中村悠一
テレビアニメ『呪術廻戦』の第2期「懐玉・玉折」の放送を記念して、シリーズ屈指の人気キャラクター「五条 悟」を演じている声優の中村悠一さんが登場。7月6日(木)よりMBS/TBS系列にて放送される同作の見どころや、"作中最強"と呼ばれる役柄を演じる難しさについてお話をうかがった。

■五条 悟の現在と過去をいかに演じ分けたか

――待望の第2期は過去編として、これまでシリーズの主人公たちを教師として導く立場だった五条 悟の高専時代が描かれます。大人の五条と学生の五条では演じ方に違いはありましたか?

中村 今までの時間軸から10年以上はさかのぼった話ですから、"若さ"は念頭に置きました。彼は大人になってからも遊び心のある人物ですが、10代感を出すために、根拠のない自信にあふれている、若者特有の青さみたいなものを際立つよう意識しました。

これまでの五条の演じ方をベースに、大人としての経験値を引いて、よりプレーンな五条 悟を作っていきました。セリフの言い方でも、もっと無責任な感じを出すためにはどうしたらいいかと考えて演じていきました。

中村悠一さんが演じる「五条 悟」。「懐玉・玉折」では五条の高専時代のエピソードが描かれる中村悠一さんが演じる「五条 悟」。「懐玉・玉折」では五条の高専時代のエピソードが描かれる

――第2期ではこれまで敵役として登場してきた「夏油 傑(げとう・すぐる)」と五条の友情も描かれます。中村さんから見た2人の関係性は?

中村 五条から見れば親友ですかね。五条は由緒正しい家柄のエリートで、術式も最強。すべてを持ち合わせて生まれてきた。でも、すごく恵まれた境遇ゆえに、会話のレベルを落とさないと他人と意思疎通ができないのかもしれないと思わされるところもあって。

――自分の考えていることはどうせ他人には理解できないだろうとあきらめている節があるというか。

中村 だから、呪術師として自分と同じくらいの実力がある夏油となら、五条は腹を割って話ができるし、そういう相手が滅多にいないこともわかっています。第2期の収録を通じて、そういう関係性だから2人は必然的に仲良くなったのだろうなと感じました。

――「懐玉・玉折」では五条と夏油のやり取りも初めてしっかりと描かれます。

中村 会話の組み立て方を見ていると、五条のほうが夏油に頼っている印象があります。五条はたしかに強いけど、心の支えとして夏油を必要としている。そこは声を入れていきながら感じました。夏油がその場のまとめ役としていてくれるから、五条のわがままな感じがお芝居で出しやすかったんです。きっと五条自身もそう思っていたんじゃないかな。

「懐玉・玉折」では高専時代の五条と夏油のやり取りもしっかりと描かれる「懐玉・玉折」では高専時代の五条と夏油のやり取りもしっかりと描かれる

■『呪術廻戦』は声優にとって難しい作品

――五条はシリーズでも屈指の人気キャラクターとして愛されていますが、その理由を中村さんはどう分析されていますか?

中村 これは今もさっぱりわからないんですよ(苦笑)。最初からあまりにも最強設定すぎるから、共感できるところがないじゃないですか。原作で過去編を読んだときに、初めて人間的な部分が分かってきたんですが。

――まさに今期で映像化される部分ですね。

中村 だから僕としては、「そこが放送されたときに好きになってもらえればいいな」くらいの気持ちで演じていたんです。でも、物語の最初からずっと人気なわけですから、未だにその理由はうまく言語化できないですね。

しかも五条って、過去が描かれているとはいえ、高専時代から教師になるまでの期間はまったく描かれていないんですよ。過去と現在を比べて発言の仕方や内容に明確な変化はあるから、彼の行動理念や心情も変わっていったんでしょうけど、その成長の過程は明かされていない。そこがキャラクターとしてのつかみにくさになっているわけですけど、そういった空白の部分を想像で埋められる人には魅力的なんだろうなとは思います。

――では中村さんは、そんな"最強キャラ"を声優としてどのように表現してきたのでしょうか?

中村 とにかくやるしかなかったとしか言いようがないです。未完成な部分があり、戦いで傷を負うこともある過去編と違って、現代では何があったら負けるのか想像できないくらい最強に描かれています。そういう人物を声でどう表現していますかと聞かれても、僕には「わかりません」としか言いようがないです(笑)。僕は精一杯やったうえで皆さんが聞いて、五条だと言ってくださるから、これでありなんだと思っています。でも、『呪術廻戦』のキャストの中では、僕は楽をさせてもらっているほうですね。

例えば、日高のり子さんが演じる「九十九由基(つくも・ゆき)」なんて、原作でも過去がほとんど描かれてないキャラクターです。だから、収録現場で日高さんと監督たちは、「こういうことじゃないか」と綿密に打ち合わせをされていました。それを見ながら、日高さんがキャスティングされた理由がわかった気がしたんです。

背景がほとんど描かれていないキャラクターだからこそ、日高さんくらいのキャリアのある方が演じて言葉に説得力を持たせないと、「このキャラクターはどういう根拠があって、こういうセリフを言っているの?」と疑問を抱かれてしまう。それに比べると、僕の五条は空白が多いとはいえ、まだ楽なほうですよ。

とにかく、『呪術廻戦』は群像劇としての側面もあって、たくさんのキャラクターが出てくるわけですけど、その分、声優にとっては演じるのが難しい作品でもありますね。

■シリーズ全体の根幹に関わる設定が明かされる

――第2期は連続2クールで、過去編の「懐玉・玉折」に続き、第1期から続く時間軸の「渋谷事変」が描かれることも決定しています。全体を通して第2期はどのようなシーンズと言えるでしょうか?

中村 これから始まる「懐玉・玉折」と「渋谷事変」ではお話の毛色が大きく違っています。「渋谷事変」はとにかくハードで、戦いに明け暮れる内容になりますが、その手前の「懐玉・玉折」は要するに敵の動機が判明するパートなんです。

第1期や劇場版で夏油はなぜ五条たちと敵対しているのか。それが明かされる過程で、五条が最強になっていく流れも描かれます。特に夏油なんて、第1期で初めて登場したときは、「誰?」って状態で、劇場版を経ても過去に五条たちと何かあったらしいということしかわかっていなかった。でも、「懐玉・玉折」を見れば、彼には彼なりの信念があったのだとわかります。物語全体の背景が見えてくる、『呪術廻戦』というシリーズの中ですごく重要なパートです。

――ということは、「懐玉・玉折」を見てから、あらためてシリーズを見返すと、新たな発見があって面白いかもしれませんね。

中村 「あの発言にはこういう意味があったのか」っていう場面がいくつもあると思います。だから、シリーズの根幹に関わる重要な設定を明かす「懐玉・玉折」を経て、視聴者の方々にとってもカロリーの高い内容になることが間違いない「渋谷事変」にいたる第2期は、僕自身としても非常に見応えのあるシーズンになると期待しています。

仲村悠一

●中村悠一(なかむら・ゆういち)
1980年2月20日生まれ、香川県出身。
2001年に声優デビュー。以降、主人公役から一癖あるキャラクターまで幅広い役を演じる。2022年には第16回声優アワードで助演男優賞を受賞した。主な出演作に『マクロスF』(早乙女アルト)、『CLANNAD』(岡崎朋也)、『おそ松さん』(松野カラ松)、ハイキュー!!(黒尾鉄朗)、僕のヒーローアカデミア(ホークス)など
公式Twitter【@nakamuraFF11】

■テレビアニメ『呪術廻戦』の第2期「懐玉・玉折」は本日夜11時56分~よりMBS/TBS系列にて放送開始!

(©芥見下々/集英社・呪術廻戦製作委員会)