酒井優考さかい・まさたか
週刊少年ジャンプのライター、音楽ナタリーの記者、タワーレコード「bounce」「TOWER PLUS」「Mikiki」の編集者などを経て、現在はフリーのライター・編集者。
ジュースごくごく倶楽部、というバンドをご存知だろうか。本格的な歌唱&演奏に、くすりと笑える歌詞。そしてひとたびライブを行えば、3000人規模のライブハウス・豊洲PITを満員にする人気ぶり。その正体は、ロングコートダディ・堂前(バンドでは堂前タオル名義)、ニッポンの社長・辻(バンドでは辻クラシック名義)のふたりが中心となって結成された、6人の芸人によるバンドだ。
そんなジュースごくごく倶楽部を詳しく知るために、今回はフロントマンを務めるジンジャーエール阪本ことマユリカ・阪本と、愛コーラことムームー大陸・山﨑おしるこのふたりをライブ終演後に直撃。メンバーを紹介してもらいつつ、バンドの現在地について話を聞いた。
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――おふたりとも、炭酸がお好きなんですか?
愛コーラ 名前の件ですか?(笑)
ジンジャーエール阪本 なんなら炭酸は全然飲まないんですよね(笑)。バンド名がジュースだから、というだけで。
――おふたりとも芸人として舞台で拝見したこともありますが、バンド活動では芸人の時よりもはしゃいでいて、結構ギャップがありますよね。どちらが本物の人格なんですか?
阪本 ムズいな......。でも、お笑いではあんまり出ることのない人格をバンドでは出してると思いますね。だからどっちもほんまやと思うんです。お笑いでは「イエーイ!」みたいなことを言う場面はあんまりないですけど、バンドでは照れを振り切ってやってます。
愛コーラ たしかに。私も、同じ人格の中にバンドマンと芸人がいるみたいな感じですね。
――他のメンバーのみなさんもそうなんですか?
阪本 どうなんですかね。楽器隊のみんなはお笑いをやってる時よりかはカッコよく映るかもしれないですけど、そもそもお笑いをやっててあんまりカッコつけることってないですからね。まあ、芸人でもたまに雑誌の表紙とかでカッコよく撮ってもらったりもしますけど、ああいう感じに近いかもしれないです。
――そんなメンバー全員の役割を紹介してもらえますか。
愛コーラ 阪本さんは、もう言わずもがな、誰しもが認めるカリスマボーカルです。
阪本 「お前がいないと始まらん」みたいなことはよく言われますね(笑)。全然そんなつもりないですけど、結構カリスマとか言ってもらえたりして。
愛コーラ ただ、みんなのおもちゃでもありますね。
阪本 いや、カリスマね。
愛コーラ 辻(クラシック/ニッポンの社長)さんなんかはよく阪本さんをおもちゃにしてます。
阪本 全然。カリスマ。
――(笑)。愛コーラさんはどんな人ですか?
阪本 愛コーラはポテンシャルの塊というか、原石なんですよ。もちろんポテンシャルという意味では僕のほうが先は行ってますけど、すごくいいものを持ってる妹みたいな感じです。
愛コーラ (笑)。
――それは歌やパフォーマンスでですか? それともバンド内での役割として?
阪本 (ニヤニヤしながら考える)
――ふたりは全然目を合わさないんですね(笑)。
阪本 そう、ほぼ目が合ったことない。でもほんまに言うと、めっちゃ音感があるし、音程を外さないし。「ここにハモりたいんやけど」って言ったらすぐ分かるタイプで、音楽の知識や才能があるんですよ。
愛コーラ えー! ありがとうございます。
――今日のライブでも歌がうまくてビックリしました。
阪本 そう、原石。
愛コーラ 原石なんですね(笑)。
――愛コーラさんは多才で、イラストを描いたり絵本も出版されたりしていますけど、バンドではアートワークやグッズのデザインも担当されていて。
阪本 そうですね。楽曲のジャケットとかグッズも担当してくれていて。ほんまに心強いメンバーが加入してくれたと思いますね。(愛コーラは2022年6月に加入)
愛コーラ でも原石(笑)。
阪本 まあ僕よりかは下なので(笑)、カリスマと原石のふたりでお送りしています。
――他のメンバーの皆さんについても教えていただけますか。
阪本 堂前(タオル/ロングコートダディ)さんは言わずもがな、ロングコートダディのブレーンですけど、この人が元々「バンドをやろうよ」って辻さんに言ってバンドが始まったので、言わばこのバンドの「発起人」ですね。
しかも、その「やろうよ」って言った時にはまだ楽器未経験で。そこから教室にも通わずに我流でめちゃくちゃ練習して、プロのアーティストさんからもベースが上手いと褒められるようになったという。完璧主義者だと思いますね。
愛コーラ そう。天才でもあるし、努力家でもある。あまりそうは見えないし、そうは見せないんですけどね。
阪本 けなそうと思えばいくらでもけなせますけどね。一番変な顔だし、芸風でごまかしてるだけで。
愛コーラ (笑)。
阪本 でもこの人がいなければバンドもなかった、本当に発起人ですね。で、堂前さんが「発起人」なら、辻さんは「リーダー」です。バンドのすべての舵(かじ)を握っている。バンドとしての活動は辻さんが曲を作るところからスタートするんですが、その曲の歌詞を辻さん自身が付ける時もあるし、僕らに作詞を振ってくれることもあるし。そのさじ加減も辻さんが決めるし、PVをどうするとか、ライブをどうしようとか、バンドのいろんな方向性を決めるキーマンが辻さんですね。
――フロントマンのふたりは、辻さんが作った曲を歌う時、「なんだこの曲?」みたいなことはないですか?
愛コーラ いや、それはないですね。
阪本 うん、ないですね。辻さんの曲はほんまにすごいですから。ただ、辻さんは音楽をたくさん聴いてて、ルーツになってるジャンルやバンドがたくさんある。だから「ブルースっぽく」とか言われても僕は聴いたことがなくて、「どんな歌い方したらいいんやろ?」みたいなことはたくさんありますけどね。でもそれだけいろんな要素を自分流に取り入れてる、すごい人だと思います。
――ここまでカリスマ、原石、発起人、リーダーが出ました。
阪本 それで言うとポイズンさん(ポイズン反町/シカゴ実業・山本プロ野球)は「化け物」ですね。バンドをやろうという話になった時に「俺も入りたい」って言って、ドラム未経験で入って来られた方なんですけど、バンドの中でドラムって言ったら一番乱れちゃいけない大事なパート。全くの経験ゼロからこのレベルまで来た男です。
愛コーラ バンドで出す音において責任も大きいと思うし、本当、縁の下の力持ちです。まさに化け物。
阪本 スタジオで練習する時も、誰よりも早く来て一番練習してますしね。体も常に筋トレで鍛えてますし、ミスターストイックです。
――最後に、あたし(滝音・さすけ)さんは?
阪本 あれは「化け物」ですね。そのまんまの意味で。
――(笑)。カリスマ、原石、発起人、リーダー、化け物、化け物の6人組ということですね。
阪本 そうです。あいつはピアノが弾けるただの化け物です。
――堂前さんが辻さんに「バンドやろうぜ」と言って、最初は趣味から始まったということですが、メンバーのみなさんは本業のお笑いも忙しくなってきて、バンドの規模も大きくなってきて、活動は大変ではないですか?
阪本 でも、月に1回くらいこういうライブがあるっていうのは、いい意味で息抜きにもなってるんです。もちろんバンドも仕事なんですけど、メンバー自体、全員仲いいメンバーなんですごく楽しいし、みんなもすごく楽しめてるんじゃないですかね。
もちろんみんな忙しいんで、練習するってなっても夜中の11時から2時までとかやることもあるんですけど、しんどさとか大変っていう気持ちはそんなになくて。こうやってライブやったら楽しいしね。
愛コーラ はい。私もしんどさは全くないです。私は途中加入ですけど、どんどんライブの規模が大きくなっていくたびに、なんかワクワクが増えてきています。
――7月にはセカンドアルバムのリリースや、なんばHatchにて「ごくごくフェス」が開催されることも発表になりました。どんどん規模を大きくしていますが、ライバルや目指すところがあれば教えてください。
阪本 でも、そういう意味で言ったら、僕らは結構恵まれてて。もう十分すごいバンドの方々とたくさん対バンさせてもらってるんですよ。たとえば四星球さんとか、おとぼけビ〜バ〜さんとも何度か対バンさせてもらって、みなさん、本当はこんな結成2~3年のバンドが一緒にやらせてもらえるような相手じゃないですよね。
でも、みなさん結構お笑いが好きだったり、共通の知り合いが多かったりもして、「ぜひ次は一緒にやりましょう」って言ってくれる。だから目標とかライバルとかは全然なくて、今でも十分恵まれてるなと思いますね。
――なるほど。ちなみに(阪本の相方の中谷が在籍しているアイドルユニット)ZiDolはライバルではない?
阪本 あんなの比べ物にならない。言わんといてくださいよ。
愛コーラ (笑)。
――それでは最後に、読者に一言メッセージをお願いします。
愛コーラ 音楽って、なかなか普段だと恥ずかしくて言葉にできないようなことでも、音に載せると伝えられて気持ちがいいっていうのはあるんですよ。例えば(阪本が作詞した)「サボリの歌」っていう曲があるんですけど、一見面白いような歌詞に見えて、実は結構メッセージ性がある。
そういうのを受け取ってもらって、嫌なことがあった時とかに私らの曲を思い出して、元気になってほしいなっていうのはありますね。そういうところはお笑いよりも音楽のほうがやりやすいので。
阪本 僕らはリーダーの辻さんの方針で、芸人のバンドとはいえ「音楽でふざけるのはやめよう」「音楽ではちゃんとしよう」っていうモットーがあるんです。もちろんみんな芸人なんで、MCで面白いことを言ったりはするんですけど、音楽で失敗して、それで笑いを取るようなことはしない。そういうことが魅力として伝わって、ライブに来てくれる方がこれからどんどん増えたらありがたいなっていう気持ちですね。
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●ジュースごくごく倶楽部(ジュースごくごくくらぶ)
ジンジャーエール阪本(マユリカ/ボーカル、語り)、愛コーラ(ムームー大陸/ボーカル)、堂前タオル(ロングコートダディ/ベース)、ポイズン反町(シカゴ実業/ドラム)、辻クラシック(ニッポンの社長/ギター)、あたし(滝音/キーボード)という6人の大阪出身芸人からなるバンド。これまでに20曲以上を配信でリリースし、昨年3月にはファーストアルバム『ジュースごくごく倶楽部の1杯目』をリリース。今年7月にはセカンドアルバムをリリース予定。
オフィシャルサイト:https://www.juice-gokugoku.com/
X:https://twitter.com/5959club
週刊少年ジャンプのライター、音楽ナタリーの記者、タワーレコード「bounce」「TOWER PLUS」「Mikiki」の編集者などを経て、現在はフリーのライター・編集者。