日本有数の映画ガイド・高橋ヨシキが新作映画をレビューする『高橋ヨシキのニュー・シネマ・インフェルノ』。アルゼンチン発、絶望の「悪魔憑き」オカルト・ホラー!

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『邪悪なるもの』

評点:★3点(5点満点)

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終末に向かって突き進む異色の悪魔映画

とてもユニークなアルゼンチン発のホラー映画である。世界観が非常に独特なのだ。映画は田舎に暮らす兄弟が「処理人」の惨殺死体を見つけるところから始まる。

「処理人」というのは、悪魔に取り憑かれた人間を正式なやり方で殺すことができる人のことで、そのためには特殊な機材や手順が必要なのである。

もし異なるやり方で殺したりすると、悪魔は別の人に取り憑いてしまうのだという。取り憑かれた人に触るのも危ないし(これはちょっとゾンビものに似ている)、悪魔の近くで電気を使うのも良くないらしい。

教会や政府がどれだけ機能しているのかについてもよく分からないが、この「悪魔憑き」現象はあちこちで発生しているらしい。ちなみに悪魔に取り憑かれて、殺すこともできずに手をこまねいていると体がどんどん腐敗してガスで膨らんで「ひと目見たら絶対にそうと分かる」気持ち悪い見た目になってしまう。

悪魔が人の心の弱みにつけ込んでいろいろ意地悪を言ってくるあたりは伝統的な悪魔映画だが、全編にわたって終末の予感が漂っているのがいいし、「ギリギリでセーフでした」というハリウッド的な解決の正反対に向かって突き進んで行くのも頼もしい。

STORY:悪魔に魂を乗っ取られ、体が腐敗していく「悪魔憑き」が人々を脅かす世界。ある日、ペドロとジミーの兄弟は村の外れに変死体を発見し、近隣の住民が家族に出た「悪魔憑き」を隠していることに気づく......

監督・脚本:デミアン・ルグナ
出演:エセキエル・ロドリゲス、デミアン・サロモン、シルビナ・サバテールほか
上映時間:100分

全国公開中

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