M-1チャンピオンでありながら、これまで数々のやらかしをしてきた迷える40歳、ウエストランドの河本太が、さまざまな先輩・仲間に人生相談を受けに行く不定期連載「人生相談する側チャンピオン」

第3弾は、河本さんがこれまで最もお世話になって、最も迷惑をかけたという先輩、三四郎の相田周二さんに人生相談をしています。しかし、これまで爆笑問題さんや東野幸治さんにいただいたアドバイスが覆ってしまう!?(第3弾の4回目、4日連続更新)

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人生相談③
「先に売れた相方への焦りはありましたか?」(東京都・河本太・40歳)

河本 最後に聞きたかったんですけど、小宮さんが最初に売れた時って、相田さんは焦ったりしました?

相田 あんまりなかったな。例えば芸歴3年目で小宮だけが売れたら俺も焦ったかもしれないけど、小宮が売れた頃にはもう芸歴も長かったし、三四郎としてではないけどアイツの面白さが見つかったっていう安堵感とか、「やっぱりやってればいつかは認められるんだ」みたいな感覚の方が強かった。

だから嬉しかったよ。逆に小宮が下火になってったらめっちゃ心配になったかもしれないよね。

――コンビ内格差みたいなものを感じたりはしました?

相田 レギュラー番組が始まる前とかはめっちゃありましたね。でも、小宮も出始めだったからそんなにめちゃくちゃ稼いでたわけではないし、『オールナイト(ニッポン)』が始まって1、 2年目とかは僕も普通にバイトしてましたし。

ようやくバイト辞めれるかなってくらいになっても、バイト辞めた次の月にいろんな振込が先送りになって給料が3万しかもらえなくて。本当に焦って、すぐにニッチェの近藤に連絡して、「ちょっと20万貸して」って言って貸してもらったり。

河本 あの時まだ実家でしたもんね。

相田 そうそう。ラジオ終わりに出待ちのファンと一緒に千代田線で帰ってましたからね。給料3万の時はさすがに不安でしたけど、小宮が『アメトーーク!』とか『ロンハー』に出てるのをテレビで見てて、通用してるから「いいぞ」って思ってました。

河本 そこに嫉妬みたいな感情はないんですね。

相田 全くない。だってそもそも小宮が面白いと思ってコンビ組んでるんだから。その面白さを世に認められただけで僕はもうオッケー。ただ、それは小宮にも他の人にもよく言われるんだけど、それで嫉妬しないのは普通の人間じゃないぞとは言われるね。でも本当に嫉妬とかはないから。だって実家住まいだったし。

河本 東京23区内の、それも太い実家がね。すっごい豪邸ですから。

相田 家がなかったら焦ってたかもね。そういうところが良くないんだろうな。

河本 良くないことはないですよ。僕だって東京に実家があったらきっとそうですよ。結婚もしてないかもしれない。

――河本さんみたいなタイプがむしろ普通というか。

河本 僕も井口に対して嫉妬とかはしてないですけどね。最近まではずっと施しをもらってたわけですから。

相田 小宮も井口も嫉妬するタイプだから、相方に「お前嫉妬してるんだろ」って言うんだろうね。でも本当にしないからな。「俺は俺で、お前ができてないことやってるしな」って思っちゃう。

河本 その余裕がな、すごいよな~。

――河本さんはずっと焦りがある?

河本 焦らなかったことはないです。M-1で優勝した瞬間だけは「億万長者になれる~! やった~!」って札束が見えましたけど。

――あの涙はそんな涙だったんですか!

相田 で、億万長者になれなくてまた泣いて。ツーって(笑)。

河本 4月にやらかしてしまって「終わったー」ってね。「またあの建築現場かー」って。

相田 またリフォーム現場に軽トラで移動しなきゃいけない。ツーって。

■爆笑問題や東野幸治のアドバイスが無駄に?

――でも、爆笑問題さんにも東野さんにも「相方とどう接したらいいんですか」とか「僕はどうしたらいいんですか」みたいな質問してますよね(笑)。で、「お前はそういうやつなんだから、そのまんまでいいよ」って言われて。

河本 そうなんですよ。全然成長してないんですよね。でも、爆笑さんは「そのままでいい」って言ってくれたり、東野さんは「人のせいにすればええやん」とか「別に努力してない」とか言ったりしてましたけど、そんなわけないですよね。

今日も相田さんと話してて分かりましたけど、なんだかんだ言って実はめっちゃ努力してる。ちゃんといろんなとこに顔出したり高いものを買ったりしてるのも、半分はエピソード作りも兼ねてやってるわけじゃないですか。

相田 そう言われると恥ずかしいけど。

河本 こんなこと言うのは野暮だと思いますけども、今日は改めて言いますよ。売れてる人たちは実はめっちゃ努力してるんですよ。

――じゃあ河本さんも無理のない範囲で努力して交友関係を広げて、いい熊手を買っていきましょうよ。

河本 結局スピじゃないですか(笑)。相田さんってスピだったんですか!?

相田 俺ね、実はスピ。

河本 スピかあ。

相田 まあでも、神頼みでメンタルが強くなったら全然いいけどね。だってメンタル弱かったら人前に出たりできないよ。滑ったからっていちいち落ち込んでたらやってらんないぜ。俺なんて『有吉の壁』のオープニングでカメラの前に出てってさ、あんなの何の意味もない行動だからな。

河本 そんなことはない(笑)。

相田 ただのメンタルトレーニング。最初はよかったのよ。あばれる君とか(パンサー)尾形さんがカメラを取り合う中で、俺がいきなり出て行って「いやいや、1番最初に出てくるヤツはお前じゃないだろ」みたいなボケで。だけど、いつしか尾形さんとしゃべっても「あのオープニングはお前のもんだからな」とか言うようになって、いつの間にか俺だけになっちゃって恒例になっちゃった。意味わかんないでしょ。アレ、怖いんだよ。あんなことやるのイカれてるだろ。

河本 でも相田さん、アレをひょうひょうとやるじゃないですか。その鋼のメンタルを見習わなきゃですよね。

■ラジオで歌っていたら菅田将暉と友達に

――そこは相田さんがバカのふりして異業種の方を呑みに誘うことにも通じてますよね。

相田 そうですそうです。そりゃ最初は何でも緊張はするよ。菅田将暉の楽屋コンコンするのと一緒。それだって2回か3回断られてるからな。菅田くんのマネージャーさんが出てきて、「菅田はちょっと今休んでるんで」とか言われて、30分後にまたコンコンして「すみません、今は車で休んでて」とか言われて。絶対俺から逃げてるじゃん。

河本 そうっすね。普通諦めますよ。

相田 で、その時は結局、菅田将暉とSUPER BEAVERのふたり(渋谷龍太、柳沢亮太)と一緒に横浜アリーナのラジオのイベントでTHE BLUE HEARTSの『青空』を歌ったんですよ。そしたらちょっとチームみたいになったから、「今度呑みましょうよ」ってSUPER BEAVERのふたりに言って、「あ、いいっすね」みたいな感じだったから、「菅田くんもよかったら」みたいなこと言って。「わかりました」って言うから「今度DMするわ」って言ったの。そしたら、SNSはスタッフが管理してるからってことでLINEを交換したんだったかな。

河本 すげー! それはなかなかできないですって。

相田 そもそもそのイベントが意味分かんないんだけどね。でもニッポン放送の偉い人が「オールナイトで歌といえば相田さんなんで」とか言ってくれたんで「え? ミュージシャンたくさんいるのに?」って思ったけど。菅田くんもお笑い好きだしね。

河本 ほら、結局こうやってみんな陰ながら努力し続けて、それが結果になってるんですよ。爆笑さんも東野さんも相田さんも、努力を努力と思っていないのか、それとも努力してることを隠し通してるのか分からないですけど。もう何が正しいのかグチャグチャになってきますよ。

相田 まあ本来は、言わないほうがいいよね。おぎやはぎさんとかも絶対ものすごい努力してるけど言わないじゃん。

河本 絶対やってる。でも太田さんは本当に努力を努力と思ってない人なんですよ。東野さんは努力してることを隠してるんだろうな。

相田 そうだね。だって東野さんなんてエグいだろ。『ごっつええ感じ』とかすごかったぞ。

――東野さんは、ご自身の努力とかについてはあまり語りませんでしたね。

河本 そうですよね! 持ち前のトークスキルで全部かわされて、全部僕の話にされましたよね! だからみんなこっそり努力してるんですよ。そうなると、前回までのアドバイスは何だったんだって話ですよ。今回の相田さんとの話で今までのアドバイスが覆りますね。

相田 お、それはいいね。

河本 結論、「やれ」ですよ。みんなやってんだな。

――っていうか河本さんもやってるんじゃないですか?

相田 そうだよ、お前もやってるよ。

――今『M-1』も1万組以上の出場者がいてすごいことになってるじゃないですか。

河本 そのM-1チャンピオンから初の落第者が出ますよ。本当に何もやってないんですから。

相田 「何もやってないんですよ」って言って蓋を開けたら本当にやってないのも面白いけどな。

河本 蓋開けんでも見えてるわ。

相田 キャンプやってるじゃん。

河本 あれは本当に趣味で好きにやってるから動画も撮ってないし。

相田 でも結局好きじゃないと続かないじゃん。それが仕事にも繋がってるし。やってるってそういうことだよ。みんな「やってない」って言いながら何かしらやってるんだよ。本当にヤバいのは、「やってない」って言って本当に何もやってないヤツだけ。

河本 なんかもうグチャグチャになりますね。

相田 やれってことだよ。まあ、あと、ダメだった時の逃げ道は作っておけってことだね。『有吉の壁』のオープニングなんて何も逃げ道なしでやってるんだぞ。保険だけは作っておいて、あとは壊れない程度にやれってことだね。

三四郎相田の回答③
「やれ!」

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■河本太(こうもとふとし) 
タイタン所属。1984年1月25日生まれ。岡山県津山市出身。2008年に同級生の井口浩之とウエストランドを結成。M-1グランプリ2022チャンピオン。リフォーム会社に勤めていた経験から電気工事、配管工事が得意。趣味は登山、キャンプ。 

■相田周二(あいだしゅうじ) 
マセキ芸能社所属。1983年5月2日生まれ。東京都荒川区出身。中学校の同級生である小宮浩信と2005年に三四郎を結成。2013年、2014年には「THE MANZAI」認定漫才師50組に認定。2013年「漫才新人大賞」決勝進出。2023年には「THE SECOND〜漫才トーナメント〜」で決勝進出。2015年から続く『三四郎のオールナイトニッポン0(ZERO)』は高い人気を誇り、2024年には開始10周年を記念した日本武道館でのライブも行われた。