『魔都精兵のスレイブ』メインビジュアル 『魔都精兵のスレイブ』メインビジュアル

「少年ジャンプ+」で連載中の漫画作品『魔都精兵のスレイブ』(原作・タカヒロ、作画・竹村洋平)が今年1月よりアニメ化。2月には最新コミックス15巻が発売されるなど大盛り上がり中!

舞台は男性よりも女性が強い時代。能力を持った女性たちが「醜鬼(しゅうき)」と呼ばれる怪物を倒すために「魔防隊」を結成する。主人公・和倉優希(わくら ゆうき)は異空間・魔都に迷い込んだところを魔防隊の七番組組長・羽前京香(うぜん きょうか)に助けられ、七番組の寮の管理人になるところから物語は始まるのだが......。

京香の能力「無窮の鎖(スレイブ)」は対象を「奴隷」化し、使役すること。戦いのさなかで優希を「奴隷」化すると、強大なパワーを得る代わりに、キスや抱擁などの「ご褒美」を与えなくてはならなかった......。

ということで、AT-Xでは「ご褒美ver.」が放送されるなど、「ご褒美」ばかりがフィーチャーされがちな本作ですが、アニメや声優に詳しいお笑いコンビ・天津の天津飯大郎さんに、それ以外にもたくさんある本作の魅力をどっぷりと語っていただきます。

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さらば青春の光・東ブクロやザ・マミィ酒井を改名した占い師・イヴルルド遙華に薦められ、先日、本名の向清太朗から改名したばかりの天津飯大郎 さらば青春の光・東ブクロやザ・マミィ酒井を改名した占い師・イヴルルド遙華に薦められ、先日、本名の向清太朗から改名したばかりの天津飯大郎
「ご褒美」も最高だけど、ラブコメや成長物語としても楽しめる!

――『魔都精兵のスレイブ』という作品はご存知でしたか?

天津 もちろんです! もともと熊元プロレス(紅しょうが)に「最近何か面白い漫画ある?」って聞いたら「『魔都精兵のスレイブ』が面白いですよ」って教えられて知ったんですけど、よく見たらタカヒロさん(原作)じゃん!ってなって。僕が大好きな『アカメが斬る!』を始め、たくさんの漫画・アニメ作品に携わっていらっしゃる方なので、もう面白いの確定だな、と思って読んでいました。

竹村洋平先生(作画)の絵のレベルも高いし、女の子がめちゃくちゃかわいい。それとまあ......そういうかわいい女の子にご褒美をもらえるっていうのは、男の永遠の夢ですからね(笑)。

京香からのご褒美シーン 京香からのご褒美シーン
――やっぱり『魔都精兵のスレイブ』の一番の魅力はご褒美シーンですか(笑)。

天津 いや、もちろんご褒美は最高だし、分かりやすい魅力のひとつではあるんですけど(笑)、実は主人公の優希や周囲の女の子たちのバトルのカッコよさとか、一緒に成長していく姿もしっかり描かれているのがいいんです。

どうしてもご褒美シーンばかりが目立っちゃいますけど、七番組のメンバーはみんなどこかで優希に好意を寄せていて、まっすぐなラブコメとしても楽しめる。だから熊元プロレスみたいな女性目線でも楽しめるし、男女関係なく共感できるところはあると思うんですよね。

――『魔都精兵のスレイブ』の最大の特徴は、男性より女性が強い時代で、女性が能力を得ることができるという世界観です。

天津 でも、現実もそういう状態に近付いてきていると個人的には思ってて、それは決して男性が弱くなったとか女性が強くなったという意味ではなく、覚悟が決まった女性ってやっぱりカッコいいなっていうことなんです。みんな守るべきものを持っているし、強い女性、特に僕は刀を持ってる女性が好きすぎるのでたまらないですね。

で、そういうカッコいい女性たちに囲まれて、男性である優希がいわばヒロインみたいな扱いになってるっていう設定が新しいと思います。

――そしてもうひとつの特徴が先ほどもあった通り、優希を七番組組長である羽前京香が「奴隷」化して戦い、強大なパワーを得る代わりに、代償として「ご褒美」をあげなければいけないというところです。

「奴隷」となった優希 「奴隷」となった優希
天津 いやー最高ですね(笑)。最初は「え、奴隷⁉」って思うかもしれないですけど、僕はこの「奴隷」という単語が優秀だと思うんです。覚悟を決めた女性にパワーを引き出してもらって、一緒に共闘する。そして七番組のメンバーも優希を認めていく。

最初の扱いはあんまりかもしれないですけど、それがだんだんと七番組にとってなくてはならないパートナーになっていく。そこが最高なんですよね。まあ僕は、そうじゃなくても奴隷とか呼ばれたら最高なんですけど(笑)、優希みたいに家事は得意じゃないからなあ。そう、優希が家事や料理で七番組のメンバーの胃袋やハートをつかむのも、信頼感をアップさせるのに役立ってると思うんですよ。

――そして「醜鬼」と呼ばれる怪物を倒すための組織・魔防隊は七番組だけでなく、さまざまな組員たちが出てきて、さまざまな戦いが起こり、さまざまなご褒美シーンが描かれます。

天津 そうなんです。しかもタイプの違った子が何人もいて、原作のほうではもうすごい人数になっているし。ご褒美も、優希が潜在的に思ってることが実現するっていうのがたまらないですね。何でも叶うわけですから。

でも、何度も言いますけどご褒美だけでなく、誰しもいろんなヒーローや能力が見たいっていう気持ちもあるじゃないですか。いろんなメンバーがいて、いろんな能力があって、メンバー同士の共闘も起こっていく。そういう願いも叶っていくからいいんですよね。

――ちなみに、お気に入りのキャラクターは?

天津 東日万凛(※あずま ひまり。七番組副組長。六番組に姉の八千穂がおり、比較されて育ったためプライドが高い)ですね。最初は男が苦手なんですけど、優希と徐々に打ち解けていって、優希のことを男としてもひとりの人間としても認めていく。でも駿河朱々(※するが しゅしゅ。七番組組員。優希に好意を抱いている。体を巨大化・縮小化できる)のように優希のことを分かりやすく好きになるんじゃないんです。ひとつひとつ着実に距離を進めていくのがいいなと。

東日万凛 東日万凛

東家の確執も非常にいいんですよね。姉の八千穂(※六番組副隊員。語尾に「のじゃ」が付く)も好きなんですけど、妹に対するこじらせた愛情がある。その八千穂あっての日万凛の性格ですよね。もし恋愛シミュレーションゲ-ムだったら絶対日万凛からいくな......(笑)。

東八千穂 東八千穂

「でも、巨大化した朱々の胸の間にはさまるシーンも最高ですよね......」と熱く語る天津飯大郎 「でも、巨大化した朱々の胸の間にはさまるシーンも最高ですよね......」と熱く語る天津飯大郎

『魔都精兵~』の声優陣の固め方はスゴい!

――声優に詳しい飯大郎さんに、主要キャスト陣についても伺いたいのですが。

天津 もちろんです。まず羽前京香役の鬼頭明里さんはもう全員ご存知ですよね。禰豆子(『鬼滅の刃』)はもちろん、『虚構推理』の岩永琴子とか、どちらかというと淡々と喋って漂々としているイメージが強いんですけど、元気な女の子も得意だし、役の幅は広いです。そういう意味では、やっぱり京香みたいなツンデレでクールな役にピッタリだと思いますね。オープニング曲もめっちゃいいです。

それから東日万凛役の宮本侑芽さんと若狭サハラ(※六番組組員。おっとり系で、決めた時間だけ自分を強化できる)役の上田麗奈さん、そして優希役の広瀬裕也さんは『SSSS.GRIDMAN』で一緒だったんですよね。分かりやすい女性キャラが2人出てくるんですけど、なんかもじもじしてるカワイイ子(宝多六花)が宮本さん、巨乳でショートカットの子(新条アカネ)が上田さん、そして主人公(響裕太)が広瀬さん。

そういう意味では気心知れたメンバーだと思うので、『魔都精兵~』にはそういうチームワークも出てると思います。特に宮本さんは、ナチュラル系のお芝居に定評があるので、僕の大好きな日万凛にはピッタリです。そしてサハラ役の上田さんは、ひとつひとつの演技がしっかり計算されていて、もうバケモノですよ。どの作品でも主人公クラスの役を演じています。

若狭サハラ 若狭サハラ

――七番組の残りのメンバー、駿河朱々役の日野まりさんと大川村寧(※おおかわむら ねい。千里眼の能力を持つ、七番組のみんなの妹役)役の立花日菜さんはどういう方ですか?

天津 日野さんは最近グイグイ来てる方で、今年は『Lv2(からチートだった元勇者候補のまったり異世界ライフ)』や『逃げ上手の若君』にも出演される予定です。朱々は優希に対して好意を持ちますけど、カワイイところもちょっといたずらっ子なところもあって、それをしっかり演じているのがすごい。優希の裸を写真に撮って脅すけど、実は惚れてるシーンとか、ギャグ的なお芝居もシリアスなお芝居もできないとダメですもん。

駿河朱々 駿河朱々

天津 寧ちゃん役の立花日菜さんは、去年『うちの会社の小さい先輩の話』で小さい先輩(片瀬詩織里)役をやってたんですけど、頑張ってる様子がカワイイみたいな女の子を演じるのがうまいんです。『推し武道(推しが武道館いってくれたら死ぬ)』の(市井)舞菜っていう、おとなしいけどカワイイ感性を持っているお芝居もめっちゃ良かったし。

そういう、心の中に譲れないものがある女の子を演じると強い印象がありますね。ただ、寧ちゃんはまだ11歳なので、優希に対して変なご褒美をしないか心配ですね(笑)。

大川村寧 大川村寧

――そして六番組のほうは出雲天花(※いずも てんか。六番組組長で空間操作能力を持つ。前回の人気投票では1位)役を内田真礼さん、東八千穂役を稗田寧々さんが演じられています。

出雲天花 出雲天花
天津 内田真礼さんについては、もう僕ごときが何を語ればいいのかって話なんですけど、演技の幅も広ければ歌も素晴らしいし、天花みたいなキャラクターはバッチリの方です。天花はやっぱりちょっとズルいくらいのキャラですよね。妙な色気や余裕があって、気に入った優希のことをいつも見ていり。それでいて底知れぬ怖さというより、もっとその沼に入りたいような気持ちにさせてくれる。そんなキャラを真礼さんが演じるというのが奇跡です。

真礼さんは、例えば『はめふら(乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった...)』のカタリナ役で見られるような、カワイイけど男気みたいなものを見せる演技もしっかりできるし、かと思えば『あいまいみー』のミィみたいに、変わったキャラだけど面白く演じることもできるっていう、とにかくすごい方です。

ちなみに『あいまいみー』は僕もモブ役で出ていて(笑)、もう11年前になりますが、真礼さんはその時からトップランカーで、今でもずっとそんな声優さんで居続けるのは並大抵ではないです。そういう才能は天花にも通じるところなので、やっぱりピッタリの配役だと思いますね。

稗田寧々さんは『CUE!』という作品での鷹取舞花役の印象が強いですね。大家族で弟のために声優になりたいキャラなんですけど、そういう意味では妹思いの八千穂に通ずるところがあるんじゃないかと思います。

あと『もういっぽん!』という作品で南雲安奈という役もやってるんですけど、ちょっとツンデレで、好きな人に伝え方がいつもちょっと違うみたいなところがある。そういうのも八千穂と重なる部分があるんじゃないかなと思いますね。もちろん、それぞれ全然違うキャラクターなんですけどね。映画がお好きな方で、映画についてのコラムや番組をやられているんですけど、映画で演技をしっかり研究していて、それをアウトプットするのがうまい方だと思いますね。

八千穂は時を止めたり戻したりできる、『ジョジョ』のラスボスみたいな能力なんですけど、何でもコピーできる能力の日万凛より絶対強そうですよね。まあ日万凛の能力も相当ズルい能力なんですけど。でもそういう能力がチートになってない。そういうところも『魔都精兵~』の面白さだと思います。

――熱弁ありがとうございます(笑)。本当に錚々たるメンバーが集まっているのが分かります。

天津 だから、『魔都精兵~』の声優陣の固め方はスゴいんです。本当にスゴいメンツを集めたなって思いますよ。言葉は悪いですけど、こういうアニメだとちょっと新人の方とか、イベントで稼働しやすい方を入れがちなんですけど、全員ヒロインをやってるような方々で、本気で視聴者を倒しに来ている感じが見受けられますね。

――最後に改めて、『魔都精兵のスレイブ』の魅力はどういうところだと思いますか。

天津 『魔都精兵~』の分かりやすい魅力としてはもちろん「ご褒美」もあるし、声優さん方も素晴らしいんですけど、さっきも言った通り、まず優希と魔防隊メンバーの成長の描き方が素晴らしいので、そちらにも注目して観ていきたいと思っていますね。

それと敵の強さやバトルのカッコよさ。七番組組長である京香は「奴隷」にした優希を「貸し出す」こともできますけど、貸した相手によって「奴隷」の姿が変わるんですよね。それってロボットアニメの変形的なワクワク感もある。

あと、行方不明になった優希のお姉さんがどうなるのか!? 敵になるのか味方になるのか!? 本当にいろんなワクワクする要素があふれている作品なので、僕も視聴者のみなさんと一緒に期待しています!

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■天津飯大郎(てんしん・はんたろう) 
お笑いコンビ、天津のボケ担当。相方はエロ詩吟でおなじみの木村卓寛。漫画、アニメ、声優に詳しく、こなすアニメ関連の仕事は年間300本以上。「R-1グランプリ2024」のエントリーの際に「天津飯大郎」として出場し、大会敗退後にこの芸名に正式に改名。

酒井優考

酒井優考さかい・まさたか

週刊少年ジャンプのライター、音楽ナタリーの記者、タワーレコード「bounce」「TOWER PLUS」「Mikiki」の編集者などを経て、現在はフリーのライター・編集者。

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