3月29日、CBC/TBS系列「アガルアニメ」枠で7月から日曜よる11時半より放送予定のTVアニメ『キン肉マン 完璧超人始祖編』超豪華追加キャストが発表された。
そのメンバーでは、紅一点、上坂すみれがミートくん役に就任。こちらを祝して、4月1日発売『週刊プレイボーイ』16・17合併号では、"すみぺ"のグラビアインタビューを掲載。ミートくんモチーフのかわいい"すみぺ"の写真は週プレ本誌で楽しんでいただき、本稿では『キン肉マン』ガチ勢の"上坂すみれ"を完全版インタビューとしてより深掘りします!!
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●イチファンだったはずが、いつの間にか参加者に!?
――そもそも上坂さんと『キン肉マン』の出会いは?
上坂すみれ(以下、上坂) はじめは学生の頃、昭和のプロレスに興味を持って大好きになりまして、そこをどんどん調べていくと、自然とこの作品にたどりつくようになってるんですよね(笑)。実際のプロレスだと私はタイガー・ジェット・シン選手が特にお気に入りだったんですが、あのインパクトに負けない強烈な個性を持つ超人が『キン肉マン』にはたくさん出てくるので。
そうやってちょうどハマリはじめた頃に、地元のレンタルショップで「キン肉マン超人大全集」という、超人のテーマソングを大量にまとめて収録したCDを見つけたんです。それがあまりに衝撃的な商品で......元々キャラソンというもの自体に興味が深かったのもあるんですが「こんなに豊富なキャラソンがある作品なんだ!」ということにまずとてもビックリしました。それからしばらくは、もう毎日のように聞くようになりまして。
――特にお気に入りの曲はあったんですか?
上坂 たくさんあって迷うんですけど、ひとつ挙げるならミスターカーメンの「ファラオの呪い」という曲ですね。あのミスターカーメンがまさか歌に出てくるのかという衝撃から始まって、エジプトみのある曲調、歌詞、そこで語られるセリフ、すべてが本当にカッコいい。それで私が毎週やらせてもらってたラジオ番組でも、そういう話をしたり、曲をかけたりしてたんです。そうしたらある日、私のファンクラブイベントで歌ってほしい曲を募ったところ、この「ファラオの呪い」が1位になりまして。それで満を持して私自身で歌わせていただいたこともありました。
――それほどまでの作品愛にあふれる上坂さんが、新アニメではミートくん役に。決まったときのお気持ちは?
上坂 まず、オーディションが開催されるというお話を聞いただけで「新しいアニメが始まるんだ!」ってとてもうれしい気持ちになりました。受けるにあたって、さまざまなキャラクターの作画設定資料が送られてきたんですけど、最初はもうそれを見ているだけでただただ大興奮で......たとえ受かっても受からなくても、こんな貴重なものを目にできただけで幸せだと思ってしまうほどに(笑)。
そんな興奮状態のままオーディションに突入していったので、最終的に役をいただけると聞いたときには正直、それまでただのイチファンだったのが、作品に参加させてもらえる立場に変わったことに戸惑いました。
――ある日を境に突然、アニメチームの一員に。
上坂 はい......。でもオーディションを受ける上で、条件欄に「『キン肉マン』が好きな人」というのが確かありまして、少なくともそれなら他の女性声優さんに負けない!という気持ちで臨んだので、もしそこがしっかりと伝わって役をいただけたのだとしたら本当にうれしく思います。とはいえここまできた以上、ただのファンで居続けるわけにもいかないので、そこはしっかり気を引き締めていこうとも思ってます!
●「王子!」のセリフの内に込められた深淵さ
――ミートくんの役づくりにはどういうイメージで取り組まれているんでしょう?
上坂 やっぱり昔からのファンとしては、初代のアニメで松島みのりさんがつくり込まれてきた声のイメージがずっと頭にありますし、おそらくみんなもそうだと思うんです。元気だけど利発でしっかりしてて、キン肉マンに最も近しいパートナー。
しかも、ただかわいいだけではなく、時には自ら闘うガッツもある。あの声があまりにピッタリすぎて、私も大好きなだけにプレッシャーを感じるところは大きいんですが、だからといって、みのりさんを意識しすぎてただのモノマネになっちゃいけないな、とも同時に強く思うんです。
たとえば、今のキン肉マンもまた、同一人物ではあるけどあの頃からしっかり成長を遂げたキン肉マンでもあって、当時から何も変わっていないはずはないんですよね。それは実際、私自身も最初に第1話の収録に臨んだ際に、今よりもかなりみのりさんに寄った演技から入っていったんです。
ところが、その現場で「今のミートくんはもっと気持ち的に大人になってるはずだ」ってご指摘をいただいて、確かにその通りなんですよね。身体はそんなに大きくなってないですけど、精神的に成長したそんな彼をどこまで見せられるか。そこは、まさに新しいシリーズの頑張りどころだと思って日々挑んでます。
――そんなご苦労も多い半面、演じていて楽しさを感じられるところなどはありますか?
上坂 やっぱり一番は「王子~~~!」っていうセリフですね。キン肉マンのことを「王子」と呼べるのはミートくんだけで、そこにはさまざまな気持ちが込められていると思うんです。今のキン肉マンは、本来なら「スグル大王さま」と呼ぶべきなのは彼もわかっていて。
その上で、あえて王子と呼べと本人からも求められたという流れには、ふたりにしかわからない思いが込められているんだと思います。新しいキン肉マン役の宮野真守さんとは同じ時間の収録になることが多いんですけど、そんなふたりのコンビ感は大切にしていきたいな、と思いながら毎回大事に演じさせていただいてます。
――他にもミートくんを演じられる上で、気をつけていらっしゃることはありますか?
上坂 あまり熱くなりすぎないことですね。新しいシリーズでのミートくんはやはりセコンドとしての役目が最も大きくて、あのメンバーの中では闘いをしっかり分析していく立場ですよね。だから作品の性質上、周りのみんなはヒートアップしがちなんですけど、ミートくんだけは決してそこにつられることなく、常に必ず一歩引いて冷静に試合を俯瞰していなきゃいけないかな、というのは特に意識しているポイントです。
――その意識はまさに、現実の格闘技試合会場におけるセコンドのあり方そのものですね。
上坂 ミートくんも本当は、頑張れば自分でも闘えるんですけどね。
――過去にはミキサー大帝も倒してますしね。
上坂 あの恐ろしいミキサーの中に放り込まれても手足を伸ばして踏ん張って、あれは身体の小さな彼にしかできない戦法ですから......。感動的ないいお話でした。
松島みのりさんに聞いてみたかったことは?
――ところで、先ほども少しお話にあがった、初代ミートくん役の声優を務められた松島みのりさん。残念ながら既に鬼籍に入られてしまっているのですが、上坂さんご自身がこうして現実にミートくん役を引き継がれた今、もし叶うなら聞いてみたかったことなどはありますか?
上坂 私は、いつまでもみのりさんの声を聞いていたかったという気持ちがまず強いんですが、仮にタイムスリップできるものなら、実際のみのりさんのアフレコ現場をぜひ拝見したかったです。それはもちろんミートくん役のこともあれば、実は他の作品でも、かつてみのりさんが演じられていた役を今は私が演じさせていただくことがあって。そうなるとすべて含めて、一度しっかりご挨拶したかったなという気持ちが非常に大きくて......。
あとは、初代『キン肉マン』アニメを見てると、役者さんの演技が本当にみんな楽しそうに聞こえるんですよね。そうなると、あれはどこまでが台本でどこまでがアドリブだったのかも非常に気になりますし。
何よりミートくんの初登場回、キン肉マンが牛丼屋さんで牛丼愛好会のメンバーと「タッグマッチじゃあ!!」って騒いでるところに宇宙船から降りてきたミートくんがやってきて、そこで初めてふたりが会話をするんですけど、あの最初の会話の雰囲気をどう作っていかれたのか。その時点ではまだいろんな解釈ができたと思うんです。例えばメガネキャラだし、もっと賢さを前に出していくようなお芝居もある中で、どうやってあの朗らかなキャラクターになったのか。
――そう言われると確かに、アニメのミートくんは原作よりもマスコット感が強まってる気がしますね。
上坂 そうなんです。だからバッファローマンにバラバラにされたときなんて、一体どんなお気持ちだったのかな......とか。そこは最近も見返したんですけど、直前にミートくんが「うわあ~~~!」って叫ぶのが、あまりにせつなくて。
――仮に今、上坂さんがそのシーンを演じてくれと言われたらどうですか?
上坂 うわぁ......ツラいですよねえ。もし私ならその一言にめいっぱいツラさを込めて......。その時ばかりは、バッファローマンのことが嫌いになっちゃうかもしれません。でも、やっぱりいいなと思うのはその直後、バッファローマンが「心配するな、元通り身体を組み合わせれば生き返るようにしてある」ってすぐフォローしてくれて、結局めちゃくちゃ優しいですよね(笑)。
――本当に悪い人などいない?
上坂 悪魔超人なのに......(笑)。でも、そこは素敵でした。
"魂の継承"の場面に たまたま立ち会って......
――ちなみに今のアフレコ現場の雰囲気はいかがですか?
上坂 時代の流れで個別の時間帯の収録になることも多いんですが、他のキャストの方々も世代だったり『キン肉マン』好きな人ばかりなので、何人かでご一緒させていただくときは、たいてい皆さん「昔どんな話が好きだった」とか「オレはこのキンケシ持ってた」とか、『キン肉マン』ファンの同窓会みたいな集まりになってることが多いです(笑)。
面白かったのは一度、短い一言しか出番がない超人が大量に出てくる回がありまして、そういうときは即興でその場にいる人たちで役を振り分けるんですね。皆さんそれぞれに「オレはこの超人をやりたい!」って主張を始めるキャラ争奪戦が始まって。大先輩たちが童心に帰ったかのように役の取り合いをされていた光景は、見ていて私もファンとしてほほえましくもうれしい気持ちになりましたね。
あと、ものすごく感動したのは、少し前の『週刊プレイボーイ』でも掲載されていた(プリンス・カメハメ役の)神谷明さんと(キン肉マン役の)宮野真守さんが声をそろえて収録された「風林火山」の場面。
――年始の号で記事にさせていただきました。新旧の主役同士でもあるお二方が同じ「風林火山」の技名を同時に叫んで繰り出すシーンですね!
上坂 私は幸いにしてその現場に立ち会うことができたんですけど、その瞬間、本当にジーンと来たといいますか......まさに魂の継承をひしひしと感じまして、忘れられない思い出になりました。
ウォーズマンは女子に好かれる要素満載!?
――ミートくん役というところから離れた質問もさせてください。ファンとしての上坂さんが最も好きな超人をひとり挙げるとしたら誰になりますか?
上坂 私は、もう最初に読んだ頃からウォーズマンが大好きでして。表情が見えないがゆえのかわいさのようなものを私としては感じているんですが、おそらくそういうところじゃないですかね。しかも、苦労人なんですよ。
幼い頃はロボ超人と差別を受けていじめられ、やがて天涯孤独になって、やっと現れた理解者は荒(すさ)んでいた頃のロビンマスクで毎日ムチでしごかれて......。でもその甲斐あって当初のパロ・スペシャルは全く破れる気がしない最強の必殺技でしたし、そもそも散々周りを恐怖に染めてきたベア・クローを失った方が実は強いなんて、ロマンの塊じゃないですか。
しゃべらない無口でクールなキャラなのかと思いきや、のちにしゃべるようになったら、どの発言も異常に素直で優しい善人なんですよ。仲間になる前と後のギャップでいうなら、これまでに登場してきた全超人を含めても未だにいちばん落差が大きいと思います。
――言われてみればギャップ萌えの極みですよね。
上坂 その魅力を語るうえで、私が個人的に最も好きなシーンがありまして、ウォーズマンってよく被害に合うので治療が絶えないんですけど、病院で包帯を巻かれて入院しながらも、仲間の試合中継を見て応援してるシーンがあるんです。だけど、そのベッドで半分布団にもぐってテレビを見ている様子が......もうたまらなくかわいいんですよ。
――キン肉星王位争奪編でのザ・マンリキ戦後、姫路超人病院でテリーマンと一緒に入院しているときの様子ですかね。
上坂 はい、そこです! 大人しくお布団にもぐってて。そのほか時折見せるウォーズマンスマイルにしても、基本怖いんですけど時々口元が緩くなってかわいい瞬間があったり。そんな感じのかわいさと、カッコよさと、アツさと、それに寂しさが同居してて、知れば知るほど好きになれるすごいキャラクターだと思います。超人師弟コンビもカッコいいですし、初登場から40年以上も経過した今に至るまでずっと大好きです。
ゆでたまご先生ならびにファンへのメッセージ
――今も続いている原作は今年で45周年となりますが、上坂さんから作者のゆでたまご先生に何かメッセージをいただけますでしょうか?
上坂 それはもう、こんな長い間にわたってずっと神のような存在でいらっしゃるのに、以前には私から持ち込んだ企画で対談していただけたこともありますし、何より今も毎週、面白いお話を描き続けてくれていて、まずはいつも本当にありがとうございますという気持ちです。これからもご健康に気をつけられて、ずっとカッコいい王子たちを描き続けてもらえるとうれしいです。
――それでは最後に、7月の放送開始に向けて新作アニメを楽しみにされているファンの皆さんに上坂さんからメッセージをお願いします!
上坂 キン肉マンの成長物語を中心に昭和の魅力満載で進行していった初代アニメも私は大好きなんですけど、新しい完璧超人始祖編はキン肉マン以外の皆さんごとの推し超人たちの成長も存分に感じられる作品だと思います。それを見て、過去の話を読み返すと、また新しい魅力が見つかるという無限にループしていくような奥深さもあって......。
何よりただ見るだけで絶対元気になれる作品なので、特に未見の方はこれを機にハマってもらえると私もイチファンとしてうれしいです。ぜひご覧いただいて、私たちと一緒にその魅力を感じてください。よろしくお願いします!
●上坂すみれ(Sumire UESAKA)
1991年生まれ、神奈川県出身。2011年に声優としてデビュー。昭和のカルチャーをこよなく愛し、3月発表の第十八回声優アワードではインフルエンサー賞を獲得するなど独自の感性で広く注目を集め続ける。代表作は『うる星やつら(2022年版)』ラム役など多数。
公式X【@uesaka_official】
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