リュウジいわく「低温調理器を使うとパサパサになりやすい鶏肉が柔らかくなるんです!」 リュウジいわく「低温調理器を使うとパサパサになりやすい鶏肉が柔らかくなるんです!」

ひろゆきがゲストとディープ討論する『週刊プレイボーイ』の連載「この件について」。今回は料理研究家のリュウジさんを迎えての8回目。「料理研究家は道具にもこだわるのか?」と思ってリュウジさんに尋ねてみると、意外にも包丁は1万円で、簡易的な研ぎ器を使っていると。そのほかのこだわりも聞いてみました。

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ひろゆき(以下、ひろ 純粋な疑問なんですけど、料理研究家の人は包丁のテクニックを磨くための練習とかってするんですか?

リュウジ(以下、リュウ ほかの方は知りませんが、僕はしません(笑)。例えば、お刺し身に添えられているキュウリが竹の形みたいになっている「飾り切り」というテクニックがあります。

ひろ よく日本料理のお店とかで出てくるやつですね。

リュウ はい。ああいう飾り切りは「料理全体が華やかになったので、一皿2000円いただきます」という感じで付加価値をつける目的なんですよ。でも、僕は料理人ではなく料理研究家です。料理人を諦めた時点で、そういったテクニックは不要になりました。

ひろ なるほど。

リュウ 飲食店で働くのなら飾り切りなどの練習は必要ですけど、おいしい家庭料理のレシピを作るのにはオーバースペックです。

ひろ ちゃんと手入れした包丁で切ればいいと。

リュウ はい。正直、包丁のテクニックで味の差はそんなにつきません。もちろん、トマトの断面から余分な水分が出ない切り方とかはあります。でも、テレビショッピングの実演じゃないですけど、ちゃんと手入れした包丁を使ってスーッと引けば誰でもきれいな断面になりますよ。

ひろ あはは(笑)。逆に言えば、どんなに包丁さばきがうまい人でも、手入れをしていない包丁を使っているときれいに切れないと。リュウジさんは、包丁にこだわりとかあるんですか?

リュウ 今メインで使っているのは1万円くらいのやつです。料理人になるときに3万円くらいの包丁を買いましたけど、「別に高い包丁じゃなくてもいいかな」という結論になりました。

ひろ 高い包丁を買うより、定期的に手入れするほうが大事という感じですか?

リュウ そうですね。だから、ちゃんと研ぐようにはしています。でも、砥石ではなく、「ウオーターシャープナー」という簡易的な研ぎ器を使っています。以前は砥石を使っていたんですが、やたら時間がかかるし、差もほとんどありません。ただ、気をつけてほしいのは砥石と研ぎ器の両方を使っちゃいけないということです。

ひろ そうなんですか。素人考えだと、日々のメンテは研ぎ器でやって、たまに砥石でしっかりケアするほうがよさそうに思いますが。

リュウ 砥石と研ぎ器では、研いだときの刃の形が全然違うんですよ。具体的には砥石は刃が鋭角になり、研ぎ器は刃が丸くなりやすい。だから、両方やると刃がガタガタになるんです。なので、どちらか片方にすべきです。

ひろ じゃあ「俺はもう砥石は使わない」と覚悟を決めたほうがいいんですね。

リュウ そうですね。

ひろ 包丁と同じように、ほかの調理器具もあんまり持ってない感じですか?

リュウ 友人たちに振る舞うのが大好きなので、実は調理器具はけっこう使っているんですよ。低温調理器ってわかりますか?

ひろ はいはい。例えば58℃の温度で8時間加熱するみたいなやつですよね。そのように一定の温度で長時間調理するのって、低温調理器じゃないとキツいですよね。

リュウ そうなんですよ。低温調理器を使うとパサパサになりやすい鶏肉が柔らかくなったり、ローストビーフが失敗せずに作れたりするんです。厚切りステーキも低温調理してから焼くと、めちゃくちゃいいミディアム加減になります。ただ、大多数の人たちが低温調理器を持ってないだろうから、僕のレシピではまだ封印しているんです。

ひろ 炊飯器や電子レンジはほとんどの人が持っているけれど、低温調理器は持ってない人が多いですもんね。実は、僕も低温調理器を愛用しているんですよ。

リュウ マジですか! じゃあ、ひろゆきさんはけっこう料理をやっているんだ。

ひろ というか、プロでもない限り、肉料理の温度管理は低温調理器に任せたほうが間違いないじゃないですか。

リュウ そうですね。おいしい料理を作るには温度管理が大事なんですが、コンロでやろうとすると難しすぎるんですよ。その点、低温調理器であれば勝手に管理してくれます。だから、実は料理初心者向きだったりするんです。

ひろ ただ、初心者ほど持っていないというジレンマがある(笑)。

リュウ そうなんですよ。でも、以前は3万円くらいしてましたけど、今はだいぶ安くなっていて「アイリスオーヤマ」なら1万円程度で買えます。なので、そろそろ解禁してもいいかなと思っているんですよね。

ひろ ちなみに、低温調理器と同じように「本当はオススメなんだけど、レシピとして紹介するのはまだ早いかな」というものはけっこうあるんですか?

リュウ ありますね。僕は段階を踏んで解禁していくタイプなんですよ。初期の頃はかなりストイックにやっていて、例えばオイスターソースも禁止していました。でも、今はスーパーで簡単に手に入るし、別に高級品でもない。「これくらいは買ってくれるだろう」ということで解禁しました。あと、ここ最近だとナンプラーも解禁したんですよ。

ひろ おお。でも、ナンプラーって、一回使ったら、その後使わなくなる人が多いですよね。

リュウ 確かに。ナンプラーは「買っても使わない調味料ナンバーワン」になるでしょうね(笑)。

ひろ ですよね(笑)。

リュウ ただ、買ってみたものの何に使っていいかわからないという悩みは「あるある」なので、ニーズは高いと思うんですよ。アンチョビもそろそろ解禁したいですし、マイナーですけど薄口醤油も使いたいですね。

ひろ 「普通の醤油でいいじゃん」と言われそうですけどね(笑)。

リュウ 絶対思われるでしょうね。ただ、濃い口と薄口はけっこう違っていて、使い分けると料理の幅が広がるんです。レシピ作りも広がるので、今、解禁するタイミングを見計らっています。

ひろ リュウジさんはこだわるというより、誰でもまねできるような再現性を重視してるんですね。

リュウ ええ。こだわりすぎると引かれちゃうので(笑)。僕の役目は料理の間口を広げることだと思っているんですよ。だから、引かれると困るんです。

ひろ リュウジさんは、逆に「コンビニで手に入る調味料」とか「手間をかけない」という部分にこだわっている感じがしますね。

リュウ まあ、そうですね。

ひろ それに、普通、頭をひねりまくって、それでもレシピを思いつかない料理研究家が多いと思うんですけど、リュウジさんはレパートリーがまだまだ増えていきそう。しかも、これまでは「調味料の手に入りやすさ」が制約だったわけですが、これからは『巨人の星』の星飛雄馬が大リーグボール養成ギプスを取ったみたいに、さまざまな制約から解き放たれるわけですよね。なんか恐ろしいことになりそうです(笑)。

リュウ いやいやいや(笑)。

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■西村博之(Hiroyuki NISHIMURA) 
元『2ちゃんねる』管理人。近著に『生か、死か、お金か』(共著、集英社インターナショナル)など 

■リュウジ(RYUJI) 
1986年生まれ、千葉県出身。料理研究家。近著に『虚無レシピ』(サンクチュアリ出版)など。公式X【@ore825】、公式Instagram【@ryuji_foodlabo】、公式YouTubeチャンネル『料理研究家リュウジのバズレシピ』

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