10月に配信される映画『次元大介』で主演を務める俳優・玉山鉄二。テレビアニメで小林清志から次元役を引き継いだ声優・大塚明夫。実写とアニメ、それぞれの世界で次元大介を演じるふたりが語り合う男が憧れる男のダンディズム――。
■3次元と2次元の次元、初めて相まみえる!
――本日は、実写の次元大介とアニメーションの次元大介(の声)を演じたおふたりのスペシャル対談です!
玉山 初めまして。玉山鉄二と申します。
大塚 初めまして。大塚明夫です。(『次元大介』を)見たけど、カッコよかったですね~。
玉山 恐れ多いです(笑)。ありがとうございます。見てくださったんですね。
大塚 特にアクションがよかった。見ながら「すげー」って声が漏れてました(笑)。こうして画面の中の次元に会えてうれしいですよ。
――おふたりはそれぞれの舞台で次元大介を演じていらっしゃいます。玉山さんは2014年公開の実写映画版『ルパン三世』、そして10月からPrime Videoで世界配信されるAmazon Original映画『次元大介』で次元を演じました。
一方、大塚さんは直近のテレビアニメ『ルパン三世 PART6』(21年~)で、初代声優の故・小林清志(きよし)さんから次元大介役を引き継いでいます。そもそもおふたりが『ルパン三世』、次元大介と出会ったのはいつ頃ですか?
玉山 僕は関西出身なんですけど、幼稚園とか小学生の頃、ローカル放送局の日曜日のお昼に放映されていたんです。子供ながらにクールさ、ロマンチシズムみたいなものを強く感じていましたね。エンディングテーマ『ルパン三世のテーマ その2』とかもちょっと切ない印象でしたし。
大塚 僕も小学生の頃にファーストシーズン『ルパン三世 PART1』(1971~72年)を夢中で見ていました。クラス中が見ていたんじゃないかな? 『ルパン三世』で描かれた大人の世界のカッコよさは、それまでの子供アニメにはない画期的なものでしたから。
――初代・石川五ェ門の声優を担当されたのは、大塚さんのお父さま、大塚周夫(ちかお)さんでしたよね。
玉山 えっ、そうなんですか!?
大塚 はい。『PART1』の石川五ェ門はけっこう殺気立っているキャラクターなんだけど、あれ、うちの親父なんです。
玉山 それは知らなかった。勉強不足ですみません! つまり、親子2代で声優をやられていらっしゃるんですね。
大塚 結果的にそうなりましたね。もともとは役者畑なんですけど、声優の仕事が転がっていって今に至ります。
玉山 お父さまと同じ作品に出演するっていうのは、なんらかの因縁を感じますね。
大塚 因縁というよりも必然かな? 親父が亡くなったので、親父が演じていた役柄が自分に回ってきたりとか、けっこうあるんです。
――そんな大塚さんに質問です。小林清志さんの後任ということでプレッシャーはありましたか?
大塚 絶対に叩かれるだろうとは思ってました。ファンの方から「これは次元とは違う!」「私の次元は清志さんしかいない!」とね。でも、それを承知の上でやらせていただきました。
僕はいろんな意味で『ルパン三世』に思い入れがあるから、自分以外の人が次元の声を当てていたら、文句のひとつも言いたくなるはず。だったら自分がやるしかないと思ったんです。
――玉山さんにも同様のプレッシャーがあったと思うのですが、いかがですか?
玉山 あります。今回の『次元大介』のキャストが発表されたとき、ネットニュースのコメント欄が荒れましたからね(笑)。「イメージが違う!」とか。でも、次元大介のイメージって十人十色で、フィックスしているわけではないと思うんです、実は。
14年の実写映画に出演するとき、人づてに(原作者の)モンキー・パンチ先生の次元に対するイメージを聞いたことがあるんですが、先生ですら「次元が一番イメージがない。どんなヤツなのかよくわからない」と語られていたそうです。
そうなると僕としては「自分がどういう次元を追い求めていくか?」という話になる。だから、あまり周囲の声は気にしないようにしています。批判はこの役を引き受けると同時に背負わなきゃいけない十字架みたいなものですしね。
大塚 わかるなあ。次元はまさに十字架だ。
■新説!「次元大介=レオン」説
――では玉山さんは今回の『次元大介』でどんな次元を目指したんでしょう?
玉山 14年に公開された、次元が主役のOVAアニメ『LUPIN THE ⅢRD 次元大介の墓標』という作品があるんです。それを初めて見たとき、そのカッコよさ、クールさに度肝を抜かれまして。
そういう空気感で今回の『次元大介』もやれたらいいなと考えていました。大人の男性や女性が「ゾワッ」とする、そういう作品になればいいなと思いながら演じてましたね。
今回の『次元大介』で言うと、台本を読んだときに映画『レオン』(94年)のにおいを感じたんです。同じように子供も出てきますし、作品にどこか色気があるじゃないですか。ちょっと際どい印象もある。あの感じも出せたら、と思っていました。
大塚 実は俺、『レオン』のジャン・レノの吹き替えをやったんだよ(笑)。
玉山 本当ですか......!? それは奇遇です。運命を感じてしまいます。
大塚 うん。でもね、玉山さんが言っていることはすごくわかる。レオンと次元大介は、キャラクターはまったく異なるけど、ふたりとも突出した殺人技術を持っていて、小さな命を守るために自らの命をかける気概がある。そのひたむきさは共通しているし、見ていて震えるよね。
――おふたりは次元を演じる際、どんなところにフォーカスを合わせていますか?
大塚 『ルパン三世』はあくまでルパンが主役じゃないですか。そこで、「次元はカッコいい!」とか「俺が次元だ!」という気で前へ出ていくと、ルパンの邪魔になってしまう。
だから「ルパンの邪魔にならないギリギリのラインはどこかな?」っていうのを常に考えて、そこを踏み越えないようにしていますね。あえて控えめに演じることで、次元もルパンも両方引き立つのかな、と。
玉山 控えめに演じる、というのすごくわかります。僕は今回の次元で、演技を"足す"作業をやめたんです。細かい演技をそぎ落とす方向で構築していきました。演技で何かを補ったり、足そうとすると『ルパン三世』という作品が持つ大人っぽさ、次元が放っているダンディズムみたいなものからはどんどん遠くなってしまう気がして。
大塚 おっしゃるとおり。
玉山 演技をシンプルにしていかないと次元というキャラクターが立たなくなってしまう。特にアクションシーンがそうでした。次元が汗をかいているイメージや必死になっているイメージってあまり湧かないじゃないですか。だから「頑張らない」「意気込まない」「力まない」という言葉が常に頭の中にありました。
大塚 次元を魅せようとしてはいけない。それは正解です。
■次元大介の哲学は「江戸っ子」と「ジャズ」
――――大塚さんは、初代声優・小林清志さんから次元を演じるための"秘伝"を教えていただいたことがあるとか。
大塚 あれは『ルパン三世 PART6』の1クールの収録が終わったくらいの時期だったかな? 清志さんからお手紙を頂戴したんです。そこに書いてある言葉を読んで「なるほど、そうか!」と納得させられた。おかげで2クール目がすごくラクになりました。
――手紙にはどんなことが書かれていたんでしょう?
大塚 「次元は、江戸の"粋(いき)"。江戸っ子で雰囲気はJAZZにも似ている」と書かれていた。確かにおっしゃるとおりなんです。次元の言葉、セリフ回しにはちょっと江戸の薫りがするじゃないですか。
例えば「まっぴらごめんだぜ」とか。清志さんは東京・山の手の人で、どこか江戸っ子の空気感をまとっている。それを次元大介というキャラクターに注入したんでしょうね。
それと江戸弁でしゃべるリズム、会話の掛け合いみたいなものがジャズに近いともいえる。例えば、ジャズのセッションでは、それぞれの楽器のプレイヤーは「俺はこう演奏するけど、おまえはどう返す?」「なるほど、そう来たか」みたいなやりとりをするんですけど、それがルパンと次元のやりとりに似ている気がします。
清志さんと山田康雄さん(ルパンの初代声優)がアフレコをしていた際のスタジオの空気感は、おそらくジャズのような感じだったんじゃないかなあ。
――玉山さんは江戸弁を意識されたりはしました?
玉山 特に意識はしていませんでした。でも、次元のど真ん中をやろうとすると、初代声優・小林清志さんのモノマネになってしまう。そうじゃなくて、まだ誰にも見えていない"次元の余白"みたいなものを探しながら演技をテストしていきました。
台本を読んで「ここはこう進行しよう」とプランを立ててやっていたワケではないんです。自分でもどんな次元が出てくるかが楽しみで現場に行っていたような印象ですね。
――つまり、決め打ちの演技をしていなかった。その場の空気感で即興で演じるのはまさにジャズの世界観です。
玉山 次元には予定調和ではない魅力があるんです。それもジャズに近いですよね。
大塚 確かに次元のセリフ回しはストレートじゃないよね。相手の喉元にパッとナイフを突きつけて、「どうだ、この野郎!」とは言わない。「おめえさん、相手が悪かったな」と微妙にベクトルを外したセリフを言う。そういう言葉の返し方を聞いていると、それまでの次元の来し方(=過去、生きざま)を想像させられる。
玉山 まさにそれです。次元は相手に対してど真ん中のセリフを言うんじゃなくて、躱(かわ)したセリフが多い。だから色気が出てくる。そこにしゃれっ気も感じるので、それが江戸っ子的な"粋"な部分につながるのかもしれません。
大塚 玉山さんがお好きな『LUPIN THE ⅢRD 次元大介の墓標』にこんな言い回しがありますよね。「おまえさんがどれだけ軽い銃を使おうが知ったこっちゃねえが......」っていう一節なんだけど、これって相手に直接バン!ってぶつけているワケでもなく、ひとり言ってワケでもなければ、どこへ向けて吐いているのかわからない。
次元にしか見えない何かに向かって、彼の思いが言葉となって転がっていく......そんな印象がある。
そしてシメのセリフが「俺に言わせりゃロマンに欠けるな」。銃の撃ち合いで命の取りっこをしてるときに「何言ってんだ?」っていう話じゃないですか。でも、それを成立させてしまうのは、相手に直接言葉をぶつけていないから。だから「おおっ!」という想定外の感動が生まれる。
玉山 わかります。次元は戦う場面で敵と対峙(たいじ)しても、勝つことを前提に言葉を放っているような気がします。「どうせおまえは俺を上回れない」という余裕を感じる。
そこには何かにあらがうときの熱っぽさはない。だからこそ大塚さんがおっしゃるように、次元を演じるときはあえて抑えなければならないんでしょうね。
■違いのわかる男、次元のモノ選び
――ところで次元は、モノに対するこだわりが強い男のように感じます。今回の『次元大介』でも長年使用してきた拳銃、スミス&ウェッソン M19コンバット・マグナムが重要なアイテムとして登場しますし、2019年には次元が身につけていた腕時計、ゼニス エル・プリメロ A384 リバイバル――LUPIN THE THIRD EDITIONが限定発売されたこともありました。
大塚 コンバット・マグナムじゃないとなんかイヤなんだよ、っていうのはすごくわかりますね。あえて戦闘向きでないコンバット・マグナムをずっと使い続けるっていうところに彼のロマンチシズムを感じます。
こんなこと言うとアレですけど、クルマを何台も買ってしまう人は、そばにいる女性も変わりやすい、なんていう俗説がありますよね。その対極にいるのが次元なんじゃないでしょうか。
玉山 次元は"違いがわかる男"だと思うんです。次元はシンプルな男だと思うので、シンプルがゆえに本能的に自分に合ったものが見抜ける。自分にとっての正解や違和感に気づくアンテナが敏感なのかもしれません。
大塚 それはあるでしょうね。
――次元の性格も気になりますよね。彼は(峰)不二子に近づくルパンに対し、「やめておけ。関わるとロクなことがない」と再三語っていることでもわかるように、とても慎重な男です。
大塚 そりゃあそうですよ。彼はガンマンですから。盗賊であるルパンよりもたくさんの命のやりとりをしてきたはず。そういう生き死にを意識する人生を歩んできたら、うかつなことはできないとなるのは当然でしょう。
――その一方で、少し雑なところもありますよね。
大塚 雑なところっていうのは、ちゃんと親に教わってない環境で育ってきたんだろうなと想像します。特に食べ方が汚いところとか。そういうしぐさのひとつひとつに次元の人生が透けて見えてくるんです。
玉山 慎重さや雑さもあるけど、結局は目の前の状況すべてに向き合い、受け入れている......そんな超然としたイメージもあります。たとえですが、自然と向き合うスポーツ、サーフィンやトレッキングって自然の流れや動きを受け入れざるをえないじゃないですか。
それにあらがうと失敗するし、醜く感じる。次元本人が意識しているかはわかりませんが、そういうあらがわない美学のようなものも感じますね。
――最後に、おふたりにとって次元大介とはどんな存在ですか?
玉山 理想とする男性像のひとつだと思います。何事も無駄がない。そこに尽きますね。無駄がないことは素晴らしいとわかっていても、そこに到達するのは難しいじゃないですか。次元のようにシンプルなほうがカッコいいとわかってるんだけれど、誰もそこには行き着けない。
――男の道しるべみたいなものなのかもしれないですね。大塚さんはいかがですか?
大塚 ヘンテコリンな答えになってしまうんだけど、僕にとっての次元大介は、先代の小林清志さんから預かっている形見のようなものなので、大事に扱わなきゃいけない役柄です。
自分が子供のときから夢中で見てた次元ですから、「ん? 何これ?」と思われたくない。清志さんのやってきたことにしっかりと向き合って、次の世代にも受け継いでいかなければならないと思っていますね。
――大塚さんの次元愛がヒシヒシと伝わってきます。今回の実写映画『次元大介』で声を当ててみたい、なんて思ったりしました?
玉山 すごい! それは見てみたいですね。僕が演じて、大塚さんが声を当てる。特典映像かなんかであったら最高に面白いと思います!
大塚 面白いアイデアだけど、たぶん浮いちゃうだろうなあ(笑)。やっぱり私はあくまで2次元のしゃべり手ですから。
●大塚明夫(おおつか・あきお)
1959年生まれ、東京都出身。『攻殻機動隊』シリーズのバトー役、『ブラック・ジャック』シリーズのブラック・ジャック役、『ONE PIECE』の黒ひげ役をはじめ、ゲーム『メタルギアソリッド』シリーズのスネーク役など、多数の人気作品に参加。また、洋画吹き替えではスティーブン・セガール、ニコラス・ケイジ、ジャン・レノなどを担当。父は声優の故・大塚周夫
●玉山鉄二(たまやま・てつじ)
1980年生まれ、京都府出身。99年にドラマ『ナオミ』で俳優デビュー。2005年『逆境ナイン』で映画初主演を果たし、09年度映画『ハゲタカ』で日本アカデミー賞優秀助演男優賞を受賞。14年、NHK連続テレビ小説『マッサン』で朝ドラ初出演ながら主演を務める。次元大介を演じるのは、14年に劇場公開された実写映画『ルパン三世』以来2度目
■Amazon Original 映画『次元大介』10月13日(金)より世界独占配信
『ルパン三世』シリーズの中でも随一の人気を誇る、ルパン三世の最高の相棒にして早撃ち0.3秒の天才ガンマン・次元大介を主役に、Amazonスタジオと『ルパン三世』をプロデュースし続けてきた株式会社トムス・エンタテインメントが実写映画化! 10月13日からPrime Videoで独占配信開始
スタイリスト/袴田能生(玉山) 森島あさみ(大塚) ヘア&メイク/石邑麻由(玉山) 藤井康弘(大塚)
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