人気小説家の燃え殻さんと爪切男さんが8月の『キン肉マン』連載をレビュー! 人気小説家の燃え殻さんと爪切男さんが8月の『キン肉マン』連載をレビュー!

『ボクたちはみんな大人になれなかった』の燃え殻『死にたい夜にかぎって』の爪切男の意外な共通点、それは『キン肉マン』!!

希代のストーリーテラーのふたりが8月分の『キン肉マン』連載を甘く、そして辛く批評。

―今回の「先月の肉トーク」テーマ―

第426話 完球救う!? ゼブラとマリポーサ!!の巻(8月6日更新分)
第427話 タッグ戦に待った!のワケ!!の巻(8月20日更新分)
第428話 バベルの裏の遭遇戦!!の巻(8月27日更新分)
あらすじ
キン肉マンたちがバベルの塔で激戦を繰り広げる中、ザ・マンはケンダマンたちを宇宙崩壊を加速させる元凶である刻(とき)の神のもとへ派遣。時間超人たちの襲撃に苦戦するケンダマンのもとにキン肉マン ゼブラ・マリポーサが助太刀。時間超人エル・カイト ドミネーターvsゼブラ マリポーサのタッグ戦が始まると思いきや、さらにマリキータマンが乱入する。

●時間超人、エル・カイトとマリキータマン

爪切男(以下、) 8月の3回も、燃えましたね。時間超人とのタッグ戦、ファン心理としては、ゼブラとマリポーサで行ってほしい、と思ったけど、マリキータマンが現れて、彼とゼブラのタッグになる。

燃え殻(以下、) うん。今のところ、何か、落ち着いた試合展開だよね。

 でもやっぱり、マリキータマンみたいな精神は大事ですよね、今を生き抜くのに。このメンタルの強さは、見習いたい。「おまえの出番じゃないよ」っていうところに出てきて、堂々とポーズを決める()。プロレスって、こういうのも大切ですもんね。

8月6日更新426話ラストでのマリキータマンの派手な登場 8月6日更新426話ラストでのマリキータマンの派手な登場

 あ、それはそうだね。

 で、マリキータマン、マリポーサの代わりにゼブラと組んで闘うことを周囲に認めさせた、と思ったら、「技にかけては当代一のオレたちの新タッグ、"エグゾセミサイルズ"も結成だ!」って、勝手に名前を付ける()

 確かに、『キン肉マン』の中では珍しいくらい、空気を読まないキャラだよね。あと、俺はエル・カイトが気になる。敵キャラにしては、最近ないデザインというか。

燃え殻さんが気になるというエル・カイト(右)。隣にはタッグを組むドミネーター 燃え殻さんが気になるというエル・カイト(右)。隣にはタッグを組むドミネーター

 「エル」って付いているだけに、ルチャ・リ・ブレ的な要素もあるし。

 そうそう。

 新日が、メキシコのCMLLの選手たちを呼ぶ「ファンタスティカ・マニア」っていうシリーズを、定期的にやっているじゃないですか。あれが人気あるの、よくわかるけど、それに近いものを感じます。

 ジャンプすると羽根が開くしね、エル・カイト。そういう意味ではマリキータマンとの空中戦が、いい感じでスウィングしそうな。

 でも、お互い、好きな超人ができてよかったですね。燃え殻さんがエル・カイトで、俺がマリキータマン。

 ()え、マリキータマン、好きなの?

 はい。やっぱり図々しくて空気を読まないのって、かわいいなって思いますよ。お互い空気を読んだ会議っていうのは、何も生み出さない、っていうか。空気を読まないヤツが2,3人いたほうが、何かが生まれるから。

 マリキータマン、俺、イヤだなあ()

 でも、ゼブラとマリキータマン、闘ったばかりのふたりがタッグを組む、っていうのは、確かにおもしろいと思いますよ。マリキータマンがゼブラに向かって「お前の実力は認めているつもりだ」。上から目線で偉そうに言うのもいい()

 まあ、勝ってるからね、ゼブラに。

「オメガ・ケンタウリの六鎗客」との対戦時に闘っていたふたり。マリキータデッドリーライドでマリキータマンが勝利している(JC66巻) 「オメガ・ケンタウリの六鎗客」との対戦時に闘っていたふたり。マリキータデッドリーライドでマリキータマンが勝利している(JC66巻)

 同じようなタイプが組むよりは、こういうほうがおもしろいんじゃないかな。タッグマッチって、ツープラトンの攻撃とか大事じゃないですか。ゼブラとマリキータマンが、ふたりでどんな攻撃を出すのか......ゼブラがマリキータマンに乗って突撃するとか。

 ああ、橋本真也と小川直也の「俺ごと狩れ!」的な。

 そう、「俺に乗れ!」と()。時間超人が時間を操ろうとした時、それを食い止めるべくツープラトンで......それこそ、光の速度を超えて、マリキータマンが消えるとか()

 はははは、いいかも。時間超人のコンビも、エル・カイトにドミネーターが乗れるじゃない? お互いが乗って闘うのもいいかも。

●時間超人への期待

 それにしても、ゆでたまご先生が作ってきたこれまでの超人、どれもキャラが立ちまくってるじゃないですか。だから、こうして敵キャラで新しい超人を作るのって、すげえ大変だろうなあ、と思います。

 いや、大変よ!

 いまだに超人募集を行なっているのも、そういう部分もあるんでしょうね。

 うん。さらに今は、僕らが子供だった頃の、無邪気な超人募集じゃなくて、今まで出てきた超人を知った上での超人募集が前提だよね。昔だったら、ハルク・ホーガンをモチーフにしてネプチューンマンを考えたわけだけど、今はもうネプチューンマンを見ての投稿になっちゃうじゃない? そうなると、僕らが子供の頃のような、爆発的でシンプルなアイディアを出すのは、なかなか難しいだろうね。

 千代の富士でウルフマンとか。

 ルービックキューブが流行ったからキューブマンとか、それでなんの問題もなかったじゃない? でも今は、すべてがあった上での応用編になっちゃうから。

 今の実在のプロレスラーをモデルにした超人とか、ちょっと考えにくいし。

 あの頃の少年たちは、純粋な気持ちで先生に送って、先生もそれをストレートに受け取れたと思うんだけど。でも今は......。

 でも、今でも超人、毎週コンスタントに送られてくるそうですよ。最近、ウェブ上でも投稿できるようになったし。

 ああ、そうだよね。

 送ってくるのは、長年の読者である大人が多いんでしょうけど、今の子供の発想とか、見たいですけどね。78歳の子が描いた超人を原案にして、ゆでたまご先生が仕上げる、みたいな。子供は、俺らじゃ考えつかないような発想をするじゃないですか。『キン肉マン』世代で、親になっている人も多いだろうから、自分の子供に描かせてみてほしいな。

 実際、そういう投稿も来てるらしいよ。

 「超人はこういうもの」という固定観念がない超人が生まれてほしいな。エル・カイトもドミネーターも、「なるほど、時間超人だ」って納得するじゃないですか。次に出てくる時間超人は、そうじゃなくて、たとえば、合気道の達人みたいなジジイとか。

 ()。ああ、ありだと思う。

 そういうのは、時間超人側に期待したくなりますね、時間超人はなんでもありな気が。たとえば、妖怪ぬりかべみたいなのが出てきてもおもしろいし。

 ミートくんぐらい小さい超人とか。

 いいですね。で、ミートくんが「サイズ的に、僕が行くしかないですね」って、闘ってほしい()

 サンシャインみたいな超人もいるわけだしね。超人募集の投稿で、サンシャインが最初に載った時のことを憶えてるんだけど。投稿のデザインは、もっとスラッとした超人だったの。

 あ、そうなんですか?

 だからマンガに出てきた時、びっくりした。「うわ、こうなるのか、やっぱりすごいな」って。今の超人は、みんな人間っぽいフォルムだけど、もっと出てきてもいいよね。チエの輪マンとか、ティーカップマンとか、タイルマンみたいなキャラクター。

このころの超人たちの味わい深さはいまだに語り草(JC8巻) このころの超人たちの味わい深さはいまだに語り草(JC8巻)

 しかし、この展開、ゆでたまご先生、ことごとく僕らの予想を裏切りますよね。

 確かに。我々の読み、全然当たらないね。で、今の闘いで、時間超人っていうものの定義をするんだよね。そのための試合というか。

 そうでしょうね。

 超人側が勝ったとしても、負けたとしても、時間超人とはなんぞや、ということがわかる闘いになる、というのがテーマだよね。

 そのためには、普通の試合じゃなくて、何かないといけない。どうなるんだろう?

●期待だらけのTVアニメ『キン肉マン完璧超人始祖編』

 アニメの話もしなきゃなんですが、単行本の83巻の発売日、キン肉マンの日でもある929日に新しい発表があったよね。

 はい、放送開始は2024年ということやスタッフ陣、さらに制作がProduction I.Gとのことです

 僕、『攻殻機動隊』大好きだから、『キン肉マン』の制作がProduction I.Gだというのは、うれしいです。

 あ、『攻殻機動隊』好きなんですね?

 うん。『攻殻機動隊』と『イノセント』は、夜中に家に帰ってくると観たくなる。夜中にタラタラ観てると、落ち着くんだよなあ。あの、全体的に低体温な感じが好きなの。『攻殻機動隊』シリーズの静かな感じと、『キン肉マン』の動な感じが、僕の中では違いすぎるから、かえって楽しみ。早く観てみたい。

 ああ、なるほどね。

 普通に考えたら想像できないから、アニメーションになった時に、何かが起こると思う。

 キャラクターデザインでクレジットされている、丸藤広貴(ひろたか)さんという方、担当さんによるとプロレスリング・ノアの丸藤正道(なおみち)選手のお兄さんなんだそうです。

 ええっ!?

  しかし、最近、どういうことなんですかね。『シティハンター』が映画になり、『北斗の拳』がアニメになり、そして『キン肉マン』もと、あの時代の少年ジャンプの人気作品が次々と。我々の世代がいちばん楽しいんじゃないですか?

 うん。この世代がいちばん課金するからじゃない?()

 『シティハンター』、観に行きました。めちゃめちゃよかったですよ。

 あ、観に行った人みんなそう言うんだよなあ。俺も行かなきゃ。

 冴羽獠の声優は、神谷明さんのままだったけど、ケンシロウとキン肉マンはどうなるんだろう?

 どうなんだろうね。でも、そもそも40年前、その主人公が3人とも神谷明さんだった、という事実がすごいけど。

 ほんとですよね。楽しみだなあ。キン肉マンを知らないアニメ好きの世代にも届くといいですね。

燃え殻(MOEGARA)
1973年生まれ、神奈川県出身。働きながら始めたツイッターでの発言に注目が集まり、作家デビュー。最新著は8月2日発売予定の『ブルー ハワイ』(新潮社)。ドラマ『あなたに聴かせたい歌があるんだ』(漫画:おかざき真里/扶桑社)はHuluで配信中。ドラマ『すべて忘れてしまうから』(主演:阿部寛)が10月13日(金)深夜24時52分より、テレビ東京「ドラマ25」枠にて放送予定。出演中のラジオ番組 『BEFORE DAWN』(J-WAVE、毎週火曜26:00~27:00)もチェック

爪切男(TSUMEKIRIO)
1979年生まれ、香川県出身。2018年『死にたい夜にかぎって』(扶桑社)で小説家デビュー。2020年、同作が賀来賢人主演でドラマ化。風俗嬢との公私ない交ぜの触れ合いの様子をつづった『週刊SPA!』連載コラムを一冊にまとめた『きょうも延長ナリ』(扶桑社)が発売中。集英社発のWebサイト『よみタイ』で、コラム『午前三時の化粧水』を連載中

●2024年放送開始! TVアニメ『キン肉マン』完璧超人始祖編公式サイト

アニメーション制作:Production I.G
原作:ゆでたまご(集英社『週刊プレイボーイ』・『週プレNEWS』連載中)
監督:さとう陽 シリーズ構成:深見真 
キャラクターデザイン:丸藤広貴 音楽:高梨康治
Ⓒゆでたまご/集英社・キン肉マン製作委員会

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