『ボクたちはみんな大人になれなかった』の燃え殻、『死にたい夜にかぎって』の爪切男の意外な共通点、それは『キン肉マン』!!
希代のストーリーテラーのふたりが6月分の『キン肉マン』連載を甘く、そして辛く批評。
―今回の「先月の肉トーク」テーマ―
第454話 閉じこめられた正義(ジャスティス)!!の巻(6月3日更新分)
第455話 サイコマンと瓜二つの男!!の巻(6月17日更新分)
第456話 勝手知ったる男!!の巻(6月24日更新分)
あらすじ サイコマンの研究所へ向かったジャスティスマンの行方を追うネメシス。サグラダファミリアで見つけたのは身動きを取れず、液体づけにされたジャスティスマンの姿であった。怒りに震えるネメシスは。ジャスティスマンをその状態にしたサイコマンと瓜二つの時間超人・ファナティックに対決を挑む。
爪切男(以下、爪) ファナティックとネメシスの闘いが始まりましたけども。やっぱりファナティック、五大刻の中でも、特にキャラが立っていますよね。
燃え殻(以下、燃) そうだね。本格的に試合が始まると、それがよくわかるね。
爪 人気も高いですよね。しかし、ファナティックとネメシスなんていうハイレベルな闘いは、普通だったら物語のもう少し後まで取っておくところだと思うんですけど。
燃 そうだよねえ。
爪 ゆでたまご先生、ほんとに出し惜しみしない。あと、この月の唯一のツッコミどころというか、おもしろかったのは、454話で闘いが始まりそうになった時、ファナティックが、ネメシスと手四つで組み合ったままで、エレベーターに乗って、屋上のリングまで連れて行くところ。そのままの形で、ふたりでエレベーターに乗って。
燃 ああ、あれはおもしろかった。
爪 DDTとかの試合でありそうな。
燃 新日でもたまにあるよね。
爪 で、次の445話で、屋上で闘いがスタートしたら、宇宙超人委員会がヘリでやって来て、レフェリングと生中継が始まる(笑)。
燃 そう、ちゃんと試合の体裁になる。
爪 来た理由も委員長が説明するし。
燃 スカル・ボーズまで一緒に来ているし(笑)。最近、一方的な闘いが多かったじゃない? それと比べると、今回のファナティック対ネメシスは、長い闘いになりそうな感じが。
爪 ああ、そうですね。
燃 時間超人ならではの特性を出さないまま、闘いが進んでいたけど......。
爪 あ、そうだ。マリポーサとパピヨンマンの試合、時間超人の「超回復」は使われないままでしたね。
燃 だから逆にこの試合は、「超回復」等の時間超人の特性を、しっかりと見せてくれる展開になるのかもしれない。
爪 それ、期待したいですね。
燃 「超回復」以外にも、時間超人の特性があるのかもしれないしね。
爪 あるいは、時間超人側がダンベルを封印することで、完璧超人始祖(パーフェクト・オリジン)たちの動きを封じたのと同じように、超人側が何かをすれば、時間超人たちが「超回復」を使えなくなる、その方法がわかる、とか。
燃 ああ、なるほどなるほど。
爪 どこかまで行って何かをやれば、「超回復」を封じ込める、という設定。で、その行き先に派遣されるのが、僕のイチ推しのスクリュー・キッド調査団(笑)。
燃 スクリュー・キッド以外にも何人かいるよね、行ってもいい人。今のところ、物語の中での役割が、宙に浮いている超人ね。
爪 ラーメンマンもそうですよね。
燃 昔、友情パワーが封じ込められたこと、あったじゃない? だから今回も、「超回復」が封じられる、という展開があっても、おかしくないよね。
爪 456話の最後でファナティックが、「私たち時間超人"五大刻"の超人強度は......軒並み1億パワーあります」って言ったじゃないですか。1億パワーあって「超回復」も使えたら、力の差が圧倒的すぎる。
燃 そうだね、「超回復」を封じることができる、という展開は必要だね。じゃないとハンディキャップ・マッチすぎる。
爪 でもそのためには、ファナティックが「超回復」を使う必要に迫られるくらい、ネメシスに攻めこまれなきゃいけないですけど。
燃 このままだと使わなくてもいいもんね。
爪 と考えると、この試合の前半で、ネメシスは相当攻め込んだけど、あの程度では「超回復」を使うまでには至らない、ということですよね。
燃 挙句、全身からパワーを放出しながら「軒並み1億パワーあります」って言われるとねえ。このパワーの差、あるじゃない? ネメシスが6800万パワーでファナティックが1億パワー。
爪 はいはい。
燃 昔、ウォーズマンが、バッファローマンとのパワーの差を......ベアークローを両手に付けて、2倍のジャンプと3倍の回転で、1200万パワーになって、バッファローマンの1000万パワーを超える、という。
爪 あったあった。スクリュー・ドライバーが光の矢になったやつ。あと、神様は下天する時に1万パワー減る、っていう設定もあったじゃないですか。だから9999万パワーになる。でも五大刻は1億パワー、ってことは、減ってないんですよ。
燃 あ! ほんとだ!
爪 そのあたりも、どういうことなのか知りたいですよね......まあ、そういう細かい概念を全部ぶち壊してきたのが、「火事場のクソ力」だったんですけど。
燃 うん。で、「火事場のクソ力封じ」もあったよね(笑)。
爪 ああ、ミキサー大帝が「パワー分離機」で、「火事場のクソ力」をキン肉マンの身体から分離させたやつ。
燃 そう。だからやっぱり、きっと「封じ」はあるんだよ、「超回復」にも。
爪 それから今回、誌面の方で気になったのは、「今週の採用超人」。454話のプリーストはいいけど、455話はザ・タピオカーンで、456話はザ・ブラックフォン。
燃 そうそう(笑)! タピオカと黒電話、どっちも「いつの時代!?」っていう。
爪 おもしろかったなあ。昔の『キン肉マン』を思い出すというか。タピオカマン、たぶんこれ、ストローを吸われたら死ぬってことですよね(笑)。
燃 ブラックフォンもデザインいいよね。
爪 めっちゃいいですよね。どういう闘いをするのかが、まったくわからない(笑)。ステカセキングのカセットテープみたいに、ダイヤルを使うのかな?
燃 ティーパックマンを思い出した、僕は。あとタピオカマン、出身地はやっぱり台湾なんだね(笑)。
爪 どちらも間違いなく、時間超人のラインナップには入ってこなさそうな。でも大事なのは、ゆでたまご先生がこれらの超人を選んで、採用しているということですよね。
燃 そうそう。
爪 物語の方では、超ハイレベルな闘いがくり広げられている時に、ザ・タピオカーンとザ・ブラックフォン(笑)。
燃 『キン肉マン』はこうじゃなきゃね。
爪 プリーストみたいな、今後の物語に登場して来てもおかしくなさそうな、かっこいい超人だけが採用されるのだと、楽しくないですもんね。
燃 そう、大事なんだよね、ザ・タピオカーンやザ・ブラックフォンが採用される、この感じって。さすがゆでたまご先生だと思う。
爪 あと、前回僕ら、この対談で、なんでウォーズマンは"狼の部屋"へ侵入する時、アンドロイド・サルダート(兵士)に化けたんだ? 別にそのままでもいいじゃないか、という話をしたじゃないですか。
燃 うん、した。
爪 この間SNSで見つけたんですけど、「そうか、『キン肉マンII世』を知らないとウォーズマンがアンドロイド・サルダートに変装した意味がわからないのか」と、書いている人がいて。
燃 え、そうなの!?
爪 はい。『キン肉マンII世』を読んでいればわかるはずだと。
燃 いや、読んだけど、忘れてるんだよ。
爪 僕もです(笑)。だから読み直しました。ウォーズマンがケビンマスクのコーチ兼セコンドとして関わったときにクロエとして化けたスーツは、今回のアンドロイド・サルダートのものが元になっていたという風にも読める、という......。
燃 ああ!
爪 こういう指摘はありがたいですね。「そんなことも知らないのかこいつら、終わってんな」みたいな書き方じゃなくて、アドバイス的な感じで書いてくれていて。『キン肉マン』のファンっていいなあ、と思いました。
燃 普段、SNSで叩かれることが多いからなあ、僕ら(笑)。
爪 ほんと、正しいSNSの使い方だなあ、と。ありがとうございました。
燃 確かに俺も『II世』の記憶、薄いなあ。読み直さなきゃ。
爪 子供の頃は、セリフまで暗記するくらい、何度も『キン肉マン』を読み込んだけど、『II世』の時ってもう大人になっていたから、そこまでの執念で読んではいなかったんですよ。だから憶えていなかった、というのもあるんでしょうね。
燃 そうだね。でも確かに、『完璧超人始祖編』自体、『II世』の内容を踏まえた上で読んだ方が、間違いなくおもしろいもんね。
爪 そうそう。だから、僕らみたいに『II世』のことを忘れていた人、あるいはまだ読んでいない人は、ぜひ一緒に読みましょう。
燃 みなさん、これからも何か気付いたことがあったら、ぜひ指摘してください。
●燃え殻(MOEGARA)
1973年生まれ、神奈川県出身。働きながら始めたツイッターでの発言に注目が集まり、作家デビュー。『ボクたちはみんな大人になれなかった』(新潮社)、『すべて忘れてしまうから』(扶桑社)、エッセイ集『それでも日々は続くから』(新潮社)『これはただの夏』(新潮社)、『ブルー ハワイ』(新潮社)など多数の著作がある。最新著は『夢に迷ってタクシーを呼んだ』(新潮社)。ドラマ『あなたに聴かせたい歌があるんだ』(漫画:おかざき真里/扶桑社)はHuluで配信中。出演中のラジオ番組 『BEFORE DAWN』(J-WAVE、毎週火曜26:00~27:00)もチェック
●爪切男(TSUMEKIRIO)
1979年生まれ、香川県出身。2018年『死にたい夜にかぎって』(扶桑社)で小説家デビュー。2020年、同作が賀来賢人主演でドラマ化。『きょうも延長ナリ』(扶桑社)が発売中。集英社発のWebサイト『よみタイ』で、コラム『午前三時の化粧水』、ドライバーWebで『横顔を眺めながら ~爪 切男の助手席ドライブ漂流~』を連載中。5月21日には『クラスメイトの女子、全員好きでした』が文庫化、さらに読売テレビ・日本テレビ系プラチナイト木曜ドラマとして、23時59分より同作ドラマが放送中(主演:木村昴)
●原作生誕45周年&アニメ放送直前記念3冊発売中!!!
●漫画サイト史上最強機能!! 超人・技検索追加!!
●毎週日曜23:30よりCBC/TBS系列アガルアニメ枠
TVアニメ『キン肉マン』完璧超人始祖編放送中
アニメーション制作:Production I.G
原作:ゆでたまご(集英社『週刊プレイボーイ』・『週プレNEWS』連載中)
監督:さとう陽 シリーズ構成:深見真
キャラクターデザイン:丸藤広貴 音楽:高梨康治