日本有数の映画ガイド・高橋ヨシキが新作映画をレビューする『高橋ヨシキのニュー・シネマ・インフェルノ』! 恐怖の酸性雨から逃げ惑う、気候変動スリラー!

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『ACIDE/アシッド』

評点:★1.5点(5点満点)

 © BONNE PIOCHE CINÉMA, PATHÉ FILMS, FRANCE 3 CINEMA, CANÉO FILMS - 2023 © BONNE PIOCHE CINÉMA, PATHÉ FILMS, FRANCE 3 CINEMA, CANÉO FILMS - 2023

アイディアは面白いがあまりにも退屈

強酸性の雨が降ってきた! みるみるうちに家屋が、車が、木々が、そして人間が焼けただれ、煙が立ち上り、そして溶けていく!というアイディア自体は、それがどの程度現実的かどうかは別としてそれなりに面白い。

そこにはグロテスクなスペクタクルの可能性があり、「うわっ、そんなことになったら本当に大変だな!」と無責任に楽しめるディザスター・エンターテインメントの可能性があった。

ところが本作の主眼は酸性雨を逃れようと放浪する父娘の関係、あるいは父親の女性関係をめぐるドラマに置かれており、そのドラマ自体の持つ「引き込む力」が弱く、かつ間延びしているため、どうにも退屈な作品になってしまった。

もともと本作はジュスト・フィリッポ監督が2018年に作った同題で18分の短編を元に長編化したものだが、長編と短編では語られるべき物語の量が全く違うので、ドラマ部分にフォーカスするのであればもっとストーリーラインを熟考すべきだったと思う。

スペクタクル中心にできなかったのは予算の問題とのことでそれは理解できる。が、それでも、一点豪華主義的にショッキングな場面がもう少し構築できていれば良かったのに残念極まりない。

STORY:異常な猛暑に見舞われたフランスの上空に突如、不気味な雲が現れる。それは、人も家も街も溶かす強酸を降らせる危険な雲だった。フランス全土が大混乱に陥る中、安全な場所を求めてさまよう親子は生き残れるのか......!?

監督・脚本:ジュスト・フィリッポ
出演:ギヨーム・カネ、レティシア・ドッシュ、ペイシェンス・ミュンヘンバッハほか
上映時間:100分

全国公開中

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