漫才頂上決戦「M-1グランプリ2024」決勝がいよいよ12月22日(日)に迫ってきた。決勝の行方も気になるが、週プレNEWSでは今年も最後の1枠を狙う敗者復活戦に注目する。
決勝当日の午後3時から生中継で放送される敗者復活戦は昨年からルールが大幅に変更された。準決勝で敗退した21組をA、B、Cの3ブロックに分け、会場の500人の観客が審査。ブロックを勝ち上がった3組を野田クリスタル(マヂカルラブリー)、斎藤司(トレンディエンジェル)、久保田かずのぶ(とろサーモン)、井口浩之(ウエストランド)、渡辺隆(錦鯉)の5人の芸人審査員が審査し、無記名投票で投票の多かった1組が決勝の舞台に立つという二段構えの審査方式となった。
昨年は決勝以上に盛り上がったとの声もある敗者復活戦の行方はどうなるのか。昨年に引き続き、M-1への強すぎる愛から"Mおじ"の愛称で知られ、自身も2017年に敗者復活戦で勝ち上がった「スーパーマラドーナ」武智さんに予想してもらった。
■昨年体感した敗者復活戦会場の雰囲気
昨年の敗者復活戦は会場で見させてもらいました。
一昨年前までは屋外での開催だったのでお客さんも寒くて、後半になると会場の雰囲気が重なっていったんですけど、昨年から会場になった新宿・住友ビル三角広場は室内で終始あったかいので、お客さんも最後まで元気がなくなることなく、会場も盛り上がってすごくいい敗者復活戦でした。お客さんもめちゃめちゃお笑いファンというよりは、一見さんも多いなって感じがしましたね。1500人ぐらい入ってたんですけど、7割がお笑いファン、3割が新規という印象です。
敗者復活戦のシステムも、各ブロックの勝者を決めるのは会場のお客さんで、最後残った3組からプロの審査員さんが決勝進出者を選ぶ2段階の審査方法になったことで、よりちゃんとおもろいやつが上に上がれるシステムになっているなって思いました。
去年、見させてもらって気づいたことでいうと、サンパチマイクから離れると一瞬だけ声が聞き取りにくくなる。下でフットマイクを構えたスタッフさんが、芸人がマイクから離れた瞬間に追いかけていくんですけど、追いついたらちゃんと聞こえるんですけど、芸人がパッと離れた瞬間はフットマイクを持ってるスタッフさんも出遅れるので、出遅れた分一発目の声が聞き取りにくくなる。言葉を使わなくてドタバタ走り回るネタであればいいんですけど、言葉ありきで動く時は一瞬声が聞き取りにくくなるので、ちょっと不利かなと感じましたね。
逆にマイクの前から離れない、早口すぎず何を言ってるかちゃんと聞き取れるコンビは敗者復活戦の広い会場では強いかなと思います。なので今回の21組ではカベポスターはすごく有利かな。あとはマユリカ、滝音、豪快キャプテンもそうですね。
●Aブロック通過予想
カベポスター(吉本興業)
<Aブロック>
カベポスター
十九人
金魚番長
ドンデコルテ
フースーヤ
今夜も星が綺麗
ダンビラムーチョ
※出順は当日発表
Aブロックの本命はカベポスターです。続くのが金魚番長、ドンデコルテ、フースーヤあたりですね。この4組のどれかが勝ち上がると思います。
カベポスターはマイクとの距離の話もそうですし、2022年、2023年とファイナリストになっているという強みもあります。お客さんの見る目も他のコンビとやっぱりちゃうじゃないですか。面白さもそうですし、カベポスターに入れておけば安心という部分もある。お客さんからの信頼が厚いんじゃないかという感じがします。
ファイナリストで言うとダンビラムーチョもいますけど、たぶん決勝に上がるというより、インパクトを残しに来ると思います。敗者復活戦でインパクトを残せて、決勝に上がれたらなお良いですけど、どっちを取るかってなったらインパクト勝負を取ってきそうな気がするんで。
金魚番長やドンデコルテは神保町花月メンバーで準決勝でもめっちゃウケてました。それを考えると強いだろうなって思います。けど、金魚番長はマイクから結構離れる。フースーヤは去年、マイクから離れててもすごい笑いを取れてたんで、それほど関係はないかもしれないですけど。
金魚番長、ドンデコルテ、フースーヤがカベポスターを超えるためには、最低限カベポスターよりウケる必要があります。お客さんもやっぱり1回見ただけで100%そのネタの面白さを理解することはたぶんできないと思うんです。そうなると票を入れるときの安心感はダントツでカベポスターにある。お客さんが迷っちゃったら前回ファイナリストに入れそうで、Aブロックはカベポスターが強いんじゃないかなって思います。
●Bブロック通過予想
滝音(吉本興業)
<Bブロック>
マユリカ
家族チャーハン
ナイチンゲールダンス
カラタチ
男性ブランコ
滝音
豪快キャプテン
※出順は当日発表
Bブロックが一番やばいですね。正直わからない(笑)。それでも予想するとマイクから離れないマユリカ、カラタチ、滝音、豪快キャプテンのどこかだと思います。
マユリカの強みはやっぱり一個一個のボケが超面白くて、超重たいこと。一発一発のボケがフルパワーのパンチ力でくる。それがどんどん跳ねていくっていう感じです。しゃべり方も結構ゆっくりで、敗者復活戦みたいな広い会場には向いてるだろうなと思いますね。これは滝音もそうで、このブロックはマユリカか滝音のどちらかが勝ち上がると思います。
この組で言えば家族チャーハンもめちゃくちゃ面白い。でもカベポスターもそうですし、マユリカ、滝音もそうなんですが、敗者復活戦という特別な場所での漫才となると経験者が絶対強い。初出場よりも、経験している方が対策とかも練りやすい。
うーん、悩んで滝音で。滝音はツッコミのさすけのフレーズが強すぎるんで、ツボにハマると無双状態になっちゃう。もし滝音がネタを作り替えて、さすけのフレーズをメインのネタに仕上げてきたらめっちゃ怖いし、おそらくそうしてくると思います。
●Cブロック通過予想
インディアンス(吉本興業)
<Cブロック>
シシガシラ
ひつじねいり
例えば炎
オズワルド
インディアンス
豆鉄砲
スタミナパン
※出順は当日発表
Cブロックはひつじねいり、オズワルド、インディアンスの3択かなと思います。その中で会場を巻き込む力がめっちゃ強いのがひつじねいりとインディアンス。そこに前説要素というか、目の前のお客さんを盛り上げる要素を持っている部分で、若干インディアンスの方が上なのかなって思います。
オズワルドも捨て難いんですけど、ここはインディアンスの勝利を予想します。経験値もありますし、以前インディアンスは2020年に敗者復活戦から1回上がっているので、そこを熟知している強みもある。
ひつじねいりも会場を盛り上げる力はめっちゃ強い。ツッコミの松村(祥維)くんは非常にパワフルで会場を起こすというか、お客さんを巻き込むパワーは捨てがたいですけど。いや、本当に捨て難い...。
それでもここはインディアンスで。いろんな策を打ってくると思うんですよ。ボケ数を増やしたり、お客さんとの絡む場面があったり、ちょっと前説要素も入れたり、あらゆる手を打ってきて、その経験の差でわずかにインディアンス有利かなっていう感じですね。
■決勝進出予想
◎本命:滝音
◯対抗:カベポスター
△大穴:インディアンス
Aブロックがカベポスター、Bブロックが滝音、Cブロックがインディアンス。この中でどの組が勝ち上がるかですけど、本命は滝音で行かせてもらいます。
理由は、滝音のフレーズの面白さです。言葉遊び、フレーズに命を懸けているコンビなんで。それが決勝進出を審査するプロの審査員にも刺さるんじゃないかなって思います。
今回の審査員のうち、トレンディエンジェル斎藤さん、錦鯉・渡辺さんはオーソドックスですけど、残りのマジカルラブリー野田くん、とろサーモン久保田さん、ウエストランド井口くんの3人はどちらかというと"曲者"なので、カベポスター、滝音、インディアンスと並んだときに滝音を選ぶんじゃないかなと想像してます。
対抗はカベポスターです。滝音とカベポスターは本当に五分と五分。泣く泣く滝音を本命という感じです。なので大穴はインディアンスにさせてもらいます。
カベポスターとインディアンスを比べた時、インディアンスは言ったら、テンションとノリがネタをさらに面白くしていると思うんですけど、カベポスターって割と淡々と話す。なので台本の魅力といえます。今回の審査員5人は皆、ネタを書かれている人なので、インディアンスとカベポスターであれば、カベポスターの方に惹かれる審査員さんは多いんじゃないかなって思います。
逆にインディアンスがもし決勝に行くとしたら、もうカベポスターの台本や滝音のフレーズをも凌駕する笑いの量が必要。会場をダントツで沸かせて「もうこんだけウケられたら、こいつらが行かんかったら嘘になるやん」ていうくらい巻き込んでウケるというのが、決勝に上がれる方法です。
■武智さんの選ぶ敗者復活戦「注目コンビ」
豪快キャプテン(吉本興業)
勝敗の行方は別として注目してほしいコンビですが、まずは豪快キャプテンです。ツッコミの山下ギャンブルゴリラの面白さをぜひ見てほしい。極端に言えば、ネタはなんでもいいんです。もうギャンブルゴリラがどれだけ怒るか。それを見て楽しむ漫才なんで。
そのギャンブルゴリラのテンションを時に受け止め、時に流すボケのべーやんもめっちゃ上手やなと思います。元々ベーやんがおかしなことを言って、それにギャンブルゴリラは怒ってるんですけど、ベーやんは飄々とした顔をしている。広島出身なんですけど、方言も相まって、ギャンブルゴリラに責められてるんやけどかわいそうに映らない。
スーパーマラドーナのYouTubeにパンクブーブーの佐藤哲夫さんにゲスト出演していただいた時に「しゃべくりで2人の関係性がおもろいみたいな感じになった時に、もうこいつらが何を言ってもおもろい状態、ゾーンに入る」と言ってたんですが、豪快キャプテンはゾーンに入ったら、もう向かうところ敵なしなんで。ぜひそこに注目して見てもらいたい。
今回のM-1でまた、豪快キャプテンは決勝に近づけたと思いますね。去年も全国の皆さんに見せることができて、今年ももっとパワーアップした自分らを見せることができた。来年辺りが本当にファイナリスト候補になるだろうなと思います。
ひつじねいり(マセキ芸能社)
ひつじねいりにもめっちゃ注目してほしいです。
豪快キャプテンと同じで、ゾーンに入りだしたら、勢いと笑いの量は本当に止められない。ひつじねいりのツッコミの松村くんのこじ開けていくような、パワフルなネタの持っていき方を見てもらいたいですね。
豆鉄砲(ワタナベエンターテインメント)
豆鉄砲はすごく若手で、今年初めて準決勝に進出したんですが、どっしり落ち着いてて、聞き取りやすくて、本当にネタも面白い。次世代ファイナリスト間違いなしと僕は思ってます。関西の芸人の間でも「あの子らはめっちゃ面白いな」とみんな言ってました。
魅力はものを見る視点の角度ですね。普通の人が真正面からしか見れないものを、斜めから見て、話を作っていく。去年のハンバーグのネタもそうです。ハンバーグの作り方の工程をただ喋ってるだけなのに面白い。彼らの違う視点で見た時に「ハンバーグの作り方っておもろいよな」ってなってると思うんです。それをちゃんと笑いにできて、みんなに伝えられることがすごい。才能あるなって思いますね。
ドンデコルテ(吉本興業)
ドンデコルテは今年のネタが面白かったですし、あれが全国に届けられるのは同じ漫才師としてすごく嬉しいです。今年は3回戦からずっと同じネタで、YouTubeやTverでも流れてますし、準々決勝や準決勝で多少ネタバレはしてたと思うんですよ。それでもあんだけウケていて、今年のネタは本物なんだなって痛感させられました。
ボケの渡辺くんの言ってることとやってることが違うっていうめちゃくちゃ綺麗なネタで、全世代にあれは絶対通じます。営業とか行っても受けるんちゃうかな。もし3回戦、準々決勝で別のネタをやれて、準決勝であのネタをやれていたら、決勝進出もあっただろうなと思います。そのぐらいいいネタだと僕は思います。
■決勝について
バッテリィズ(吉本興業)
たまたま、そういうお客さんが集まったのか、事前に配信でネタを見たお客さんが多かったからか理由はわからないですけど、去年の決勝はお客さんが重かったので、今年の決勝はとにかく盛り上がってほしいです。
決勝に進出した9組の実力は拮抗している。その中でも令和ロマンにはやはり注目しています。去年の決勝ではさや香が見せ算をやってコケて、ヤーレンズと1票差での優勝でした。もしかしたら令和ロマンは納得いってないんじゃないか。掴みとった優勝というよりは、転がり込んできた優勝みたいに感じているんじゃないかなと思っていて。だからこそ今年は真の実力で優勝を取ろうとしている。令和ロマンの本当の恐ろしさを知るのは、もしかしたら今年なんかもしれません。
(高比良)くるまくんは時にヒールを演じたり、手を替え品を替え、M-1自体をすごく盛り上げにきてるなと思います。でも盛り上げにだけくるようなタマじゃないので。絶対まだ誰も成し遂げてないM-1の2連覇を狙いに来ていると思います。
そんな中でトム・ブラウンとかバッテリィズは怖いぞっていう感じはします。理屈じゃないところでの笑いなので。掛け合いで2人がゾーンに入っちゃったら、もう止めようがない。そうなれば令和ロマンをストップさせることもできるんじゃないかなと見てます。
バッテリィズは関西のコンビですが、自分たちが一番やりやすい形をちゃんとできてるっていうところが一番の魅力であり強みであると思いますし、今までなかった新しいパターンを実はやっている。大体アホの方がボケで、賢い方がツッコむのが普通じゃないですか。それをひねってアホなんやけどツッコミ役をやってて、もう1人の方はただただ正論を言う。実は誰もやってない新しい形でやってるので注目してほしいです。
決勝の審査員の数も9人に増えましたし、審査員さんの年齢とか芸歴を見ても、若いかまいたちの山内とかも入ってきている。何かを変えようという意思は感じます。2001~2010年までがM-1の第1章、2015から2023までがM-1の第2章だとしたら、今は第3章に入ってきたのかなと思います。
最後に今年の決勝メンバーは本当に全員レベルが高いんで、全員倒せとはよう言えないですけど、敗者復活戦から勝ち上がったコンビには「見劣りしたらあかんで」とは言いたいですね。敗者復活戦は21組全員、僕の予想が外れるくらいに頑張ってほしいです。
【スーパーマラドーナ武智】
NSC大阪校22期生2003年12月に田中一彦と「スーパーマラドーナ」を結成。M-1グランプリにはコンビで過去4度決勝に進出。「M-1グランプリ」への熱狂的愛から「Mおじ」と呼ばれる。YouTubeチャンネル「スーパーマラドーナ劇場」(https://www.youtube.com/@super-maradona)ではM-1やTHE SECONDなどの予想も行っている。
『M-1グランプリ2024』
ABCテレビ・テレビ朝日系
■敗者復活戦 2024年12月22日(日)15:00~18:30
■決勝戦 2024年12月22日(日)18:30~22:10
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