「実はイタリアンのお店で働いていたことがあるんです。でも3ヵ月で辞めました」というリュウジ 「実はイタリアンのお店で働いていたことがあるんです。でも3ヵ月で辞めました」というリュウジ

ひろゆきがゲストとディープ討論する『週刊プレイボーイ』の連載「この件について」が『週プレNEWS』でもスタート。今回からのゲストは料理研究家のリュウジさんです。そこで、料理人ではなく料理研究家になった理由、なぜ簡単な料理ばかり紹介するのかを聞きました。すると、そこにはあるこだわりがあったのです。

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ひろゆき(以下、ひろ) 今回から料理研究家のリュウジさんをお招きしています。「めちゃめちゃバズっていて、フォロワーがものすごい料理研究家」というイメージは前からあったんですが、お話するのは初めてですよね。

リュウジ(以下、リュウ) そうですね。よろしくお願いします。

ひろ 早速ですが、リュウジさんってなんで料理研究家になったんですか?

リュウ 完全に成り行きです(笑)。料理が好きでレシピをネットに投稿していたらバズって、フォロワーが増えた。で、「自分って料理研究家っぽいな」と思って、勝手に名乗り始めたんです。

ひろ じゃあ、昔からの夢だったとかではないんですか?

リュウ そんな高尚なものではありませんよ(笑)。

ひろ あはは(笑)。料理人は目指さなかったんですか?

リュウ 実はイタリアンのお店で働いていたことがあるんです。でも3ヵ月で辞めちゃいました。

ひろ だいぶ早いですね。辞めた理由は?

リュウ 大きな見落としをしていたんです。飲食店って、当たり前ですけど毎日同じものを作るじゃないですか。僕はピザの担当で、マルゲリータを黙々と焼き続ける日々だったんです。で「自分はいったい何をしているんだろう?」と。

ひろ 料理が単純作業になったわけですね。

リュウ そのとき、僕が将来的に独立したとしても、同じような未来が待っているんじゃないかと不安になりました。パスタなのかビーフシチューなのかの違いはあるにしろ、淡々と料理を作り続けることになる。それで「自分には料理人は無理だ」と思ったんです。

ひろ そう考えると料理人ってすごいんすね。

リュウ だから、めちゃめちゃ尊敬しています。僕みたいな料理研究家って1日にひと皿魂を込めればレシピは完成します。でも、料理人は、例えば毎日100皿に魂を込めなきゃいけない。僕にはとうていできません。

ひろ 単価を上げて、ひと皿ひと皿こだわるお店のシェフという方向性は考えなかったんですか?

リュウ 実はもうひとつ辞めた理由があるんですよ。当時働いていたレストランは地元では超有名で、めちゃめちゃ繁盛していました。だから「食材や工程にどれだけこだわっているんだろう」と期待して入ったら、粉末のコンソメスープを使っていたんです。それで、当時の僕は「こんなのイタリアンじゃねーよ」と思った。

ひろ ファミレスとかならまだしも、超有名イタリアンなら驚きますよね。

リュウ 「楽をして粉末のコンソメを使っているような店がなんで繁盛しているんだ」と納得できなかったんです。でも、「じゃあ、自分がこだわったレシピでお店をやったら、このくらいたくさんのお客さんに来てもらえるのか?」と考えたら、きっと来ないだろうと。

ひろ 粉末のコンソメを使わず、こだわってコンソメを作って同じくらいたくさんのお客さんを呼ぶことができるのか、と。

リュウ そうです。だから「自分は頑張ってもこの店を超えられない」と思いました。で、負けを認めた瞬間に方向転換ができたんです。「自分のこだわりではなく、人に喜んでもらうことのほうが大事なんじゃないか。お客さんが喜んで食べてくれればそれでいいじゃん」と思うようになりました。

ひろ そこから料理やレシピはどう変わっていったんですか?

リュウ そもそも料理には「趣味の料理」と「生活の料理」があると思います。趣味の料理というのは、例えばスパイスから作るカレーです。一方の生活の料理というのは、30分で作れるめちゃめちゃおいしいカレー。僕が得意なのは生活の料理なので、そこで戦おうと思いました。

ひろ 生活の料理を紹介してると「リュウジのレシピは簡単すぎる」みたいな批判はありませんか?

リュウ めちゃめちゃあります。

ひろ そこは割り切っているわけですね。

リュウ 僕の存在理由は〝料理の入り口〟だと思っているんです。僕のレシピをきっかけに料理をするようになって、興味が湧いてきたら一流のシェフのレシピに挑戦してほしい。でも、そうやって料理にハマっていった人たちは、最終的に僕の料理に戻ってくるパターンが多いんですよ。

ひろ どういうことですか。

リュウ 例えば、わざわざタイからライムリーフの葉を冷凍で取り寄せて、友達に料理を振舞ったことがあるんですけど、そのこだわりを伝えても「ふーん」という反応だし、味わうどころか秒で完食されました(笑)。

ひろ 作り甲斐ないっすね(笑)。

リュウ でも、余り物でササッとパスタを作ったら「これ最高だよ!」と言ってくれた。ライムリーフのこだわりには全然気づかなかった友達が、です。

ひろ まあ、おなかがすいているときに2時間かけて作られるより、15分で出してもらったほうが喜ぶ人は多いですよね。

リュウ そうなんです。そんな感じで一周回って僕のレシピに戻ってきてくれる人はけっこういます。

ひろ 一周回って「最終的には、大衆に合わせるのが正解」というのが結論になるわけですね。

リュウ 僕は「2割のグルメな人に刺さるレシピより、8割の大衆に刺さるレシピを伝えたい」と考えているんですよ。

ひろ 大衆にウケる感覚ってどうやって手に入れるんですか?

リュウ コンビニやファミレス、チェーン店の飯を食いまくります。ヒット商品を片っ端から食べたら、値段的にも味つけ的にもスゴく考えて作られていて「これは食べたくなる」と納得の味だったんですよ。だから、僕のレシピの味つけもそっちに寄せています。

ひろ そりゃ、バズるわけだ。んで、これまでの料理研究家って、連載やレシピ本だけではなかなか食っていけないから、調理器具のプロデュースとかで稼いでいたわけじゃないですか。その点、リュウジさんがすごいのは、料理研究家としての新しいビジネスモデルを成立させたことですよね。

リュウ そう言ってもらえるのはうれしいです。でも、僕は料理研究家というよりユーチューバーで食べている感覚があるんです。で、そこは悩んでいる部分でもあって、僕に料理の腕があるから仕事を頼むというより、ユーチューブとかの発信力があるから仕事が来るんだ、と思うと複雑な気持ちもあります。

ひろ そこは気になるんですね。

リュウ 一応、料理研究家としてのプライドが少し残っているんですよ。9割は魂を売ったとしても、1割のこだわりだけはどうしても守りたい。

ひろ そのプライドを死守していることが、リュウジさんが人気であり続ける理由なんでしょうね。

リュウ この1割のこだわりすらなくなったら、料理研究家のリュウジは死んだも同然だと思っています。

ひろ リュウジさんの人気の秘密が垣間見えた気がしました。この後の対談もよろしくお願いします。

リュウ こちらこそ、よろしくお願いします。

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■西村博之(Hiroyuki NISHIMURA) 
元『2ちゃんねる』管理人。近著に『生か、死か、お金か』(共著、集英社インターナショナル)など 

■リュウジ(RYUJI) 
1986年生まれ、千葉県出身。料理研究家。近著に『虚無レシピ』(サンクチュアリ出版)など。公式X【@ore825】、公式Instagram【@ryuji_foodlabo】、公式YouTubeチャンネル『料理研究家リュウジのバズレシピ』

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