『キン肉マン』大好き作家・燃え殻さんと爪切男さんが2月の連載を激論! 『キン肉マン』大好き作家・燃え殻さんと爪切男さんが2月の連載を激論!

『ボクたちはみんな大人になれなかった』の燃え殻『死にたい夜にかぎって』の爪切男の意外な共通点、それは『キン肉マン』!!

希代のストーリーテラーのふたりが2月分の『キン肉マン』連載を甘く、そして辛く批評。

―今回の「先月の肉トーク」テーマ―

第441話 永遠なる時を生きる蝶!!の巻(2月5日更新)
第442話 鱗粉(りんぷん)のツープラトン!!の巻(2月19日更新)
第443話 邪悪神との再契約!!の巻(2月26日更新分)
あらすじ
ファナティック率いる時間超人軍団・五大刻(ごたいこく)決戦。第1戦はキン肉マン マリポーサVSパピヨンマンの蝶対決となった。パピヨンマンの圧倒的な強さを前に、あの手この手で対抗するマリポーサだが......。

●『キン肉マン』ならではのコミックス表紙

燃え殻(以下、 単行本の84巻、3月29日発売じゃない? その表紙を見て驚いたんだけど......。

爪切男(以下、 え? ゼブラが真ん中にいて、両側にマリポーサとマリキータマンですよね。内容もそういう形じゃないですか、84巻は。

 そうなんだけど、そもそもそれが、他のマンガではありえないっていうか。

「キン肉マンの日」の3月29日に発売の『キン肉マン』第84巻のカバー 「キン肉マンの日」の3月29日に発売の『キン肉マン』第84巻のカバー

 ああ、そういうことか。うん、それはそうですね。

 主人公以外のキャラクターたちが、その巻のストーリーの中心だから、表紙になるってことがね。脇役が活躍するのっていいマンガじゃない? 時期によって主人公以外が物語の中心になる、というマンガは他にもあるけど、単行本になる時って表紙だけは主人公だったりするでしょ。

 そうですね。その巻のストーリーとは関係ない、主人公の一枚絵のイラストが表紙だったりしてね。

 そう。そうしないと成立しないんだけど、『キン肉マン』はなんとかなっちゃうんだよね。『キン肉マン』ってずっとそういう作品で、僕らはそれに慣れてるから普段なんとも思わないけど、こうしてあらためて考えてみると、すごいことだよね。

 キャラを増やして、その全員を魅力的に描くのって大変なんですよね。自分が物語を書いているとそう思います。キャラを増やすと、ひとりひとりが薄くなるから、なるべく絞って描こうとしちゃうんだけど、ゆでたまご先生は濃くて魅力的なキャラを、何十年もの間、次々と量産し続けている。

 ほんとにそうだよね。

 その面では『キン肉マン』という作品が究極というか、これ以上は存在しないのかもしれない。ベンキマンとかカレクックなんて、「お笑いキャラ?」っていうフォルムじゃないですか?

ベンキマンとカレクックがザ・マンに人間にされてしまう衝撃シーン(JC38巻) ベンキマンとカレクックがザ・マンに人間にされてしまう衝撃シーン(JC38巻)

 頭にカレーが乗ってるんだもんね。

 でも、そんなフォルムのキャラクターがどんどん活躍して、読んでいるとその魅力にやられてしまう。これはスゴいことですよ。

  • マリポーサが伝えた"危機感"

 連載の2月の3回、441話〜443話なんですけど......。

 俺の好きなマリポーサが、パピヨンマンに叩きのめされて、どんどんボロボロになっていくんだけど。

パピヨンマンを前に、まさに手も足も出ないという状況 パピヨンマンを前に、まさに手も足も出ないという状況

 この3話全体が、「これはマリポーサ、勝てないんだろうな」という雰囲気ですね。それで、絶体絶命まで追い詰められたマリポーサは、邪悪五大神のひとり、飛翔(ひしょう)の神を呼んで合体するという、禁じ手中の禁じ手を使ったけど......。

 パピヨンマンを含め、時間超人の五大刻(ごたいこく)たちはここまで強い、ということを示すターンになっている3回だよね。でも、ここまで圧倒的な力の差があって、飛翔の神を呼んだのに負ける、っていうことになったら、他の時間超人と対峙する超人たちは、何をすればいいのかわからない。マリポーサは普通の超人じゃなくて、もはや神じゃない?

 そうなんですよね。

 超人よりもひとつ上のステージにいるマリポーサが、3週にわたってまるで相手にならない。っていうことは、これから対戦する他の超人たちが、今のままで勝てるわけがないもんね。

 読んでいて絶望感が漂(ただよ)いますね、パピヨンマンが強すぎて。

 そこで言うと、今、バッファローマンがザ・ワンの下で修行に入ってるじゃない? そこまで鍛えて強くならなきゃいけない理由は、こういうことなのか、っていうね。

 ああ、確かにね。

 圧倒的に力の差があって、新技をひとつ覚えたくらいじゃ太刀打ちできない。これまでとはまったく違うレベルの相手と対戦しなきゃいけないから、やはりまったく違うレベルの修行をして、まったく違う強さにならなきゃいけない。それこそ容姿もまったく変わるような......これまでの『キン肉マン』には、そういう展開は、なかったじゃない?

 うん、なかった。

 今、初めてそれをやらなきゃいけない相手と対戦しているということを、マリポーサが提示してるんだな、と思った。

 確かに、何かを根本から変えないと、今みたいな一方的な闘いが続いていくことになりますよね。

●もしかして、『キン肉マン』最終シリーズ⁉

 前回も話したけど、今って『キン肉マン』の長い歴史の中でも、いよいよ大詰めに来ているじゃない?

 そうですね。締めに向かっているようにも見えますね。

 だから、ここで超人が死んで物語から退場したら本当に終わりで、もう生き返らない可能性が高い。その上で、超人を1回リセットして根本から設定を変える、ということを初めてやってみよう、というのがこのシリーズなんじゃないかな。なぜなら、最後のシリーズだから。

逆に言うと、マリポーサが選んだ、飛翔の神を招聘(しょうへい)するという方法は、前にもやったじゃない? それでは勝てないのがこのシリーズだから、最終的には負ける、ということなんじゃないかな。

 そうかあ......でもマリポーサ、飛翔の神を呼び出して手を組んだのは......この試合の後はどうなってもいい、勝てる可能性があるんだったら、プライドを捨ててでも飛翔の神を呼ぶ、ということですよね。ゆでたまご先生が、5人のうちのひとり目にそれをやらせたことに、びっくりしました。

 ほんとだよねえ。

 1勝1敗で迎えた3試合目で呼ぶとかならわかるけど、1試合目でやったというのが。

 『キン肉マン』って物語もキャラも安定してるから、僕ら無意識にずっと続くって思ってるんだよ。でも、今が『キン肉マン』の最終章だとしたら......。

 これがマリポーサの最後の闘い。

 と考えると、マリポーサが飛翔の神を招聘してもおかしくない。だとしたら、僕らも最後だと思ってこの闘いを見たほうが、気持ち的にもっとノレるというか。

 うん。さみしいですけどね。

 さみしいけど、そういうふうに見るべきシリーズが今だ、ということを、僕らみたいな人間がもっと語ったほうがいいような気がして。僕も普通に毎週『キン肉マン』を読んでいるけど、「これが最終章かもしれない」と思ったら、大切に読むんだよ、やっぱり。

 そういう重要なシリーズが始まってるんだ、ということを意識して読んだ方がいいと。

 これがマリポーサの最後の試合かもしれないと思うと、たぶんみんな、読む時の思いが2倍3倍に濃くなるでしょ。オカダ・カズチカが新日本プロレスを離れてアメリカのAEWに行ったけど、この間の新日本プロレスでの最後の試合(2月24日、北海道立総合体育センター)、「これで最後か」と思いながら観ると、やっぱり胸にくるものがあるんだよ。

ウィル・オスプレイもそうだった。ずっといい試合が続いているのは『キン肉マン』と一緒だったんだけど、「今日で最後か」と思いながら観たら、すごい感慨深くなっちゃって。

 一緒に行った今年の1・4の東京ドームですね。来た人のほとんどが、新日本でのオスプレイを東京ドームで観れるのは今日が最後だってわかってたから、入場の時ヤバかったですもんね。みんな「オスプレイ!」の大合唱で。

 マリポーサもそうで、これが最後の試合だから技も全部出すし、飛翔の神も呼ぶ。

 そこまでした上でマリポーサが負けると、ファンも気づくでしょうね。

 飛翔の神と契約したから、たとえ勝ったとしても無事ではいられないし。そうやって、これから出てくる超人たちがみんな最終奥義を出して、自分たちのアイデンティティを示す、全精力をかけて自分のすべてを出す、っていうシリーズが、『キン肉マン』で始まっている。

それを今は読んでいない人が知ったら、「え、最後なの?」って戻って来るんじゃないかな。それこそ武藤敬司の引退興行の(2023年)2・21の東京ドームの時、かつてのファンがみんな戻ってきたじゃない?

 そうですね。あと、アニメを観たのがきっかけで、今の連載を読んで......。

 「え、最終章なのか!」って気づいてくれるといいよね。

 今も連載が、これだけの高いクオリティで続いているということを知らなくてびっくりする人、多いんじゃないかな。ここまで描かないですよ、ゆでたまご先生みたいな大御所が。

 最後だからこその、このテンションとクオリティなのかもしれないね。

 そうですね。で、本当の最後はまず間違いなく、キン肉マンの試合で終わるわけじゃないですか。

 うん。その時まで、これが最終章かもしれない、と思いながら読むことが、『キン肉マン』をずっと追ってきたファンとして正しい読み方だと思うね。

 まあ、これから描かなきゃいけない試合の量とかを考えると、あと1、2年で終わることはないと思うけど......。

 あくまでも僕らの予想だけど、もう終わりが始まっている。終わりに向かってひとりひとりのキャラクターを、ひとつひとつの闘いを描いている。ということを意識して、大切に読んでいきたいね。

燃え殻(MOEGARA)
1973年生まれ、神奈川県出身。働きながら始めたツイッターでの発言に注目が集まり、作家デビュー。最新著は『夢に迷ってタクシーを呼んだ』(新潮社)。ドラマ『あなたに聴かせたい歌があるんだ』(漫画:おかざき真里/扶桑社)はHuluで配信中。出演中のラジオ番組 『BEFORE DAWN』(J-WAVE、毎週火曜26:00~27:00)もチェック

爪切男(TSUMEKIRIO)
1979年生まれ、香川県出身。2018年『死にたい夜にかぎって』(扶桑社)で小説家デビュー。2020年、同作が賀来賢人主演でドラマ化。風俗嬢との公私ない交ぜの触れ合いの様子をつづった『週刊SPA!』連載コラムを一冊にまとめた『きょうも延長ナリ』(扶桑社)が発売中。集英社発のWebサイト『よみタイ』で、コラム『午前三時の化粧水』、ドライバーWebで『横顔を眺めながら ~爪 切男の助手席ドライブ漂流~』を連載中