人気小説家の燃え殻さんと爪切男さんが11月の『キン肉マン』連載をレビュー! 人気小説家の燃え殻さんと爪切男さんが11月の『キン肉マン』連載をレビュー!

『ボクたちはみんな大人になれなかった』の燃え殻『死にたい夜にかぎって』の爪切男の意外な共通点、それは『キン肉マン』!!

希代のストーリーテラーのふたりが11月分の『キン肉マン』連載を甘く、そして辛く批評。

―今回の「先月の肉トーク」テーマ―

『キン肉マン』ディープオブマッスル!! 特別編「ステカセキング&ス二ゲーター外伝」episode4 (11月6日更新分)
『キン肉マン』ディープオブマッスル!! 特別編「ステカセキング&ス二ゲーター外伝」episode5(11月20日更新分)
第433話 時間に心服する男たち!!の巻(11月27日更新分)

あらすじ
『キン肉マン』連載がお休みとなってしまったが、急きょス二ゲーターステカセキングの師弟コンビの成長を描いた『キン肉マン』ディープオブマッスル!!  特別編「ステカセキング&ス二ゲーター外伝」の短期連載が始まった。理不尽なまでの師匠・ス二ゲーターのしごきに耐えるステカセキングとの師弟愛が話題を呼んだ。11月最終週には、連載へ復帰。エル・ドミノス(ドミネーター&エル・カイト組)に対し、回復させる前に倒しきる作戦に出たエグゾセミサイルズ(キン肉マンゼブラ&マリキータマン組)の闘いは最終局面に!

燃え殻(以下、) 今回のテーマは、まず「ディープオブマッスル!! 特別編」のエピソード4と5。ステカセキングが自分の弱さを認めたことで、本当にマンモスマンに変身できて、スニゲーターと引き分けるほと強くなれるという、泣ける展開だったよね。爪切男(以下、) アツい展開でしたよね。会社でも政治家でも、役職が上のほうであればあるほど、自分の弱さ、悪いところを素直に認めないんですよね。プライドが邪魔するんだろうけど、ステカセキングを見習ってほしい。 うん。あと、ステカセキング、一応悪魔超人じゃない? なのに、ここまでコミカルに涙を流しながら、自分の弱さを認めるのがね。

 (笑)。確かにね。 でも、読者もステカセキングのキャラクターを熟知しているから、悪魔超人という設定にこだわらなくてもいいわけだよね。今のプロレスラーが設定とは別に、素の自分が今思っていることを、SNSとかで発言できる、っていうふうに、重層的になってるのと同じで。デスペさん(エル・デスペラード)がゲーム好き、みたいなのって、昔の上田馬之助だったら絶対ナシじゃない? そりゃそうだ。

 とはいえ今は、ファンはそういう面でデスペさんの人間性を好きになっていながら、試合でデスペさんがヒールっぽい行動をしたら、ちゃんとブーイングする。それって、キャラクターを完全に理解しているからこそでしょ。『キン肉マン』もそうで、「これくらいわかるよね?」という、読者と共有できている範囲が、ほかのマンガ作品よりも広い気がする。SNSとかで、今の『キン肉マン』の感想を見ても、冷ややかな人っていないじゃない? うん、批判的であったとしても、冷笑ではない。熱い。 そう、冷笑がない。それって、ものを作る上で、すごくうらやましい状態だなと思う。みんな長年『キン肉マン』を読みこんできているから、お互い信頼関係ができあがっている。今って、信頼関係がないまま、ディスったりするじゃない? まあ、SNSの大半はそうですよね。 というのとは対極の、他に類を見ないほど、読者との関係が幸福な作品なんだと思う。 ファンがあったかいですよね。物語の展開が、自分の期待とは違うほうに行っても、それはそれで受け入れる。 読者対作品じゃなくて、僕らも作品に参加してる気持ちになってるんじゃないかな。たとえば、今でも連載の最後のページに載ってる「今週の採用超人」とか、読者の人たちを参加させていく感じが。 それを決してやめない、っていうのがね。 そうそう。これが1ページあることによって......どの超人も、僕ら読者の代表が生み出したものじゃない? そうすると、参加している気持ちになるんだよね、採用されたことないのに。作者と編集者が作ったものを、買って読んでいる感じじゃなくてさ。 参加している気持ちにして読者を巻き込んでいく。その力は、ほかの作品にはない。 そうなんだよね。だから「超人募集」の1ページにはすごく意味がある。

 これまでの採用超人のストックを考えると、もうやめてもいいでしょうしね。

 でも、そういう話じゃないんだよね。あの1ページ、大事だよ。ベビーフェイスもヒールも、僕らがアイデアを出し合っている僕らのマンガなんだから、毎回追わないとしょうがないだろ、という。

 読者が冷笑しないのはそこだろうな。

 そういう構造を作ったのがまず発明だし、その上で、それが成立するだけの物語を描き続けているのがすごい。で、「ディープオブマッスル!! 特別編」が終わって、本編に戻った433話だけど。

 エル・ドミノスのバックドラフトフットボムで、ゼブラとマリキータマンがダウン。そしたら倒れたまま手をつないで、マリキータマンのドット柄がゼブラ柄に変化していく。もうすっかり、ふたりだけの世界に入ってる(笑)。ゼブラは「フフフフ...」、マリキータマンは「キャミキャミキャミ」って笑い合って。

11月27日に『キン肉マン』第433話へ復帰した 11月27日に『キン肉マン』第433話へ復帰した

 確かにこれ、BL感あるよね。

 でも今回の闘いで、またゼブラのことを好きになりましたよね、我々は。

 ゼブラの性格がわかったね。

 そう、いいヤツ。熱いんだよな、一言一言が心を溶かすっていうか。

 爪さん、マリキータマン好きじゃない? 俺は好きというほどじゃなかったけど、魅力的な超人であることが、ここまで読んでわかった。

 「俺たちはゼブラとマリポーサのタッグが観たいんだ!」って言う人たちもいたけど。

 俺もそうだよ。

 でもこの闘いで、そういう人たちも黙らせましたよね。ゆでたまご先生、そこまで見越した上で、このタッグを描いたのかな。

 ゼブラをマリキータマンと組ませて、「いける!」っていう確信があって描いたとしたら、すごいよなあ。爪さんだったら思う?

 思わないですよ!

 俺も。やっぱりマリポーサがいいし、マリポーサじゃなかったとしても、ほかにも超人はいっぱいいるんだから。たとえ安易でも、確実に興行が盛り上がりそうな......全日本プロレスが、スタン・ハンセンとブルーザー・ブロディのタッグを出場させた時みたいなね。

 (笑)。ミラクルパワーコンビね。

 でも、ゼブラとマリキータマンを組ませるっていうのは、難易度高いよね。

 だからゆでたまご先生、プロレスで言うマッチメーカーとして、一流なんですよ。

 そう。ファンが考えると「このふたりを揃えたい」っていうオールスター戦的発想になって、シリーズという考え方ができないんだよね。一発の花火しか打ち上げられない。

 ゼブラ、前にマリキータマンに負けて、価値が下がってしまった感じがあったけど。このタッグで大復活ですもんね。

 その負けた相手と組んで、輝くことでね。

 これだけ長く描いていると、もっと安パイなマッチメイクになりそうなもんだけど。じゃなくて、ファンが本当に喜ぶような。

 そのサービスがすごい。そこの部分では、『スター・ウォーズ』を超えていると思う。

 だから、まだ闘ってるんですよね、現役で。オール阪神・巨人が今でも劇場で新ネタをおろしてるみたいな。爆笑問題もそうだし。

 で、今回で2023年も終わりだから......今年は単行本の81~83巻が出て──。

 最初は「時間超人なんて出しちゃって大丈夫?」と思ったけど、読めば読むほどどんどん楽しみになっていく。

 で、振り返ると、ロビンマスクがランペイジマンに勝ち、キン肉マンがマグニフィセントに勝ち、バッファローマンがザ・ワンに敗れて、超神側の軍門に下った。

 そして「刻(とき)の神」が生み出した時間超人との闘いが始まって。ケンダマンが、ドミネーターとエル・カイトのエル・ドミノスに止めを刺されるところを、マリポーサとゼブラが助けに入る。そのタッグでエル・ドミノスと闘うのかと思ったら、マリキータマンが現れてゼブラとタッグを組むことを申し出て、現在の闘いに至る、という。

 その過程で、ジェロニモがカピラリア光線照射砲の一部と化して仮死状態になったり、ロビンマスクとアシュラマンもザ・ワンの側に付いて去ったり。

 にしても、この対談、毎月一回やっていて、今回で29回じゃないですか。

 よくこんなにしゃべることがあるよね。

 別の週刊連載のマンガで、毎週読んで、月に一回語り合ってくれと言われても──。

 無理!

 さっき言ったように、『キン肉マン』が挑戦を続けているからだと思いますね。もう挑戦をやめていたり、思い出に寄りかかっていたりするマンガを読んで語れって言われると、厳しい。それだと思い出話しかできないし。

 『キン肉マン』で、僕らが夢中になっているのは、現在進行形の闘いだもんね。

 バンドの再結成もそうじゃないですか。思い出に寄りかかっているバンドもいるし、ニューアルバムを作ってライブで発表することをやめないバンドもいる。昔のものと新しいもののバランスの上で、毎回楽しいライブを見せてくれる。となると、ユニコーンぐらいしか思い浮かばないな。

 それをやった上で、エンタメであることを目指す、そこはあきらめない、というのは、ほんと重要だと思う。一部の好事家(こうずか)を狙うという......長くやっていると、多くの創作者はそこに行きがちだけど、『キン肉マン』の場合は新しいファンを開拓したい、っていう気持ちが常にある。

 だから、あらゆる創作の理想形なんじゃないかな。

 来年はアニメの放送も待ってるしね。声優、どうなるんだろうなあ......。

 僕は主題歌もそうなんですが、キャラクターソングが気になります。前の『キン肉マン』のアニメは、神谷明さんが歌ってたりもする各超人の歌があったじゃないですか。

 あ、そうか。今のアニメって、あんまりそういうことはないよね。

 でも『キン肉マン』はそうであってほしい! というのが、僕の希望です。

燃え殻(MOEGARA)
1973年生まれ、神奈川県出身。働きながら始めたツイッターでの発言に注目が集まり、作家デビュー。最新著は8月2日発売予定の『ブルー ハワイ』(新潮社)。ドラマ『あなたに聴かせたい歌があるんだ』(漫画:おかざき真里/扶桑社)はHuluで配信中。ドラマ『すべて忘れてしまうから』(主演:阿部寛)が10月13日(金)深夜24時52分より、テレビ東京「ドラマ25」枠にて放送中。出演中のラジオ番組 『BEFORE DAWN』(J-WAVE、毎週火曜26:00~27:00)もチェック

爪切男(TSUMEKIRIO)
1979年生まれ、香川県出身。2018年『死にたい夜にかぎって』(扶桑社)で小説家デビュー。2020年、同作が賀来賢人主演でドラマ化。風俗嬢との公私ない交ぜの触れ合いの様子をつづった『週刊SPA!』連載コラムを一冊にまとめた『きょうも延長ナリ』(扶桑社)が発売中。集英社発のWebサイト『よみタイ』で、コラム『午前三時の化粧水』を連載中