人気小説家の燃え殻さんと爪切男さんが7月の『キン肉マン』連載をレビュー! 人気小説家の燃え殻さんと爪切男さんが7月の『キン肉マン』連載をレビュー!

『ボクたちはみんな大人になれなかった』の燃え殻『死にたい夜にかぎって』の爪切男の意外な共通点、それは『キン肉マン』!!

希代のストーリーテラーのふたりが7月分の『キン肉マン』連載を甘く、そして辛く批評。

―今回の「先月の肉トーク」テーマ―

第422話 最後の欠片は...!!の巻(7月2日更新分)
423話 純白マントのなびく先!!の巻(7月9日更新分)
第424話 慈悲の道と調和の道へ!!の巻(7月23日更新分)
第425話 振り回せ! "完球"!!の巻(7月30日更新分)
あらすじ
バベルの塔での決戦を勝ち抜き、その頂上へとたどり着いたキン肉マンたち。そこで、第3の勢力・刻の神の存在を知らされる。刻の神の暴走を防ぐため、
超人たちの持つカピラリアの欠片(ピース)を集め「カピラリア光線照射砲」を放つ必要があるとザ・ワンに提案される。

爪切男(以下、) 7月の連載4回の間、いつも以上に出来事が多かったですよね。ジェロニモが命を賭して「カピラリア光線照射砲」の一部になり、仮死状態に。ロビンマスクとアシュラマンが、ザ・ワン&バッファローマン側に造反。いわゆるスクリュー・キッド調査団のケンダマンが、時間超人ふたりにボコボコにされ、いよいよトドメを刺されようという時に、マリポーサとゼブラが助けに入る

燃え殻(以下、) うん。あと、ロビンとアシュラマンの造反を知った何者かが、「とうとう使命を果たす時が来たようだね」と、マスク片手に立ち上がる、というシーンもあった。

 『キン肉マンII世』で見たことがあるような、何者かが。どのタイミングで介入してくるんだろう? あと、スクリュー・キッド調査団がなんだったのか、ケンダマンのくだりで明らかになった。ちゃんとつながりましたね。

 うん。しかし、ジェロニモは気の毒すぎるというか。カピラリアの欠片(ピース)が、胸に埋め込まれてしまっていたがために──。

 そもそもは、プリズマンがジェロニモに雑に渡したから。普通に手渡ししていれば、こんなことにはならなかったのに。

確かに雑でした(笑)。JC74巻より 確かに雑でした(笑)。JC74巻より

 で、体ごとカピラリアの欠片になることで「カピラリア光線照射砲」を完成させて、ジェロニモは仮死状態に。

 そう、七人の悪魔超人編のミートくん状態。ただ、ミートくんがああなった時と同じくらい、はたしてみんながやる気になってくれるのか......。

 むちゃぶりできるプロレスラーっているじゃない? ジェロニモもそのタイプだよね。ジェロニモには何をしてもいい、って、ゆでたまご先生に思われているような......。

 (笑)。それはそうかも。

 昔の全日の菊地毅みたいな。

 ああ、ジャンボ鶴田にボコボコにされる。

 バックドロップの角度が、菊地にくらわせる時だけエグい(笑)。前に、バッファローマンはやられるのが似合うっていう話(本コラムVol.22)をしたけど、バッファローマンのやられ方ってカッコいいじゃない? でもジェロニモはただただ悲惨。誰も容赦しない感じが、昔からある。地獄のローラーで腕をつぶされちゃったり。

 ザ・ワンが「自分のカピラリアの欠片を差し出せ」って言って、超人たちがそれを受け入れた時。みんな自分のピースを掲げる中、それをできないジェロニモは、コマの端っこでただ見ている(本記事冒頭あらすじでのコマ)。

 ああ、確かにね。これ、いいコマだね。この画、Tシャツにしてほしい (笑)。

 で、誰も気づかないから、自分で言う。「待ってくれ! オ...オラの欠片は体の中に埋め込まれてしまってて」。

 そうだよねえ。かわいそう。

 もっとみんながジェロニモのことも考えていれば、言われた時点で、「え、じゃあジェロニモは!?」って気づきますよね。

 でも昔、ウルフマンが、自分の左胸に手を突っ込んで、命を取り出して、「一度捨てた命だ! うけてくれキン肉マン!!」って投げたじゃない? ああいうことができるなら、今回も欠片を取り出すくらい、できそうだけどね(笑)、『キン肉マン』のルールの中で言ったら。

 でも、ここでアシュラマンが悲しそうな顔をするの、すごくいいですよね。

 ああ、そうだね。冷たい先輩だったのに。

 で、ジェロニモが「最後はアンタにも認めてもらえたようで、オラはとても嬉しかっただ」と言い残す。

かつては、阿修羅バスターのお披露目の相手役的に扱われたことも(JC19巻より) かつては、阿修羅バスターのお披露目の相手役的に扱われたことも(JC19巻より)

 でも、体からカピラリアの欠片を取り出すことはできないけど、体全部を使ってピースになることはできるっていうのも、謎だよね(笑)。

 しかしジェロニモ、これからの闘いのキーパーソンになるんじゃないか、って言ってたら、本当のキーになっちゃった(笑)。

 ほんとだよね。で、そのあと、ロビンマスクとアシュラマンが、ザ・ワン&バッファローマン側につくことを選んだ。この4人が並んだ画、フレッシュでいいよね。

 うん、画になる。

 今の段階ではだけど、ザ・マンの側に残ったキン肉マン・ネプチューンマン・ウォーズマンって、比べるとちょっと見劣りする気がしない? 正規軍なんだけど、残った感があるというか。

 ああ、そうですね。ネプチューンマンは、自分でも言ったとおり、完璧(パーフェクト)超人だからザ・マンの下を離れられない。で、ウォーズマンは、ロビンマスクの逆張りで残るしかない。

 そうすると消極的理由で集まってるように見えるから、率先して手を挙げて出て行ったメンバーのほうが、カッコよく思えるのかも。

 ユニットを出て行くヤツのほうが、残るヤツよりも気になるもんですしね。新日だったら、SANADAはロス・インゴベルナブレス・デ・ハポンをやめて、結果を出しているわけだし。

 次のトピックは、スクリュー・キッド調査団で、スクリュー・キッドを逃がして、時間超人たちにボロボロにやられたケンダマン。

 「念願の完璧無量大数軍(パーフェクト・ラージナンバーズ)への昇格を果たし、"完球"の称号を授かった」という、新情報も明かされた。大した出世ですよ。あと、「頭と体をつなぐチェーンを切られても死なないんだ?」という不思議さもあった。

かつては、目が見えるかさえ疑われていた彼が完球に出世(JC18巻より) かつては、目が見えるかさえ疑われていた彼が完球に出世(JC18巻より)

 はははは。そうだね。

 で、ケンダマンの反撃も効かず、いよいよトドメを刺される瞬間に、マリポーサとゼブラが現れて助太刀に入る、っていうのもね。『週プレNEWS』では、月曜0時に更新されるじゃないですか。ケンダマンが出た時も、翌週にマリポーサとゼブラが現れた時も、SNSの盛り上がり、すごかったもん。

 そうだよね。

 でもケンダマン、その前の合体技を食らって、頭が砕け散らなくてよかったあ。

 うん。この次のページで頭が粉々かと思ったら、ヒビが入ったくらいですんだ。

 ケンダマン、出世して"完球"になったから割れなかった、ってことですよね。

 こうも毎週燃える展開になるとはね。

 たまらないですよね。ケンダマンが出て来て、マリポーサとゼブラが出てきて

 登場の瞬間が盛り上がる、そういう登場をさせられるのは、ゆでたまご先生のうまさだよね。WWE化してるというか。

 確かにWWEですね。闘いを描くカメラワークも、WWE的かも。ひとコマごとに客がワッと湧く声がきこえる気がする。もともと先生、見せ方がうまいもんなあ......あ、でも、WWEが今のフォーマットになるよりも先に、『キン肉マン』はこの見せ方を確立してる。

 みんなキャラも立っていて、コスチュームも個性的で......そうだ、コスチュームと言えば、俺、気になっていることがあって。ザ・ワン、バッファローマン、ロビンマスク、アシュラマンのチームは、一度物語から退場したじゃない? 次に出てきた時、コスチュームって変わるのかな?

 え? 考えてなかった、そこは。

 ほかのマンガのキャラって、コスチューム変わらないじゃない? のび太とか、何十年も変わらない。でも『キン肉マン』は変わるじゃない? 2000万パワーズの時とか。

 そうですね、確かに。

 だから衣装チェンジしてほしいな、というのが、俺はある。バッファローマンの体に新しい甲冑(かっちゅう)が付いているとか、ツノがクリスタルになっているとか。そういうふうに全員デザインが変わっていると楽しいじゃない? そうすると、フィギュアも新しいのが出るし。

 自分がほしいんでしょ(笑)。

 コスチュームがそろうと、チーム感が出て、カッコいいじゃない?

 チーム分けとしてわかりやすいですしね。

夢の超人タッグ編での2000マンパワーズの肩当てコスチュームは今でも語り草に(JC18巻より) 夢の超人タッグ編での2000マンパワーズの肩当てコスチュームは今でも語り草に(JC18巻より)

 で、コスチューム変更ができそうな超人が、ザ・ワン側にいってるんだよね。たとえば、キン肉マン側に残ったウォーズマンだと、もう変えようがないビジュアルだけど。

 ああ、確かに。

 あの3人が新しいコスチュームになって登場すると、盛り上がるよね。

 NOAHも、拳王が金剛を解散して、コスチュームを赤から青に変えたじゃないですか。そういう感じで、確かに盛り上がるかもしれない、気持ちが。

 チームとしての統一感が、見ればわかるし。今、僕としては、ゆでたまご先生に届け! と思って言っています。

 (笑)。もっと言うと、ザ・マンはそういうことをしないけど、ザ・ワンはする、みたいなのがあってもおもしろいですよね。

 あ、いいねえ。それを望みます! もう、先生が「最初からそうするつもりだった」って言っていいから(笑)。

 そうですよね。で、これから時間超人と闘い、全員が勝ち残って、邪魔者がいなくなったところで、ザ・マンのチームとザ・ワンのチームが向き合う、っていうふうになるとプロレス的にも相当熱いですよね。

 うん、熱い! 楽しみだなあ。

燃え殻(MOEGARA)
1973年生まれ、神奈川県出身。働きながら始めたツイッターでの発言に注目が集まり、作家デビュー。最新著は8月2日発売予定の『ブルー ハワイ』(新潮社)。ドラマ『あなたに聴かせたい歌があるんだ』(漫画:おかざき真里/扶桑社)はHuluで、ドラマ『すべて忘れてしまうから』(主演・阿部寛)はDisney+でそれぞれ配信中。出演中のラジオ番組 『BEFORE DAWN』(J-WAVE、毎週火曜26:00~27:00)もチェック

爪切男(TSUMEKIRIO)
1979年生まれ、香川県出身。2018年『死にたい夜にかぎって』(扶桑社)で小説家デビュー。2020年、同作が賀来賢人主演でドラマ化。風俗嬢との公私ない交ぜの触れ合いの様子をつづった『週刊SPA!』連載コラムを一冊にまとめた『きょうも延長ナリ』(扶桑社)が発売中。集英社発のWebサイト『よみタイ』で、コラム『午前三時の化粧水』を連載中