高橋ヨシキたかはし・よしき
デザイナー、映画ライター、サタニスト。長編初監督作品『激怒 RAGEAHOLIC』のBlu-ray&DVDが発売中。
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降参降参。
前作『ゴジラvs.コング』(2021年)のとき、当レビューではそれを「駄菓子感覚を極限まで推し進めた作品」であり、「徹底的に幼稚さを追求した果てに見えてくるものがあるのかもしれない」と書いたのだが、最新作の想像を絶する幼稚さを前に、もはやアホみたいに口を開けて呆然とするのみである。
またゴジラシリーズは昭和の時代もその後も回を重ねるに従って幼稚化する傾向があり、それは一種の退廃だったわけだが、本作はそれを意図的に行なっているため、「限りなく幼稚であるがゆえの洗練」が生じているのも興味深い。
幼稚さでもくだらなさでも突き詰めればその先に何かがある......こともたまにはあるのだ。
「比較対象がない、だだっ広い平原では怪獣の着ぐるみ感が否応なく増す」「怪獣同士がコミュニケーションするとどうやってもバカみたいになってしまう」といったかつてのウィークポイントをわざとストレートに再現しているのも「怪獣映画の楽しみの一部分は間違いなく、そういうくだらなさや幼稚さの中にあった」と作り手が確信しているからでもある。
幼稚でも、くだらなくても、作り手のうちに「確信」があることは常に重要なのだ。
STORY:未確認生物特務機関「モナーク」が異常なシグナルを察知したことを発端に、ゴジラがいる地上と、コングが生きる地底のふたつの世界が交錯。ゴジラとコングが激突する。だが、その先にはさらなる未知の脅威が待ち受けていた。
監督:アダム・ウィンガード
出演:レベッカ・ホール、ブライアン・タイリー・ヘンリー、ダン・スティーブンスほか
上映時間:117分
全国公開中
同時多発テロ直後に、無実の罪で悪名高き米軍グアンタナモ湾収容キャンプに収監されてしまった息子を救い出すべく四苦八苦するトルコ系ドイツ人のお母さんの実話である。
と書くと、いかにもヘヴィーな映画のように思えるが(そして実際に起きたことは「ヘヴィー」などという言葉で表せないくらい深刻な人権侵害であり国家による犯罪だ)、本作は「息子を心配するお母さんの立場」を徹底的にフォーカスすることで、普遍的でときにユーモラスなエンターテインメント作品として完成させた。驚くべきことである。
そのようなアクロバットが可能になったのはひとえにお母さんを演じたメルテム・カプタンがとんでもなくチャーミングだからだ。
本国ドイツで彼女は女優兼コメディアンとして活躍しておられるそうだが、昨今ストレートに描かれることの少ない「ごく普通の主婦でお母さん」役に限りない説得力と普遍性をもたせることに成功している。
「ファミリーがファミリーが」と声高に叫ぶ凡百の映画よりずっと心に突き刺さる、「ごく普通のお母さんの息子に寄せる愛情」の尊さに改めて目が開かれる思いである。お母ちゃんがんばれ! と誰もが応援したくなる作品だ。
STORY:9.11テロの1ヵ月後、ドイツ在住のトルコ移民クルナス一家の長男が、タリバンの嫌疑でキューバの米軍基地の収容所に収監される。母ラビエは息子を取り戻すため、やがて米最高裁判所でブッシュ大統領に訴訟を起こす決意をする。
監督:アンドレアス・ドレーゼン
出演:メルテム・カプタン、アレクサンダー・シェアーほか
上映時間:119分
新宿武蔵野館ほかにて全国順次公開中
デザイナー、映画ライター、サタニスト。長編初監督作品『激怒 RAGEAHOLIC』のBlu-ray&DVDが発売中。
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