日本有数の映画ガイド・高橋ヨシキが新作映画をレビューする『高橋ヨシキのニュー・シネマ・インフェルノ』! 全米で超ヒット中!"マリオ映画"の決定版がついに登場! そして、あの名作マンガが美麗CGマシマシで映画化!

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『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』

評点:★3点(5点満点)

© 2023 Nintendo and Universal Studios © 2023 Nintendo and Universal Studios

ゲームプレイヤーが想像した世界がうまく映像化されている

数々の傑作を物してきたイルミネーション・スタジオらしく、そつのない、楽しめる作品である。

任天堂のゲーム『スーパーマリオ』シリーズが原作だが、マリオが初登場したゲーム『ドンキーコング』にもしっかり目配せがあり、何よりドンキーコングとマリオがタッグを組んで行動する場面があったのもうれしい。

ゲームの映像化作品では往々にして「ゲームと違ってプレイできないもどかしさ」を感じてしまうものだが、本作の場合は「8ビットのゲームをプレイしていたときにプレイヤーが頭の中で想像していた世界」をうまく映像化することに成功しており、そのため「あのシンプルなグラフィックはこういう世界を喚起するものだったからこそ熱狂的に迎えられたんだな」ということが理解できるのが素敵だ。

マリオが失敗を重ねる「特訓シーン」も、まさにゲームプレイヤーの体感を再現したものとなっていて、「ゲームの楽しさ・大変さを映像にする」ことについて本作は新たなビジョンを提示できている。

大魔王クッパのキャラクター付けも意外性があり良かったが、クッパ以外のキャラクターが総じてあまり深掘りされず、印象が薄いのはちょっと残念に感じた。

STORY:ニューヨークで配管工を営む双子の兄弟マリオとルイージが謎の土管から魔法の世界に迷い込む。離ればなれになった兄弟は絆の力で世界の危機に立ち向かう。ピーチ姫、ピノキオ、クッパなどおなじみのあのキャラも総出演!

監督:アーロン・ホーヴァス、マイケル・ジェレニック
脚本:マシュー・フォーゲル
声の出演:クリス・プラット、アニャ・テイラー=ジョイ、チャーリー・デイ、ジャック・ブラックほか 上映時間:92分

全国公開中

『聖闘士星矢 The Beginning』

評点:★2点(5点満点)

© 2023 TOEI ANIMATION CO., Ltd. All Rights Reserved © 2023 TOEI ANIMATION CO., Ltd. All Rights Reserved

(本作に限らず)「誕生篇」は果たして必要なのか?

原作のマンガ『聖闘士星矢』について筆者はお恥ずかしいことにほとんど何も知らず、「何やら金ピカの凄い甲冑をつけた神々?のような人たちが宇宙的なところで戦っている」というようなぼんやりとしたイメージしか持っていなかったのだが、本作は『The Beginning』と邦題にもあるように「誕生篇」ということで、金ピカ時代には突入しない。

ショーン・ビーンにファムケ・ヤンセン、またジャンル映画ファンにはうれしいマーク・ダカスコスなど出演陣は豪華だし、予告の印象とは裏腹にCGもとても良くできていて、プロダクション・バリューがしっかり備わった作品ではあると思う。

だがこれは本作に限らず多くのコミック原作映画について感じるところだが、果たして「誕生篇」は必要なのだろうか? シリーズ化するつもりなのかもしれないが、それは1作目の興行次第ということに当然なるわけだから、丁寧にオリジン・ストーリーを語るより前に、最も派手で盛り上がるところから映像化するべきだったのでは?という疑問は残る。

またアテナが白人なので「白人に仕える有色人種の騎士」みたいな構図になってしまったのも引っかかるところではある。

STORY:青年・星矢はある日、不思議な力を発したことから謎の集団に狙われる。やがて星矢は自身に「小宇宙(コスモ)」という力が秘められていること、その力で女神アテナの生まれ変わりである女性シエナを守る運命があることを知る。

監督:トメック・バギンスキー
出演:新田真剣佑、ファムケ・ヤンセン、マディソン・アイズマンほか
上映時間:114分

全国公開中

●高橋ヨシキ(たかはし・よしき)

デザイナー、映画ライター、サタニスト。長編初監督作品『激怒 RAGEAHOLIC』のBlu-ray&DVDが発売中。

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イラスト/Utomaru