先月連載した『キン肉マン』を批評する「先月の肉トーーク!!」。本年最後の更新となる今回のスーパースペシャルゲストはまさかの新日本プロレス"100年に一人の逸材"そして社長である 棚橋弘至!
燃え殻さん、爪切男さんも批評を忘れ、もはやただのファンになっておりました! 『キン肉マン』、そしてプロレスとの出会いやプロレスラー・棚橋弘至が形成されるまでを伺った前編に続きます!!
●必殺技の選び方
爪切男(以下、爪) 棚橋さんが好きな『キン肉マン』の技ってどれですか?
棚橋弘至(以下、棚橋) うーん、そうですねえ......奇しくも、僕は、テリーマンの必殺技でもあるテキサス・クローバーホールドを使い始めたので。
爪 ああ、そうだそうだ。
棚橋 僕はバッファローマンも好きだったんですけど、ハリケーン・ミキサーは、あれやったら自分の首がボキッてなっちゃうし。キン肉ドライバーも、やったら一発で選手生命が終わるし(笑)。
プロレスラーって技を考える時に、自分の体格に合った技、自分のスタイルに合った技を自然と選ぶので。僕はヘビー級の中では大きくなかったので......でも、コーナーポストから飛んで、100キロある人間が降って来たら痛いだろう、という。プロレスを知らない人が観ても、ダメージをイメージしやすいというか。なので、ハイフライフローをフィニッシュに選びました。
爪 最初は他の技をフィニッシュに使われてましたよね。
棚橋 最初はスリングブレイドやドラゴンスープレックスをフィニッシュとして試合を組み立ててたんですけど。対ヘビー級の中で、ジャイアント・バーナードっていう巨大な選手と闘った時に、どうやっても説得力のある勝ち方ができなくて。何かないかな、と考えて......だから、そういう闘いの中で進化していったんですかね、技は。それでハイフライフローをフィニッシュにして、繰り返していくうちにだんだん自信を深めていく。ハイフライフローのいいところは、一発でダメだったら、もう一回飛べばいい、という。
燃え殻(以下、燃) ああ、それでまた盛り上がりますよね。
棚橋 最高で3連発やったことがあります。
●棚橋と握手をするといなくなる!?
爪 『キン肉マン』で印象に残っているタッグは? と聞かれると、なんて答えます?
棚橋 そうですねえ、ロビンマスクとウォーズマン(超人師弟コンビ)かな、やっぱり。アシュラマンとサンシャイン(はぐれ悪魔超人コンビ)は、「これはちょっと強すぎるな」って。
燃 ブラックホールと......。
棚橋 ペンタゴン! あれは渋いですね。ブラックホールとペンタゴン(四次元殺法コンビ)は、『キン肉マン』史上最高のタッグじゃないですか?
燃 ですよね!
爪 棚橋さんがタッグを組んできた相手で言うと、どの選手が印象に残っていますか?
棚橋 難しいですねえ。タナケン(棚橋弘至&佐々木健三)から始まって、中邑(真輔)と組んで、飯伏(幸太)、オカダ(・カズチカ)とも組んだし、最近だったら矢野(通)だし......。でも、一番ファンの期待感を感じたのは、中邑とのタッグですかね。
燃・爪 ああー。
棚橋 僕が先輩なんですけど、僕が先発を買って出て、散々とっ散らかしたリング上を、中邑が整理するみたいな感じでしたね。「あとお願い!!」みたいな。
爪 はははは。でも、中邑選手のキャラクターだと、組む棚橋さんのほうが大変だったんじゃないかって思えますけど。
棚橋 いや、中邑はクネクネし始めてからプロレスラーとしてもう一皮むけたから。
燃 ああ、そうですね。
棚橋 僕と組んでいた2000年代は、関節技を主体としたオーソドックスな選手で。クネクネ前とクネクネ後に分かれるんですね。
燃 クネクネ後は、タッグ、難しそうですね。
棚橋 そうですね。個性がね、みんなクセが強すぎて。時代時代でクセのある選手が......猪木さんは大クセだし、長州(力)さんもそうだし。
燃 猪木さんと坂口(征二)さんみたいに、個性が強い人と、それを受け止めてくれる人がいるタッグがいいのかもしれないですね。
爪 うん。むちゃくちゃやる人と常識人。
棚橋 それでいうと僕は、一人二役みたいなところがあります(笑)。
爪 最初に中邑さんと組む時に、握手したじゃないですか。あのシーンで興奮したのを覚えてます、「ようやく組んでくれるんだ!」みたいな。オカダさんと組んだ時も興奮したし。握手っていいですよね、『キン肉マン』的で。
棚橋 一番わかりやすいですよね。中邑もオカダもいなくなっちゃったけど。棚橋と握手するといなくなる(笑)。
爪 そんなことはないです! そうだ、せっかくだから聞いていいですか、新日の社長を引き受けられたのは、どんな経緯だったのか。
●新日本プロレス代表取締役社長・棚橋弘至の誕生
棚橋 2023年の11月に、オーナーに食事に誘われて。その席の最初に「社長をやってくれないか」っていう話があって。悩んで、即答はできないので、「ちょっと待ってください」って言ったんですけど。「プロレスラー100%、社長100%、できるかな。疲れないからできるな」という結論に達したので。その食事会の終わりに「やります」と言いました。
燃 その時は引退じゃなくて、プロレスラーも社長も100%で続ける気持ちだったんですか?
棚橋 いや、社長をやるってことで引退はもう決めていました。それまでの間を100%やるってことですね。「あと1年でどうですか?」って言われたんですけど、日本全国の応援してくれたファンのみなさんに、直接ありがとうを伝えたかったので。2年あれば、全国くまなく回れるだろうと思って。
爪 でも、引退を決意するのも、大変ですよね。
棚橋 実はコロナ禍の前に、一回燃え尽きたんですよ。新日本をグワーッとV字回復させて、後輩も育って。僕はもう産卵を終えた鮭のように、下流に流されていたんですね。
燃 それはヒザとか、身体の故障も大きかったですか? それとも気持ちの部分で?
棚橋 気持ちですね。モチベーションの部分で。なんですけど、みんなで力を合わせて盛り上げていったプロレスが、コロナウイルスという、自分たち以外の要因で下がったのがむちゃくちゃ悔しくて。「俺のキャリア、なんだったんだろうな」っていうくらい、自暴自棄になった時期もあったんですけど。でも、じゃあもう一回上げればいいじゃん、と思い直した矢先の、社長就任だったんです。だからW字回復だなと。レスラーでV字回復、次は社長でV字回復。仮面ライダーWなので(笑)。
爪 次は社長としてやりきりたいと。
棚橋 そうですね、やりきって終わりたいですね。今度のイッテンヨンの相手がEVILなので。EVILが僕の21年目の、まず最初に解決しないといけない案件ですね。
爪 ああ、はいはい。
棚橋 ほんとにファン離れが起きるんですよ、不透明決着とか乱入とかは。プロレス会場に来たら、スカッとして「楽しかったね」って帰りたいじゃないですか。でも応援する選手が不透明決着が続いたりすると、「もうプロレス観なくていいや」ってなってしまう。そういう声がXで飛んできたり、新日本宛に届いたり。そういう意見を言ってくれるような熱量の高いファンっていうのは、1割なんですよ。思ってても書き込んだりしない人が、もっといるんです。ということは、おそらく、黙って離れていく人はもっといる。
燃 うーん、そうですよね。
棚橋 それがいちばん悲しいじゃないですか。だからもう一回、イチから丁寧にやりたいなと思って。まずはドームでEVILをぶっ倒して。全身白のコスチュームに変えさせて、「お前はANGELとして出直せ」と(笑)。
●先月の連載を批評もお願いしますッ(汗)
―今回の「先月の肉トーク」テーマ―
第471話 勝利必至の最強タッグ!!の巻(11月5日更新分)
第472話 世界同時"五大刻"決戦、開幕!!の巻(11月18日更新分)
第473話 一斉に轟くゴング!!の巻(11月25日更新分)
<あらすじ>
モハーヴェ砂漠に到着したキン肉マンを待ち受けていたのは、時間超人・五大刻のひとり"黎明(れいめい)の刻"エクサベーター! さらに超人製造機によりもうひとりの時間超人・ガストマンを誕生させ、2対1の闘いが始まるかと思いきや、まさかのキン肉マングレートが降臨し、タッグチーム「マッスル・ブラザーズⅢ(スリー)」誕生ーー!!
爪 では最後に、『キン肉マン』の2024年11月分、第471話から第473話までの話も......。
棚橋 はい、読ませていただきました!
燃 キン肉マン&キン肉マングレート組(マッスル・ブラザーズⅢ)vsエクサベーター&ガストマン組(インダストリアルレボリューション)、クロエに扮したウォーズマンvsペシミマン、ネプチューンマンvsパピヨンマン、テリーマンvsエンデマンの4試合が、同時に始まった。
棚橋 『キン肉マン』の昔からの歴史ですよね。複数の闘いが同時進行で描かれる、というのは。あの、プロレスの盛り上がる構図っていうのは、意外と少なくて。タイトルマッチ、世代闘争、軍団闘争、あとは他団体との抗争。
燃 ああ、『キン肉マン』にも。
棚橋 それが全部あるじゃないですか。というのもいいんですよね。どうなるか楽しみですね、この4試合!
●棚橋弘至(TANAHASHI HIROSHI)
1976年生まれ、岐阜県出身。99年新日本プロレス入門。2006年にIWGPヘビー級王座を初戴冠、今では定着した「愛してま~す!」もこのころに誕生した。00年代の「プロレス冬の時代」を支え、現在のブームを生み出した立役者。23年12月には新日本プロレスリング株式会社の代表取締役社長に就任した。26年1月4日での現役引退も発表している。新日本プロレスの年間最大ビッグマッチである1.4「WRESTLE KINGDOM 19 in東京ドーム」では、「棚橋弘至ファイナルロード・ ランバージャックデスマッチ」として、棚橋の引退会見にも乱入してきたEVILとの対決が決まっている
●燃え殻(MOEGARA)
1973年生まれ、神奈川県出身。働きながら始めたツイッターでの発言に注目が集まり、作家デビュー。『ボクたちはみんな大人になれなかった』(新潮社)、『すべて忘れてしまうから』(扶桑社)、エッセイ集『それでも日々は続くから』(新潮社)『これはただの夏』(新潮社、8月28日に文庫版発売)、『ブルー ハワイ』(新潮社)など多数の著作がある。最新著は『明けないで夜』(マガジンハウス)。ドラマ『あなたに聴かせたい歌があるんだ』(漫画:おかざき真里/扶桑社)はHuluで配信中。出演中のラジオ番組 『BEFORE DAWN』(J-WAVE、毎週火曜26:00~27:00)もチェック
●爪切男(TSUMEKIRIO)
1979年生まれ、香川県出身。2018年『死にたい夜にかぎって』(扶桑社)で小説家デビュー。2020年、同作が賀来賢人主演でドラマ化。『きょうも延長ナリ』(扶桑社)が発売中。集英社発のWebサイト『よみタイ』で好評を博した、美容と健康にまつわるエッセイ『午前三時の化粧水』が来春書籍化予定。ドライバーWebで『横顔を眺めながら ~爪 切男の助手席ドライブ漂流~』を連載中。主演:木村昴でのドラマ放送でも話題となった『クラスメイトの女子、全員好きでした』が文庫化
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