『キン肉マン』大好き漫画家のおぎぬまXが、コミックス28巻を熱く語る『キン肉マン』大好き漫画家のおぎぬまXが、コミックス28巻を熱く語る

あのラーメンマンも復帰合流を果たし、ますます激化していく対ゼブラ・チーム戦。その中で敵の中堅バイクマンが語る、キン肉マンたちの歩む"地獄の熱闘ロード"とは...!?

●『キン肉マン』第28巻

レビュー投稿者名 おぎぬまX
★★★★★ 星5つ中の5

"本物の"夢の闘いがここにはずっとある!

前巻ラストでモーターマンを秒殺して、盛大に完全復活をアピールしたラーメンマン。冒頭、敵将ゼブラをして「まさしく悪魔の強さだ」と言わしめたこともまた、彼がスピンオフ作『闘将!!拉麵男』で主役を任されたほどの"特別な超人"であることを感じさせる、ニクい演出でした。

その余勢を駆って臨む中堅バイクマンとの復帰二戦目。この試合、改めて僕がすごいと思ったのは...大半の読者は麻痺してもはや気づかないかもしれませんが、普通に考えたら絶対に成立しようがない闘いをしてるんです。なぜならこの試合、中国拳法とオートバイ、本気でぶつかったらどっちが強いか、という闘いなんですから...。

言ってしまえばこれは異種格闘技戦という枠すら超えた、本来比べようのない全く別のカテゴリー同士がリング上で無理やり勝敗を決めようという、あまりに斬新すぎる試みなわけです。その先には一体、雌雄(しゆう)を決するどんな展開が待ち受けているのか...全く先が読めないけれど、だからこそこれはアツイ! 漫画としてのロマン満載でアツすぎる!

そんな空想の極みのようなことをずっとやってきた作品が『キン肉マン』なわけで、それが漫画としていかに真っ当で偉大なことか。僕は声を大にして、皆さんにその素晴らしさに気づいていただきたいと強く思う次第であります!

そうして始まった新たな試合は、空から降ってきた球体の金網がリングを覆う"サンダードーム・デスマッチ"。金網といえば、ラーメンマンにとっては因縁のウォーズマン戦を想起させるトラウマ要素。当のラーメンマンも最初は怖がるそぶりを見せていました。しかし実は、それは相手を油断させるためのフェイク演技。弱みはとっくに克服しており、ワナにハメたと思った相手を、逆にハメ返す逆精神攻撃をラーメンマンは仕掛けていきます。

これで精神面での闘いはむしろ優勢、このまま肉体面でも完全勝利に突き進むかと思いきや、そこに立ちはだかるのはサンダードーム・デスマッチ第二の恐怖。この特殊な金網自体が実はバイクマンの走行路であり、オートバイ超人としての性能を余すことなく発揮できる練りに練られた仕掛けだったのです!

形勢逆転、ラーメンマンは一気に不利に。水を得た魚のごとく暴走するバイクマンに轢かれ弾かれ、さすがの中国拳法の達人もオートバイの機動力には敵わぬかというところで力尽きて倒れるのですが...そこで彼を救ったのがまさかの展開、仲間の流す涙でした。

キン肉マンたちチームメイトや感動した観客の流す涙が雨となり、気を失いかけたラーメンマンの魂を呼び覚ましたのです。さらにその雨はバイクマンの走行路である金網さえも悪路に変えて、スリップしたバイクマンのスキをとらえたラーメンマンは新技・九龍城落地(ガウロンセンドロップ)で一気に大逆転!

これにて決着...でも十分な名勝負だったと思います。しかし彼はまだ倒れません。脇に転がるモーターマンの死体から電気を補充してパワー復活。実はそのモーターマン自体が、こうしてバイクマンを復活させるための電源にすぎなかったと豪語します。なんという強豪エピソード!

ここからは両者、まさに死力を尽くした最後の大攻防。結果、本日二発目の九龍城落地を決めたラーメンマンが薄氷の勝利を収めますが、ラーメンマンをここまで苦戦させたバイクマンもまた、間違いなく歴代屈指の強豪でした。最後まで手に汗握る、どちらの格も貶(おとし)めない素晴らしい一戦だったと思います。

城と城の空中合体にあふれるゆでイズム

さて、その決着直後"地獄の熱闘ロード"というバイクマンの残したワクワクする造語と共に登場するのが究極の新アイテム"超人予言書"です。何せそこに書かれてあることは必ず実現するというのですから、なかなかに厄介な代物です。そしてさっそく、そこに書かれたとんでもないことが実現します。

「鯱(しゃち)が白鷺(しらさぎ)を銜(くわ)える時 強者 関の原に集う」

その時、ある観客が窓の外を見てこう叫びました。

「ああ、名古屋城が空を飛んでるよ!!」「なにィ...!?」

これはすごい漫画ですよ。僕は常々言い続けていることですが、単に生き残りの全軍が一ヵ所に集うという状況を作りたいだけなら、もっと簡単なやり方はいくらでもあります。しかし、そこに全力を注いで、僕らを楽しませてくれるのがゆでたまご先生の真骨頂。まさか、名古屋城と姫路城がゴゴゴと空中浮遊して激しい衝突の末に合体した挙句、関ケ原に着陸するだなんて...ここまで誰がやりますか?

こうして集った運命の王子たちが睨(にら)みあうシーンはしかし、それまでのスペクタクルとはまた別の意味で迫力満点です。

そんな中で、とうとうリングに上がるキン肉マン。しかも、ロビンマスクと組んでのタッグマッチというのもまた最高です。このふたりと相対するパルテノンの発した「超人オリンピックチャンピオンコンビか、相手にとって不足はねえ!」の言葉もまた、僕らのテンションを後押し爆上げしてくれるようでたまりません。

次巻へとまたがるこの大勝負ですが、この巻の中でぜひ触れておきたい一幕を挙げるとすればやはり、キン肉マンとロビンマスクによる日英クロス・ボンバーでしょうか。実はこの直前、ゆでたまご嶋田先生のご入院による3ヵ月休載というアクシデントがあったのですが、そのブランクを吹き飛ばすまさにフルスロットルのご褒美シーン!

しかし、ゼブラも負けてはいません。全身を黒に染めて、それまでのクリーン一徹から打って変わって残虐非道なファイターに大変身。反則技のオンパレードで人格豹変の恐怖を見せつけ、混迷を深めるタッグ戦は次巻へと続きます!

キン肉マン4コマ

こんな見どころにも注目!

メビュースの輪についてキン肉マンが解説をしてくれるこのシーン。さも、みんなに馴染みの深いエピソードのように話してますけど、「あの曲面にゴキブリをはわせると内側をはっていたゴキブリが一周する間に」って、こんなあるある風に話してるのに誰ひとり共感できないあるある聞いたことない! アリやテントウムシをはわせるというのならまだ理解できるんですが...少なくとも僕の知ってる世界でゴキブリ使ってそんな恐ろしい遊びしてる人は見たことないです。どんな遊び?