日本有数の映画ガイド・高橋ヨシキが新作映画をレビューする『高橋ヨシキのニュー・シネマ・インフェルノ』! 新年恒例!韓国ディザスター映画の期待作!"消耗品"軍団のアクションシリーズ、第4弾!

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『コンクリート・ユートピア』

評点:★2.5点(5点満点)

© 2023 LOTTE ENTERTAINMENT & CLIMAX STUDIO, INC. ALL RIGHTS RESERVED. © 2023 LOTTE ENTERTAINMENT & CLIMAX STUDIO, INC. ALL RIGHTS RESERVED.

キリスト教福音派的終末論が見え隠れする

おそらく世界規模で発生したとてつもない災害の「その後の生活」を描く、一風変わったポスト・アポカリプス映画である。

あたり一面瓦が瓦礫と化した街中で唯一倒壊を免れたマンションの住民とシェルターを求めて集まってきた被災者の攻防、わずかに残った食料を強奪するために結成される決死隊......といった要素はジョージ・A・ロメロのゾンビ映画第4作『ランド・オブ・ザ・デッド』(05年)を彷ほう彿ふつとさせるが、格差社会を戯画化した同作とは異なり、本作では小市民的な「みみっちい縄張り意識」が事態をどんどん悪化させる。

極限状況下で開かれる住民会議で「もっともらしい言い訳」がどんどん通ってしまう場面や、サブプライムローンを思わせる詐欺的な取引で「夢のマンション」を掴つかみ損なった男の設定など、ユニークな見せ場はいろいろある。

が、イ・ビョンホンやパク・ソジュンなどが出演する「大スター映画」だからか、表現がややマイルドで隔靴掻痒(かっかそうよう)の感は残る。

「いいことをした人は生き残り、悪いことをした人は死ぬ」というのもそれ自体に問題があるわけではないが、そこにキリスト教福音派の終末待望論・終末信仰が見え隠れするのも気になるところである。

STORY:大災害により廃墟化したソウルで、唯一崩落しなかったマンションは無法地帯に。マンション内を統治するため、住民たちはルールを策定。だが、代表に選ばれたヨンタクは権力者になることで次第にその本性をあらわにしていき......。

監督:オム・テファ
出演:イ・ビョンホン、パク・ソジュン、パク・ボヨンほか
上映時間:130分

全国公開中

『エクスペンダブルズ ニューブラッド』

評点:★2.5点(5点満点)

© 2022 Ex4 Productions, Inc. © 2022 Ex4 Productions, Inc.

反復される「あらかじめ用意された言い訳」

腕利きの傭兵たちが凄すさまじいスピードで「敵」を手際よく、わりと残酷に殺しまくるシリーズの第4作目である。

奇をてらってそう言っているのではなく、本シリーズの見せ場はすべて殺人と破壊、またそれに付随するバトル(ハイテク兵器を使ったものから一対一の格闘まで)で成り立っているわけで、殺戮と破壊のもたらすカタルシスが現代の「アクション映画」の中心であり、それを引き立てるスパイスが残酷である、という身も蓋もない事実を本作は如実に示している。

ただ、冒頭のシーンにあるように、「わざとやってますよ」という体で入れ込んだ男同士のガサツで無神経な丁々発止や悪態が、単なる露悪趣味以上のものになっていないのは問題だ。

「細かいことはいいんだよ! ガサツで下品でじゃんじゃか人が死ぬアクション映画はサイコーだぜ!」という物言いは常に可能だが、そういう単なる思考停止を作品が内面化してしまうと、そこに言い訳以上のものを見出すことは困難になる。

そしてそれに対する感想が「あらかじめ用意された言い訳」の反復になってしまうとしたら、それは作品にとっても観客にとっても不幸なことだと言わざるを得ないのではないか。

STORY:最強の傭兵軍団「エクスペンダブルズ」を率いるバーニー・ロスは、かつての仲間たちと新たなメンバーと共に危険なミッションに挑む。今回はテロリストが所有する核兵器の奪還。失敗すれば第三次世界大戦が起きかねないのだ!

監督:スコット・ウォー
出演:ジェイソン・ステイサム、シルベスター・スタローン、50セント、ミーガン・フォックス、ドルフ・ラングレンほか
上映時間:103分

全国公開中

●高橋ヨシキ(たかはし・よしき)

デザイナー、映画ライター、サタニスト。長編初監督作品『激怒 RAGEAHOLIC』のBlu-ray&DVDが発売中。

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