夏だ! 海だ! サメ映画だ! サメの恐ろしさを描いた作品から、火を噴き、空を飛び、巨大化するおバカなB級サメ映画まで。やたらとサメ映画が製作されるのはいったいなぜなのだろうか? 8月に大注目作品の公開を控える今、マニアに魅力を聞いてきました!!
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■この夏、サメ映画の歴史が動く!
――まずは自己紹介をお願いします!
人間食べ食べカエル(以下、カエル) 私はTwitterでホラーを中心に、映画の感想を投稿しています。雑誌やウェブへ寄稿もしています。
知的風ハット(以下、ハット) 映画ライターとして、モンスターパニックやホラー映画の記事を執筆しています。よろしくお願いします!
――これまで、どのぐらいサメ映画を見てきましたか?
ハット 国内外で見ることのできる作品はたいてい見ていて、200以上かなと。
カエル 自分も同じぐらいですかね。
――サメ映画にハマったきっかけは?
カエル テレビで見た『ディープ・ブルー』(1999年)です。もともとサメに興味はなかったんですけど、作品での暴れっぷりを見て、カッコよさに気づかされました。
ハット 私はもともとサメ自体が好きで、その流れで見た『ジョーズ』(1975年)が面白くて。そこから、レンタルビデオ店でタイトルに「ジョーズ」と入った作品を借りてはガッカリしてを繰り返し、今に至ります。
――当たりのサメ映画って少ないんですか?
ハット 少し前まで『ジョーズ』『ディープ・ブルー』の二枚看板で......。そこそこ面白い作品はあるんですけどね。打率2割ぐらいの感覚です。
カエル そうですね。割となんでも楽しめますけど、それでも3割という感じです。
――サメ映画の始まりはやはり『ジョーズ』なんですか?
ハット そう言っても過言ではありません。それ以前にもサメの出てくる映画はありますけど、オプションとして少し出てくるぐらい。
カエル 『ジョーズ』以前と以後だと、作品数は確実に違いますね。
ハット まず、サメ自体を売りにした作品が増えましたよね。飛んで2010年頃から、ぶっとんだ内容のサメ映画が増えました。『シャークネード』(2013年)という、サメが竜巻に乗って空から飛んでくる映画がヒットしたのがきっかけのひとつです。
カエル そこから、アメリカのアサイラムという、B級映画の製作会社がおバカ作品を立て続けに作ったことで、なんでもあり、いかにふざけられるかという無法地帯が広がっていきました(笑)。
ハット 正直、2010年代後半のおバカ作品は好きじゃないものも多いです(笑)。
カエル わかります。ちょっとふざけすぎかなと。あんばいとしては、パニック映画としてしっかり作った上で、ちょっとふざけてほしいですよね。好みの問題ですけど。シリーズ2作目の『シャークネード カテゴリー2』(2014年)までは完璧なバランスだったと思います。
ハット 2018年にシャークネードシリーズが6作目で完結したぐらいからは、本場アメリカでマジメ系サメ映画が再ブームになったのはありがたいですね。
――おバカ系はなくなったんですか?
カエル インディーズの製作会社で作られ続けていますよ。ある程度の規模の製作会社は、一時期おバカ作品が増えた分、マジメなサメへの揺り戻しが起こっています。
――そんな歴史を持つサメ映画ですが、ずばり魅力とは?
ハット 良くも悪くもなんでもありなところです。本当に良しあしはありますけど(笑)。サスペンスやアクション、王道のスリラーから、サメが幽霊になって襲ってくるホラーまでありますから。
カエル 自分はサメそのものが魅力だなと思っていて、動き回るだけである程度、絵になるんですよ。
――それって、ほかの動物じゃだめなんですか?
ハット ぶっちゃけ、ほかの動物でいい作品も中にはあります。サメ映画が多いのは結局、『ジョーズ』の影響が大きいんだと思います。
カエル 実際に『ジョーズ』と同じフォーマットで、動物だけ置き換えた作品も作られています。でも、視覚的な怖さはサメが断トツだと思うんですよね。動物の中でも怪獣っぽいビジュアルじゃないですか。凶暴性が強調されているように感じます。
ハット あと、足がないから編集で動かしやすいとかはあるんでしょうね。
――低予算だとしても、サメであれば撮影コストが抑えられるということですね。
カエル サメだと水中のシーンが自然と増える分、肌のテクスチャのごまかしも効くとかはあるかもしれません。
ハット 少し話はそれますけど、先ほど名前が出たアサイラムの映画は一時期、とにかく画面の明度を下げて、CGのアラを目立たなくしていました(笑)。2010年代のおバカなサメ映画は、そういった低予算感や、絵面のバカバカしさ、突飛な設定を楽しむような一面はありますね。
――サメ映画はどんな人にオススメですか?
ハット おバカ系についてはバカバカしさも楽しめる、ユーモアがある人ですかね。
カエル 本格派は単純にスリルを求めている人はハマると思います!
――では、オススメ作品を教えてください!
ハット&カエル 『ロスト・バケーション』(2016年)です。
カエル これはサメ映画界では数少ないA級ですから。
――サメ映画にA級といえる作品はほぼないんですか?
ハット 何を基準にするかによりますが、僕的に名作はなんとなく6本ぐらいだと思っています(笑)。
カエル この作品はまず演出が優れていて、物語のほとんどが大海原の孤立した岩礁上で進みますけど、アングルの工夫や、カットの切り返しを駆使して、全然飽きさせない。
ハット この手のシチュエーションスリラーは場所が変わらないので、単調になりがちですけど、この作品はテンポに緩急がありますよね。
カエル 公開当時、おバカ作品が飽和していた中、サメの恐怖を正面から叩きつけてくれたのはうれしかったですね。
ハット ストーリーは医療の道を志していたけど、母親を難病で亡くして挫折したヒロインが、知識経験を活用してサメと戦い、再び生きる希望を見つける、みたいな。
カエル サメを通じて、自分の人生を見つめ直すテーマはほかのサメ映画じゃまずないですよね(笑)。
ハット 完璧な作品ですけど、自分が映画館に行ったときは空席が目立っていました......。
――サメ映画ってどこで人気なんですか?
ハット なんだかんだアメリカですね。日本も『妖獣奇譚/忍者vsシャーク』(2023年)とか、まだまだ内輪向け感は否めませんけど、このところ盛り上がっています。
カエル 中国もここ数年、やけに気を吐いてサメ映画を作っていますね。
――サメ映画はこれからどうなっていくんですか?
ハット 実は今年が勝負どころかなと。8月に公開される超大型作品の『MEG ザ・モンスターズ2』が跳ねるかは注目しています。
カエル B級おバカをA級の予算でやっているイメージの作品で、これが成功したら、もともとおバカ系B級サメ映画を作っていた人はどうなるのか、後続でどのような作品が生まれるのか、気になります!
――もしかすると空前のサメ映画ブームが来るかもしれないですね!
●人間食べ食べカエル
Twitterフォロワー17万人超えのホラー映画ライター。日々、世界各国のホラー系作品の感想をつぶやく。ホラー専門配信サービス「オソレゾーン」などで、定期的にコラムの執筆も行なっている。
●知的風ハット
映画ライター。TwitterやYouTubeチャンネル『浅井ラム映画レビュー【知的風ハット】』で映画のレビューを行なっている。著書に『サメ映画大全』、『サメ映画ビジュアル大全』(監修)がある。