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現在、テレビ東京系列で放送中の民放初の赤ちゃん(0~2歳児)向け番組『シナぷしゅ』。東京大学赤ちゃんラボ・開 一夫(ひらき・かずお)教授監修で、見れば泣き止むと話題の番組が、この春ついに映画化!

全国140館での大型ロードショーが決定した『シナぷしゅ THE MOVIE ぷしゅほっぺにゅうワールド』は、番組のメインキャラクター「ぷしゅぷしゅ」が新しい相棒「にゅう」と宇宙を冒険するストーリー。

番組の人気コーナーや歌がテンポよく織り込まれる"おはなし"パートは、あっという間の40分。一体、そこにはどんな工夫が? 自身も2児の母親で、現在、"絶賛寝不足中"だというプロデューサーの飯田佳奈子(いいだ・かなこ)氏にインタビューを敢行!

前回配信した記事では、『シナぷしゅ』で毎日同じ曲が流れるコーナー「つきうた」について語っていただき、尽きせぬ創意と赤ちゃんへの愛に感服したが、映画も期待にたがわず、綿密なコンセプトと地道な積み重ねで、社会デザインも変えかねない意欲作だった。

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映画『シナぷしゅ THE MOVIE ぷしゅほっぺにゅうワールド』を企画・プロデュースした飯田氏映画『シナぷしゅ THE MOVIE ぷしゅほっぺにゅうワールド』を企画・プロデュースした飯田氏

――子育て業界にイノベーションをもたらす映画が完成しましたね! 制作はいつから?

飯田 2022年に入る頃です。勝手に公開時期から先に決めました(笑)。

――公開日は5月19日ですが、その意図は?

飯田 赤ちゃん連れのお出かけは、荷物も多くて大変です! 5月後半ならG.Wも終わって人出も減るし、暑くも寒くもなく、梅雨でもなく、負担が少ないベストな時期かなと。

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――「0歳児向けの映画」は世界でも類を見ない試みで、上映時間も40分と短めにまとめていますが、新しい挑戦も多かったのでは?

飯田 生後、数ヶ月の赤ちゃんには「活動限界時間」があり、映画のストーリーを追うのは40分が限界かなと。

「いろんな星を旅する冒険」という構成で小さなコンテンツを積み重ね、星ごとに3Dやクレイアニメなど質感を変え、飽きずに楽しめる工夫をしています。実際に子育て中のご家族を招いた試写会では、すべての回で自然に拍手が起きました。

――映画館という未知の場所を赤ちゃんも楽しめたんですね。どんな工夫を?

飯田 暗いと怖がる子もいるので、照明は通常の映画上映よりも、少し明るく上映します。赤ちゃんにベストな音量を探るために、4dB(デシベル)ぐらいずつ違うパターンでチェックしました。大人には少し小さいので、聞こえないストレスにならないようにテロップを付けています。

――上映中、赤ちゃんが泣いても大丈夫ですか?

飯田 そこは最初から「音の出るモノを配ろう!」と決めていて。だから入場者プレゼントはタンバリン。公式で音の鳴るおもちゃを配ったら、もうしょうがないですよね(笑)。声を出しても泣いても笑ってもOK。大人向けの映画ではできない楽しみかたで、のびのびと映画館デビューしてもらえたら!

――主題歌は、TV『シナぷしゅ』でもテーマ曲を歌っているラップユニット「chelmico(チェルミコ)」。ここにも理由が?

飯田 TVとまったく違うと、『シナぷしゅ』を見に来た子どもの期待を裏切ってしまう。だからみんなに馴染みのあるchelmicoさんに主題歌をアレンジしてもらい、「あの歌だ! でもちょっと違うな?」という、安心感と新鮮な発見のバランスに気を配りました。

――大人も子どもも0歳から一律1000円という料金設定もチャレンジングです!

飯田 0歳向けに作ったから「私たちのメインのお客さまは0歳」という一応の理屈はありますが、実際には1人分の席を荷物置きに使えるし、パーソナルスペースも広がるし、好意的に受け止めていただきました。

子育て中は「あれもこれもやらなきゃ」と頭が混乱しがちなので、シンプルな料金設定で負担を減らしたかったのも理由です。家族人数分の千円札を握りしめて来てください!

――映画を公開する上で、なにか"正解像"はありますか?

飯田 大きなスクリーンを"体験"して欲しかったのが映画にした理由です。番組はコロナ禍に始まり、見ていた子たちも閉ざされた空間で、子ども同士の交流もできなかった世代。同じ『シナぷしゅ』好きの仲間と、かけがえのない劇場体験をシェアして欲しいです。

パパやママにも休息の時間になれば。今は"孤"育てと言うぐらい、辛さの大半は孤独感。公式YouTubeの「24時間ループライブ」は、視聴者数がゼロになったことが一度もないんです。

「夜泣きが辛くてパソコンを開いたら、他にも見ている人がいて、頑張っているのはひとりじゃないと思えた」というコメントも。『シナぷしゅ』で繋がることで、子育ての辛い部分が少しでも楽になればいいなと制作しています。

――他の教育番組とは違う自由さが『シナぷしゅ』の魅力です。

飯田 『シナぷしゅ』はエンターテインメント。教育的要素を追求しすぎず、押し付けないように気をつけています。歌のジャンルが多様なのも、幅広い選択肢があれば、子どもたち側で選んでくれるかなと。『シナぷしゅ』の自由な世界観から、好きなものだけ選んで吸収して、成長に繋げてくれたらいいなという気持ちです。

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――0歳児向けのエンタメ番組なんて、これまで存在しませんよね。

飯田 番組監修の東大赤ちゃんラボ・開 一夫教授も「社会のデザインを変えていく仕事」と言ってくださり、トライ&エラーを3年続けて足元もしっかりしてきました。今は幸い毎日の放送後、すぐにSNSで「見た子がどう受け取ったか」という情報を集められるので課題が分かる。みんなで育てた番組だという認識です。

――毎日エゴサーチを?

飯田 信じられないぐらいエゴサします(笑)。子育て環境って、すごいスピードで変わるんですよ。そこはやっぱり"今"の子育て世代と足並みを揃えたい。例えばiPhoneというものは変わらなくても、iOSはアップデートしますよね。『シナぷしゅ』も常に新しいものであるべきだし、それが差別化にもなると思います。

――今後の『シナぷしゅ』の新しい展開は?

飯田 あえて野音(日比谷野外音楽堂)とかで、夏フェスをしたいですね! 子育てって「子どものことだから、子どもがいる人同士でやってね」と、当事者間に閉じがち。それだと断絶があって、社会の理解がいつまでも進まない。そこをどうにかしたいんですよね。だから子ども向けの場所でやらないことに意味があると思うんです。

子どものいない人の視界に子どもの姿がちらつくことで、子どもも社会の一員だと浸透していけばいい。映画館でも「今日、赤ちゃん多くない?」って、1日だけでも接点が生まれたら理想。そういう些細な一歩で、社会全体が少しいい方に変わっていけばいいなという気持ちです。

あとは、いつか『シナぷしゅの森』を持ちたいですね。アートを楽しめるアトリエや、体を動かせるアスレチック、離乳食を食べられるカフェもあり、ゆったりシナぷしゅの世界を味わえるような森。その森の番人として、私は生涯を終えたいと思っています(笑)。

『シナぷしゅ THE MOVIE ぷしゅほっぺにゅうワールド』 
声の出演:ぷしゅぷしゅ/岩本彩楓 浮世絵さん/嶋川武秀(母心) 
ひーたん・みーたん/矢内雄一郎・松丸友紀(テレビ東京)他 
特別出演:にゅう/玉木 宏 主題歌:chelmico 
監督:清水貴栄 劇伴音楽:信澤宣明 企画・プロデュース:飯田佳奈子 
東京大学赤ちゃんラボ 開 一夫教授推薦作品 
5月19日(金)よりユナイテッド・シネマ豊洲、新宿ピカデリーほか全国ロードショー。最新情報は公式サイトにて。
公式Twitter【@synapusyu_movie】 
公式Instagram【@synapusyu】 
公式YouTube【@synapusyu】 

『シナぷしゅ』 
0~2歳児をメインターゲットにした民放初の赤ちゃん向け番組。番組名の由来は、脳の神経細胞のつなぎ目「シナプス」。東京大学赤ちゃんラボ・開 一夫教授の監修のもと、個性豊かな赤ちゃんの感性に寄り添う150種以上のコンテンツで構成する。毎週月~金曜日の7:30~8:00(テレビ東京系列)、17:30~17:55(テレビ東京ローカル)に放送中。