見取り図。「最近、周りの芸人に『SNSやめへんか?』 って言ってるんです」(盛山・左)「投稿ひとつで活動停止になる時代じゃないですか」(リリー) 見取り図。「最近、周りの芸人に『SNSやめへんか?』 って言ってるんです」(盛山・左)「投稿ひとつで活動停止になる時代じゃないですか」(リリー)

2022年の上京後、幅広く活躍する見取り図。彼らが語る、SNS時代の距離感の難しさ、個人YouTubeチャンネルを再開した経緯、そしてYouTubeで成功している芸人の力。

■YouTubeを頑張り始めたきっかけ

――ここ最近、盛山(晋太郎)さんが個人のYouTubeチャンネルを再開、リリーさんがかまいたち・濱家隆一さんと『はまリリ酒呑みチャンネル』を開始。何かきっかけがあったんですか?

盛山 ゲレンデ(メルセデス・ベンツ Gクラス)を買うとなったときに、「『車買ったよ』って動画を出したら伸びるで」っていろんな先輩に言われて再開したんですよ。ただ、おかげで車体の色でバレて、たまに信号待ちで写真撮られたりして最悪ですわ(苦笑)。

リリー マジでかわいそうよな(苦笑)。

盛山 先輩たちからの意見は半々やったんですよ。「テレビとかで出したら面倒くさいで」っていうのと、「伸びるで」っていうのと。それで伸びるほうを取っちゃいました。

リリー 僕のは、もともと濱家さんの個人チャンネルだったんですよ。かまいたちさんのチャンネルで僕と濱家さんがサシで飲む動画を撮ったときに、濱家さんから「こんなんおもろいなあ。やる?」って言われて「やります!」ってふたつ返事でスタートしました。気づいたら、とんとん拍子でしたね。

リリー リリー

――『ジョンソン』(TBS系のバラエティ)が9月末で終了するとの報道も出ましたが、その影響もあるんですか?

盛山 時間は間違いなくできました(笑)。ちょっと放送頻度が変で、レギュラー番組とはいえ放送がない月とかあったのでね。ただ、番組が終わると確定したわけではないんですよ。

リリー まだ公式発表はないですからね。どうなるかわからないですけど、僕らとしては続けていきたいです。

盛山 『ジョンソン』って本当に現場の空気感がめちゃくちゃいいんですよ。だから、もっと大きくしていきたい気持ちはあるし、これからも末永くやっていきたい。放送頻度は激減するかもしれないけど、特番みたいな感じでも続けたいです。

――盛山さんのチャンネルは「盗み食い」シリーズが好調ですが、始めたきっかけは?

盛山 宮崎県で蛙亭主催のイベントがあって、その打ち上げが旅館の宴会場だったんです。「どうせやったら面白いの撮られへんかな」って思いつきで、さや香の新山のごはんを盗み食いしたらエラい好評で。それから楽屋とかで盗み食いするようになりました。

正直「盗み食い」っていうチャンネル名に変えてもいいぐらいの感じですね。もうバレてるのにお互いにやめないのは芸人のノリです。「盗み食いの動画を撮る」なんて言わなくても、芸人は察して面白くしようとしてくれるので。

盛山晋太郎 盛山晋太郎

――リリーさんはもともと濱家さんとお酒を飲む番組をやりたかったとか。上京してからは濱家さんと飲む機会は減った?

リリー 濱家さんが忙しいのでめちゃくちゃ減りました。大阪時代は週5で飲んでたのに今はもう月1、2回ですから。でも、週5はけっこうキツかったので週1ぐらいがちょうどいいです。

上京してからお世話になってる憲さん(とんねるず・木梨憲武)とも全然飲みに行けてないです。今でも"テレビの中の人"なので、目の前にいるのが不思議な感じ。慣れないですね。

盛山 相方は、先輩や大御所の方にも年収とか経験人数とかなんでもズバズバ聞くんですよ。そういうのって先輩ほどされないじゃないですか。それで、「この野郎、なんでも聞いてくるじゃねぇか」みたいな感じでかわいがられるんじゃないですかね。

■さらば森田は五反田の両津勘吉

――コンビや個人のYouTubeチャンネルで「バズらせたい」という気持ちは?

盛山 全然です。そういう才能はないので(笑)。やっぱそのへんは、さらば(青春の光)がすごくて、企画も人選も面白いから動画を出せば再生回数3桁万いきますし。

森田(哲矢)と(事務所のある)五反田歩いたらすごいですよ? もうホンマに『こち亀』の両津勘吉みたい。街の人、皆が知ってる。ふたりで歩いてるだけでめっちゃ声かけられるから、「どっちが神対応するか」とかでずっと遊んでます。カメラも回してないのに「俺、今からこの人らと飲みに行くから」とか「俺、お会計するから」とか(笑)。

森田がすごいのは絶対にサボらないトコですね。ずっと全力な上に一切手を抜かない。何よりすごいのは、(東)ブクロを養ってる力ですよ。とんでもない重さのザック背負ってるようなもんですからね(笑)。

――7月に『週プレNEWS』で性や恋愛、仕事などの悩みに答える東ブクロさんの連載が始まったんですよ。

盛山 やかましいな(笑)。まあブクロってツッコミもうまいですしね。ひとりになるとお姉ちゃんがどうとかなっちゃうけど。

リリー でも、またスキャンダルでも起こしたら、連載の発言とかが掘り起こされるリスクもあるのにすごいな(笑)。逆に森田は突っ走ってほしいんですかね。僕は過去のこと言われても悪いことしてない自信ありますけど。

盛山 リスクもあるし、SNSの投稿は気をつけるようになりましたね。特に今って殺伐としてるじゃないですか。俺、承認欲求から生まれてきた男なので(苦笑)、暇あったら開いちゃうんですよ。よくないなって思って、1週間くらいSNSをやめようと思ってたんです。

リリー 今、SNSの投稿ひとつで活動停止になったりするじゃないですか。ホンマに怖いっすよね。

見取り図

盛山 そこをうまく立ち回る(霜降り明星の)粗品は風雲児ですよ(笑)。ネットニュースに賛否を交えて物申す動画「1人賛否」もシンプルに面白いですしね。大阪時代から才能の塊やったし、芸風もずっと変わらんよな?

リリー うん。あいつは計算してやってると思う。絶妙なバランスですよね。

盛山 あんなのまねしたら普通の芸人はケガします。それで最近、周りの芸人に「『せーの』でSNS全員やめへんか?」って言ってるんですよ。俺だけやめて、続けてる皆が楽しそうにしてたら嫌やから。

あと、少し前に大阪の劇場で「Xやめました」「インスタ削除しました」って言ってる若手がチラホラおって、理由を聞いたら「見ててしんどい」「なんのプラスもない」と言ってて「カッコいい!」って思って(笑)。確かにSNSをバーッと見て最後閉じるときにハッピーな気持ちだったことってないんですよね。

――YouTube動画を上げるにあたって、炎上しないように気をつけてはいる?

リリー 『酒呑みチャンネル』は飲み始めの30分ぐらいを回していて、酔う前に撮ってるから大丈夫だと思います。その後ヤバいこと言ってるかもしれないですけど(笑)。

盛山 炎上じゃないですけど、チンチン出したりとかでBANされかけたことは数回あります。

あと、今やってる盗み食い動画にもけっこうお叱りは来ますね。コメント欄に「マナーが悪い」とか「子供がまねしたらどうする」とか。どんな動画上げてもそういうコメントは来るので、あんまり気にしてないですけど。

■菊水丸師匠は僕らのスヌープ・ドッグ

――9月には、初主催となるお笑いフェス「見取り図盆踊り」が控えています。

盛山 もともとヒップホップとお笑いのイベントをやりたかったんですけど、ちょっと難しそうだったので「じゃあ子供の頃から好きな盆踊りだ!」と僕が言い出して開催する運びになりました。どんな2択やねんって話なんですけど(笑)。

今年、博多華丸・大吉さんが博多でやった「華大どんたく」がすごすぎたんでね。規模もそうですし、華大さんは福岡の英雄だから。

リリー 英雄感がすごかったですね。フードエリアとかも広くておいしいものもいっぱいあったし。

盛山 あと5、6年で博多駅にサダム・フセインぐらいの銅像建ちますよ。ホンマにそれぐらいすごかった。もちろんあんな規模は無理ですけど、繰り返すことで恒例化できたらなと思ってます。

今回のイベントは、ネタはもちろん企画コーナーや盆踊りもあって。最後は河内家菊水丸師匠が登場して、踊り子のおばさまたち、芸人も浴衣で踊ります。ぜひその雰囲気を楽しんでもらいつつ、近くの芸人をペタペタ触ったりしてもらえたらと。

見取り図

リリー それぐらいの近さで一緒に楽しめたらいいですね。菊水丸師匠は関西以外ではなじみがない方もいると思いますけど、今回のイベントですごさを知ってほしい。

盛山 大阪の南のほうに『河内音頭』っていう僕らが小さい頃から慣れ親しんでる民謡があるんです。菊水丸師匠は、その唯一の歌い手さん。

パリ五輪のブレイキンではヒップホップMCで俳優のスヌープ・ドッグがサプライズで登場しましたけど、僕らにとってのスヌープ・ドッグは菊水丸師匠ですから。こういうイベントを主催するのは初めてなんですが、なんとか全力で盛り上げたいと思います!

●盛山晋太郎(もりやま・しんたろう)
1986年生まれ、大阪府出身。2020年8月以降投稿されていなかった個人チャンネル『盛山プライムビデオ』を、今年4月、車を購入する機会に更新を再開。「盗み食い」シリーズが好調

●リリー(Lily)
1984年生まれ、岡山県出身。今年7月、大阪時代から「いつか酒を飲むだけの仕事をしよう」と話していたかまいたち濱家隆一と念願の『はまリリ酒呑みチャンネル』を始動した

■「見取り図盆踊り」
日時:9月21日(土)17時開演
会場:靱(うつぼ)公園センターコート特設会場(大阪市西区)
詳細は特設ホームページへ【https://mitorizu-bonodori.com/】

鈴木 旭

鈴木 旭すずき・あきら

元バンドマンのフリーライター/お笑い研究家。1978年生まれ、静岡県出身。多くのメディアでコラム、インタビュー記事を執筆。著書に『志村けん論』(朝日新聞出版)

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