(左から)「青色1号」のカミムラ(34歳)、榎本淳(32歳)、仮屋そうめん(33歳) (左から)「青色1号」のカミムラ(34歳)、榎本淳(32歳)、仮屋そうめん(33歳)

今年の『ABCお笑いグランプリ』を見たオール巨人師匠が、週プレの連載で「一番印象に残った」と称賛した今来ているコントトリオ・青色1号。大会では令和ロマンと接戦を繰り広げ惜しくも準優勝となった彼らが語る、トリオの強みや弱みと賞レースへの気持ち。

■令和ロマンの技術に負けちゃった感じ

――ラストイヤーで『ABCお笑いグランプリ』決勝に進出。オール巨人師匠が週プレの連載で、ファイナルステージへと勝ち上がった令和ロマン、ダウ90000、青色1号の中で「一番印象に残った」とホメていました。

カミムラ 僕は「男を笑わせたい」と思ってやっているので本当にうれしいです! ダウじゃなくて僕らをホメてくれるあたりが、はやりで見てないなって思います(笑)。

仮屋 ありがたいです。巨人師匠に、来年から『キングオブコント(以下、KOC)』準決勝の審査員になってもらって僕らを決勝に上げてほしいですね。

榎本 それ、僕らが準決勝まで行かないと意味ないって(笑)。

巨人師匠にネタを評価してもらえたのが信じられないですけど、点数が1桁ずつ発表される中で優勝が令和ロマンと僕らのふた組に絞られたときは「優勝した!」って思っちゃいました。残念ながら準優勝でしたが。

日常を切り取るコントを得意とし、特にサラリーマンコントには定評がある。『ABCお笑いグランプリ2024』では、1本目にアナウンサー試験で就活生が奮闘するコントを、2本目に英語を言ったら罰金を払うゲームのコントを披露した 日常を切り取るコントを得意とし、特にサラリーマンコントには定評がある。『ABCお笑いグランプリ2024』では、1本目にアナウンサー試験で就活生が奮闘するコントを、2本目に英語を言ったら罰金を払うゲームのコントを披露した

カミムラ (髙比良)くるまがヒールっぽくやってましたけど、大会的には令和ロマンが主人公で俺らがヒールに決まってますから。でも、まあやっぱり強いっすね。あそこでしっかり結果を出すっていうのは。

仮屋 『M-1グランプリ』の王者に勝てるとは思ってなかったですけど、最後だけは「もしかしたら優勝かも」って気持ちが湧いちゃいました。「魔人無骨(まじんぶこつ)」(「令和ロマン」に改名する前のコンビ名)時代はよく一緒にK-PROライブに出てたんですけどね。

カミムラ 知ってる仲ではありましたけど、もう向こうは達人ですから。漫才は会場の空気をつくれちゃうから、コントの面白さで圧倒的に勝たなきゃと思って臨んだんですけど、令和ロマンの技術に負けちゃった感じですよね。

榎本 ほかの漫才師と比べても、くるまが特殊なんですよ。「ダウは人数が多いから、漫才コントの登場人物を増やそう」とか、「青色1号とダウがしっかりしたコントをやるだろうから、俺らは変な漫才をしよう」みたいなことを本番ギリギリになって決めてたらしいので。僕らコント師は用意したものしかできないですから......。

カミムラ けど、ダウも強かったし、ちゃんとダウがファイナルまで行く大会っていうのもいいなと思って。もちろん戦わなきゃいけない相手なので、2本目がスベってたときは「ざまあみろ」とは思っちゃいましたけどね(笑)。

青色1号

榎本 いまだにダウとは「2年前の『ABC』でスベってたね」って言い合ってます(笑)。それもあってよけいに最後まで戦えたのはうれしかったですね。

カミムラ ダウも令和ロマンも後輩なんですよ。

まあ僕ら、30過ぎで芸歴10年目だから当然といえば当然なんですけど、改めて「年下に負けた」って思うとめっちゃ悔しい。ライブでも僕らが一番上って珍しくなくなってきてるから、早く結果を出さないと。

榎本 その半面、『ABC』の楽屋は仲の良い後輩ばっかで気を使う必要もなかったから楽しかったね。

仮屋 それこそ少し前まで令和ロマン、ダウ、僕らでよくバトルライブをやっていたので、その3組が勝ち上がったのは個人的にエモかったです。コント師と漫才師だから、賞レースであの画はもう二度と見られないでしょうし。

■「青色なら余裕」って言うけど、全然怖い

――残念ながら、今年は『KOC』準々決勝で敗退。昨年と比べて予選の手応えはいかがでしたか?

カミムラ 前々回の大会で準決勝に行ったから、シード権が与えられて1回戦は免除だったんですけど、僕らってある程度ウケても2回戦で落ちることもあるのでヒヤヒヤでした。

榎本 本当にナメてはいけないというか。周りは「青色なら余裕でしょ」って言うんですけど、全然怖い。

仮屋 今年は2回戦に向けてずっと同じネタで調整してたんですけど、予選前日のライブで別のネタを試したら「こっちのほうがいいんじゃないか」って悩み始めて、結局本番では直前に変えたネタのほうをやりました。僕ららしいとも思うけど、大会に向けた調整がヘタすぎる(笑)。

カミムラ そんなだから、今年も2回戦で落ちる可能性ありましたよ(笑)。くるまはそこがすごいんですよね。『ABC』決勝で同じブロックの芸人が発表された時点でネタを決められる。僕らの中にはそんなことができるメンバーがいないので。

仮屋 僕は責任取りたくないから、本当はこっちがいいと思っても「どうする?」って最終的に委ねちゃいますし。

カミムラ なんとなく「Aでいくか」ってなると仮屋はAの悪口を言い出して、「じゃあBで」って流れになると今度はBの悪口を言い始める(苦笑)。それがめちゃくちゃムカつくんですよ。

仮屋 どっちも懸念点といいところがあるから、「こっちはここが不安」「こっちはこれがいい」と理由つけて言ってはいるんですけどね。

青色1号

――2022年は『KOC』準決勝進出、『ABC』決勝進出、『賞金奪い合いネタバトル ソウドリ~SOUDORI~』(TBS)優勝など調子が上向いていましたが、なぜ去年は結果を出せなかった?

カミムラ 僕の中では、ネタの貯金が尽きたイメージですね。22年はそれまでの貯金で勝てていたところにいいネタも1個できて、それを使い果たした翌年にあんまり結果が出なかった、みたいな。

あと、賞レースとかの勢いをうまく利用できる芸人もいるんですけど、僕らはそれも「まだ早いだろ」って思っちゃうんですよね。23年はそんな感じで淡々とやっていたからイマイチだったような気がします。

榎本 あと周りがハードルを上げ始めたのもありますね......。去年の『KOC』の準々決勝って、ダウ、ロングコートダディさん、コットンさん、や団さんとかと僕らが同じブロックで、「つわものばかりの死のグループ」って言われてたんですよ。

僕らもその中に入れてもらえたのはありがたいんですけど、必要以上にハードルが上がって、ウケづらい空気になっちゃってたんですよね。

仮屋 2年前の『ABC』決勝に出たときはダメだったけど、経験を積んで今年の大会でうまく出せたみたいな感じもあるから、去年はちょうどバイオリズムが噛み合わなかったのかなとも思います。

カミムラ 不調の要因ははっきりとはわからないですけど、今思えばそういう時期も必要だったのかなと思います。

■箔をつける意味でもまずは『KOC』

――コンビの『KOC』王者が多い中、トリオの強みはどこにあると思いますか?

カミムラ 特にハナコさんが特化してる気がするんですけど、「2+1」っていうのが圧倒的な強みだと思います。ふたりで面白くしたところにひとりプラスすることで、もう1個面白いことができるっていう。僕は3人で面白くしたいほうなんですけど。

榎本 ネタに厚みが出る部分もトリオの強いところじゃないですかね。コンビでやるより、トリオのほうが掛け合いも多くなるので。

カミムラ ただ、賞レースでいうと、トリオかコンビかというよりは芸風の争いになる気がするんですよ。僕らと同じ"日常的なコント"って枠の中で面白いことをやってたら、「うわ、すげえ!」って思っちゃいますね。かが屋が出てきた当時も「すげえな」って思いましたし。

ホイッスルを吹くと「言い訳タイム」が始まるコントなど、太田プロのYouTubeチャンネルで視聴可能なコントも多数 ホイッスルを吹くと「言い訳タイム」が始まるコントなど、太田プロのYouTubeチャンネルで視聴可能なコントも多数

榎本 僕も、コンビが僕らと同じようなサラリーマンのコントをやってたほうがちょっと怖いなって思います。ぱーてぃーちゃんさんとかリンダカラー∞(インフィニティ)とかは、同じトリオでも芸風が違いすぎるのであんま気にならないですね。

カミムラ でも、バラエティだと、男女のトリオはうらやましいなと思います。僕らはトーク番組とかだと、ボケてツッコむのが3人で完結しないからムズいんですよね。

榎本 僕らって番組MCによってイジられるターゲットが変わるんですよ。でも、コンビならたいてい決まってるし、男女のトリオも構造的にわかりやすいじゃないですか。

仮屋 「誰がフロントマンになるのか」で僕らはずっと悩んでます。ただ、身長とか見た目だけじゃなく趣味もバラバラなので、それが売りでもあるのかなって。

カミちゃんは格闘技やバイク、キャンプとかのアウトドア系。榎本はディズニーやアイドル好きだったりするオタク系。僕はギャンブル全般が好きなので、テレビではおのおので個性を出せたらいいなと思ってます。

12月9日には、年間成績上位3組のみが出場できる太田プロライブ「月笑2024」のクライマックスシリーズに出場する 12月9日には、年間成績上位3組のみが出場できる太田プロライブ「月笑2024」のクライマックスシリーズに出場する

――当面は『KOC』決勝進出が目標だと思いますが、ほかに目指していることは?

榎本 僕はドラマとか映画に出たいです。ほかのふたりは出たことあるんですけど、僕だけお声がかからなくて。「芸人がドラマに出てる」ってところに憧れてお笑いを始めたので、どうにかしてチャンスをつかみたいです!

仮屋 パチンコとか競輪とかの番組からオファーが来たらうれしいですね。あと、もっと『チャンスの時間』(ABEMA)みたいなゴリゴリのお笑い番組にも出たい。

カミムラ 今年の『ABC』みたいにちょっと勝ちを味わうと、「『KOC』決勝行く前にテレビ出てるのって楽しくないんじゃないか」と思えてきて。テレビを見てると結局は影響力のある人が言ってることしかウケてない気がするんですよ。

1回箔をつける意味でも、まずは『KOC』優勝を目指したい。その後にテレビとか次のステージで頑張りたいなと今は思ってます。

●青色1号
2015年に太田プロ養成所6期生の同期カミムラと榎本で結成。17年に仮屋が加入してトリオに。『ゴッドタン』(テレビ東京系)の企画「この若手知ってんのか!? 2020」でカミムラの異常なストイックさから「とにかくヤバイ芸人部門」1位で紹介され話題に

鈴木 旭

鈴木 旭すずき・あきら

元バンドマンのフリーライター/お笑い研究家。1978年生まれ、静岡県出身。多くのメディアでコラム、インタビュー記事を執筆。著書に『志村けん論』(朝日新聞出版)

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