酒井優考さかい・まさたか
週刊少年ジャンプのライター、音楽ナタリーの記者、タワーレコード「bounce」「TOWER PLUS」「Mikiki」の編集者などを経て、現在はフリーのライター・編集者。
芸歴14年、吉本興業所属のお笑いコンビ、カゲヤマが「キングオブコント2023」(以下KOC)で準優勝! ヒゲにロン毛のタバやん。が妹キャラを演じ、身長180cmの益田康平に「むぎゅ」と抱き着くネタや、KOCでも見せたお尻ネタ・ウンコネタなどで、時には「キモい」とイジられてきた彼らだが、実はタバやん。、益田ともに超「趣味人」としての一面も持ち合わせている。
今回は、趣味にも芸にも励むふたりに、趣味に生きることの楽しさを語っていただく。
***
――まずはキングオブコント準優勝おめでとうございます! おめでとうございます、の認識で合っていますか?
タバやん。 これが合っているんです(笑)。ずっと地下層で泥臭くやってたので、僕らが準優勝したというのは「実質優勝だ」ってシソンヌの長谷川さんが言ってくれたくらいで。
益田 ただやっぱり、サルゴリラさんは強すぎましたね。東京吉本の先輩ですけど、兄さんの底力を見せつけられたなっていう感じはあります。
――おふたりはM-1にも挑戦されていますよね(記事掲載時点で3回戦突破)。KOC準優勝者となると、客席からの風向きも変わってきてるのでは?
益田 KOCの決勝後にM-1の2回戦があって、もちろんみなさんKOCも観てるから僕らのことは知ってはいるだろうけど、「M-1はM-1だぞ」っていう空気がありましたね。
去年はKOCとM-1でどっちも準決勝まで進んで、どっちかで決勝に行けたらいいなとは思っていたんですけど、今年はKOCで決勝まで行ってしまって。これまでKOCに全力を注いできてたので、M-1は戦いながらネタを作るしかない。もう捨て身で挑むしかないですね。
タバやん。 KOCに全カロリーを使っていたので(笑)。僕らはもう15年間ずっとコントをメインでやってたんで、漫才なんか本当にM-1の時くらいしかやらなくて。コントと漫才じゃやることも全然違いますし。
益田 道具も使えないし、お尻も出せないですし(笑)。でもこれでM-1も決勝行けたらヤバいですよね。どっちもファイナリストとなると、かまいたちさんとか、さらば(青春の光)さん、ニューヨークくらいの実績にはなるんじゃない(笑)。
タバやん。 色がまったく違うじゃない(笑)。
――おふたりは、ツッコミとボケの役割が明確には決まってないですよね。
タバやん。 ネタによって、どっちが向いてるかっていうので変えてるんですよね。例えばKOCの全裸のネタだったら、益田の身体が綺麗だったんで益田が脱ぐ係になり。じゃあ僕はツッコミじゃなくて、リアクションをするリアクターになるかって感じで。
2本目のネタも「僕はどうなるんですか!?」っていう大声のボケがあるんですけど、あの声とか空気感は益田にしか出せないから、益田があの役になりました。
益田 ネタ作りは結構ふたりで案を持ち寄って、話し合って作っていく感じで。雑談からできるパターンもあって、例えばコンビで共通のちょっと腹立つ人がいて、タバやん。が「そいつの机にウンコしようかな」みたいなことを言い出したことがあって。で、僕が「DNA鑑定されたらどうすんだよ」みたいな感じで返して。それがあのネタになったんですけど(笑)。
――コンビで仲が良さそうですね。
タバやん。 中学の同級生なので本当に「ダチ」って感じで(笑)。去年の秋まで15年間同じエアコン清掃のバイトをやってたし。ネタで揉める時はありますけど、プライベートで揉めたりとかは全然ないですね。
益田 お互い酒もそんなに飲まないし、ギャンブルも破滅するほどはやらないし、遅刻もほとんどしないし。スベったとか面白くないとかその前に、とにかくちゃんと仕事に行くっていうのが一番大事なパフォーマンスだと思ってます。そこだけは誰でも努力できるポイントですからね。1回だけふたりとも二度寝しちゃったこともあったけど(笑)。
――おふたりは多趣味だそうですが、それぞれの趣味について聞かせてください。まずタバやん。さんはペットをたくさん飼ってるそうで。
タバやん。 そうですね。めちゃくちゃ生き物が好きで飼育してます。今だとウサギが3羽、インコが1羽、あとトカゲ(ヒョウモントカゲモドキ)とカエルがいます。特に爬虫類はモルフ(柄や色などの特徴)がたくさんあって、コレクター心をくすぐられて一時期はいろいろ多頭飼いしてたんですけど、あまり増やしすぎるのもよくないし、今はほどほどにしていて。いつか金持ちになったら数じゃなくて大きいのを飼いたいなと思ってます。
子供の頃から虫とかヤモリとかが好きで、でもお小遣いの範囲も限られてた。でも今ならある程度お金もあるし、ケージなんかもインテリアみたいなオシャレな種類が増えたんです。だからロマンが詰まってるんですよね。
――そんなペット部屋に、マンガも2000冊ほど持ってるとか。
タバやん。 そうなんですよ。ただ記憶力は良くないんで、そこまでストーリーとか小ネタを語れるわけでもなくて、漫画芸人とかの企画があると困りますね(笑)。ジャンプ系の漫画もたくさんあるし、伊藤潤二さんのようなホラー系とか、『Y氏の隣人』(吉田ひろゆき)とか、藤子・F・不二雄先生の短編集とかが特に好きですね。
8畳くらいの部屋に自分で作った本棚が並んでて、たぶん実質5畳くらいになってます(笑)。
――さらにギターやボイパなど音楽も得意で、お好み焼き作りも得意だそうで。
タバやん。 本当に浅く広くですね(笑)。ギターは高校の時にギターを弾き始めて、趣味でやってたんですけど、最近になってそいつどいつの(市川)刺身がアコギを弾き始めたっていうんで、いつか披露するライブでもやろうかって話になってますね。
お好み焼きについては一応、自称・日本一美味しいお好み焼きを焼ける男です。お好み焼き屋さんで修行してたこともあって、そこに独学で学んだコツもプラスして。やっぱり一番大事なのは焼き加減で、最初に麺を焼いて裏返す時にキャベツが立って、その間から蒸気が抜けるようにするんです。そうすると外がカリカリで中がフワフワに仕上がるんですよ。
益田 お好み焼き検定も持ってるくらいだからね。
タバやん。 初級、中級、上級とあって、上級は中級を持ってる人しか受験できないんで、2年越しで上級を取りました。他にも、サッカーは中学の時から益田と一緒にやってたし、あとバイクはめちゃくちゃ好きだったのに免許の更新を忘れて失効しちゃって......。ハーレーに乗るのが夢だったのに......。
最近ハマってるのはウイスキーですね。お酒は全然飲めないし、そんなに興味なかったんですけど、たまたま行ったバーでウイスキーがめちゃくちゃ面白いっていうことを教えてもらって。で、調べ始めたら奥が深いし、またコレクター心をくすぐるところもあって、ちょっと爬虫類に近いところがあるなと思いました。
――益田さんもサッカーがお好きなんですよね?
益田 サッカーとフットサルはずっと好きですね。見取り図の盛山さん主宰のチームに所属してますし、個サルもよく行きます。個サルって知ってます?
――何ですか個サルって?
益田 個人フットサルっていう、フリー麻雀的にひとりでフラっと行って、知らない人とやるフットサルです。それに結構行ってますね。
――オンラインゲームみたいですね。
益田 そうそう! フットサルとかサッカーって、人が集まらないと成立しないスポーツじゃないですか。でも個サルはフラっと行けるのがすごく魅力的なんですよ。実力に合わせてレベルもいろいろあるので、経験者じゃない人でも気軽にやれるのもいいんです。
――でもKOC準優勝者となると、「お尻を出してた人だ!」って指を差されることもこれから増えるのでは?
益田 今のところないですけど(笑)、以前とんでもない悪質なファウルを食らったことがあって、僕も怒っちゃって、あんまり動けないから後ろのほうで文句を言ってたんですよ。その日の帰りに、別のチームの人から「カゲヤマの益田さんですよね」って声かけられたことがあって、「あ、ちょっとそろそろ文句とか言えないな」って思いましたね(笑)。
タバやん。 益田も僕も中学からサッカーをやってたけど、ずっとベンチで。僕はもうやめちゃいましたけど、益田は大学でもサッカーを続けてて、でもテクニックと経験値は今が一番仕上がってるんですよ。今が全盛期(笑)。
益田 勢いだけね(笑)。
――それと益田さんは、趣味ではないかもしれないですけど大食いと早食いも得意で。
益田 一般人の中では得意、くらいのレベルで(笑)。お店のチャレンジメニューで、ラーメン3.2kgとか、ジンギスカン2.3kgとかはクリアしたことがあるんです。でも、餃子を1時間に100個食べたら無料のお店で、僕は59分30秒とかでクリアしたんですけど、お店の色紙を見たらジャイアント白田さんが「5分30秒」って書いてあって(笑)、本物のフードファイターの方はレベルが違うんですよ。
番組でギャル曽根さんと戦った時はすごかったなあ。美味しそうに嬉しそうに、しかも綺麗に食べて、なのにずっとしゃべってるんですよ。本物にはかなわないですね。
むしろ大食いよりも早食いの方が得意で、ガリガリくんを5秒で食べるとか、ペヤングを一瞬でたいらげるとか、そういう方が得意ですね。一応、フードファイターのMAX鈴木さんと焼きそば500gの早食い対決をして勝ったこともあるんで、スピードタイプではあります(笑)。
まあ大食い・早食いは趣味ではないんですけど、メシをめっちゃ食べると先輩に喜ばれるからご飯に呼んでもらえるし、千葉のお祭りの大食い大会に呼ばれたりもしたし、テレビも何度か出させてもらえました。大食いは終わった後が大変なんですけどね(笑)。
――テレビでは食べる系の企画はいくらでもあると思うんで、今後出番が増えそうですよね。で、身体を動かして、食べて、銭湯も趣味なんですよね。
益田 ひとりでスーパー銭湯に行って、サウナ入って、みたいなのはしょっちゅうですね。都内も行きますし、所沢とか和光とか、埼玉に結構いいところがあるんですよ。
オススメは、ちょっと最近有名になりすぎてるんですけど、スパジアムジャポンっていう東久留米のスーパー銭湯ですね。安いしデカいし、行くたびにパワーアップしてて、あれはスーパー銭湯界のディズニーランドですよ。「あれ、テントのサウナできてる」とか、「個室のサウナできてるぞ」とか、「こんなとこにハンモックあったんだ」とか。
KOC決勝の1本目のネタでお尻を出したんですけど、お尻を綺麗にするためにスパジアムジャポンの塩サウナに週3、4ぐらいで 通ってましたから(笑)。結構ツルツルに仕上がるんです。
タバやん。 マネージャーさんに、「出たいCMとかあったら教えてください」って言われて、益田は「塩サウナのCMに出たい」って言ったんですよ(笑)。塩サウナだけのCMなんてある?って話なんですけど。
益田 最近はEXITのりんたろー。とかレインボーの池田とか、美容男子芸人も増えましたけど、お尻は誰も手を出してないんで、そこは僕が攻めたいと思ってます。やっぱ、塩サウナはすげーぞっていうのを世間に広めたいなと。
――(笑)。益田さんと言えば、YouTubeで自腹の1万円を賭ける「スリル」というゲームでも話題になりましたけど、ギャンブルもお好きらしいですね。
益田 そうなんです。いま僕が一番語りたいのは、ギャンブルを趣味にすることの良さについてで。やっぱりギャンブルって、生活のためにやったらあんまり良くないなって思うんですよ。あくまでギャンブルは趣味。
そもそも趣味って割とお金を使うことが多いじゃないですか。例えば釣りだったら道具を用意して、ガソリン代に船を出してもらったりして、下手したら平気で1日2~3万かかる時もあるじゃないですか。でも、ギャンブルという趣味は、収支がプラスになる可能性があるんですよ。他の趣味でこんなことってありますか?(笑)
失敗しないコツは友達と一緒にやることで、パチンコだったら乗り打ちみたいな感じで、勝ちも負けも友達と等分することで、勝った時の喜びも倍だし、負けた時の悲しみも半分になる。ひとりでやると深追いするけど、友達とだとそれがない。
日によってはめっちゃ楽しんだのに12万とか増えてる時もあるし、マイナスの時もあるけど、それは趣味だから当然だし、馬の育成とかボートとか人件費とかに使われるわけですからね(笑)。
――これまでカゲヤマのおふたりの趣味の話をたくさん聞いてきましたけど、趣味がない人はどうしたらいいと思います?
タバやん。 僕はさっきも言ったように何でも結構広く浅くで、「なんかこれ面白そうだな」と思ったら、とりあえずその世界に足を踏み入れてみる。そこから深くハマれることもあるし、浅いまんまの時もあるけどそれはそれでいいと思っていて。ボーっとしてるくらいなら何にでも踏み込んでみる。それが一番ですね。
益田 たまに趣味がないなんて人の話も聞きますけど、何でも趣味にできると思うんですよ。仕事や恋愛が趣味だっていいし、恋愛が趣味だったらそこから自分や相手の服を好きになって、オシャレな店を巡るのを趣味にしてみたり、モテるために努力することを趣味にしてみたり。そうやって趣味の輪ってどんどん広げていけるんじゃないかなと思います。
――そして、そんな趣味人であるおふたりの主催ライブ「カゲヤマ見本市 知ることからはじめよう」が12月20日に控えています。MCはジャングルポケット太田さん、ゲストには同期の相席スタート山添さん、ダイタク、ネルソンズが登場するということですが、これはどんなライブなんですか?
タバやん。 実はこれ、KOCの決勝が決まった時に(吉本の)社員さんとルミネtheよしもとの方が決めてくださったライブで、僕らはもちろんネタもやるんですけど、僕らの1番近しい仲間たちを呼んで「カゲヤマのことを深掘りしてもらって、お客さんたちにもっと知ってもらおう」っていうライブらしいんですよね。
――じゃあ、コーナーみたいなものがいっぱいあるライブなんですかね?
益田 それが分からないんです(笑)。
タバやん。 吉本とルミネが打ってくれたイベントで、僕らも何も知らないんです(笑)。ただ、吉本が僕らを推してくれようとしていることと、何かとんでもないことが起こるってことは分かるので、僕らもめちゃくちゃ頑張るし、泥は塗れねえぞっていう気持ちだけはあります。
益田 自分らで単独ライブを企画するより変なプレッシャーがありますね。お客さんに「何をやるか分からないイベントだけど来てください!」っていうのも変な話ですけど、「カゲヤマってこういう人なんだ」っていうのを僕らもゲストの同期たちも全力で伝えてくれる、めっちゃいいライブになるはずです(笑)。ただゲストの同期は3組ともちゃんと厳しいので、下手したら山添とかにずっと怒られて終わる可能性もあります。
タバやん。 趣味がない人はお笑いを趣味にするのもいいよね。笑うのはストレス解消に一番いいらしいんで。
***
■カゲヤマ
タバやん。、益田康平からなる吉本興業所属のお笑いコンビ。中学の同級生同士で2008年結成、NSC東京校14期生。主にコントを演じる。キングオブコント2023では準優勝。コンビ名は、影山ヒロノブにインスパイアされて。
■カゲヤマ見本市 知ることからはじめよう
日時:2023年12月20日(水)開場19:00 開演19:30
会場:ルミネtheよしもと(東京都新宿区新宿3丁目38−2 ルミネ2 7F)
会場チケット料金:前売3,000円(全席指定)、当日3,500円(各税込)
配信チケット料金:2,000円(税込)
【出演】
カゲヤマ
MC:ジャングルポケット太田
ゲスト:相席スタート山添/ダイタク/ネルソンズ 他
週刊少年ジャンプのライター、音楽ナタリーの記者、タワーレコード「bounce」「TOWER PLUS」「Mikiki」の編集者などを経て、現在はフリーのライター・編集者。