日本有数の映画ガイド・高橋ヨシキが新作映画をレビューする『高橋ヨシキのニュー・シネマ・インフェルノ』! 日本発の世界的レースゲームから生まれた実話を映画化! キアヌ・リーブス主演の大人気アクション、第4弾!
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『グランツーリスモ』
評点:★3.5点(5点満点)
夢と希望と努力と栄光のウェルメイドなスポ根映画
『グランツーリスモ』は、徹底してリアリズムを追求したレーシングシミュレーションで、実在する車種に乗り込んで実在するサーキットでレースが楽しめる。
リアルすぎるため筆者のように運転免許のない人間には難しくもあるが、逆にいうと免許がなくても「本当のドライブ」を追体験できる恐るべきゲームだ(未体験だがVR版だとその感覚が一層増すに違いない)。
本作はそんな『グランツーリスモ』のトッププレイヤーを選抜して現実のカーレースに参加させよう!という驚天動地の実話を元にした一種のスポ根物語で、そこには夢と希望と努力と挫折と友情と根性と栄光がある。本当に夢のような「アツい」物語なのである。
実際のカーレースがいかに過酷なスポーツか実感できるのも良い。『第9地区』『チャッピー』などSFを主戦場としてきた監督ニール・ブロムカンプにとって新たな領域へのチャレンジだが、ケレンとリアリティのバランスも良く、周到に計算されたテンポがもたらす没入感も非常に高い。
物語は「挑戦→挫折→逆転」の繰り返しなのだが、趣向を凝らしたやり方でエモーションを盛り上げており飽きさせない。帰ってゲームがやりたくなる作品だ
STORY:レーシングシミュレーション『グランツーリスモ』に熱中する青年ヤンは、ある日、このゲームのトッププレイヤーたちを本物のプロレーサーに育成するプログラム「GTアカデミー」を知る。将来に不安を抱えていた彼はその道に進むと決意する。
監督:ニール・ブロムカンプ
出演:デヴィッド・ハーバー、オーランド・ブルーム、アーチー・マデクウィほか
上映時間:134分
全国公開中
『ジョン・ウィック コンセクエンス』
評点:★3点(5点満点)
ドニー・イェンの座頭市アクションに陶然
とんでもない身体能力を持った人が殴り合い撃ち合い殺し合うフィクションは、なぜこうも人を惹ひきつけるのか......と驚嘆する暇すら与えない怒濤(どとう)のアクションで観る者の度肝を抜き、あるいは呆然とさせてきたシリーズもついに完結編。
「裏社会」というには大きすぎるスケールで、ユニークでマンガ的な世界観を描いてきたシリーズだが、足し算に足し算を重ねた「アクションのインフレ」が逆に平坦な印象をもたらしてきたということはある。それぞれ工夫が凝らしてあっても、同じようなテンションのアクションが延々と続くと感覚が麻痺してしまうのである。
それもあってか、今回はシリーズを支えてきた拠点「コンチネンタルホテル」がついに終焉を迎え、さらに知られざる「裏社会の掟」によって「1対1」の対決が用意されることになった(とはいえ「1対1」に至るまでにはいつもの如く「1対100以上」が幾度も繰り返されることになるのだが)。
真田広之やリナ・サワヤマの好演も嬉しいが、なんといってもドニー・イェン演じる盲目の暗殺者の「無双」ぶりに目を奪われる。それにしても、なぜ世界中の映画製作者はドニー・イェンに「座頭市」を演じたがらせるのだろうか?
STORY:裏社会の頂点に立つ組織「主席連合」から自由になるための戦いを始めたジョン・ウィック。連合の高官グラモンは盲目の暗殺者ケインをジョンへの刺客として差し向ける。一方、ジョンは日本の友人シマヅに協力を求める。
監督:チャド・スタエルスキ
出演:キアヌ・リーブス、ドニー・イェン、ビル・スカルスガルド、ローレンス・フィッシュバーン、真田広之ほか
上映時間:169分
9月22日(金)より全国公開予定
●高橋ヨシキ(たかはし・よしき)
デザイナー、映画ライター、サタニスト。長編初監督作品『激怒 RAGEAHOLIC』のBlu-ray&DVDが発売中。
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