ドラマ『クラスメイトの女子、全員好きでした』の主演・木村昴(左)と原作者・爪切男の対談が実現 ドラマ『クラスメイトの女子、全員好きでした』の主演・木村昴(左)と原作者・爪切男の対談が実現

『週プレNEWS』で燃え殻氏とふたりで毎月一回、『キン肉マン』について語る連載『燃え殻×爪切男の先月の肉トーク!!』を続けている作家、爪切男の著作クラスメイトの女子、全員好きでしたが、2024年7月から読売テレビ・日本テレビ系でドラマ化!

同著については、自分が好きだったクラスメイトの女子たちについて、1篇につきひとり、合計全21人を書いた、様々な濃さの愛に満ちたエッセイである。

この作品をドラマ化するにあたり、制作スタッフ陣は、作家である現在の主人公が過去に好きだった女子たちを回想して書いていく、という設定に変え、過去と今を行き来する物語として、新たに構成した。

しかも、その主人公=枝松脛男(すねお、木村昴)は、同級生の女子の誰かが書いた小説を盗作して賞に応募したら、受賞して作家になってしまった男である。自分に賞を与えた文芸誌で連載を持つことになるが、何も書けず、自分をプッシュした担当編集者、片山春晴(新川優愛)に盗作であることを白状する。

しかし、自分は自分で編集者として崖っぷちである春晴は、そのことを隠し通すと決め、何も書けないと嘆く枝松から過去に好きだった「ベルマークの女子」の話を聞きだし、「めちゃくちゃおもしろい、それを書けばいいじゃないですか」とアドバイスする──という、ここまでが7月11日に放送された第一回である。

というわけで、主人公の枝松脛男を演じる木村昴と、爪切男の対談が実現。ドラマの第一回オンエア日に、番宣で日本テレビのあらゆる番組に出演しまくる合間を縫って、おふたりにじっくり話を聞いた。

──木村さんにこの作品のオファーが来た時は、まだ脚本はない状態でした?

木村昴(以下、木村 はい。タイトルしかわからなかったんですけど、『クラスメイトの女子、全員好きでした』って、「え? どういう話なんだろう?」と。

爪切男(以下、 ()

木村 それですぐ原作を読みました。

──でも原作には、木村さんが演じる大人になった主人公は出てこないという。

木村 そうなんですよね。「え、俺、中学生の役なの?」みたいな()。でも、脚本ができてから「なるほど!」と。それで監督とお会いして、なぜ僕にオファーをいただけたのか率直におうかがいしたら、「この枝松脛男という純粋でピュアなキャラクターを表現できる人、誰かいないかな」と考えた時に、木村くんの顔が浮かんだ、と言っていただけて。

監督の「純粋でピュア」のフォルダに俺いたんだ?って()。それがまずうれしかったし、「じゃあ役作りどうしましょう?」って聞いたら、「そのままで大丈夫だよ」といういちばん難しいオーダーをいただきまして(笑)。

──爪さんはいかがでした?

 ドラマになる、って聞いたら、このタイトルが、すっごい不安になってきて。

木村 そうなんですか?

 思いついた時は、なんていいタイトルなんだ、と自画自賛だったんですけど、ドラマとして多くの人の目に晒すってなると、これはよくないんじゃないか、と思い始めて。『クラスメイトの女子、全員好きでした』って、ヤバいこと言ってませんか? 嘘偽りのない正直な気持ちをタイトルにしたんですけど、捉え方によっては少し怖くないですか?

木村 なるほど(笑)

 なので、主演が木村さんと聞いた時に、木村さんの持つ太陽のような明るさが、このタイトルが持つ闇ををキレイに浄化してくれるぞ、と(笑)。とてもうれしかったですね。

木村 光栄です。一話、ご覧になりました?

 ベルマークのあの女の子を演じる石井友奈さん、もうとにかくかわいかったですよね。

木村 はははは! ねえ?

 素朴さとにじみ出る色気をあわせ持ったステキな女の子だなと思いました。あと、あの学校からの帰り道がもう、ヤバかったですよね。絶妙なロケーションだなと思って。学生時代の純粋な気持ちを思い出しました。こういう何もない田舎道を一緒に歩きながら、隣で微笑む彼女を自然と好きになってたんだよなぁ、という。

木村 回想のシーンに入ってからの、中学生キャストたちのスゴさは......少年時代の枝松脛男を演じている及川(桃李)くんなんて、めちゃくちゃいいじゃないですか。僕ら大人チームとは撮影が別なので、できあがって初めて観るんですけど。

時々、撮影中に監督が言ってくださるんですよ、「今の、及川くんにそっくりだったわ」と。確かに、中学時代の回想シーンを見たら、自分でもリンクしていると思えるところがあったりして。

──僕も第一話を観たんですが、「爪切男はこんなにダメな奴じゃない!」「木村 昴はこんなにカッコ悪くない!」と思って(笑)。

 そうですか?

木村 でもそれは、ポジティブに捉えれば、お互い想像を超えたと言いますか(笑)。

 私、そんなにダメな奴に見えます?

──だって爪さん、盗作するような人じゃないし。フィクションですけど。

 それね、私のまわりのヤツら、盗作のところだけノンフィクションだと思っていて。

木村 あははは!

 「盗作か、最悪だな」と怒られました。そう思われる私、やっぱりダメなヤツですね(笑)。

──木村さんはいかがですか? 枝松脛男という、カッコいいのとは真逆の役は。

木村 うーん、誤解を恐れずに言うと、カッコよくは誰でもできると言いますか......。カッコよく見せる方法って、あるので。でも僕としては、ちょっと腑抜けた部分があって、自分では今ひとつ決断できず、それでいて人見知りなのかデリカシーがないのかよくわからない......という枝松脛男のような人を演じる方が「どういう風にやろう?」っていうワクワクがあるので。「どうしたら枝松のダメダメ感を出せるかなあ」みたいなのは、考えましたね。

 あの、私は「エモい」という言葉があまり好きではない人間でして。それは「エモい」イコール「キモい」なので......。

木村 ほお!

 「エモい」って「感動的な...」っていう意味ですけど、それって他人から見るとただ「キモい」だけの時もある。恋をすると人は愚かになる。愚かだからこそピュアで美しい。「エモい」と「キモい」は常に表裏一体。そこを分からずに簡単に「エモい」と言わないでほしい。

それこそがこの作品の肝となる部分で、そこを、木村さんがうまく表現してくれているなと......。でも、宅急便の配達員役の加藤千尋さんの手を見て「脱毛しました?」って、私、絶対言わないですけどね(笑)。

木村 はははは! え、そうなんですか!? あれは実話ベースだろうなと思ってました。

 また、こういうとこだけノンフィクションだと思われてる(笑)。

──あの脱毛の指摘と、美晴が髪の結び目を変えたのを指摘するシーンは、枝松が普段から女の人をよく見ていることを表すためでしょうけど、でもねえ(笑)。

木村 でも、そういうところなんですよね。こいつデリカシーがないんだな、というふうにも見えるんですけど、「気がついたから伝えたい」という純粋な気持ちで言っている。その按配(あんばい)は確かに僕も気をつけました。そういう人だということが、23話と観ていただければ、よりわかってくると思います。

──おふたりは、それぞれ特殊な10代を送ってきた、と言っていいと思うんですが、その特殊さが違いますよね。原作の「まえがき」にも書かれているし、第一話でもそのシーンがあるように、爪さんはお父さんに「おまえは女の子と恋はできないだろう」と言われたところからこの物語が始まっている、という特殊さだし、木村さんは中学2年で『ドラえもん』のジャイアン役の声優になったという特殊さだし。

木村 ああ。でも、「クラスメイトの女子、全員好き」っていう感覚、僕も理解できるんですよ。僕、ジャイアンをやり始めた時から、誤解を生むことをしないように気をつけて今日まで生きてきたんです。スキャンダラスなことを避けるとか、未成年だからお酒やタバコとは確実に無縁の生活をしなきゃいけないとか、そういうことに気を張っていたので。いわゆる中高校生らしい恋愛みたいなのって、避けてきてしまったんですよ。

 ああー......。

木村 同級生の女の子と手をつないで歩く、みたいな青春は自分にはないと。だから自(おの)ずとひとりでする恋愛みたいな......。授業中にクラスメイトの女の子をじーっと見て「......横顔、エロいなあ」とか。給食の時に、髪が口に入っちゃってそれを小指で出しているのを「かわいい......」とか。どうしたら犯罪でなくパンツが見えるかなあ、とか(笑)。だから僕としてはすごくわかるんですよ、枝松脛男の気持ちが。

 ああ......私、自分でこの本を読み返して思ったんですけど、女性に対してもそうだけど、人と接するときに常に心掛けていることがあるんです。これも親父に言われた言葉なんですけど「『コイツ、つまんないヤツやな』って誰かのことを思った時は、その時はお前のほうがつまらん人間なんや。お前がその人のよさを見つけてないだけなんや」って言われて。その言葉は私の人生に大きな影響を与えてますね

「これから先の人生で、お前が『つまんない人間やな、こいつ』って思うヤツが現れたら、その時はお前のほうが倍つまらん人間だから、それに気づいた方がいい。おまえがそいつのよさを見つけてないだけだから」って言われて。それがたぶん、この本にも活きてますね。

木村 ああ! そうですね、その子の魅力を見つけることを書いている本ですもんね。

 バラエティに俳優に声優にと、さまざまな分野でご活躍の木村さんを見ていると、木村さんも人のいいところ、自分が演じるキャラの魅力を見つけるのが抜群にうまいというか、そこも木村さんとの共通点なのかな、と。偉そうに言ってすみません(笑)。

──最後に、主演として、原作者にお伝えしておきたいことってあります?

木村 あります! 最初に監督にお会いした時に、やっぱりどこか爪さんを演じたいという気持ちがあったので。「どうしましょう? 僕、坊主頭いけますけど!」って...。

 いやいやいや(笑)!

木村 そしたら、「いや、それはやめとこうか」みたいになって。それで、台本を読み込むと、やっぱりさえない部分が大きいキャラクターなので、それに合わせて役作りを話し合って、「パーマってどうですかね?」みたいなことで、今回こういうビジュアルになったんです。

ただ、僕としてはもっと爪さんを表現したいと。坊主頭は止められたから、せめて......と思って、今、体重が爪さんと一緒です。

 え、マジですか? 俺のために太ってくれたんですか?

木村 はい、僕の役作りとしては。ツイッターで拝見したんですよ。一回お太りになられてて、そこからすごく痩せて、今このくらいですっていうのが95キロ。それで「よし、じゃあせめて体型を!」と。

 いや、その役作り、間違ってますよ?

木村 え、嘘!?(笑)

 申し訳ない気持ちでいっぱいです!

木村 今年の春、めっちゃダイエットして80キロぐらいまで落ちたんですけど、そこから増やして。枝松脛男、自分ではなかなか決断できない人、っていうキャラクターを表す意味でも、これぐらいの体形にするのはありかなと思って。

 ......実はですね、今付き合ってる彼女がね、木村さんが最近ふくよかになってるのを見て、「たぶんあなたに合わせて太ってくれてる」って言ってたんですよ。「そんなわけあるかい」って相手にしてなかったんですけど......女のカンってすごい(笑)。

木村 すごいですね! 俺、今初めて言いましたもん。木村 昴としては、優柔不断じゃなくて決断が早いタイプなので。「このままだと枝松脛男に見えないかも......」と思ったので、ちょっとそこをお揃いにしてみました。

 じゃあ僕も95キロをキープしないと! もう少しダイエットしたかったのに(笑)。

木村 10話のオンエアが終わるまで、ふたりで95キロをキープしましょう!(笑)。

木村 昴SUBARU KIMURA
1990年生まれ、ドイツ出身。アトミックモンキー所属。14歳の時に『ドラえもん』の剛田武(ジャイアン役)に抜擢され、声優デビュー。声優として活躍する他、タレント・俳優・MCとしても活動。近年では、大河ドラマ『どうする家康』にて渡辺守綱役を演じる他、「おはスタ」メインMCや「ヒルナンデス」木曜日レギュラーなど、TVバラエティ番組にも精力的に活動している。そして、24年7月11日よりドラマ初主演作『クラスメイトの女子、全員好きでした』(毎週木曜よる11:59~)が放送

爪切男TSUMEKIRIO
1979年生まれ、香川県出身。2018年『死にたい夜にかぎって』(扶桑社)で小説家デビュー。2020年、同作が賀来賢人主演でドラマ化。『きょうも延長ナリ』(扶桑社)が発売中。集英社発のWebサイト『よみタイ』で、コラム『午前三時の化粧水』、ドライバーWebで『横顔を眺めながら ~爪 切男の助手席ドライブ漂流~』を連載中。5月21日には『クラスメイトの女子、全員好きでした』が文庫化、さらに読売テレビ・日本テレビ系プラチナイト木曜ドラマとして毎週木曜よる11:59~より同作ドラマがスタート(主演:木村昴)

●第3話放送は、7月25日(木)24:09~