「塩はレシピにも自分用の食事にも、 コンビニでも買える食卓塩を使っています」と語るリュウジ 「塩はレシピにも自分用の食事にも、 コンビニでも買える食卓塩を使っています」と語るリュウジ

ひろゆきがゲストとディープ討論する『週刊プレイボーイ』の連載「この件について」。料理研究家のリュウジさんを迎えての4回目のテーマは、塩、オリーブオイル、ポン酢などの調味料について。リュウジさんは調味料にもこだわりがあるのかと思ったら、使っているのは意外にもコンビニやスーパーなどで売っている普通のものでした。その理由とは?

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リュウジ(以下、リュウ) ひろゆきさんって、普段、料理されますか?

ひろゆき(以下、ひろ) けっこう、作ってます。昔は「腹が満たされればなんでもいいや」と思っていたのと、辛い料理が好きだったので、とりあえずなんにでも唐辛子をかけていました。結婚してからはさすがに味つけに気を使うようになりましたけど......。

リュウ 意外と僕と似ているタイプかもしれないです。

ひろ マジっすか?

リュウ これを言うとけっこうビックリされるんですけど、僕は自分の食事には全然こだわりがないんですよ。料理研究家になる前は毎日同じペペロンチーノを食べ続けていましたから。たぶん料理研究家にならなかったら、今でも毎日同じような料理を食べ続けていたと思います。ただ、人に食べさせる料理となると、めちゃめちゃ凝っちゃうんですよ。

ひろ 料理に凝ると調味料にもこだわり出すじゃないですか。でも、リュウジさんは大衆向けにレシピを紹介していますよね。そのへんのこだわりってどうしているんですか?

リュウ 例えば、塩はレシピにも自分用の食事にもコンビニでも買える食卓塩を使っています。

ひろ あの赤いロゴマークの?

リュウ そうです。岩塩も一応持ってはいるんですけどね。

ひろ でも、岩塩のほうが味はいいわけですよね。あえて使わないんですか?

リュウ 確かに食卓塩のような精製塩と天然塩の岩塩は違います。具体的には舐めると岩塩のほうがまろやかです。で、この違いの理由は、一説によれば「結晶の形が違うから」らしいんです。

ひろ 舌に乗った瞬間に、差を感じるわけですね。

リュウ そうなんですよ。でも、スープとかソースで溶かしてしまうと結晶の形が変わるから、精製塩と岩塩で味は変わらなくなるという説もあります。

ひろ 実際のところ、どうなんですか?

リュウ 僕はこだわってドイツの「アルペンザルツ」という岩塩をずっと使っていたんですよ。で、その話を聞いたときに「いやいや、信じられん。今までアルペンザルツを買ってきた俺の人生はどうなるんだ!」と思ったんです。それで、実際に精製塩と岩塩でそれぞれスープを作ってみました。するとビックリしましたね、味は変わらなかった(笑)。

ひろ マジっすか?

リュウ 直接舐めたら違いはわかるんですよ。例えば、ステーキにふりかけて食べる分には岩塩のほうがおいしいです。でも、スープやソースなどで溶かしてしまう料理なら別に安い塩でもいいんです。

ひろ リュウジさんの舌をもってしてもわからないんだ。

リュウ 料理漫画に出てくるような神の舌を持つ人だったら判別できるかもしれませんけどね。

ひろ へー、いいこと聞きました。ほかの調味料はどうですか?

リュウ 例えば、オリーブオイルの高級品は味わいがまったく違います。ただ、いいオリーブオイルであればあるほど個性が強くなるので、みんながおいしいと感じるかどうかは別です。

ひろ オリーブオイルは、高級品だとエグみとか苦みとかの癖が強くなりますよね。

リュウ どこかワインと通ずるような感じがありますね。オリーブオイルにハマったときには、1本1万円するような高級品も試しましたし、良質なオリーブオイルを一斗缶で買っていたこともあります。でも、知り合いに振る舞ってもそのオリーブオイルのこだわりになかなか気づいてもらえない。僕調べですが、結局多くの人は1本1000円くらいのオリーブオイルがウマいと感じると思います。

ひろ めちゃめちゃ高級なものは買わなくてもいいんですね。

リュウ あと、値段によって一番違うといえばポン酢ですね。ポン酢は本当にピンキリで、高いポン酢に一度手を出したら、スーパーで安く売っているポン酢には戻れなくなります(笑)。スーパーで売っているポン酢も十分おいしいんですけど、高いポン酢と比べると全然違うので......。

ひろ そんなに違うんですか?

リュウ 違いすぎるので、僕はレシピ作りだけでなく、プライベートでも高いポン酢は封印しているんですよ。

ひろ 具体的には何が違うんですか?

リュウ 高いポン酢は柑橘系の香りが強いんです。一方で、安いポン酢は柑橘の香りが弱い。よくお土産で高いポン酢をもらいますけど、使うのは躊躇します。一度慣れちゃうと「あのポン酢でもう一度食べたいな」となるので。

ひろ 禁断症状ですね(笑)。ちなみにどれくらいの値段なんですか?

リュウ 1本1000円ちょいです。高くても2000円出せばぶっ飛びますよ(笑)。

ひろ へえ、今度試してみよう。

リュウ 元に戻れなくなっても責任取りませんからね(笑)。

ひろ 安いポン酢も柑橘系の風味を強くしたらおいしくなるわけですよね。製造過程でそういう風味は加えられないんですか?

リュウ 工場で生産する過程で加熱処理をしているみたいなんですよ。そうすると、生の果汁を使っていても風味が飛んでしまう。でも、加熱処理をするには理由があって、これをしないと店頭に置くときに膨張するリスクがあるみたいなんです。また加熱処理には賞味期限を延ばす目的もあります。

ひろ なるほど。安く販売するには仕方がないのか......。

リュウ この工場で生産するというプロセスは料理研究家泣かせなんですよ。僕はドレッシングやソースの商品開発もやっていますけど、自分のキッチンで完璧なレシピができたと思っても、工場で生産すると味が全然違うんです。

ひろ レシピどおりにはならないんだ。

リュウ むしろ、めちゃめちゃマズくなることもあるんですよ。やっぱり、加熱処理の工程で変わっちゃうらしくて。

ひろ じゃあ、それを踏まえたレシピを作らないといけないわけですね。

リュウ そうなんです。ボトリング後においしくなるところまで考えなきゃいけない。そうなると、例えば、加熱処理でニンニクの風味が飛んでしまうから、倍の量を入れようということになる。その調整がものすごく大変なんです。

ひろ 工場で手作りはできないんですか?

リュウ できますよ。ただ、手作りで製造するとウマいんだけど、数が作れない。すると、商品単価が高くなって売れなくなる。単価を下げようとすると機械化された工場に頼むことになり手間がかけられない。商品開発はめちゃくちゃ大変なんです。

ひろ そう考えると、スーパーで安く売っているポン酢もすごいんですね。

リュウ そのとおりです。さっきは厳しいことを言った安いポン酢ですが、あの値段であのクオリティを実現している食品メーカーには脱帽です。自分で商品開発をしたことでよけいにそう感じますね。

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■西村博之(Hiroyuki NISHIMURA) 
元『2ちゃんねる』管理人。近著に『生か、死か、お金か』(共著、集英社インターナショナル)など 

■リュウジ(RYUJI) 
1986年生まれ、千葉県出身。料理研究家。近著に『虚無レシピ』(サンクチュアリ出版)など。公式X【@ore825】、公式Instagram【@ryuji_foodlabo】、公式YouTubeチャンネル『料理研究家リュウジのバズレシピ』

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