仮面ライダーシリーズ最新作『仮面ライダーガッチャード』のオンエアを記念して、ファンが待ちに待ったスペシャルイシューが今年も発売! 10月16日に発売された『週刊プレイボーイ』44号では「歴代仮面ライダーヒロインが大集合!!」と題し、歴代の仮面ライダー女優たちがこぞって登場。水着グラビアの最新撮り下ろしやインタビューなど、それぞれの仮面ライダー愛がほとばしる内容となった。
その特集より歴代ヒロイン5名のインタビューを、週プレNEWSにて再掲載。今回は『仮面ライダーオーズ』(2010~2011年)で里中エリカを演じた有末麻祐子さんが登場。里中はライダーとグリード(怪人)との戦いを陰で操る鴻上ファウンデーション会長・鴻上光生の有能な秘書。高い戦闘能力を備えており、物語後半はライダーたちと共に戦った。今回の取材では、作品から得たものや当時の心境などを語ってくれた。
――最初に有末さんが『仮面ライダーオーズ』に出演した経緯を教えてください。
有末 事務所に勧められ、オーディションを受けました。オーディション当日は、その頃モデルを務めていた『Seventeen』の撮影現場から直行したんですけど、会場は見るからに清楚なコばかり。一方で私はメイクは濃いし格好もギャルみたいに派手で(笑)。「場違いだったな」と諦めて帰宅したんですけど、家に着いたらマネージャーさんから「決まったよ」って連絡が。見た目の派手な秘書役があって、それに私がハマったらしいんです。思わず耳を疑っちゃいました。
――それが里中エリカだったと。彼女はクール&頭脳明晰で、ライダーとグリード(怪人)との間で暗躍する、鴻上会長を補佐する役です。役作りはされました?
有末 お芝居の経験は少なかったし、監督からはうまくやらなくてもいいと言われたので、特別なことは何もしなかったです。それに21歳だとか無愛想だとか、役作りも何も最低限の設定もしかなかったですし。どちらかといえば衣装を着ていく中で、キャラクターが出来上がっていった感じですね。
――衣装、ですか。確かに里中はやたらと派手で目立ってましたね。
有末 監督が決めるんですけど、毎回、「え? これ、どこから持ってきたの?」と言いたくなるほど、バブリーなものばかりなんです(笑)。ピンクや紫のスーツとか大きなリボンとか。「(有末さんは)モデルなんだし、脚だそうよ」と言われ、フリフリのミニスカートもよく穿(は)きました。それらを通じ、里中はオシャレが好きなんだな、ちょっとセンスが微妙なのかな、ってことは......みたいにイメージを膨らませていきました。
――ある意味、モデルの有末さんにぴったりのキャラだったと。会長はケーキ作りが趣味ということで、物語序盤は会長の作ったケーキを食べるシーンが多かったですよね。
有末 そこは女のコっぽさを少し意識しました。毎回いろんなケーキが出たんですけど、あれはプロの方が作ってくれたもので本当においしいんです。私の撮影のある日はケーキ目当てで、スタッフさんがよく覗きにきましたね(笑)。
――物語が進むにつれて、里中はライダーたちのサポート役として戦闘シーンに加わるようになっていきます。しかもすごく高い戦闘能力を持っていたという。
有末 そう。私、ひとりだけ生身で戦うので「里中最強説」が出たりもして(笑)。そのきっかけになったのは、第20話(『赤いメダルと刑事と裏切り』)なんです。台本に「里中、バイクに乗って、戦闘シーンに登場」と書いてある! 読んだ瞬間、「え? 私、戦うの!?」ってびっくりしちゃって。共演者の誰かが「里中が戦いに行ったら、面白そうだよね」って雑談しているのを、たまたま監督が聞いたらしく、「じゃ、やってみようか」となったみたいなんですよね。しかも、その反響がすごくて、戦うシーンが増えていったらしいです。
――確かに第20話の有末さんは存在感がありましたよね。何しろ黒いレザー姿でバイクに乗って登場。銃を撃ちまくり、颯爽と去っていく。めちゃかっこよかったですから。
有末 その回の演出を担当した石田(秀範)監督から「アンジェリーナ・ジョリーを意識して」と言われて演じました(笑)。そういえば、あの格好をして、わざわざロケ地を探し撮影をしにいくコスプレイヤーも現れたりして。里中ファンが急激に増えました。
――すごい! 度々あったアクションは大変だったのでは?
有末 そうですね。もともと予想もしてませんでしたから。急きょスタントチームの皆さんに教えていただきましたけど、足蹴りとかすごく難しくて。「もう少し上がれば、下から撮れるよ」と言われるんですけど、体が硬いからうまくできなかったり。あと銃を撃ったり、手榴弾を投げる練習もしました。もちろん本番では何度も撮り直しをしたし。いつの間にか秘書ではなく、立派な女性戦士になっていましたね(笑)。
――そんな中で有末さんが特に印象に残っているエピソードは?
有末 最終話(『明日のメダルとパンツと掴む腕』)で戦闘に向かうシーンですね。第20話の黒レザーが評判だったので、赤レザーのボディスーツを作ってもらったんです。その姿でエスカレーターに乗って、さぁ敵と戦うぞ! って瞬間、お尻の縫い目がパーンと破れちゃって(笑)。ハンドメイドでだったんで縫製が甘かったんですよね。いやー、あれはもう本当に大事件でしたよ!!
――感動の最終話で、まさかそんな悲劇が起きていたとは! 一方で里中にはコメディシーンも多々ありましたよね。仮面ライダー通算1000回記念回(第27話『1000と映画と戦闘員』)では丸メガネにハッピという出で立ちで紙芝居屋さんを演じたり、ライダーの助太刀になぜかゴスロリファッションで現れたり(第39話『悪夢と監視カメラとアンクの逆襲』)。
有末 どちらも石田監督の回なんですけど、第20話を含め監督はやたら私に変なことをやらせたがるんです。なので石田組の撮影は台本を読む前から戦々恐々としていました(笑)。
当時は慣れないお仕事で疲れていたり、お芝居への葛藤もあって、監督と打ち合わせをしているときにポロっと泣いてしまったことがあったんです。そんな私を見て石田監督は私をいかすため、敢えて息抜きの演出を入れてくれたみたいなんです。おかげでのびのびと演じられました。石田監督には感謝してもしきれないです。
――そうだったんですね。有末さんにとって『オーズ』はどんな位置付けでしょう?
有末 やはり自分の中で大きな財産ですよね。一年間、ひとつの役と真剣に向き合うことなんて、そうないじゃないですか。しかも10年経った後も取材を受けるほどの素晴らしい作品で。貴重な体験をさせていただいたなと思っていますね。
――実際に『オーズ』に出演して学んだことはあります?
有末 なにより「チームワーク」ですよ。キャスト、スタッフ含め相当な人数が毎週動いていますけど、いい作品を作るには絶対に必要ですよね。そのために、壁を作らずに相手を受け入れ、素直に自分を出さないといけない。現在は女優業を離れ、モデルや洋服の仕事をしていますが、それを心がけ、毎日に生かしていますね。
――それでは最後の質問です。『仮面ライダーオーズ』のテーマは「欲望」で、その欲望から生まれたメダルをめぐるオーズとグリードたちのドラマが描かれました。有末さんご自身の欲望はなんでしょう?
有末 痩せたいです(笑)。『オーズ』をやっていた当時はまだ19歳で、どんなにケーキを食べてもまったく太らなかったんです。でも終わって12年が経ち、いい年にもなりましたから、少しでも食べ過ぎたらもう大変! これからもたまに『オーズ』を見て、是非自分を戒めたいですね!
●有末麻祐子(ありすえ・まゆこ)
1992年1月25日生まれ 埼玉県出身
○2007年ミスセブンティーンに選ばれ、専属モデルに。現在はファッションモデルとして活動するかたわら、アパレルブランド「MATURED(マチュアード)」を立ち上げ、ディレクションを手がけている。