「餃子は難しい。調理しながら味を調整できないんです。だから作って焼くしかない」と語るリュウジ 「餃子は難しい。調理しながら味を調整できないんです。だから作って焼くしかない」と語るリュウジ

ひろゆきがゲストとディープ討論する『週刊プレイボーイ』の連載「この件について」。料理研究家のリュウジさんを迎えての13回目は、YouTubeなどでたくさんのレシピを発表しているリュウジさんが、いったいどうやってレシピを考案しているのか?ということについて。また、作るのが難しいレシピについても聞きました。

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ひろゆき(以下、ひろ リュウジさんはこれまでたくさんのレシピを発表していますが、レシピはどうやって考えているんですか?

リュウジ(以下、リュウ 僕にとって、レシピ作りは冷蔵庫の中身で謎かけや大喜利をするような感覚なんですよ。

ひろ 「トマトとかけましてニンニクと解く」とか「みんなが驚く卵焼き、いったいどんなの?」みたいなイメージですか。

リュウ そうですね。僕はそれをローラー作戦でやっています。「豚肉とチーズが余っているな。じゃあ、これで作ったことがないレシピはなんだろう? 丼は作ったかな? うどんは作ったっけ?」と考えて、順番に塗りつぶしていく感じです。

ひろ 味は予想どおりにいくものなんですか?

リュウ 着地点を見極めておけば、外れることはありませんね。例えば「この食材にこれは合う」という組み合わせは、経験則でだいたいわかるんです。この前、ユーチューブで、3人のスタッフが自由に食材を持ち寄って、それで料理を作るという企画をやったんですよ。そうしたら「鶏つみれ」「ブロッコリー」「納豆」という組み合わせになりました。

ひろ 納豆ですか(笑)。

リュウ 少し考えましたけど、すぐにレシピは決まりました。味のベースは鶏ガラを使って中華スープっぽくして、ブロッコリーと鶏つみれを入れて、そこに納豆も投入するんです。ただ、納豆はにおいがけっこうキツいのでゴマ油を入れる。

ひろ へー、全然予想ができないんですが、おいしいんですか?

リュウ すると、納豆の主張しすぎるところをゴマ油がうまく抑えてくれるんです。僕は「ベースのスープがおいしかったら、何をぶち込んでもおいしい」と思っていて、困ったら鍋物かスープにするんですよ(笑)。

ひろ なるほど。

リュウ あとは、怪しい組み合わせだとしても、調味料でマスキングすればいい。なので、最終的には調味料をちゃんと使えばおいしく仕上がります。

ひろ じゃあ、ちょっとむちゃ振りですけど、お題が納豆と生クリームとかならどうします?

リュウ 例えば、納豆クリームパスタとかですね。あと納豆カルボナーラもおいしいですよ。

ひろ 最後に調味料でまとめるすべがあれば、どんなにアクロバティックな組み合わせでも、ちゃんとしたレシピになるんですね。

リュウ ただ、普段はもっと地味なレシピが多いですよ(笑)。この前は、油揚げを細く切ってうどんの代わりにしました。麺みたいにすすって食べられるんです。油揚げって、元は豆腐なので糖質が抑えられるし、ヘルシーでおいしいんですよ。

ひろ うどんの代わりに油揚げを麺にしたら、立派な糖質オフレシピになる。そういった置き換えもレシピ作りで意識してます?

リュウ そうですね。あとは見せ方も重要です。油揚げ麺を丼に入れて、見た目も普通のうどんっぽくする。あとは横展開ですよね。例えば、油揚げ麺はうどんだけでなく、醤油ラーメンのスープと組み合わせることもできる。これで、もうふたつレシピが完成したじゃないですか。

ひろ 確かに、それだとレシピを量産できますね。

リュウ あとは再現レシピです。この前、友人から「CoCo壱番屋」のパリパリチキンカレーを再現してくれと頼まれたんですよ。で、市販されているルーを使いながらいろいろ試行錯誤した結果、ココイチよりおいしいカレーができました(笑)。


ひろ うは。逆に作ってみたけど失敗したレシピってありますか?

リュウ 再現系は最終地点までたどり着かなかったものもあります。あと餃子は難しいですね。餃子って調理しながら味を調整できないんですよ。

ひろ 確かに。焼き餃子なら焼き上がってからしか確認できないですよね。

リュウ 一応、具だけ焼いて味を確かめることもできるんですけど、そうすると肉汁が飛んで完成形とは違ってしまう。だから、餃子はいろんなバリエーションを作って焼くしかないんです。この前、「野菜餃子」「肉餃子」「海鮮餃子」の3種類を作ってほしいという依頼があったんですよ。

ひろ レシピ作りが難しい餃子を3種類(笑)。

リュウ 「野菜餃子」はすぐ思いつきました。肉を20%くらいに抑えつつ、シイタケを入れてちょっと肉感を出すんですよ。「肉餃子」は、お肉を多めにして野菜はニラとネギでシンプルにする。あと、多めに水を加えて小籠包的に肉汁がしたたる演出をしました。一番時間がかかったのが「海鮮餃子」です。

ひろ 海鮮は難しいんですか?

リュウ シーフードミックスをミンチ状にしたんですけど、もう少しジューシーさが欲しくなったんです。それでスープを少し足したんですが、なんやかんや丸2日くらいかかりました。しかも、その翌日に「もうちょいうまみが欲しい」と思って、また焼き直してやっと完成しました。

ひろ 一般人がそこまで餃子を食べてたら、何が正解かわからなくなりそうですけどね(笑)。

リュウ あとはピザやグラタンも焼いてみないとわからないですね。ホワイトソースの味見くらいはできますけど、火を通すとまた変わってきますから。

ひろ デザートは作らないんですか?

リュウ デザートはムズいんですよ。僕は何千とレシピを考えてきましたが、動画で出しているデザートのレシピは10個もないです。

ひろ それはリュウジさんが大好きなお酒に合わないから?

リュウ まあ、それもありますけど、僕はデザートの専門家じゃないというのが一番の理由ですかね。パティシエではなくてもデザートは作れますけど、分量をきっちり量らないといけない。例えば、薄力粉が何gか多くなっただけでシュークリームがうまく膨らまなかったりするんですよ。

ひろ そういうシビアさがあるんですね。それこそ、膨らみが足りないから、途中で薄力粉を足して膨らませるとかできないんだ。

リュウ 修正が利かずに、そのまま失敗になるんです。友達のパティシエが言うには「シュークリームができればあとはなんでもできる」らしいんですけど、シュークリームはもう作れる気がしないですもん(笑)。

ひろ 決められた分量と決められた温度でマニュアルどおりきちんと遂行する能力が必要なんですね。科学に近いものがありますね。

リュウ そうなんですよ。なので、デザートのレシピを作るのは得意ではないですが、料理ならいくらでもアイデアは出てきます。よく「毎日、料理を考えるのは大変じゃないですか?」みたいに言われるんですが、まったくそんなことはありません。

ひろ じゃあ、ストックはけっこう多いんですか?

リュウ 公開が追いついていないくらいです(笑)。ただ、その中にはすごく地味なレシピ、例えばおひたしとかもありますけどね。

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■西村博之(Hiroyuki NISHIMURA) 
元『2ちゃんねる』管理人。近著に『生か、死か、お金か』(共著、集英社インターナショナル)など 

■リュウジ(RYUJI) 
1986年生まれ、千葉県出身。料理研究家。近著に『虚無レシピ』(サンクチュアリ出版)など。公式X【@ore825】、公式Instagram【@ryuji_foodlabo】、公式YouTubeチャンネル『料理研究家リュウジのバズレシピ』

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