ラーメンマンとプリズマンの闘いが終わりを告げるとほぼ同時に、旧シリーズ最後の強敵となるジ・オメガマンがついに登場! 相対するジェロニモの奮闘ぶりに涙の巻です!!
●キン肉マン33巻
●異例尽くめの新超人オメガマンの魅力とは
前巻から続くラーメンマンVSプリズマン戦のクライマックスから始まるこの巻ですが、僕が好きなのは『キン肉マン』って時々、何の前触れもなく読者の意表を突くように新超人が発表されることがあるんですよね。この巻に収録された2話目「不気味なる予言!!の巻」の扉がまさにその典型でした。
ここで5体の超人が大きく発表されるのですが、そのメンバーがジ・オメガマン、サムライ、キャッチマン、グレイト・ハリケーン、フィッシングマン。いずれも大物感があってとても強そうです。しかしこれ、興味深いのはこの時点でラーメンマンとプリズマンの試合はまだ決着していないんですよ。その状況で、敵とも味方とも判別がつかない正体不明の5人が発表。一体この後、どんな形で彼らが物語に絡んでくるのか...想像がかき立てられますよね。このタイミングでの超人発表という仕掛けに、僕は大いに興奮させられました。
結局のところ、まさにその回の中でラーメンマンとプリズマンの闘いは引き分けという形で決着を見るんですが、直後に早速フェニックス・チーム最後のメンバーとして出てきたのがこの扉で発表された5人のうちのひとり...あのジ・オメガマンでした!
注目したいのはその本編初登場の大ゴマです。先に言っておきますと、僕はこのオメガマンという超人がかなり好きなのですが、その贔屓めを差し引いても近年、ここまで印象的な初登場の仕方をした超人はいないのでは...とも思えるほどのインパクト。そこまでの衝撃を受けた理由は何かというと、それはズバリ「徹底的な得体の知れなさ」に尽きるのではないでしょうか。
ホラー映画に出てきそうな表情の見えないホッケーマスク、両腕両足を覆う近未来的プロテクター、頭と肩を背後からつかむ恐竜のような巨大指、そしてこれはのちに削除されますが長く伸びた悪魔風の尻尾。全体的なコンセプトは何もわからず、ただただ怖さのみが詰め込まれたこの感じ。
そんな初登場に続く3話目「謎の超人ハンター!!の巻」では、そのオメガマン自身による自己紹介から物語が始まります...が、よどみなく語られていくその紹介文がこれまた異様に長い!? こんな長ゼリフ、他の超人では見たことないぞというくらいの長尺で、しかもそれを無表情なホッケーマスクでひたすら滔々(とうとう)と語り続ける。この不気味さったらありゃしません。絶大なファーストインパクトです。
極め付きはジ・オメガマンというその名前。彼自身も語るとおりΩ(オメガ)とはギリシャ文字の24番目に来る最終文字で、実際に彼は『ジャンプ』時代の旧シリーズにおいても最後に登場した敵超人でありました。このダブルミーニングもイカしてて、もうどう見ても強豪です!
●『キン肉マン』が男のマンガである証左!?
そんな中で、このオメガマンの対戦相手役を担うのはジェロニモという流れになるわけですが、ここで大注目したいのは開始のゴングからわずか2ページ後。なんと彼は初手からいきなり最強技"Ωカタストロフ・ドロップ"をぶっ放してきたのです。信じられません。何が恐ろしいって『キン肉マン』はほぼ瞬殺がない作品なんですよ。
しっかり技を仕掛けて受けてのプロレスをして、その果てに磨き抜かれた超必殺技で試合を決める。この王道を本作は頑(かたく)なに守り続けてきたわけで、だからこそレオパルドンは伝説になれたという状況もある中、その掟(おきて)をオメガマンはいきなりぶち破ってきたのです。これだけでも、彼がいかにヤバい超人かを感じ取れた読者は多かったのではないでしょうか。
結果としてはアタルの密かな援護もあってジェロニモは一命を取り留めましたが、それで容易に戦況が覆(くつがえ)るわけもなく、おそらく誰もがここで早くも思ったでしょう「ジェロニモには荷が重い...」と。
実際、ジェロニモはこの後ジリ貧になって負けていくわけですが、そもそも彼の魅力はロビンマスクのような強さにあるわけじゃないとも僕は思うんです。一番はどんなに不利でも泥臭くあきらめずに向かっていく姿勢がまずあって、それが仲間の心に火をつける。それが如実に出たのが、132ページでザ・サムライの見せた無言の2コマ。
散っていくジェロニモに対し、その心中をくみ取って何も言わずにただ見送る。これがシビれるほどにカッコいい。動きは何もありません、しかしこの"何もしない"ということをさせたことで、ジェロニモは確実にその男の心に、目には見えない火をつけた。これはザ・サムライのカッコよさであると同時にジェロニモのカッコよさでもあったと僕は思います。だから彼は負けたけど、勝利へと続く役目は充分に果たした。彼なりの良さはしっかり出た上での敗北ではなかったかと思います。
こうして闘いは最終局面、フェニックスが登場するイリミネーション・ルーレット・マッチへとつながっていくわけですが、ここに至るまでに必ず語らねばならないのはやはりビビンバのことでしょう。
キン肉マンの応援に来た彼女の唇をフェニックスが凌辱するという、この作品にしては何とも珍しいシーン。これだけでも大きな驚きですが、それに対するキン肉マンの答えもまた大きな驚きでした。
「わたしは今まで男同士の友情のため以外にこの身を動かしたことはないが、こ...今度だけは女のために動かさせてもらうぜーーっ!!」
まさか、キン肉マンのこんなセリフが聞けるなんて...。いや、他のマンガなら主人公がヒロインのために闘うなんてごく当たり前のことなのに、キン肉マンがそれをしようとしただけでここまでの衝撃が走るという事実に僕は逆に震えました。どんだけ男のマンガだったんだ...と。
こうしてフェニックスは一般的バトル作品における悪役的立場までしっかり獲得。キン肉マンとの因縁、対比も最高潮にまで高まったところで次巻、決戦が始まります!
●『キン肉マン』4コマ
●こんな見どころにも注目!
試合の場面は一切ないんですが、本編でも触れた「不気味なる予言!!の巻」の扉でジ・オメガマンやサムライと共に発表されたこの3名。猛者感がハンパありません。言ってることもいちいちすごくカッコいい。ちなみに超人強度はキャッチマン4600万パワー、グレイト・ハリケーン6500万パワー、フィッシングマンに至っては7450万パワー、つ...強い! ネプチューンマンの命すら蘇生させた神のごとき力まで持つ彼らの闘いをいつか絶対見てみたいと、僕は今でもずっと願ってやみません!