人気小説家の燃え殻さんと爪切男さんが3月の『キン肉マン』連載をレビュー!人気小説家の燃え殻さんと爪切男さんが3月の『キン肉マン』連載をレビュー!

『ボクたちはみんな大人になれなかった』の燃え殻『死にたい夜にかぎって』の爪切男の意外な共通点、それは『キン肉マン』!!

希代のストーリーテラーのふたりが昨年12月分の『キン肉マン』連載を甘く、そして辛く批評。

―今回の「先月の肉トーク」テーマ―

第409話 神のリングに上がりし者!!の巻(3月5日分)
第410話 苦闘の立ち上がり!!の巻(3月19日分)
第411話 悪魔超人界の未来!!の巻(3月27日分)
あらすじ
超神vs超人のバベルの塔最終第7戦は、バッファローマンvsザ・ワン(調和の神)。気合をみなぎらせるバッファローマンだが、ザ・ワンの圧倒的な存在感に圧倒されてしまう。赤子のような扱いを受けるバッファローマンに勝機はまったく見えない......。

●強さ以外の一手でザ・ワンを超えられるか

爪切男(以下、) バッファローマンvsザ・ワン、始まりましたね。今回は、今までの超人vs超神の闘いの中で、いちばん実力差がありますよね。

燃え殻(以下、) そうだよね。この闘いがメインイベントじゃない?

 本当に神vs超人っていう感じですよね。本来なら、ジェロニモの試合も、これぐらい力の差があるべきだったかも。

 キン肉マンの試合も、これと比べると、和気あいあいとやっていたとすら思える。バッファローマンに冷たいなあ、ゆでたまご先生。でも、やっぱり受け身がいいもんね、バッファローマンの。無傷でリングを下りない試合が、ずっと続いてる。ゆでたまご先生も、バッファローマンとなると、こういう試合にしちゃうんだろうね。

前回は完璧超人始祖のガンマンと対戦したバッファローマン。ガンマンが直前に闘ったス二ゲーターのことを覚えておらず、その傲岸不遜な態度に奮起する(JC52巻)前回は完璧超人始祖のガンマンと対戦したバッファローマン。ガンマンが直前に闘ったス二ゲーターのことを覚えておらず、その傲岸不遜な態度に奮起する(JC52巻)

 だからこの闘い、最終的に勝ち負けじゃなくなるんじゃないかな。その部分だと、どう考えてもバッファローマンは勝てないから、何かの強さ以外の一手でザ・ワンを超えれば。

 ああ、敗れても心は折れなかったとか?

 とか、たとえば昔、何かの空手マンガで読んだんですけど、圧倒的に強い達人が「お前の攻撃など一切効かない。防御など必要ない」と言うんですね。で、勝つんだけど、その格下の相手の攻撃に対して、一回だけ防御しちゃうんですよ。「ああいう風に言ったのに一回防御してしまった、だからお前の勝ちだ」と。

 ああ、なるほど。でも、『キン肉マン』に出てくる新しいキャラって、読んでいると、今後もずっと出てきそうなキャラかどうか、なんとなく予想がつくじゃない? ザ・ワンは、これ、今後も出てくるな、って感じするよね。

 そうそう。あと心配なのが、バッファローマン、死ぬ可能性はありますかね? これが昔のヤバい格闘マンガだったら、バッファローマンは光の速度を超えるしか勝ち筋ないですよね。

 はははは。

 光の速度を超えて、時の流れも変えるようなハリケーン・ミキサーをかまして、そのままキラキラしながら消滅する(笑)。

 でも、死なないんじゃないかな。ザ・ワンとバッファローマンの会話から、そういう印象を受けた。ザ・ワンは、バッファローマンを生かしたいと思っている感じがする。

 ああ、そうですよね。

 プロレスでも、ここで終わる闘いと、これから続くものって違うじゃない? 続く時のセリフっぽいというか、点ではなく線のようなコミュニケーションの取り方を、ザ・ワンがしているな、と感じて、「あ、よかった、これは死なないんだ」と思ったんだよね。ザ・ワンも、自分の系譜にいる超人を殺して根絶やしにはしたくないんじゃないかな。

 そうか。じゃあここから、バッファローマンが進化しなきゃいけないんだ。

 だから、今回の闘いは、進化させるためのステージだった、という。

●みんなが納得するバッファローマンの"勝利"とは?

 とにかく、どこかでハリケーン・ミキサーを成功させてほしいですよ。もう何度も出してるけど、一回も決まってないし。

 バッファローマン、ハリケーン・ミキサーしかないじゃない? だから、キン肉マンがキン肉バスターの進化形を出したように、ハリケーン・ミキサーの進化形しかない......やっぱり爪さんが言うように、光の速さを超えるハリケーン・ミキサーになるのか。

 (笑)。

 そう考えると、ほんとに直線的な超人だよね。モンゴルマンと2000万パワーズを組んだ時の必殺技、ロングホーン・トレインも、ふたりでやるハリケーン・ミキサーだったし。

 だから、こういう闘いになっちゃうんですね。バッファローマンに、悪魔将軍の地獄の断頭台みたいな技があればいいけど。

 あ! 悪魔将軍は、悪魔超人たちのリーダーなんだから、地獄の断頭台を受け継いで使う、というのはありなんじゃない?

 ああ、カッコいいかもしれないな。

 地獄の断頭台って、『キン肉マン』の中でも、キン肉バスターやパロ・スペシャルと同じくらい、カッコいい技じゃない? でも、悪魔将軍以外には使えないから、この先も出る可能性が少ないので。ここでバッファローマンが継いでしまう、というのが、きれいなのではないでしょうか。どうですか、地獄の断頭台で一矢報いて次に行く。

 あ、じゃあザ・ワンに勝つ?

 勝たないが、あっぱれだ、ということになる。もしくは、ザ・ワンに地獄の断頭台をくらわして、全身の鎧が壊れたら、中身は悪魔将軍だった、というのはどう?

 はははは! もうバッファローマンの心がズタボロになると思います、それは。あと、 バッファローマンの地獄の断頭台で話がまとまるかなあ?

 いや、だからそこは、無意識で出すっていうのはどう? とことん追い詰められて、意識が飛んでいる時に、身体が勝手に動いて。

 (笑)。ああ、なるほどなるほど。

 もう無心の状態で、地獄の断頭台を出す。本人は意識もないまま。

 ということにしないと、バッファローマンが死ぬ以外の結論がないですもんね。だって、ザ・ワン、まだ全然本気出してないじゃないですか。

 そうだよね。負けたけどツノを1本折った、ぐらいの終わり方しかないと思う。それしかない。地獄の断頭台でツノを折る。

 そうですね、それぐらいしかないかもなあ......あ、でも、たとえツノを折っただけとはいえ、悪魔将軍と師弟関係のバッファローマンが、悪魔将軍の師匠であるザ・マンと同等に思想をぶつけ合える存在のザ・ワンに勝利した場合、実質、悪魔将軍を超えたようにも見えちゃいませんか......?

完璧超人始祖とわかり合えていない52巻時点では、バッファローマンに対してこんな指示があったが、今となってはこの言葉の真意も図れない部分がある完璧超人始祖とわかり合えていない52巻時点では、バッファローマンに対してこんな指示があったが、今となってはこの言葉の真意も図れない部分がある

 そうか、構図がおかしなことになってしまう。さらに、そこでバッファローマンがザ・ワン相手に善戦すると、ハレーションが起きてしまう。

 おかしいだろ、ってことになりますよね。

 しかも、万が一バッファローマンが勝ってしまったら、すべての超人の中でトップになるじゃない? キン肉マンを超えて1位になってしまうと、マジでハレーションだよね。

 そういう部分はやはり、2022年のM-1ぐらいに捉えた方がいいんじゃないですか? たぶんウエストランドは、10回M-1に出る機会があったとして、あの一回しか優勝のチャンスは、なかったと思うんですよ。という1位と、絶対的な1位とは違うじゃないですか。

 (笑)。ウエストランドに失礼だなあ。

 いや、あの日のウエストランドはそれだけすごかったんだ、ということです。今回のバッファローマンもそういう位置づけにする。

 なるほどー。いろいろ考えるなあ(笑)。そうなると、この闘いは10回に1回のものなんだ、という、逆の説得力が必要になるよね。僕はバッファローマン、負けたとしても、バベルの塔の最上階には行くと思ってるんだけど、その時にバッファローマンが、今よりも、何かしらの新しい力とか知恵とかを、得ていなきゃいけない。

 ですよね。

 となると、たとえばザ・ワンがツノをくれるとか。自分が折ったザ・ワンのツノが、自分の頭に......はたしてそんなシステムがありなのか、わかんないまましゃべってるけど。

 はははは。

 とにかく、何か新しい技をひとつ持った上で、最上階に上がるというのがいいなあ。

 僕が期待する光速を超えるハリケーン・ミキサーか、燃え殻さんが推す地獄の断頭台か。

 両方違うだろうなあ(笑)。いいと思うんだけどなあ、地獄の断頭台。そうだ、昔、ウォーズマンが、バッファローマンのツノを一本だけ折った、っていうのがあったじゃない? あれの再来じゃないけど、バッファローマンが光の速さを超えるハリケーンミキサーで、ザ・ワンのツノを一本だけ折る。

 ああ、そうですね。それでザ・ワンが少しは焦るのを見たい。

●めざせ連載通算1000話!!

 4月17日発売号のタイミングで嶋田先生がツイートされていたけど、その号掲載の第413話で、『少年ジャンプ』(通算387話)も合わせると、連載が通算800回になったんだよね。

 そうなんですよね。

 週プレの連載回数が、ジャンプの連載回数を超えてるのがすごいよね。

 こうなったら、1000回まで行ってほしいですね。大記録を打ち立ててほしい。あと何年だろう......週プレで始まって12年で、413話だから......。

 残り200話を切っているわけだから、合併号とかも計算に入れると、あと5〜6年くらい?

 最後はキン肉マンvsテリーマンでしょ。

 ああ、それがベストだよね。

 それで終わったら、すごいマンガだなと思いますね。本当にいろんなことがあった末に、そのカードで終わるというのは。でも、ロビンマスクも、キン肉マンと闘いたいって言ってるから、その思いを先生がかなえてあげるのかどうか......あ、ウォーズマンも闘いたいって言ってるよな......。

 それを全部やっていくと、1000回じゃ終わらないよ。でも、終わらないほうが嬉しいよね!

燃え殻(MOEGARA)
1973年生まれ、神奈川県出身。働きながら始めたツイッターでの発言に注目が集まり、作家デビュー。最新著は二村ヒトシ氏との共著『深夜、生命線をそっと足す』(マガジンハウス)。ドラマ『あなたに聴かせたい歌があるんだ』(漫画:おかざき真里/扶桑社)はHuluで、ドラマ『すべて忘れてしまうから』(主演・阿部寛)はDisney+でそれぞれ配信中。出演中のラジオ番組 『BEFORE DAWN』(J-WAVE、毎週火曜26:00~27:00)もチェック

爪切男(TSUMEKIRIO)
1979年生まれ、香川県出身。2018年『死にたい夜にかぎって』(扶桑社)で小説家デビュー。2020年、同作が賀来賢人主演でドラマ化。風俗嬢との公私ない交ぜの触れ合いの様子をつづった『週刊SPA!』連載コラムを一冊にまとめた『きょうも延長ナリ』(扶桑社)が発売中。集英社発のWebサイト『よみタイ』で、コラム『午前三時の化粧水』を連載中

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