20年以上前から仲間内で勝手に「HUNTER×HUNTER部」を作って「会長」を名乗るほど、冨樫作品への愛が強い野田クリスタル 20年以上前から仲間内で勝手に「HUNTER×HUNTER部」を作って「会長」を名乗るほど、冨樫作品への愛が強い野田クリスタル
週刊少年ジャンプ誌上において1990年から1994年まで連載され、コミックスの累計発行部数は5000万部を超える、冨樫義博作の不動の大人気マンガ『幽☆遊☆白書』。連載から約30年の時を経て、2023年12月14日からNetflixで実写ドラマとなって世界独占配信される。

伝説のマンガが実写ドラマ化されるのはファンにとっては嬉しいニュースだが、実写化となると賛否どちらの意見もつきもの。そこで、かねてより自身の番組やブログで「冨樫作品好き」を公言しているマヂカルラブリーの野田クリスタルに、実写ドラマの第1話を先行鑑賞していただき、忖度ヌキでアリかナシか、率直な感想をお話しいただく。

***

原作ではあまり描かれていない皿屋敷の町

――実写ドラマ『幽☆遊☆白書』の第1話をご覧いただきましたが、率直な感想はいかがでしたか?

野田 いやー、すごかったですね。マンガってどうしてもデフォルメされているので、描かなくていい部分も多いと思うんですけど、実写化となるとマンガでは省略される細部まで描く必要が出てきますよね。でも、これまでその細部が原作とかけ離れて描かれていて、実写ドラマで「冷めた」経験もあったんです。それで言うと今回の『幽☆遊☆白書』は真逆で、細部が描かれることで「あ、そうか!」「そうだよな」と思うことの連発でしたね。

――細部というと、具体的にはどういった点が気になりましたか?

野田 まず、町(皿屋敷市)ですね。マンガの『幽☆遊☆白書』を読んでる時って、正直、町の印象ってあんまりなかったですよね。でも今回の実写ドラマを観て、「ああ、『幽☆遊☆白書』って実はあの町あっての物語だったんだな」って気付いたんです。他の実写ドラマとは、まずそこから違いましたね。

今まで深く考えてなかったけど、あの町、ヤバいっすよね(笑)。あんなワケ分からん事件が次々起きる町、純粋に怖い。

実写ドラマ『幽☆遊☆白書』メイキング写真 実写ドラマ『幽☆遊☆白書』メイキング写真

――皿屋敷市は意外と下町の商店街のような雰囲気でした。

野田 下町っぽくもあり、異国感もあり。その中に雪村食堂(ヒロイン・雪村螢子の実家)があって、「町の良さげなラーメン屋」って感じが出ていて、あれに本当に感動しましたね。あそこに螢子(白石聖)が帰ってくる感じ。あの雰囲気で、「ああ、『幽☆遊☆白書』ってこの町が舞台だったんだな」って一気に引き込まれました。

原作ではちょっと希薄だったり飛び飛びにしか描かれていなかったりした穴が埋まっていくような感じもあって、『幽白』をより『幽白』にしてましたね。

――町に関連して、時代設定みたいなものはいかがでした? 昭和っぽい家電やヤンキー文化はあるけれど、幽助や桑原はリーゼントではなくなっています。

浦飯幽助(北村匠海) 浦飯幽助(北村匠海)

野田 幽助が高校生だったのはビックリしたんですけど(原作初登場時の幽助は中学2年生の14歳、実写版では高校2年生の17歳という設定)、最初にタバコを吸った時点で「はいはいはい、もう分からせに来てるな」って感じがして。「この時代ですよ」と。逆に「タバコ吸う高校生がいるんだから、いじめとかカツアゲもあって当然の時代か」とすんなり受け入れられますよね。

まあ、原作は14歳でタバコ吸ってパチンコ行ってんだもんなあ、さすがにダメですよね(笑)。もちろん17歳でもダメなんですけど。原作を読んでた当時は違和感なかったですけど、今考えるとやりすぎでしたね(笑)。

――テレビの地上波だとコンプラ的に引っかかりますよね。

野田 当時のマンガだから許された部分がありますよね。やっぱりNetflixなんで地上波では流せないような表現がたくさん出てくるんですけど、冒頭、度肝を抜かれたのが幽助がクルマに轢かれるシーン。あれは見事なツカミでした。本物の事故映像の動画も見たことがあるんですけど、あのまんま(笑)。全員あそこで一旦、食おうとしてたポテチを置くでしょうね。「あ、『幽白』ってそういう話だったよ。そりゃ死ぬか」って。

その直後に、死んだ幽助が救急車のバックドアを通り抜けますけど、ああいうちょっとしたシーンも嬉しい。「そうだそうだ、死んだら物体をすり抜けちゃうんだ。こういう話だったね」って一目で分かりますからね。

で、視聴者は大事なことに気が付くんです。「あ、『幽白』ってストーリーの最初からクライマックスだったんだな」って。主人公が死んで、しばらく死にっぱなしですからね。原作の幽助はしばらく死んだまま霊界探偵として活動しますけど、「じゃあこの実写ドラマでは幽助はどう描かれて、いつ復活するんだろう?」という疑問が起きますよね。そこも「なるほど、そうきたか」とすんなりと進行していくようになっていました。

――皿屋敷市の中央に「穴」があり、そこから来た「魔回虫」がきっかけとなったクルマの暴走で浦飯幽助が命を落とす、という原作とは少し違ったシーンから物語は始まります。

野田 そうなんです。そもそも幽助が死んだ理由から、原作にはない、後の伏線となるようなものになっているわけです。もし冨樫先生が『幽白』を描き直すとしたらそう描くんじゃないか?っていうくらい、辻褄が合うようにストーリーが整理されていて。たしかに、幽助がただ人助けをして死んだんじゃなく、そこに何か意味を持たせたいですもんね。

ということは、「そもそも現世に霊界探偵がいなかったから、魔回虫が人間界に入り込んだのかもしれない」ということに繋がるわけで、幽助の死の一因は霊界の不備にもあるかもしれない。そういう設定が追加されたことで、開始数分でストーリーがきれいに整理されていると分かるんです。

だから、「マンガの実写化って進んだな」って思ったくらいで。シーンを省略するというよりも、むしろ原作で描き切れてない部分をちゃんと付け足して描く。そういう意味でも、ファンも納得できるような、穴のないきれいな話になっていると思います。

実写ドラマ『幽☆遊☆白書』メイキング写真 実写ドラマ『幽☆遊☆白書』メイキング写真
――原作の序盤を踏襲しながらも、物語は魔回虫に憑りつかれた同級生と幽助が戦う展開になっていきます。

野田 魔回虫の描写が気持ち悪くて最高でしたね。他にもNetflixのドラマならではの、ちょっとグロいところもあるんですが、個人的には冨樫先生のああいうシーンはグロくあってほしかったのでよかったです。

魔回虫が寄生した同級生との戦いはオリジナルの展開ですけど、そこも原作と違っていてもすんなり入れたし、同級生のアクションが人間離れしていてスゴい! 幽助はまだただのヤンキーだから、人間にしては強いけどしょせん人間の戦い方なんですよ。その差が伝わってきたし、アクションに相当力が入ってることも伝わってきました。

もう1話目から暗黒武術大会ばりの戦いで(笑)、でも今後どんどん敵が強くなるわけじゃないですか。「アクション表現、どこまでいくんだろう?」「っていうか予算どうなってんだろう?」って気になりましたね(笑)。

一番クセになったキャラクターは「ぼたん」だという野田クリスタル 一番クセになったキャラクターは「ぼたん」だという野田クリスタル

北村匠海さんが幽助でよかった

――幽助たちキャラクターに関してはいかがでしたか?

野田 まずみなさん、「北村匠海さんがどれだけ幽助になるんだろう?」っていうのは気になってると思います。だって幽助って、もともとは町のみんなが関わりたがらないような不良だったわけじゃないですか。あんな怖いヤツを北村さんがどう演じるのかな?って思いますよね。

でも、もうまんま幽助! 不良の幽助に幼なじみの螢子が平気で話しかけて、それを螢子の友達が見てて引くシーンがあるんですけど、あそこで「幽助役が北村さんでよかったな」って思いましたね。

実写ドラマ『幽☆遊☆白書』メイキング写真 実写ドラマ『幽☆遊☆白書』メイキング写真
――リーゼント姿ではないけど、たしかに幽助でした。

野田 あれはなんでなんですかね。しかも、怖いヤツだけど根は優しいところがある。その振れ幅の大きさは、原作よりいいバランスだったかもしれないですね。原作の幽助は、周囲から怖がられている割には優しさが見えすぎていたと思うんです。でも北村さんの幽助はちゃんとずっとチンピラしていて。

特に北村さんの幽助は立ち居振る舞いがちゃんとヤンキーなんですよ。肩で風を切るような歩き方とか立ち方、ドアの開け方とかラーメンの食い方まで。その振る舞いに嘘がないからこそ、優しさが見えた時の振れ幅が大きくて、「あ、実は優しい一面もあるんだな」って思えるんですよね。

――幽助以外のキャラクターはどうでしたか?

野田 やっぱり桑原(上杉柊平)が最高に良かったですね。桑原も原作とは髪型が違うんですけど、真っすぐでバカで、地上波ではあり得ないような「もう死んじゃうよ」ってくらい何度殴られても立ち上がってて、やっぱり根性だけはピカイチ。めっちゃ桑原なんですよね。

桑原っていうキャラクターは殴られて悲壮感が出たらダメじゃないですか。でも、「もっと殴ってくださいよ」って言ってるかのような表情をするんです。あれがよかったですね。

あと幽助のお通夜で、誰よりも幽助に対して生き返ってほしいと思ってるシーンなんか、原作でも本当好きなシーンで。「桑原の活躍早く見てえな。俺コイツ応援するわ」って思わせてくれる、いいキャラクターでした。

桑原和真(上杉柊平) 桑原和真(上杉柊平)

――ぼたん(古川琴音)やコエンマ(町田啓太)はどうでしたか?

野田 そうですね。特にぼたんの印象は原作とやや違ったんですが、逆に言うとそれが霊界の雰囲気にも繋がっていて、途中からどんどんぼたんがクセになってきたんですよね。ぼたんにフランクさがあるのは原作通りなんですけど、原作のぼたんはもっと俗っぽいというか、人間っぽいじゃないですか。「あらやだよ」とか言ったり、すぐに制服着て学校に入ってきたり。それよりももっと妖艶さとか、つかみきれないミステリアスさもあって、霊界の雰囲気を醸し出してましたよね。

それと、霊界のシーンが原作にはない世界観で描かれていて。コエンマが死者の人生を巻物で振り返るシーンがありましたけど、まさか巻物をスワイプして読むとは思いませんでしたね(笑)。「たしかに、原作から時間が経った今ならこう表現するか」っていうメタ目線でも楽しめるつくりで。皿屋敷の町は割と連載当時に近いノスタルジックさがあって、霊界は最新技術を使ってる感じがあって、その対比もうまかったですね。

ぼたん(古川琴音) ぼたん(古川琴音)
コエンマ(町田啓太) コエンマ(町田啓太)

――そして、1話目からキーパーソンの左京(稲垣吾郎)が出てきます。

野田 1話目からストーリーに左京が絡んできて、しかもそれを稲垣吾郎さんが演じているというのはちょっとビックリですよね。『幽白』のストーリーというのは途中まで、ある意味で左京という男が起こした大きな事件について描かれているわけで、1話目から左京が出てくることで「あの壮大なストーリーがもう始まってるんだな」という予兆になっていて、そこも続きが気になるところでした。

あと、ファン歓喜の垂金権造も出てきましたね! あれは潰し甲斐のある顔でしたよ~(笑)。あんな垂金権造らしい人、どうやってキャスティングできたんだろう。誰がどう見ても垂金権造でしたよね。

左京(稲垣吾郎) 左京(稲垣吾郎)

――(笑)。さらに飛影(本郷奏多)や蔵馬(志尊淳)の姿も出てきて、今後の展開がますます気になるところで幕を閉じますが......そんな実写版『幽☆遊☆白書』の第1話に野田さんが点数をつけるとしたら?

野田 まだ1話目しか観てないので分からないですよ! でも1話めだけなら、100点満点で100点あげちゃいますね。もちろん、芸人でも何でも最初のツカミだけ面白いやつもいるんで、2話目以降は分からないですけど(笑)。でも、少なくとも1話目でここまでのクオリティーでやってくれるんなら、きっと最後まで面白いだろう、信頼できるだろうと思いました。

ストーリーにアレンジがあっても原作の穴を埋めるような展開で、むしろ原作以上のものになっていて変なところが全然なかったし、アクションシーンはワイヤー感がゼロで、それだけでもずっと楽しめるクオリティーでした。これは最後まで期待していいと思います。

実写ドラマ『幽☆遊☆白書』メイキング写真 実写ドラマ『幽☆遊☆白書』メイキング写真

――インタビュー後編では飛影や蔵馬、第1話には登場しなかった幻海や戸愚呂兄弟などのキャラクターについて。さらに野田さんと『幽☆遊☆白書』の出会いについてもお聞きします。


***

■野田クリスタル(のだ・クリスタル) 
お笑いコンビ・マヂカルラブリーのボケ担当。コンビでは「M-1グランプリ2020」チャンピオン。個人では「R-1ぐらんぷり2020」チャンピオン。お笑いのほか筋トレやゲーム制作にも力を入れている。ラジオやYouTube、書籍では『HUNTER×HUNTER』をはじめとする冨樫義博作品への愛をたびたび発言している。 

■Netflixシリーズ「幽☆遊☆白書」 
原作:冨樫義博「幽☆遊☆白書」(ジャンプ・コミックス刊) 
出演:北村匠海、志尊淳、本郷奏多、上杉柊平、
白石聖、古川琴音、見上愛、清水尋也、
町田啓太、梶芽衣子、滝藤賢一、
稲垣吾郎、綾野 剛 

監督:月川翔 
脚本:三嶋龍朗 
VFXスーパーバイザー:坂口亮(Scanline VFX) 
エグゼクティブ・プロデューサー:坂本和隆(Netflix) 
プロデューサー:森井輝 
制作協力:THE SEVEN 
制作プロダクション:ROBOT 
企画・製作:Netflix配信:12月14日(木)よりNetflixにて世界独占配信 

©Y.T.90-94

酒井優考

酒井優考さかい・まさたか

週刊少年ジャンプのライター、音楽ナタリーの記者、タワーレコード「bounce」「TOWER PLUS」「Mikiki」の編集者などを経て、現在はフリーのライター・編集者。

酒井優考の記事一覧