「油そばがはやって久しいですけど、ビジネスの構造的にあれはすごいんです!」と語るリュウジ 「油そばがはやって久しいですけど、ビジネスの構造的にあれはすごいんです!」と語るリュウジ

ひろゆきがゲストとディープ討論する『週刊プレイボーイ』の連載「この件について」。料理研究家のリュウジさんを迎えての5回目のテーマは、「儲かるラーメン店をつくるにはどうしたらいいのか?」。飲食店はなかなか儲からないと言うリュウジさんの出した答えが、かなり斜め上すぎました!

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ひろゆき(以下、ひろ) もし、リュウジさんが「儲かる飲食店」を経営するなら、どんなジャンルに進出します?

リュウジ(以下、リュウ) 大前提として、日本の飲食店がしっかり稼ぐにはお酒をバンバン売るしかないんですよね。お酒抜きでお客さんを満足させつつ、しっかり稼ぐとしたらラーメン店ですかね。

ひろ 回転も速いし、人気になると行列もできますけど、仕込みにめっちゃ時間がかかりません?

リュウ スープ作りにビックリするくらい原材料費と時間がかかっているので、逆に言えば店でスープを作らなければいいんです。

ひろ 業務用スープとかを使うってことですか?

リュウ そうです。実際に業務用スープを仕入れて、少しだけアレンジして提供し、しかも人気になっているラーメン店はけっこうあるんじゃないですかね。

ひろ 人件費が減らせますし、味のブレもなくなりますよね。

リュウ お店でスープを作っているラーメン店の場合、朝一で行くのと、夜に行くのとでは味が全然違ったりしますからね。

ひろ 煮込んでいる時間が変わりますからね。

リュウ だから、いつ行っても味が一定の場合には、気の遠くなるような品質管理をしているか、業務用のスープを使っているかでしょうね。

ひろ 味はどうなんですか? お店でスープを作らなくてもお客さんを満足させる自信あります?

リュウ お店でスープを作れば絶対においしくなるわけではないんですよ。よく「24時間かけてスープを煮込んでいます」みたいな売り出し方をするお店があるじゃないですか。業務用スープで、そういったお店に勝つ自信はあります。さすがにラーメンマニアをうならせようとすると難しいんですけど、普通の人が食べて「また来たい」と思えるレベルならできると思います。

ひろ 内装もそれっぽくこだわって「グツグツ煮えているふう」のずんどう鍋があるけど、実はリュウジさんのバズレシピだったみたいなことですね(笑)。

リュウ そうです(笑)。中には「24時間煮込みました」みたいな〝情報〟でおいしく感じるお客さんもいるので、そういう演出は大事でしょうね。

ひろ 「スープを作らないラーメン店」でどこまで繁盛するか実験してほしいですね。

リュウ でも、嘘はいけないので「丁寧に作りました」とか「丹精込めて作りました」とアピールする感じですかね。

ひろ 10分で作っても、丁寧に丹精込めるというのは嘘ではないですからね。ちなみに業務用スープを使う場合、同業者にはバレるものなんですか?

リュウ 「どのメーカーのスープを使っているか」はわからなくても、「業務用を使っている」ということはバレるでしょうね。こだわっているラーメン店からすると「ふざけんな」と怒られるかもしれないですが、もし業務用スープを使っていることがバレても、それを広く伝える人はいないと思います。

ひろ というのは?

リュウ 例えば、ラーメン評論家のような人が「この店は市販のスープを使っている!」と暴露することはだいぶリスキーなんですよ。もし、お店でスープを作っていた場合「あいつはバカ舌だ」という烙印を押されてしまう。

ひろ そうか。食材へのこだわりや火入れの細かな違いうんぬんの前に「あいつは業務用スープかどうかも見分けがつかない」となるわけですね。それは評論家としては死活問題ですね。

リュウ そうですね。「ここは化学調味料が入っている」という批判はよくあるんですが、「いや、うちは使ってませんよ。なんなら厨房を見ますか?」と言われたら詰むじゃないですか。

ひろ 確かに。じゃあ業務用スープを使って、ガンガン化学調味料を入れていても、評論家はその事実を明言しづらいのか......。

リュウ 僕も「これはあんまり仕込みはしていないな」とか「あらかじめボイルした食材を使っているな」とかはすぐわかるんですけど、わざわざ言わないです。万が一外したときに赤っ恥をかくのは嫌なので。

ひろ 業務用スープだとわからないようにする工夫はあったりするんですか? これを混ぜるとわかりづらいとか。

リュウ 絶対わからないようにする自信はあります。例えば香辛料を入れたらめちゃめちゃ補正できますよ。これはカレーの話になりますがハウスの「ジャワカレー」ってあるじゃないですか。あれって家庭用と業務用では味が全然違うんですよ。もはや別物レベルです。

ひろ どんなふうに違うんですか?

リュウ 商品開発するとき、コストを抑えるために業務用のジャワカレーを使おうとしたんですよ。でも、おなじみの家庭用のほうが断然うまいんです。そもそも業務用商品の多くは、お店ごとに個性が出せるようにシンプルな味わいになっているんです。要は「そのままお客さんに提供してね」ではなく、「ここに味をプラスしてね」という考え方なんですよ。

ひろ なるほど! だから、あえて特徴を出さないようにしているんだ。

リュウ そうです。だから味もあえてバチッと決めていない。カレーの大事な要素であるスパイスの香りと、とろみをつけることに特化したものなんですよね。

ひろ だから、そこに独自にスパイスを加えたり、油を入れてオリジナリティを出していくんですね。で、そうやって自分の味を足していくと、もともと業務用だったことがわからなくなる。それはカレーもラーメンも同じだと。

リュウ はい。で、ここまでスープ作りのアイデアを話してきましたけど、最近はガス代がヤバいくらい高いし、従業員も集まりづらいので、儲けるというより、店を続けるためにスープをきちんと作らなくなるラーメン店が増えていくんじゃないかと思うんです。

ひろ そうなんですか。

リュウ そもそも、スープをきちんと作らないほうが儲かるんですよ。油そばがはやって久しいですけど、ビジネスの構造的にあれはめちゃめちゃすごいんです。

ひろ そうか。原価のほとんどはスープなわけで、それがないわけですもんね。調味料なんてたかが知れているし、しかも値段は普通のラーメンと同じくらいする。

リュウ だからラーメンマニアの中では「油そばは食う価値がねえ」「しょせん調味料の味だから」みたいなことを言う人もいます。ただ、ビジネスとして考えたとき「うまい商売だな」と思います。油そばが出始めた頃「これを考えた経営者は頭良すぎ」と思いましたもん。

ひろ 昔ながらのやり方でお店でスープを作り、しっかり利益を出すというのは難しいんですね。

リュウ 値上げできればいいんですけどね。最近は1000円超えのラーメンも増えてきていますけど、まだまだ少数派ですからね。

ひろ ラーメン業界もなかなか厳しいですね。

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■西村博之(Hiroyuki NISHIMURA) 
元『2ちゃんねる』管理人。近著に『生か、死か、お金か』(共著、集英社インターナショナル)など 

■リュウジ(RYUJI) 
1986年生まれ、千葉県出身。料理研究家。近著に『虚無レシピ』(サンクチュアリ出版)など。公式X【@ore825】、公式Instagram【@ryuji_foodlabo】、公式YouTubeチャンネル『料理研究家リュウジのバズレシピ』

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