2023年に再放送された『化物語』 ©西尾維新 2023年に再放送された『化物語』 ©西尾維新
年末年始はまとまった時間のとれる貴重なチャンス。この機会に普段はなかなか手が出しづらいシリーズ作品を一気見するというのも、大人の過ごし方のひとつだろう。そこで、「今、見るべき"超長編"の名作シリーズ」をプレゼンしてもらった! 今回おすすめ作品を紹介してくれたのは、アニメについて書き続けて約20年、オールジャンル対応の専門家・前田久さんだ。 
※各シリーズの総再生時間と話数・作数は、2023年12月12日時点で劇場を除くレンタルサービス・サブスクリプションサービス等でアクセス可能なものの集計です(編集部調べ)

★前衛的な映像美とともに青春を取り戻せ!

■〈物語〉シリーズ(100話+劇場版3作・約57時間)*総集編除く

『化物語』 ©西尾維新/講談社・アニプレックス・シャフト 『化物語』 ©西尾維新/講談社・アニプレックス・シャフト
~基本情報~ 
原作は作家・西尾維新の小説群。吸血鬼の力を手に入れた主人公・阿良々木暦(あららぎこよみ)と、彼と出会った少女たちの、「怪異」にまつわる物語。すべてのシリーズのタイトルが『○物語』という形式になっている ○U-NEXT、dアニメストアなどで配信中

とにかくかわいい女のコがたくさん登場します! また、エロスとバイオレンスに満ちた映像美や、原作の西尾維新さんらしい独特のせりふ回しも特徴なのですが、そうしたひねった表現で描かれているのは、直球の青春物語です。このように、映像と物語にギャップがあり、しかもその両方とも非常に完成度が高いことが、本シリーズの大きな魅力です。

全部で100話近くありますが、一気に鑑賞することで、青春を駆け抜けていく感覚になれます。新房昭之監督×スタジオシャフトの作品は、トリッキーなレイアウト、大胆な色使いのアバンギャルドな映像美でよく知られており、本シリーズは『魔法少女まどか☆マギカ』と並ぶ代表作です。

2024年1月12日(金)から新作映画『傷物語-こよみヴァンプ-』が公開予定ですが、こちらを万全に楽しめるので、今が一気見のベストタイミングですね。鑑賞する順番としては、放送順がオススメです。ただ、作中で好きになった女のコがいれば、そのコがメインで登場する作品を先に見てみるのもいいかもしれません。

オープニングやエンディングの演出も凝っていて、物語の展開に応じて映像が切り替わるなどの仕掛けがあるので、スキップせずに見たほうがいいですね。

★意外にも社会派! ハマる大人が急増中!?

■『プリキュア』シリーズ(テレビ版963話+劇場版32作・約518時間)

~基本情報~ 
日本を舞台に、ごく普通の少女たちが妖精に助けを求められ、伝説の戦士「プリキュア」へと変身し、異世界の悪の組織と戦っていく。シリーズ1作目は『ふたりはプリキュア』(2004~05年)。プリキュアとは、「プリティ(かわいい)」と「キュア(癒やし)」をかけ合わせた造語。各プリキュアは基本的に「キュア○○」という名前で呼ばれる。ちなみに、初代はキュアブラックとキュアホワイト。これまでに70人以上のプリキュアが登場している。作品によっては男性や成人女性もプリキュアとなり、話題を呼んでいる ○U-NEXT、dアニメストアなどで配信中

子供向け作品なので刺激が控えめで、年末年始にゆったり見るにはもってこいです。でも、気がついたら深みに入ってしまう、奥行きのある作品です。最近は「強さがすべてではない」という価値観が打ち出されており、競争社会を生き抜く大人にも響きます。

また、プリキュアは社会における女性のあり方や、多様性について描くなど、現代性を取り入れてきました。本シリーズを見ることで、社会の変化や世間の空気感をとらえることもできます。この点で、「アメリカにディズニーがあるなら、日本にはプリキュアがある!」と胸を張れるでしょう。

また、今年は大人向けの新作スピンオフ『オトナプリキュア』が話題になりました。さらに、シリーズ開始から20周年を迎える来年は13作目『魔法つかいプリキュア!』(2016年)の続編が深夜帯で放送される予定で、注目されています。今のうちに前作を見ておけば、さらに楽しめるでしょう。

プリキュアシリーズは、原作がないまま、毎年のようにキャラクターを入れ替えて、新しいコンセプトを出してきました。娯楽が多様化し、ゼロベースで長期コンテンツを作ることが難しい時代にあって、『プリキュア』はビジネスモデルとしても孤高の存在です。

★不朽にして至高のSF超大作! 見比べで楽しさ倍増!

■『銀河英雄伝説』シリーズ(OVA162話+劇場版3作・約73時間)

『銀河英雄伝説』 ©田中芳樹・徳間書店・徳間ジャパンコミュニケーションズ・らいとすたっふ・サントリー ©加藤直之 『銀河英雄伝説』 ©田中芳樹・徳間書店・徳間ジャパンコミュニケーションズ・らいとすたっふ・サントリー ©加藤直之
~基本情報~ 
遠未来の銀河系を舞台にした壮大なスペースオペラ。原作は田中芳樹による同名の小説群。1988~2000年に本伝~外伝(OVA)、劇場版3作が公開され、2018年からは「新アニメプロジェクト(銀河英雄伝説Die Neue These)」が始動 ○Amazon Prime Video、dアニメストアなどで配信中

説明不要の名作です。原作小説は、日本のSFを代表する作品です。古典としての強度があり、いつ鑑賞しても半永久的に社会への問題意識を喚起されます。時として衆愚に導かれる民主主義(自由惑星同盟)と、賢い皇帝による独裁制(銀河帝国)のどちらが正しいのか、どちらが人間のあり方として望ましいのかという普遍的な問いを、魅力的な登場人物たちの群像劇で描いています。

アニメ作品として特徴的なのは、昭和を代表する名声優が勢ぞろいしていて、"銀河声優伝説"なんて言われているくらいです。伝説的な声優陣の豪華な競演が楽しめることがアニメ版の魅力のひとつです。

映像ももちろん魅力的なのですが、基本的には会話劇なので、年末年始にボイスドラマ的に見ることもできます。しかも、何周見ても飽きないです! 

先日、新アニメプロジェクト(銀河英雄伝説 Die Neue These)第5期の制作が発表されましたが、本伝を見ておくことで、現行のアニメとの違いを楽しめます。新旧の声優さんによって解釈が違うところもあるし、逆に亡くなられた伝説の声優さんの演技が意識されている場面もあったりします。見比べることで、両作品のおもしろさが何倍にも膨らみますよ。

●前田久(Hisashi MAEDA) 

アニメライター。通称「前Q」。大学在学中から『月刊ニュータイプ』(KADOKAWA)などのアニメ雑誌で執筆活動を開始、そのまま現在に至る。主な執筆ジャンルはアニメ。アニメソング、マンガ関連の仕事も行なう