「今永投手が剛速球じゃないのに三振を取りまくっているのを見ると興奮するんです」と語る武井壮 「今永投手が剛速球じゃないのに三振を取りまくっているのを見ると興奮するんです」と語る武井壮

ひろゆきがゲストとディープ討論する『週刊プレイボーイ』の連載「この件について」。〝百獣の王〟武井壮さんとの対談6回目は、共にアメリカに留学していた経験を持つおふたりに、日本とアメリカの違いを聞いてみました。どちらで暮らすのがいいのでしょうか?

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ひろゆき(以下、ひろ 前回は「日本が一番住みやすい」という結論になりましたが、個人的には一番住みづらかったりもするんです。

武井壮(以下、武井 フランス以外ではどこに住んでました?

ひろ アメリカに留学で住んでました。で、日本に帰国してまず思ったのは「見た目が同じ人が多すぎて違和感がある」ってことなんですよ。日本人って似たような体形で、髪の毛も黒っぽいし、ファッションも似通っているじゃないですか。アメリカに住んでいると、人種もファッションもバラバラで個性的なんですよね。

武井 同じようなことはスポーツでも感じますね。俺はゴルフ留学でアメリカに行きましたけど、アメリカの選手は個性的なスイングの人が多いんですよ。日本なら注意されそうなフォームでも「そのスイングはカッコいいね」とコーチにホメられる。現地で基礎トレーニングをすると「壮は体が小さいのにすごい身体能力を持っているね」と期待されるんですけど、スイングになると「なんだ、その個性のないフォームは」と言われてしまう。

ひろ へー、きれいなフォームよりも、もっと個性を出せよと。

武井 だから「一度フォームのことは忘れて全力で振ってみろ」と言われましたし、「そのスイングで当たるようになれば世界一だよ」とホメてくれるんです。日本はきれいなフォームをつくることを指導するから正反対です。

ひろ わかりやすい日米の違いですね。

武井 ただ、そういう部分が日本代表が陸上の400mリレーで強い理由でもあるんですよ。走るときの歩幅やテンポがみんな似ているから、バトンのパスが合わせやすい。

ひろ アメリカとかジャマイカとかは、バトンパスで苦労しているイメージありますよね。

武井 そう。ピッチ(脚の回転数)がすごく速い人もいれば、ストライド(歩幅)で来るウサイン・ボルトみたいな人もいて、みんな個性的ですからね。

ひろ ゴルフをする場合、日本人的なきれいなフォームとアメリカ流の個性的なフォームでは、どちらのほうが飛ぶんですか?

武井 全力で振る分、アメリカで教わったフォームですね。クラブの芯を食ったときは、飛距離は今より60ヤード(約54m)くらい伸びました。

ひろ そんなに違うなら、アメリカ流のほうが良くないですか?

武井 ただ、日本とアメリカではコースの違いもあるんですよ。アメリカ留学から日本に帰ってきて一番困ったのはコースの狭さです。アメリカにいるときは、360ヤードくらい飛ばしてたんです。でも、日本に帰ってきて同じようにアグレッシブにスイングしたら全部OBになってしまった。あと、日本はドッグレッグのような右曲がりや左曲がりのホールが多いんです。コースとの相性に苦労して一度ゴルフをやめたんです。

ひろ わざわざ留学して、飛距離も上がり技術もアップしたのにやめちゃったんですか。

武井 よく「日本のコースは簡単だ」みたいなことを言いますけど、アメリカ流のゴルフをする人は、日本のコースが意外と苦手だったりするんです。

ひろ コートやグラウンドの違いで結果が変わるスポーツって珍しくないですか。サッカー、バスケ、テニスとかは同じですよね。

武井 でも、野球場は外野のフェンスの高さが違ったり、スタジアムごとに個性がありますよね。あとメジャーリーグのボールは日本と比べて滑りやすいとか。

ひろ ダルビッシュ有投手はアメリカのほうが変化球は曲がりやすいし、投げやすいみたいなことを言っていた気がします。

武井 日本のピッチャーがメジャーで成功しやすいのはなんとなくわかるんですよ。日本のバッターはすごく繊細で大振りしない人が多い。だから変化球を投げてもカットしてファウルにするのが得意なんです。でも、メジャーリーガーはパワーヒッターが多くて、変化球を投げると空振りしやすいんだろうなと。

ひろ 見てる側としても、三振したりホームランを打ったりしてるほうが面白いですよね。

武井 メジャーリーグを見るとワクワクするのはそういう理由があるんだと思います。で、そういうメジャーリーガーがホームランをバンバン打つ力勝負の中で、シカゴ・カブスの今永昇太投手が剛速球じゃないのに三振を取りまくっているのを見ると興奮するんですよね......ってなんの話でしたっけ?

ひろ 「一番住みづらかった国」ですね(笑)。で、僕がなんで日本が住みづらいと思うかというと、日本で暮らしていると周りの人がジロジロ見てくるじゃないですか。

武井 そうですね。

ひろ 僕や武井さんがメディアによく出ているからってだけじゃなくて、例えば個性的なファッションをしていてもジロジロ見られる。これって意外と珍しいことで、海外ではほかの人がやっていることはあんまり気にしないんですよ。僕が行った国の中で、電車の中が静かな国は日本とドイツとシンガポールなんですけど、周りの空気を読んで静かにしゃべっている。

武井 それはあるね。日本の街中でチューすると冷たい視線を向けられるけど、スペインとかに行ったら、半分くらいの人がチューしてる。だから「俺もチューしていいんだ」って思うもん(笑)。

ひろ あと、特にアメリカとかだと距離感の詰め方が日本と違いすぎますよね。

武井 というと?

ひろ アメリカだと有名人と遭遇したときに友達面してくるんです。僕はアメリカで『4chan』というサイトをやってるので、顔を知っている人もいるんですが、アメリカだと「おまえ、ひろゆきじゃねえ?」みたいに上から目線なんですよ(笑)。でも、日本人の場合は「ひろゆきさんですよね?」みたいに下から来ます。

武井 アスリートに対してもそうですね。リスペクトはすごく感じるけど、普通に街で会ったら「ハイ、ジョージ」みたいな感じで、ファーストネームで声をかけてくる。こういう違いって、やはり文化的な背景があるんだろうね。

ひろ 「人間は平等」という精神が染みついている気がします。アメリカに留学していたときには、大学の校長にもみんなタメ口でしたから。日本だと先生という時点で敬語を使うし、校長先生ならもっと気を使うじゃないですか。そういう文化の違いは大きいと思います。

武井 あと、アメリカはママが一番威厳があるよね(笑)。

ひろ ですね(笑)。特に黒人系の人はヤンチャな人でも自分の母親には頭が上がらない。校長先生よりママのほうが上です。

武井 日本人は、ひろゆきの言うとおり他人の目をすごく気にして生きているかもしれない。

ひろ それが奥ゆかしさだったり「和をもって貴しとなす」とかだったりしますけど、個性がある人や周りと合わない人にとっては生きづらいですよね。そういう人にとっては、いくら治安が良くて、清潔で、ごはんがおいしくても、どこかに生きづらさを感じるんじゃないかと思います。

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■西村博之(Hiroyuki NISHIMURA) 
元『2ちゃんねる』管理人。近著に『生か、死か、お金か』(共著、集英社インターナショナル)など 

■武井 壮(So TAKEI) 
1973年5月6日生まれ。東京都出身。タレント、元陸上十種競技日本チャンピオン。格闘技、野球、ゴルフなど様々なスポーツの経験を持つ。公式Webサイトは【https://gogotakei.com】、公式Xは【@sosotakei

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