『キン肉マン』大好き作家・燃え殻さんと爪切男さんが昨年12月の連載を激論! 『キン肉マン』大好き作家・燃え殻さんと爪切男さんが昨年12月の連載を激論!

『ボクたちはみんな大人になれなかった』の燃え殻『死にたい夜にかぎって』の爪切男の意外な共通点、それは『キン肉マン』!!

希代のストーリーテラーのふたりが12月分の『キン肉マン』連載を甘く、そして辛く批評。

―今回の「先月の肉トーク」テーマ―

第434話 魂のシンクロニシティ!!の巻(2023年12月4日更新分)
第435話 地獄のユニゾン技の行方!!の巻(12月11日更新分)
第436話 時間超人の5人衆!!の巻(12月18日更新分)

あらすじ
刻(とき)の神から受け継いだ力を利用した超回復で、ダメージを回復させるエル・ドミノス(ドミネーター&エル・カイト組)に対し、回復させる前に倒しきる作戦に出たエグゾセミサイルズ(キン肉マンゼブラ&マリキータマン組)。それでも超回復に苦戦する中、
マリキータマンはロールシャッハ・ドットでともに満身創痍のゼブラに全身模様を一致させ、最後の勝負に出る。

爪切男(以下、) キン肉マンゼブラとマリキータマンのエグゾセミサイルズvsエル・カイトとドミネーターのエル・ドミノスの闘い、決着がつきましたが。

燃え殻(以下、) うん。結果、いいタッグになったよね、ゼブラとマリキータマン。

 ほんとに、フィニッシュ技も、文句のつけようがない。「超回復」が間に合わないように、連続的に攻撃し続ける......たまに出るゆでたまご先生のすごく残酷な表現、「ここまでせんでもいいだろう」って言いたくなるような。延々とチェーンで身体を削りに削りまくった挙句、場外の柱に激突させる。

 エグいけどいい終わり方だったね。説得力のあるフィニッシュで。

 マリキータマンとゼブラが、勝利した瞬間のコマもいいんだよな。ゼブラが飛びこんでいって、マリキータマンが抱きとめている、超BL。

 (笑)。

 このフィニッシュで、ひとつ目安ができましたね。ここまでの攻撃をすれば、時間超人たちの「超回復」も間に合わないことがわかったから。ということは、来月分のストーリーだけど、マリポーサとパピヨンマンの闘いが始まるじゃないですか。シングルマッチだから、マリポーサ、とんでもない技を出さないと勝てないですよね。

 うん......マリポーサ、負けそうだよね。

 あ、俺もそんな気がしています。

 俺、マリポーサ好きだから悲しいなあ...。

 で、話を戻すと、エル・ドミノスに勝って、マリポーサがエル・カイトとドミネーターの身体から"魔時角(まじかく)"を取り外す。彼ら時間超人はこの"魔時角"を折ることで、一度だけ時間旅行ができるという説明回になりましたよね、435、436話は。『キン肉マン』において、話の展開が次へ行く時に、必ず挟まれる説明回。

 うん。いやあ、話を見失わないようにしないと。見失いそうになって、いつも何度も読み返すのよ、俺。

 で、新たな5人の時間超人のうち、435話の最後で姿を見せた超人、サイコマンですよね。自分では違うって言っているけど。

 "終焉の刻"ファナティック、と名乗って、他の4人も名乗る。で、パピヨンが地面に突きを入れたら、そこからマグネットパワーが。

 うん。すごいスケールのでかい話になってきたな。この時間超人との闘いと同時進行で、ザ・ワンの方の話も進んでるし。

 そうだよね。見失いそう、話の展開を。

 でもここ、大事なところですよね。今後も物語を楽しんでいくために、がんばって説明回を理解しておかないとっていう時が、『キン肉マン』には定期的にあるじゃないですか。

 うん。見失いそう。

 何回言うんですか(笑)。で、新しい時間超人たち、誰が誰と闘うんだろう? こっちはゼブラ、マリポーサって、最初から豪華な布陣で迎え撃っているからなあ。

 そうだね。このあと誰が出るんだろう?

 わからないですよね。まさかここでサイコマンを出してくるなんてことも、誰も予想してなかったし。

 ほんとだよねえ。で、そのサイコマンのファナティック、登場の仕方とか、その時のコマ割りも、かっこいいんだよね。こんなにWWE的な見せ方なのに、先生はWWE的なものよりも柔術をやっている、っていうのもいいよね(笑)。

彼らの全貌はは、ぜひコミックスや連載をお読みください! 彼らの全貌はは、ぜひコミックスや連載をお読みください!

 で、エル・カイトとドミネーター、すげえ強かったと思ったら、次はさらに強い時間超人5人が出てくるっていうのは......。

 パピヨンマン、「ヤツらなど我々からすればでき損ないの失敗作みたいなものだ」。全否定。

 ファナティックとペシミマンの相手が誰になるのか、気になるな......前にも話したけど、ペンタゴンとブラックホールは?

こちらもコミックスや連載で! こちらもコミックスや連載で!

 ああ、そうか。

 こっちだって時間を操れるヤツがいる、と。タッグマッチでどうですかね?

 同じスペックを持っている同士で闘う。

 他に思いつきます? 誰が出ると思います?(と、しばらく話し合うが、「これだ!」というアイデアは出ず)

 ......難しいねえ。

 ねえ。ここも、ゆでたまご先生のマッチメイカーとしての腕の見せどころですよね。俺とかはやっぱりベタに、たとえばネメシスとか、名のある強いヤツを選んでしまうけど、ゆでたまご先生は絶対予想を裏切るから。

 読めないなあ......あの、昔の少年ジャンプのバトルマンガのパターンで、強さのインフレってあったじゃない?

 はいはい。強い相手を倒す、もっと強い相手が出て来る、それも倒す、を繰り返していくと、止まらなくなって、わけがわからなくなっていく。

 そういう作品は、作者の下地に格闘技がないから、ああなるんじゃないか、と思うんだよね。

 ああ、なるほどね。

 作者のバックボーンに格闘技の知識とかプロレス愛がないから、SF的に強くなっていくしかない。そこが読んでいて「ん?」となるところだけど、ゆでたまご先生って、プロレスがベースにあって、ご本人も総合格闘技をやっている。だから練習、『キン肉マン』の中で言う修行、の意味合いの重さとか、各キャラの強さの順位とか、そういうのにしっかり裏付けがある感じするんだよね。そこが読者が作品を信頼できる根拠になっている。

 わかります、だから納得できるという。

 だからそれだけ、誰と誰が対戦するかということも、考えられているんだろうな。このカードは超人同士の格が合うのかとか、あえて格が合わないカードを組んだのはなぜなのかとか、そういうところからしっかりしているから、「このキャラ、思いつきで強くしてない?」みたいなのがない。強い時も弱い時もその裏付けが見える。

 確かに。長年連載をしていった末に、主人公が強くなりすぎてバケモノみたいなキャラクターになっちゃう、とかよくあるけど、『キン肉マン』はそれ、ないですもんね。

 そう。ああなるのを抑制していくのが難しいんだと思う。『キン肉マン』、45年続いても、そこの抑制が効いているから、どの超人も基本は最初に出て来た時のままのフォルムじゃない? だから、初期の超人が今出てきても、違和感なく闘える。ほかのマンガだと、ずっと出ているキャラがみんなバケモノみたいになっているから、初期のキャラが出て来たら釣り合わない。だから出せない。

 ああ、確かにそこ、『キン肉マン』はうまいこと回避してますね。

 だからこそ、これだけ連載が続いてるんだろうね。プロレス心があるってすごい大切なことなんだな、って思った。突然新キャラが出て来て「こっちのほうが1万倍強いです」とか言われても、「え?」ってなるけど。そういうこと、やりがちじゃない?

 うん、あるある。

 でも『キン肉マン』はやらないところも、信頼につながっているんじゃないかな。

●TVアニメ『キン肉マン完璧超人始祖編』キャストに宮野真守、神谷明

 で、そうだ、年末に、アニメ版の声優が一部発表されましたね。キン肉マンが宮野真守、カメハメと真弓が神谷明。

 うん、あれはびっくりした。

 こんなことができるのも『キン肉マン』だけでしょうね。日本でいちばん人気がある声優が主人公をやって、それまでの主人公役がその親と師匠に。

 重なりながらバトンを渡す、みたいなね。公式サイトのPV第一弾、観た?

 観ました観ました。宮野真守のキン肉マン、不思議なくらい違和感がない。

 ほんとだよね。

 そういえば、2022年から『うる星やつら』のアニメが復活したけど。その面堂終太郎も、昔は神谷明で今は宮野真守なんですよね。

 あ、そうか! なるほど、そのラインは、もうできあがっていたんだね。

 神谷明がカメハメと真弓のオファーを受けてくれたのがうれしいですよね。発表前、ファンの間では、キン肉マンは神谷明の続投を望む声も多かったけど。

 まあ絶対そういう声は上がるよね。しかたないよ。それを超えて行くしかない。

 去年の『SLAM DUNK』の映画化も、まさにそこに直面していましたもんね。

 そうだね。でも大ヒットしたじゃない? 俺、映画の公開前に「裏切り者だ!」とか言ってるXのアカウントを見つけて、その後ずっとチェックしてたんだよね。「こいつ、映画がヒットしたらなんて言うんだろう?」と思って。で、映画が公開されたら「感動した!」とか書いててさ。自分がボロクソにけなしていたことに、一切触れないで(笑)。

 あと、キン肉マンが宮野真守だということは、これから発表になるほかのキャストも、錚々(そうそう)たる人たちがそろっていそうですよね。

 そうだね。そうすると『キン肉マン』の世界に、新しいお客さんが入ってきそうだね。

 まず『キン肉マン』知らなかったけど、宮野真守目当てで観るという人、いっぱいいるでしょうしね。

 ここから新しく『キン肉マン』にハマる人が、増えるといいね。

燃え殻(MOEGARA)
1973年生まれ、神奈川県出身。働きながら始めたツイッターでの発言に注目が集まり、作家デビュー。最新著は『夢に迷ってタクシーを呼んだ』(新潮社)。ドラマ『あなたに聴かせたい歌があるんだ』(漫画:おかざき真里/扶桑社)はHuluで配信中。出演中のラジオ番組 『BEFORE DAWN』(J-WAVE、毎週火曜26:00~27:00)もチェック

爪切男(TSUMEKIRIO)
1979年生まれ、香川県出身。2018年『死にたい夜にかぎって』(扶桑社)で小説家デビュー。2020年、同作が賀来賢人主演でドラマ化。風俗嬢との公私ない交ぜの触れ合いの様子をつづった『週刊SPA!』連載コラムを一冊にまとめた『きょうも延長ナリ』(扶桑社)が発売中。集英社発のWebサイト『よみタイ』で、コラム『午前三時の化粧水』を連載中

●2024年放送開始! アニメ『キン肉マン』完璧超人始祖編公式サイト

アニメーション制作:Production I.G
原作:ゆでたまご(集英社『週刊プレイボーイ』・『週プレNEWS』連載中)
監督:さとう陽 シリーズ構成:深見真 
キャラクターデザイン:丸藤広貴 音楽:高梨康治

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