5月20日に開催された、新たな漫才賞レース 『THE SECOND』で優勝、準優勝を果たした両コンビが語る苦難の日々と新たな夢とは――? 優勝のギャロップに続き、準優勝のマシンガンズに聞く。
結成25年。カルチャーセンターのお笑い講座で出会った滝沢秀一と西堀 亮。今まで何度もつかみかけては逃してきた"大ブレイク"。今回、『THE SECOND』準優勝で、ついにその入り口に立った!
■足がすくんだほぼアドリブの3本目
――『THE SECOND』準優勝、反響はどうでした?
滝沢 すごいあったね。LINEも300件くらい来たし、返信が追いついてない。
西堀 同じ事務所の指原(莉乃)さんとか、漫画家の森田(まさのり)先生も「カッコよかったよ」ってツイートしてくれたり。
滝沢 大槻ケンヂさんも「面白かった」って言ってくれて。ファンだからうれしかったなあ。でも10歳のウチの息子だけは「優勝するって約束したのに!」って怒ってて、まだ口きいてくれない。
――お父さんを本気で応援してたんですね。
滝沢 悔しかったんだろうね。決勝は大会最低得点だったし。
西堀 でも、俺たちらしいオチがついたんじゃない?
滝沢 優勝したかったけどな。
西堀 あの1000万円の賞金プレート見たときだよな。
滝沢 それまでは何も意識してなくて、ギャロップに1000万円の賞金プレートが渡されたのを見て「あ、そうか。これを逃したんだ」ってね。
西堀 それまでは事の重大さに気づいてなかった。
――準優勝の賞金は?
滝沢 ゼロだよ! 客席の後ろに時計があったんだけど、そこに1000万円のプレート置いといてくれればな。
西堀 気合い入ったよな。まあ、格段に保守的なネタしかやらなかったかもしれないけど(笑)。
――金属バットとは対戦後すぐに交流してましたね。
西堀 相手の楽屋を訪ねるって、ほかの大会ではないよね。今回は最低でも16年選手のベテランばっかりで、皆人間ができてるからな。
滝沢 でもベテランだからすぐ体調壊してさ。三四郎の小宮(浩信)も声からしちゃって。みんなでいい病院の情報を交換したよ。あと、テーブルが薬とアメ玉だらけでね。
西堀 もはや公民館の集会だよ(笑)。
――滝沢さんも本番の数日前に声をやっちゃったんですよね?
滝沢 そう。だから前日のライブをキャンセルさせてもらった。3日ぐらい声が出なかったから焦ったよ。
西堀 そのライブで3本目のネタの調整をしたかったの。でも滝沢の体調と天秤(てんびん)にかけて、喉の調子がいいほうを取った。
――もしそこで調整できていたら、3本目のネタは違った?
滝沢 本音を言えば、あのネタにはもうひとつ入れたいパーツがあったの。「楽しいな!」ってジャンプするやつ。あれが全部で3つは欲しかった。
――どこかで試さないと、あの場ではやれない?
滝沢 ウケるかウケないかわからないと怖いよね。
西堀 でも結果的にはアドリブ言いまくったけどな(笑)。
滝沢 俺がいくつか用意したネタを、西堀が決勝の直前で「ダメだ、これもダメ!」ってはじいてくるんだよ。
西堀 「覚えらんない、俺できない!」って、ヘソ曲げたみたいになって(笑)。うろ覚えでやるほど怖いものないから。ボケてツッコむってやり方ならうろ覚えでもいけるけど、声を合わせてツッコまなきゃいけないから練習しないと難しいんだよ。だったら俺はアドリブで、ゼロから話すほうがいいわけ。
滝沢 そんな状況で6分間の出番って、ゾッとするよ。
――しかも全国の生放送で。
西堀 俺、立ってられなかったよ。25年やってて立ってられないんだからさ。
――今回は準優勝でしたが、次回があればまた出ますか?
西堀 出ない!(即答)。無理だよね、6分ネタを3本も作んなきゃいけない。今回1回戦で負けた人はネタ残ってるわけじゃん? さらに『M-1』を卒業した人もどんどん入ってくるし。もう来年はいいよな。
■おじさんだらけの打ち上げ
――大会後、打ち上げがあったと聞きました。
西堀 スピードワゴンの小沢さんが数人で打ち上げ行こうって話をしてて。でも結局、フジテレビの人まで誘ってたね。
滝沢 小沢さんすごいんだよ。天性の人懐っこさ。
西堀 もともと打ち上げの予定はなかったのに、芸人はほぼ全員参加したんじゃないかな? 前説のダイタクも来て、20人以上いたかな。で、朝4時まで焼き肉。でも、皆おじさんだからほとんど食えなかった(笑)。お笑いと関係ない話ばっかりして。
――大会を振り返ったりは?
西堀 しなかったね。
滝沢 サンキュー安富(超新塾)がちょっと分析的な話をしてたかな。
西堀 でもサンキューだから誰も取り合わないよね(笑)。
――優勝したギャロップは?
西堀 やっぱりチャンピオンの飲み方をしてたよね。俺たちはバカみたいな飲み方してるんだけど、チャンピオンはビールを噛むように飲んでた(笑)。あのビールはうまそうだったな。
――それを見て悔しさは?
西堀 その瞬間はもうない。ほかのみんなもなさそうだったよ。
滝沢 ケガもなく無事終わったね、みたいな感じ。
西堀 村の祭りじゃないんだからさ(笑)。
滝沢 小沢さんが松本さんとメールしてて。「松本さんが、"明日早いから今日は帰るけど、改めてやりましょう"って言ってたよー!」って。皆「うわー!」って盛り上がって。小沢さんコミュ力がすごいんだよ。マジで尊敬する。
西堀 小沢さんが俺たちのネタに感動したって言ってくれて。見てるときに興奮して「これはジャズですね!」って隣にいた人の背中叩いたら、それ太田プロの社長だったって(笑)。
だけどホント適当にしゃべる人だから、小沢さんと話してたアイクぬわら(超新塾)が「Free style!」って(笑)。あんな人、アメリカにいないんだろうな。
■マシンガンズ、漫才協会に加入?
――すでにテレビで売れてる芸人とそうでない芸人の間で、温度差はなかったんですか?
西堀 最初は俺もあると思ってたんだけど、三四郎のラジオに呼ばれて行ったときに、あいつらは本当に勝ちたそうにしてて。やっぱり芸人にとって賞レースは特別なんだよね。
滝沢 三四郎なんか散々売れてるのにな。
西堀 不思議だよな。あの三四郎が賞レースで決勝に行ってないことをコンプレックスに感じてるなんて。俺たち芸人じゃないとわからないだろうけど。
――このインタビューの途中でナイツのラジオに電話出演されて、漫才協会に入ると約束されてましたね?
西堀 あれは「ノー」って選択肢なかったよね(笑)。まあ少しでも話題になればいいよな。
滝沢 ちゃんと浅草を観光したことないし。舞台が終わってから、吉原行ってね。
西堀 寄席でネタやってソープ行くって、おまえいつの時代の芸人だよ(笑)。
■マシンガンズ(MACHINEGUNS)
1998年コンビ結成。2007年『M-1グランプリ』で準決勝に進出し、『エンタの神様』や『爆笑レッドカーペット』に出演するなど全国的な知名度を獲得するも、現在はコンビとしての地上波テレビ、ラジオのレギュラーはゼロ
●滝沢秀一(たきざわ・しゅういち)
1976年生まれ、東京都出身。生活のために始めたゴミ清掃員も今年で12年。環境省より「サステナビリティ広報大使」に任命されている。著作は『このゴミは収集できません』ほか。週プレNEWSでコラム「滝沢秀一の金持ちのゴミはなぜ少ないのか?」を連載中!
●西堀 亮(にしほり・りょう)
1974年生まれ、北海道出身。お笑いの傍ら、一般社団法人発明学会会員として、アイデア商品の研究にいそしむ。そんな発明品「靴丸洗い洗濯ネット」が間もなく発売!