

電子書籍だとコメントが読めませんので、ぜひ実物を購入して、ゆでたまご先生の熱いコメントを読んでいただきたいですね!!

肝に銘じているのは、『キン肉マン』を立身出世のために利用するのではなく、あくまで『キン肉マン』をファンの皆様と一緒に応援させていただきますという気持ちです。僕が一人前になって、尊敬するゆでたまご先生にひとりの同業者として、いつかのライバルとして認識していただけるよう、今は腕を磨き続けます!

――カバーイラストも中井先生の描き下ろしでたまらないですね。

おぎ 本当に光栄の極みですね! 特にキン骨マンは大好きなキャラクターのひとりなので、令和になって中井先生のド迫力画力でキン骨マンを拝むことができるとは! めちゃくちゃカッコいいので、いつか原作にも再登場してほしいです!

――さて、『キン肉マン』はアニメ化が決定し、原作も新シリーズに突入してから800回を超え、ますます盛り上がっていくところですが、肉ファンとしては今どんな心境ですか?

おぎ ひたすらシンプルに、嬉しくてたまらないですね。Ⅱ世を経て『キン肉マン』復活シリーズに突入した2011年当初、僕はまだ芸人で、芸人仲間の間でも「ステカセキングがターボメンにマッスルインフェルノやってるよ!!」って大盛り上がりでした。

でも、あれだけ面白かった新シリーズがなかなかアニメ化されない。僕たちはずっと長いこと待ち続けていて、信じ続けていて、先月、ようやくそういうファンの願いが叶ったというか、全国のファンを救ってくれましたよね。本当に嬉しくてしょうがないです。

たまに、好きなくせにカッコつけて「フン」とそっぽを向く人もいますが、ちゃんと喜ぶことが大事だと思っています! こういう時はカッコつけて『キン肉マン』好きであることを隠すな! 面白いんだぞ『キン肉マン』は! 面白さを叫べ! この瞬間を逃してたまるか!...取り乱してスミマセン、本当に。

こんな感じでですね、これからも全力で叫ばせ続けていただきますよ! 本当にこの時をどれだけ待ってたことか!

――最後に、『キン肉マン』は好きだけど『四次元殺法殺人事件』はまだ手に取っていない、という方に、本書をオススメするメッセージをいただけますか?

おぎ やっぱり『キン肉マン』は長い歴史がありますので、中には「今でも続いてたんだ!」という方もいらっしゃると思いますし、「知ってはいるけど読んだことはない」という方もいらっしゃると思います。でも『四次元殺法殺人事件』は原作を未読の方や、ミステリ好きの方でも破天荒な特殊設定ミステリとして楽しめます(各章のはじまりには登場する超人や能力の紹介ページがあります)。

もちろん『キン肉マン』好きの方にはもってこいの作品ですし、ミステリ小説を読まない方、推理小説が苦手な方でも『キン肉マン』の知識でナゾに挑むことができます。

これは意外な誤算なんですが、『キン肉マン』ファンの中にはほとんどのトリックが分かったという方もいて、おそるべし『キン肉マン』ファン!という感じで(笑)。ご興味が湧いた方は、新しい角度から見た『キン肉マン』の4つの事件をぜひ体験してみていただきたいですね!!

■おぎぬまX
1988年生まれ、東京都町田市出身。漫画家、小説家。2019年第91回赤塚賞にて同賞29年ぶりとなる最高賞「入選」を獲得。21年『ジャンプSQ.2月号より『謎尾解美の爆裂推理!!』を連載。小説家としての顔も持ち、『地下芸人』(集英社)が好評発売中。『キン肉マン』に関しては超人募集への応募超人が採用(JC67巻収録第263話)された経験も持つ筋金入りのファン!

●『キン肉マン 四次元殺法殺人事件』好評発売中!!

『キン肉マン』81巻、『キン肉マンジャンプVol.4』、好評発売中!!!!!

『キン肉マン』新アニメ決定&初代TVアニメ放送40周年記念で、関連本発売!!!!『キン肉マン』新アニメ決定&初代TVアニメ放送40周年記念で、関連本発売!!!!