12月8日に公開された映画『市子』主演の杉咲花さん(中央)、その恋人役の若葉竜也さん(左)、戸田彬弘監督(右) 12月8日に公開された映画『市子』主演の杉咲花さん(中央)、その恋人役の若葉竜也さん(左)、戸田彬弘監督(右)
あらゆるメディアから日々、洪水のように流れてくる経済関連ニュース。その背景にはどんな狙い、どんな事情があるのか? 『週刊プレイボーイ』で連載中の「経済ニュースのバックヤード」では、調達・購買コンサルタントの坂口孝則氏が解説。得意のデータ収集・分析をもとに経済の今を解き明かす。今回は「2023年の私的ベストヒット」について。

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当たり年だった。外出の機会が増え、人と出会う頻度も戻った2023年の私的ベストヒットを紹介したい。

【音楽編】
『Superman』(Tempalay):アレンジとメロディ、リズムすべてが完璧なポップス。きわめて現代的。

『CHAOSBRINGERS』(the Art of Mankind):変態なリフ、異常な疾走、救いようのない悲しみ。日本メロディックデスメタルの最高峰。

『Perfect Night』(LE SSERAFIM):K-POPの完成形。パフォーマンスと容姿とサウンドが極限まで研ぎ澄まされている。米国と韓国はもはや世界的ムーブメントの供給源だ。

『Fought & Lost(feat. Brian May)』(Sam Ryder):オールドスタイルのロックが魅力を失ったわけではない。クイーンのギタリスト、ブライアン・メイの感動的なギターソロをフィーチャーした曲。美しすぎる。シンプルな旋律がこれほど感傷的とは。たぶん泣く。私は泣いた。

【書籍編】
『日本企業はなぜ「強み」を捨てるのか』(岩尾俊兵):横文字の経営トレンドに惑わされるなよ、と警告する本。日本企業の施策に自信をもてよ、と最高の勇気をくれる。

『能力はどのように遺伝するのか』(安藤寿康[じゅこう]):すべては遺伝であり、人は生まれいずる運命を求め続ける。今年イチの衝撃作。賛成でも反対でも、幼い子供がいる家庭では読めばきっと教育方針に影響を及ぼす。

『彼女が僕としたセックスは動画の中と完全に同じだった』(山下素童[しろどう]):著者がさまざまな酒場で出会った、狂った人たちの記録。ただただ面白い。章のタイトルが<一言目で「抱いていい?」は人生で初めてのことだった>。なんでこの人はこんなに文章が上手(うま)いんだろう。おそるべし。

【映画編】
『市子(いちこ)』:恋人が突然失踪し、しかも戸籍上存在しない人間であるとわかったら......。ネタバレ厳禁、観に行くしかない。今年は50本ほど映画館で観たが最高傑作。鑑賞後に動悸(どうき)が止まらなかった。ミステリーであり人間ドラマであり、社会的な問題ともつながる。

『BLUE GIANT』:マンガも最高だったけれど、映画も最高。なるほど、石若駿(しゅん)さんにドラムを叩かせて、最高の音楽を提供すれば「映画館に行かねばならない理由」ができるのか。劇場ビジネスの新たな形。

『BE:the ONE』:BE:FIRSTのライブを追ったドキュメンタリー映画。新宿の歌舞伎町タワーで観たが、なんという音質と音圧の良さ。その場にいなければ味わえない体験。ライブでもなく、自宅視聴でもない、新たな音楽経験を提供した一作だった。

【モノ編】
「Prime Charging Station」(Anker):簡単にいえば多数の電源差込口。PC、タブレット、スマホなど、これ一つでなんでも急速充電。あまりにも強力で手離せなくなった。

「BVD瞬暖GRID-TEC長袖」シリーズ:寒がりのみなさん、解決策が判明した。このロンTをまとめて購入すれば冬は乗り越えられそう。とにかく保温が最高。

『ELSA Speak』:英語学習アプリとして最強の出来。なによりAIとの対話が楽しすぎる。ハマると思う。

【最後に】読者のみなさま、お読みいただきありがとうございました。

坂口孝則

坂口孝則Takanori SAKAGUCHI

調達・購買コンサルタント。電機メーカー、自動車メーカー勤務を経て、製造業を中心としたコンサルティングを行なう。あらゆる分野で顕在化する「買い負け」という新たな経済問題を現場目線で描いた最新刊『買い負ける日本』(幻冬舎新書)が発売中!

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