断言しよう。いま日本で一番注目のロックンロールバンド、それは「暴動クラブ」だ。
彼らは釘屋 玄(vo)、マツシマライズ(gt)、城戸"ROSIE"ヒナコ(ba)、鈴木壱歩(drs)の4人組。2022年5月に結成されるとたちまち頭角を表し、ライブハウスでのワンマンライブはたちまちソールドアウト。
2023年11月にリリースした7インチのデビューシングル「暴動クラブのテーマ」は即在庫切れ。今年8月に発売されたファーストアルバム『暴動クラブ』も、たちまちレコードショップ各店で激プッシュされる好セールスを記録するなど注目度はうなぎ上りだ。
あらゆるロックンロールのエッセンスを取り込んだ初期衝動あふれるサウンド、長髪にメイクの個性的でグラマラスなルックス、そして勢いのまま突っ走る荒削りで華のある演奏。すべてがロックバンドらしいカッコよさに満ちていて、しかもメンバー全員が平均年令20才! これは気にならないわけがない!
そこでヴォーカルの釘屋玄を直撃。バンド結成のいきさつ、音楽的なルーツ、そしてファーストアルバム「暴動クラブ」の制作秘話などその活動について聞いた!
* * *
――頭のてっぺんからつま先までとにかくカッコいい! いまどき珍しい本格ロックンロールバンド、暴動クラブ。しかも全員20歳過ぎだなんて、痛快というか、最高です!
釘屋 ありがとうございます。年齢はともかく、「待ってました」みたいにはよく言われます。ま、好きなことをやってるだけですけど。あははは。
――先日リリースされたばかりのCD『暴動クラブ』、拝聴しましたがガレージ、ブルースロック、ロカビリー、パンク......あらゆるロックンロールのエッセンスが凝縮した全11曲=計38分。圧倒されました!
釘屋 ファーストアルバムだし、自分らのルーツをわかりやすく表現したくて。ロックンロールへのストレートな思いを込めました。
――この作品、なんと全曲アナログ録音だとか。デジタル全盛の令和において、物好きというか......。
釘屋 ロックンロールって音楽、高校生みたいな演奏が評価されるみたいなところがあって、音もキレイすぎると良さが失われちゃうと思うんです。それだけに粗さもしっかり出せればと機材すべてがアナログのTHE NEATBEATS・眞鍋崇さんのスタジオでレコーディングしました。アナログ機材ってつまみとか、やたらデカくて。なんだか秘密基地みたいな雰囲気で楽しかったですね(笑)。
――そんな中でも推し曲といえば?
釘屋 う~ん、なんだろう。一曲目の「とめられない」ですかね。
――ひたすら「もうとめられない!」を繰り返す歌を、激しいリズムと悩ましいギターが煽りまくる2分弱の楽曲。聞いた瞬間、テンションが上がるのがとめられなくなります!(笑)
釘屋 歌も楽器も完全一発録りで、ワンテイク目を採用しているんですよ。粗雑さも目立つんですけど、それ以上に生々しさがすごく出ていて。録り終わった瞬間、全員「いいね!」と大満足でした。
――テンポの速い曲が並びますが、ブルージーなムードで"退屈すぎて最高さ"って歌う「すかんぴん・ブギ」など楽曲の幅も目立ちます。
釘屋 「すかんぴん~」は、村八分が演るような泥臭いブギーのイメージで書いたんですよ。ただそのままだと面白みがないので、チョーキングのギターリフを入れたり、後半ロカビリーっぽく急にテンポを上げたりと遊び心も入れて。結果的にポップに仕上げました。
――苦労した曲なんてあります?
釘屋 ボ・ディドリーの「ROAD RUNNER」のカバーかな。古いリズム&ブルースで単純だし、いけるっしょ!と思ったらカッコよくならなくて。眞鍋さん曰く、「ブラックミュージックはアタマを前にする音楽」。ギターを走らせる意識で演ったら結果的によくなりました。すごく勉強になりましたね。
――これ50年代の曲ですよね。なぜこれを?
釘屋 普段からカバーはよく演るんですけど、曲に引っ張られすぎず、どれだけ自分らの色を出せるかにこだわっていて。この曲はローリングストーンズ、ザ・フーなど60年代のバンドの必修科目レベルの曲。自分たちも挑戦してみたいと思ったんですよ。
――カバーといえば以前シングル『シニカルベイビー』のカップリング曲で沢田研二さんの「気になるお前」を演っていました。意表をつかれましたが、オリジナル曲にも聞こえてびっくりしました。
釘屋 少しGSっぽさを意識しましたけど、難しくて。その未熟な感じが僕ららしさとして出ているのかもしれないですね。
――それにしてもお話にあがるバンドがいちいち渋すぎます。しつこいけど、本当に皆さん20才なんですか?
釘屋 あははは。本当です。
――そもそもどんな経緯でこのバンドを?
釘屋 大学の音楽サークルの新歓イベントで、一コ下の新入生、マツシマと鈴木に声をかけたのが最初です。すぐ音楽の話で盛り上がって結成したんだと思います。
――思います、って?(笑)
釘屋 途中から泥酔しちゃって。気づいたらバンドのグループラインができてました(笑)。ヒナコさんを含め、高校からの友人でバンドをやろうとして、ボーカルを探してたらしいんですよね。
――そのイベントでは音楽のどんな話で盛り上がったんですか?
釘屋 覚えてる範囲で言うと、ジョニー・サンダースとルー・リード......ストロークスの話もしたかな。僕らの世代って、特定のアーティストだけ聴く人が多いんです。ビートルズだけとか。時代を問わず、幅広くロックンロールを聴いている人と出会ったのは初めてで。
――ちなみに釘屋さんの音楽遍歴は?
釘屋 僕は中学3年のとき、映画『地獄の黙示録』で劇中に使われてたCCRの「スージーQ」って曲を聞いてびっくりして。早速、地元・広島の中古レコード屋さんで、レコードを300円で買って聞き込みました。その後、ストーンズとかビートルズを通って、ザ・フーやキンクス、ジャムを聴いてモッズバンドを組んでました。
――音楽の趣味の合う人が、そばにいたんですね。
釘屋 いや。ブルーハーツ好きな友達だったから、ヒロトもマーシーも最初はモッズバンドだったよって、言いくるめました(笑)。
――暴動クラブの他のメンバーは、どんな音楽が好きなんですか?
釘屋 洋楽はそれぞれ好みがあるけど、邦楽で共通してるのはザ・ルースターズ、サンハウス、シーナ&ロケッツなどの"めんたいロック"です。俺とマツシマはそれ以外、村八分、ルージュとか。いずれにせよみんなロックンロール全部好きですね。で、スタジオで音を合わせたらイメージが伝わるし、演奏もいい。「これはいける」と本格的に活動するようになりました。
――ルックスはニューヨークドールズみたいというか、みんな似たような雰囲気があります。
釘屋 長髪は偶然なんですよ。みんなそれがカッコいいって思って伸ばしていたんです。ただ最初服はバラバラ。それで見た目を重視しようってことで服のテイストを考え、あとヒナコさんの化粧品を借りて、なんとなくメイクしたら思ったよりいい感じになって(笑)。だから、まぁすべてたまたまですね。なぜか"長髪・お化粧"を褒めていただくことも多いです。
――結成から2年経ち、ライブハウスのワンマンライブは完売、アルバム『暴動クラブ』のセールスも好調。大江慎也さんや古市コータローさんなど日本のロック界の大御所からも絶賛されています。
釘屋 嬉しいです。憧れていた大先輩や、あと普段から音楽を聴き続けてきた年上の方からかっこいい! ってよく言っていただけます。有名なロックバー、レッドシューズでライブやったら年上の方にたくさんおごってもらいました(笑)。
――単純な疑問ですが、そもそも釘屋さんがロックバンドをやるようになった理由はなんですか? 世代的にもし何か表現をしたいのであれば、お笑いやYouTuberとかが選択肢として自然な気もするけど。
釘屋 なんででしょうね。シンプルにロックが好きだったのもあるけど......簡単でカッコいいからかな。
――簡単!?
釘屋 スリーコードのロックンロールなら3~4人いれば誰だってすぐにできそうじゃないですか。お笑いもYouTubeももっと難しいですよね。でも、なめ切ってました。実際はそんな単純なものでもなくて、いまももちろん苦労もしてますけど。
――ひと昔前は、RCサクセション、ザ・ルースターズ、ミッシェル・ガン・エレファント、ブランキー・ジェットシティとか、カッコいいロックバンドって多かったじゃないですか。でもある時期から、ロックよりJポップが主流に。それは悪いわけではないけど、カッコいいロックバンドに胸を躍らせた連中にとっては、音も見た目もかっこいい暴動クラブの登場は嬉しいんですよね。
釘屋 ありがとうございます。個人的に思うのはいま聞こえてくる音楽は無味無臭というか、まともな人が真っ当なことを歌うものばかりってこと。面白さがない気がするんですよね。もっと人と違っていいし、人と違ったことを大きな声で歌えばいいと思うんです。それがロックンロールだし、カッコいいってそういうことだと思う。そこは突き詰めていきたいですね。
――理想のバンドはいるんですか?
釘屋 ローリングストーンズです。ロックンロールだけであそこまで上り詰めて、しかもいまだ第一線でやり続けているじゃないですか。それが単純にカッコいい。そして何より決して難しいことはやっていないのに、あの人たちじゃないとダメというのがすごい。僕らもそういう音楽だけでなく、存在として人の心に残っていくようになればいいなって思います。
そういえば、さっきも言った通り、普段は年上の方に評価していただくことが多いんですが、最近は若いファンも少しずつ増えてて。何よりロックンロールは若者が聞いてなんぼみたいなところがあるじゃないですか。そういう人たちに届きはじめているってことで、手応えを感じ始めています。
●暴動クラブ
釘屋 玄(Vo)、マツシマライズ(G)、城戸"ROSIE"ヒナコ(B)、鈴木 壱歩(Dr)。平均年齢21才、東京を中心に活動するロックンロールバンド。
2022年5月に結成後たちまち話題に。2023年11月3日にファースト7インチ・シングル「暴動クラブのテーマ」をリリース。オリコンROCKシングル 週間ランキング 第8位をマーク。2024年4月20日にリリースしたセカンド7インチシングル「シニカル・ベイビー」はロングセールスとなり、発売週に第13位、翌週には第16位、そしてオリコン ROCKシングル月間ランキングに第24位でチャートイン!レコードが売れに売れまくっているロックバンドとして有名になる。8月7日にファーストアルバム『暴動クラブ』をCDのみで発売。
『暴動クラブ』暴動クラブ
\3300(税込)
(BEAT EAST/FORLIFE SONGS)
CD/アルバム 全11曲収録 モノラル録音
※CDのみの発売で、配信等はなし!