日本有数の映画ガイド・高橋ヨシキが新作映画をレビューする『高橋ヨシキのニュー・シネマ・インフェルノ』! 大人気ボクシング映画『クリード』シリーズの第3弾が登場! サム・ライミ&アダム・ドライバーのSF大作の出来は......!?

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『クリード 過去の逆襲』

評点:★4点(5点満点)

© 2023 Metro-Goldwyn-Mayer Pictures Inc. All rights reserved.  CREED is a trademark of Metro-Goldwyn-Mayer Pictures Inc. All rights reserved.  © 2023 Metro-Goldwyn-Mayer Pictures Inc. All rights reserved. CREED is a trademark of Metro-Goldwyn-Mayer Pictures Inc. All rights reserved.

「アンダードッグ」の世界にもグラデーションがある

大変な意欲作であり、見応えも十分。過去2作でタイトル・ロールのアドニス・クリードを演じてきたマイケル・B・ジョーダンは本作で監督デビューということになるが、瑞々(みずみず)しくフレッシュな感覚をもたらすことに成功している。

(『クリード』に先行する)『ロッキー』シリーズを筆頭に、ボクシングを描いた映画は数多いが、広角レンズとステディカム(手持ちカメラがぶれないようにするための機器)を駆使したファイトシーンの臨場感も新鮮に感じられる。

置き去ってきた過去の暗い記憶と現在の自分の立ち位置、夫婦関係がそれぞれ有機的に絡み合う物語構造も良い。

今回アドニスが対峙するのは、同じ出自ながら長い期間収監され、「本来自分が手に入れていたはずの栄光」をアドニスに独り占めされたと感じている男・ディミアン。彼の感情は独善的で逆恨みもあるが、そこには「アンダードッグ(かませ犬・負け犬)の物語」としての元祖『ロッキー』の残響がある。

「アンダードッグの挫折と栄光」といってもさまざまなグラデーションがあり、「アンダードッグがハングリー精神を糧にのし上がる」だけがボクシングの「ドラマ」ではない、と本作は教えてくれるのである。

STORY:『ロッキー』を継承したボクシング映画『クリード』シリーズの第3弾。世界王者のクリードの前に刑務所から出所したディミアンが現れる。ふたりはかつて家族同然の仲間だったが、ディミアンはクリードに復讐心を燃やしていた。

監督:マイケル・B・ジョーダン
出演:マイケル・B・ジョーダン、テッサ・トンプソン、ジョナサン・メジャースほか
上映時間:116分

5月26日(金)より全国公開予定 

65/シックスティ・ファイブ

評点:★2点(5点満点)

「ご都合主義」に見えたらスリルは台無しだ

猛スピードで襲いかかる恐竜から必死で逃げる主人公が、すんでのところで九死に一生を得る。このとき観客に「ああハラハラした、もう間に合わずに喰い殺されてしまうかと思った」と思わせることができれば良いのだが、「あんなタイミングで助かるなんて、どうにもご都合主義が過ぎる」となってしまうと、物語にのめり込むのが難しくなる。

太古の地球でアダム・ドライバーと、言葉の通じない少女がサバイバルを繰り広げる本作には見せ場がてんこ盛りなのだが、それに対応する物語がまったく不足しているため―「アダム・ドライバーと少女が太古の地球のA地点からB地点に向かう」以上のお話がないのである―すべての見せ場があたかも穴埋めのためのもののように見える。

恐竜が沢山出てくるのは楽しいが、『ジュラシック・パーク』に匹敵するインパクトはない(逆に『ジュラシック・パーク』シリーズから拝借してきたと思おぼしき「見せ場」はいくつかある)。

アダム・ドライバーは優れた俳優で、空疎な物語の中でもなんとか興味深い人物造形をしようとしているのは分かるが、それにも限界がある。なぜこの脚本にゴーサインが出たのか不思議なほどだ。

STORY:長期探査ミッション中の宇宙船が小惑星帯に衝突して墜落。生き残った男ミルズは少女コアと出会う。そしてミルズは、今いる場所が6500万年前の地球で、恐竜を絶滅させた巨大隕石の衝突まであとわずかであることを知る。

監督・脚本:スコット・ベック&ブライアン・ウッズ
製作:サム・ライミ
出演:アダム・ドライバー、アリアナ・グリーンブラット
上映時間:93分

5月26日(金)より全国公開予定 

●高橋ヨシキ(たかはし・よしき)

デザイナー、映画ライター、サタニスト。長編初監督作品『激怒 RAGEAHOLIC』のBlu-ray&DVDが発売中。

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イラスト/Utomaru