全国の選挙現場を駆け巡り、選挙漫才や時事ネタを日々披露する、選挙大好き芸人「ゆかいな議事録」の山本期日前 全国の選挙現場を駆け巡り、選挙漫才や時事ネタを日々披露する、選挙大好き芸人「ゆかいな議事録」の山本期日前

2024年10月15日に公示がされ、27日に投開票が行われる衆議院選挙。石破茂新総理が誕生してわずか8日での衆院解散、総選挙の告示という異例の展開となった今回の総選挙では、「裏金議員」の一部が自民党内で非公認となる厳しい対応がとられ、大きな波紋を呼ぶ一方で、新たに勢いを増している政党にも注目が集まるなど、見どころ盛りだくさん。波乱の展開も起こりうる今回の衆院選では、一体何に注目すればよいのだろうか。

そこで大の選挙好きを公言し、選挙ボランティアの経験もある芸人「ゆかいな議事録」の山本期日前に、自分に合った候補者の選び方、選挙を楽しむためのメソッドなど、選挙初心者でも分かりやすい解説をしていただく。

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■「必死さ」をアピールした人間が選挙に勝つ!

――山本さんは全国各地を巡り、たくさんの選挙現場を見てきたそうですが、そこで何か気付いたことはありますか?

山本 まず、数々の選挙演説を聞いているうちに、選挙で受かる候補者とそうでない候補者の違いが少しずつ見えるようになりました。特に大きな違いというのが、演説後にとる候補者の行動。演説後は、候補者が有権者のもとへ向かうことが通例なのですが、やはり走って駆け寄る人は当選する傾向が強いように思います。逆に、ゆっくり歩いていく人は、残念ながら落ちることが多いんじゃないかと。

――「走るかどうか」だけで差がうまれる?

山本 それってつまり、どれだけ「必死感」を見せられるかということだと思ってます。選挙の世界ではよく「1握手1票」なんて言われますが、やっぱり、駆けつけて握手しに来てくれる候補者には心を動かされますよね。中には、有権者が連れてきたワンちゃんにまで目を合わせてしゃがみこむ候補者なんかもいますが、そういう人は、有権者に寄り添っているという印象を本当に強く与えます。そんな光景を見ると、「この人なら信じて投票しても良い」と感じさせてしまう力があるんですよ。

――なるほど。

山本 いろいろな調査を見ると、もちろん政策で投票先を決めている人も多いですが、実際のところは人間性や候補者のイメージで決めている人が想像以上に多いんじゃないかなと思います。たとえば、声を枯らして必死に演説をしている姿や、毎朝駅前に立って挨拶している姿っていうのは、やはり有権者の脳裏に焼きつくんですよね。

冷静に考えれば、そういう時間を使って政策を進めている候補者に投票すべきだという考えもあるはずですが...。選挙に勝てる人と政策をきちんと進められる人が必ずしも一致するわけではないというのも、何度も選挙を見てきて感じています。

雨の日にあえて傘を差さずに演説をする候補者、日焼けサロンで肌を焼いてから夏の演説に臨む候補者......。「イメージ作りを徹底する候補者を数多く見てきた」と語る山本期日前 雨の日にあえて傘を差さずに演説をする候補者、日焼けサロンで肌を焼いてから夏の演説に臨む候補者......。「イメージ作りを徹底する候補者を数多く見てきた」と語る山本期日前

■「応援したい候補者が自分の選挙区にいない問題」への対処法

――正直、自分の選挙区に「この人だ!」って応援したい候補者が見つからないこともありますよね。

山本 僕はそういう時こそ現場に行って候補者を見ますし、候補者だけでなく「その人を応援している人たち」もよく見て投票先の判断材料としています。例えば、「子育て世代を応援する」と宣言している候補者なのに、周りで応援してる人に子育て世代がいなかったら、本当に支持されてるのかな?って疑問に思いますよね。応援している人たちの顔ぶれや熱量を見れば、その候補者がどれだけ信頼されているのかがわかるので、候補者選びの大きな指標になると思います。

実際、国会で少子化対策の政策をしっかり進めてきた候補者の場合だと、普段からお世話になっているNPOの少子化対策団体が応援に参加することなどが多いんですね。応援している人々の熱意を見れば、その候補者がこれまでどれだけ真摯に仕事をしてきたかが伝わってきます。

――「わざわざ演説を聞きに行くのはちょっと......」という人はどうしたらいいですか? ネット上の情報を参考にするとか。

山本 もちろん、SNSを活用するのもいいです。XやInstagramで候補者を調べるのはもちろんのこと、候補者を応援している人たちのプロフィールをチェックするのもオススメです。たとえば、介護政策を掲げている候補者が介護業界の人たちにたくさんリツイートされているなら、その分野で信頼されている証拠と言えますよね。逆に、「なんだか自分の考えと合わなそうな界隈の人たちが拡散しているな」ということもチェックできます。もちろん、それだけがすべてではありませんが。

それと、若い世代にはちょっとマイナーなSNSかもしれませんが、Facebookも要チェックですね。割と地域に密着した活動をしている人たちが多く使っているので、例えば地域のNPOやボランティア団体がどの候補者を応援しているのかなど、地元の情報が結構見つかります。SNSによって見える「支持層」が違うので、それぞれのプラットフォームでいろんな視点から候補者をチェックするのが良いですね。

――自分の意見を選んでいくとそれに近い政策の政党名が出てくる、いま流行りの「投票マッチングサイト」の信憑性はどうですか?

山本 実はいまの投票マッチングサイトはかなり精度が高いのでオススメです。特に政治のことを難しく感じる人や選挙初心者にはかなり使えるツールだと思います。選択肢に分からない項目があっても、キーワードを一つ一つ解説もしてくれるサイトもあるので、単にどの政党が自分に合っているかだけでなく、政治の理解も深められる良いチャンスだと思います。

ただ、ハードルは高いですが、やはり一番オススメなのは候補者に実際に声をかけてみること。直接声をかけるのが難しい場合は、手伝っている人に話を聞くのもかなり有効だと思います。選挙カーや街頭演説だけでは見えてこない情報がたくさん得られるので、ぜひトライしてみてほしいですね。

「政治家が実際にしている仕事は見えづらいが、SNSを使いこなせばわかることも多くある」と語る山本期日前 「政治家が実際にしている仕事は見えづらいが、SNSを使いこなせばわかることも多くある」と語る山本期日前

■選挙の現場は予期せぬ出来事続きの「非日常の空間」

――ちなみに、山本さんは選挙ボランティアをされてたそうですが、選挙をより楽しむためにボランティアをするのもアリですか?

山本 それはとても良いと思います。選挙のボランティア活動って、社会貢献できるだけでなく、楽しさや驚きもあるんです。選挙の現場は割と「非日常の空間」で、まるでスパイ映画の1シーンのような緊張感や予期せぬ出来事が頻繁に起こります。私にとっては「無料で楽しめるディズニーランド」のような空間です。

例えば、街に貼った選挙ポスターが破られたり、時には燃やされたりすることも。普通なら候補者は落ち込むじゃないですか。でも、歴戦の候補者たちは違ってて、「他の候補者が焦っている証拠だ!」って逆にガッツポーズをするんですよ。それはあくまで一例ですが、選挙の現場は一度関わってみると、これまでと全く異なる価値観を得られると思います。

――そんなことが頻繁に!?

山本 そうなんです。あと、もっと楽しいことで言うと、若者にとっての選挙ボランティア活動って、ものすごく恋愛が生まれやすい空間でもあるんですよ。ちょっと大学の文化祭実行委員会のような雰囲気があって。なので、実は選挙後にボランティア同士が結婚する例もあります。普段と違った一体感のある空間の中で共通の目的のために頑張るので、非常に恋愛との相性がいいんですね。

選挙に興味がある方は実際に関わってみると非日常の楽しさを得られますし、恋をしたい方の出会いの場としてもオススメです。

■実は「お買い得」な、メリットだらけの期日前投票

――これから選挙を楽しむために、一番いい方法を教えてください。

山本 それは、僕の芸名「山本期日前」にもある通り、ぜひ「期日前投票」に行ってもらうことですね。期日前投票って選挙当日に行けない人のためのシステムだと思われがちですが、実はそれだけじゃなく、すごく便利でおトクなんです。

――え! そうなんですか?

山本 選挙当日は地域の学校など、決められた投票所に行かないといけないですが、期日前投票なら市区町村内の投票所ならどこでも投票が可能なんです。意外とショッピングセンターなどに期日前投票所が設置されてるところもあって、買い物ついでに投票できちゃうのは便利じゃないですか。

しかも、投票用紙や身分証がなくても、手ぶらで投票することもできるんです。たまたま立ち寄ったショッピングセンターで「あ、期日前投票やってる」と思ったらその場で投票できる。これ、意外と知られてないですよね。

――おトクな要素もあるんですか?

山本 期日前投票をすると「投票済証」がもらえるんですが、これを提示することで「選挙割」が使えるお店が増えているんです。タピオカブームの時には、普段いないような「投票済証」を持ったおじさんたちが行列を作ってたなんて話もありました。もし、どうしても応援したい候補者がいなくても、この「選挙割」を活用するために投票に行くっていうだけでも選挙に行く理由になると思います。

逆に応援している候補者がすでに決まっている人にも期日前投票がオススメです。出口調査って期日前投票でも割と行われていて、その結果が候補者に伝わって、選挙当日までのモチベーションにも繋がるんですよね。期日前の結果が励みになる候補者もいれば、逆に焦って演説を増やす候補者もいます。

実は、選挙当日になっても誰に投票するか迷ってるような有権者って、「勝ちそうな候補者」に投票するケースが多いんですよね。期日前投票によってある程度、大勢が見えていると、そういった候補者が勝ちやすくなることもあるかもしれません。ぜひ今回の衆院選でも、ぜひこのメリットいっぱいの期日前投票を活用してみてください。

――インタビュー後編では、今回の衆院選での具体的な注目ポイントについて話をうかがいます!

山本期日前(やまもと・きじつまえ) 
1993年1月、千葉県流山市生まれ。吉本興業所属のお笑いコンビ「ゆかいな議事録」のボケ担当。2019年にYouTubeのチャンネル「ゆかいな議事録【選挙・政治ch】」を開設し、「参院選候補者でサッカーベストイレブン決めてみた」などの、日本各地の選挙をわかりやすく、楽しく解説する動画を配信している。趣味は選挙ポスター集め。