『キン肉マン』大好き作家・燃え殻さんと爪切男さんが3月の連載を激論! 『キン肉マン』大好き作家・燃え殻さんと爪切男さんが3月の連載を激論!

『ボクたちはみんな大人になれなかった』の燃え殻『死にたい夜にかぎって』の爪切男の意外な共通点、それは『キン肉マン』!!

希代のストーリーテラーのふたりが3月分の『キン肉マン』連載を甘く、そして辛く批評。

●「これなら誰も文句ないだろ」っていうキャスティング

爪切男(以下、 アニメ『キン肉マン』の声優、全キャストが発表になりましたね。

燃え殻(以下、 それにしても豪華だよね。

 ミートくんが上坂すみれ、テリーマンが小野大輔、ウォーズマンが梶裕貴、ラーメンマンが関智一......主役級の声優が集まっている。

 やっぱり『キン肉マン』だからなのかな。

 そうじゃないですか。今、『キン肉マン』がアニメ化されるなら、どんな形でもいいから参加したいと思うのが当然ですもんね。

 『キン肉マン』を知らない世代のアニメファンからすると、不思議かもしれないね。

 それぞれの声優のファンがこのアニメを観て、その中から何人かが原作のマンガを読んでハマってくれたら、すばらしいことですよね。

 うん。少なくとも、これだけ揃っているのはただごとじゃない、そういう格のアニメが始まるんだということは伝わるだろうから。

 新しいPV(3月29日公開第2弾)、観てみましょう。

 全然違和感なかった、どの声優も。

 そうだね。前の声を真似していなくて、別物なのに不自然さがない。あと、アニメーションがやっぱりいいよね。

 『攻殻機動隊』のプロダクションI.G.が作るとどうなるんだろうと思ったけど、本気を出してる感じが。本気というか、愛がある。

 それは感じるね。

 ミートくんもよかったですね。上坂すみれさんの声が、すごくいいです。

 ああ、そうだね、いい感じでブラッシュアップされていて。違和感はないけど、松島さんの声とは違う。マネしていなくて別物なのに違和感がない。キン肉マンもそうだよね。

 うん、ちょっとコメディチックになる時の声も、全然良かったし。

 あ、コメディチックになるところは、昔にちょっと寄せてるかもね。すごいな、技術が。あと、アニメーションがやっぱりいいよね。画が。

―今回の「先月の肉トーク」テーマ―

第444話 1億パワーの果てに!!の巻(3月4日更新)
第445話 神域に届きし者たち!!の巻(3月18日更新)
第446話 勝利のために...!!の巻(3月25日更新)
あらすじ キン肉マン マリポーサvsパピヨンマンの時間超人遭遇戦、第2ラウンド。まったく歯が立たないパピヨンマンを前に、邪悪五大神"飛翔の神"と手を結び、神の領域である1億パワーを手に入れたマリポーサ。この機を逃さぬよう、マリポーサ式マッスル・リベンジャーに入る......

●キン肉マン マリポーサがくらった豪華な敗北

 で、連載のほうなんですけど。マリポーサがパピヨンマンに一方的にやられて、無惨に敗北する。ここまで一方的になるとは思わなかったな。ゆでたまご先生がたまに描く、残虐な展開。読者を絶望させる。

 ほかのマンガだったら、瞬殺とかあるじゃない? だけど、連載を五回も使って、圧倒的にマリポーサがやられるさまを描く。これだけ何回も使って、いいとこなく......。

 でも、いいとこないのに株が上がるって、すごいですよね。

 ああ。そうも言える、確かに。

 マリポーサは勝つために禁じ手でもなんでもやって、結局負けたんだけど......なんでもやるって簡単そうに思えて、相当の覚悟がないとやれないですよね。マリポーサは本当に格好良かったなあ。

作家とか作り手は周囲から好き勝手なことを言われること多いじゃないですか。売れている人と絡んだら「らしくない」とか、自分の本をしつこく宣伝したら「みっともない」とか。そんな意見に負けて、自分が本当にやりたいことを何度も諦めてきたんですよ。少なくとも僕は。

マリポーサの試合を観て、やれることは全部やる、ということの大切さを......改めて思い知りましたね。ただ好き放題やってるヤツと、自分のやれることを全部やってるヤツって似ているようで全然違いますもんね。

僕もマリポーサみたいに、誰になんと言われようと、自分の信じたことをやり抜く強い信念を持ちたいです。

 なるほどね。こんなに圧倒的な力の差を、五回使って描くっていうのは、五大刻との最初の一戦で、今までの闘いとはレベルが違うことを見せつけるために......嶋田先生個人は、柔術をやっている総合格闘技の人だから、極まったら一瞬で終わりの世界にいるのに、作品はどんどんプロレス化しているような気がして。

 経過をどう見せるかが大事ですもんね、プロレスは。

●マリポーサは山ちゃん?

 そうそう。経過を見せることで、これまでの超人との力の差を、読者が共有できるようにしている。その素材として、マリポーサとゼブラは、とてもよかった気がするな......。

プロレスラーでも、負けても強い人っているじゃない? 負けフラグが立っているんだけど、絶対に負ける、とは決めつけられない。北尾光司vs山崎一夫みたいな。

 はははは。ああ、なるほどね。

 「ブックとしては北尾が勝つはずだよね」と思いつつも、観ていると「あれ、山ちゃん、いけるのでは?」と思える、その感じ。

 そうか、マリポーサは山崎一夫。

 俺はあの日、横浜アリーナで祈りながら応援してたから。「山ちゃん、勝ってくれ!」と(※1992年5月8日、UWFインター旗揚げ1周年記念興行大会)

 しかも、パピヨンマン、「超回復」を一回も使ってないですもんね。

 あ、ほんとだ! 「超回復」を出す必要すらなかったんだ。

 あと印象的だったのが、マリポーサが召喚した飛翔の神も惨敗したこと。マリポーサの胸から顔を出して、アイアンクローでつかまれて。「え、つかめるんかい!」っていう(笑)。

パピヨンマン相手に踏んだり蹴ったりの飛翔の神 パピヨンマン相手に踏んだり蹴ったりの飛翔の神

 「つかめるんかい!」は思ったなあ。

 パンチの雨を浴びせられ、ミドルキックを食らい、火の玉を噴こうとしたら口を封じられ。そしたらマリポーサに「飲み込んで胃の腑に吐き出せ」ってめちゃくちゃなことを言われて。

 でも飲み込んだよね。

 あれで飛翔の神を好きになりましたよ。マリポーサと一緒に飛翔の神の株も上がった。

 しかし、マリポーサと飛翔の神、自分の身体ごと燃やしたのに、それでもパピヨンマンにはなんのダメージも......。

 なかった。でもそこで......今の『キン肉マン』っていいなあと思ったのは、パピヨンマンが「お前たちもまとめて死んでもらうーっ!」って襲いかかって来た時に、助けに現れたのがキング・ザ・100トンとバイクマン。

 そうそう。で、ゼブラがマリポーサとマリキータマンを両肩に抱えて、バイクマンに乗って逃げ、追おうとするパピヨンマンをキング・ザ・100トンが食い止める(446話)。

 これ、燃え殻さん、読めてました?

 読めないよこんなの(笑)。でも、前回のこの対談では、マリポーサもマリキータマンも殺されるだろう、という話をしたけど、誰も死ななかったね。

 「死んで物語から退場だろう」とか言ってたけど、まだつながった感じがしますよね。

 前回「ゆでたまご先生は締めに入っている」と言ったけど......。

 物語的には畳んでいくゾーンに入っているんですよね。各キャラに魅力がありすぎて、畳めないのかなあ。

●超人総選挙2024の行方

 あと、今、超人総選挙をやってるんですよね。この記事が出る頃には、投票募集はもう終わってるんだけど、発表はまだだから......。

 そうか。ひとり3票入れられるんだよね。

4月15日いっぱいで終了。『キン肉マンジャンプVol.5』などで発表予定 4月15日いっぱいで終了。『キン肉マンジャンプVol.5』などで発表予定

 そう。今回はアニメの声優の発表もあったから、投票結果にバイアスがかかるかもしれないでですね。

 そうか、それぞれの声優さんのファンが投票するかもしれないしね。

 今の連載と関係なく、オールタイム・ベストとしてだと誰に入れます?

 俺はザ・ニンジャ。

 あ、即答できるんですね。

 ザ・ニンジャ、好きなの。学校のマンガ研究会で『キン肉マン』の画を描いた時に、ジャンクマンとザ・ニンジャがめっちゃ描きやすくて。

 俺は、今でもパッと名前が出るのはブロッケンJr.。軍服がかっこよくて。あと俺、天邪鬼(あまのじゃく)だったんで、ロビンマスクとか人気者よりもそっちにいきますね。

 ああ、わかるわかる。

 日陰者で根暗の自分が正義超人の中に入ったらブロッケンJr.だろうなあと。二人目はアシュラマンかな。笑い、冷血、怒りと三面もあって、腕が6本あって。こんな凝った敵キャラがいるんだな、と思いました。

 僕は二人目はラーメンマン。サブキャラだったはずがどんどん人気が出て、『闘将!!拉麺男』という別のマンガとして成立してしまうって、なかなかないことだよね。それに、マンガの中でブラッシュアップされて、どんどんかっこよくなっていったでしょ。

 ああ、2000万パワーズとか。

 モンゴルマンという別キャラになって、それがまたかっこよかったりして。ただ、そういう超人でありながら、子供でも描けるんだよね。これは重要な気がする、『キン肉マン』は読者参加型の作品だから。

 で、3人目は、難しいなあ......じゃあ、カレクックかな。頭にカレーを載せてるから。

 (笑)。えー?

 『キン肉マン』じゃないとキャラとして成り立たない、って考えるとね。カレクックがいるから、昔も今も、超人募集にトガッた超人が送られてくるんだと思います。446話の超人募集、見ました? タケノコマン。

 (笑)。ああ、あれはすごいと思った。

 ああいうのも、カレクックがいたから生まれてくるんだと思います。偉大ですよ。

 そうか。最後のひとりは......ウォーズマンにしよう。ウォーズマンはあの時代に「気持ち悪い」と言われるキャラクターで。当時僕、髪の毛がばんばん抜けてたんだよ。

 エッセイに書いてましたよね、脱毛症で。

 好きな女のコからもキモいって言われる状況だったんだけど、その時にウォーズマンの、第21回超人オリンピックでの活躍とか、そのあとのマスクが外れた時、機械の顔が晒(さら)されても「恥ずかしくない」って克服する時とか、グッときちゃって。

自分は醜い、自分は誰からも受け入れてもらえない、みたいなことって、僕と爪さんの中で、ものを書くことのコアなところにあると思うんだけど......。

燃え殻少年を励ましてくれた幼少期のウォーズマン 燃え殻少年を励ましてくれた幼少期のウォーズマン

 うん、それはそうだ。

 それを見て、画として見えるウォーズマンっていう存在が、基本的に朗らかな『キン肉マン』の世界観の中で、ものすごく陰影があるキャラクターに感じたんだよね。大好きです。

燃え殻(MOEGARA)
1973年生まれ、神奈川県出身。働きながら始めたツイッターでの発言に注目が集まり、作家デビュー。最新著は『夢に迷ってタクシーを呼んだ』(新潮社)。ドラマ『あなたに聴かせたい歌があるんだ』(漫画:おかざき真里/扶桑社)はHuluで配信中。出演中のラジオ番組 『BEFORE DAWN』(J-WAVE、毎週火曜26:00~27:00)もチェック

爪切男(TSUMEKIRIO)
1979年生まれ、香川県出身。2018年『死にたい夜にかぎって』(扶桑社)で小説家デビュー。2020年、同作が賀来賢人主演でドラマ化。風俗嬢との公私ない交ぜの触れ合いの様子をつづった『週刊SPA!』連載コラムを一冊にまとめた『きょうも延長ナリ』(扶桑社)が発売中。集英社発のWebサイト『よみタイ』で、コラム『午前三時の化粧水』、ドライバーWebで『横顔を眺めながら ~爪 切男の助手席ドライブ漂流~』を連載中

●TVアニメ『キン肉マン 完璧超人始祖編』超豪華声優陣インタビュー&PV

●2024年放送開始! TVアニメ『キン肉マン』完璧超人始祖編公式サイト

アニメーション制作:Production I.G
原作:ゆでたまご(集英社『週刊プレイボーイ』・『週プレNEWS』連載中)
監督:さとう陽 シリーズ構成:深見真 
キャラクターデザイン:丸藤広貴 音楽:高梨康治

【漫画あり】もしも週刊誌の事件記者が「キン肉マン」の事件簿を書いたら...
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