日本有数の映画ガイド・高橋ヨシキが新作映画をレビューする『高橋ヨシキのニュー・シネマ・インフェルノ』! 安部公房原作小説、執念と奇跡の実写映画!

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『箱男』

評点:★3.5点(5点満点)

©2024 The Box Man Film Partners ©2024 The Box Man Film Partners

文学的な問いかけを映画的な問いかけに転換

原作を持つ映画作品は、映画作家による原作の解釈を映像として表現したものにしかなり得ない。それが集合的な「解釈」とほぼ重なるケースもあれば、そうでない場合もある(どちらがより好ましいか、ということではない)。

文芸作品を映像化する場合、原理的に映像に反映することが不可能な要素をどう映像的に表現するのか、ということも問題になる。文体がもたらす効果や文学固有の心理描写はそのまま映像化するわけにはいかないからだ。

安部公房の『箱男』は特異な構造の作品であり、なおかつ物語自体が持つ解釈の幅が広い。本作はそれを「映画」として成立し得るストーリーに落とし込むことに挑み、また文学的な問いかけを映画的な問いかけに移し替えるという離れ業にも挑んだ。石井監督ならではの箱男同士のバトル場面(!)には心底驚かされた。

「あらすじ」の映画化にとどまる作品でないことは確実で、それは文学作品の映像化における(一定の)勝利とみなすべきであろう。

映画『ツイン・ピークス/ローラ・パーマー最期の7日間』サントラ内の曲(具体的には『ピンク・ルーム』という曲だ)と瓜二つの劇伴音楽がどうして誕生したのか?という謎は残るが......。

STORY:「箱男」とは、段ボールを頭からかぶり、都市を徘徊し、のぞき窓から一方的に世界を見る異様な存在。そんな箱男を排除しようとする者、利用しようとする者たちが現れ、箱男に数々の試練と危機が降りかかっていく

監督:石井岳龍
出演:永瀬正敏、浅野忠信、白本彩奈、佐藤浩市ほか
上映時間:120分

全国公開中

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