『秘密戦隊ゴレンジャー』(1975~1977)の放送をきっかけにスタートしたスーパー戦隊シリーズが2025年に50周年を迎える。2月17日発売の『週刊プレイボーイ9・10号』の特集「素顔のスーパー戦隊ヒロイン大集結」では、歴代ヒロイン5名のインタビューを最新撮り下ろしカットとともに連続掲載した。

そちらの本誌特集では掲載しきれなかったインタビューの<完全版>を週プレNEWSで4日間に渡って配信。今回はシリーズ第36作『特命戦隊ゴーバスターズ』(2012~2013)で宇佐見ヨーコ/イエローバスターを演じた小宮有紗さんが登場。

宇佐見ヨーコは、戦闘のプロフェッショナル「ゴーバスターズ」の紅一点で最年少。気が強く生意気な性格で、跳躍力に優れているが、こまめに甘いものを摂取しないと充電切れして動けなくなるという弱点を持つ。当時の心境や秘蔵エピソードなどを通じて、作品の魅力を語る。

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――『特命戦隊ゴーバスターズ』は小宮さんにとって初のテレビドラマ出演作です。ただ、特撮のオーディションは『ゴーバスターズ』以前にも受けていらっしゃったとか?

小宮 『海賊戦隊ゴーカイジャー』『仮面ライダーフォーゼ』を受けています。

――2度続けての不合格は、やはり悔しかったのでは?

小宮 まぁ、そんなに甘くないよな! って。代わりに受かったコが役にハマっているのも理解できたし、凹むことはなかったです。ただ、3度目の正直で『ゴーバスターズ』を勝ち取ったように見えるかもしれませんが、実をいうと当時オーディションは受けないつもりだったんですよ。

――えっ、どうしてですか?

小宮 高校卒業の年だったので学業に専念したくて。「卒業できなくなったら困るから今年は受けられないです」と事務所に伝えたのですが、「どうしても」と言われて受けました。でも、そういうときほど決まってしまうものなんですよね(笑)。このときばかりは最初から受かる予感がしていました。

――見事、予感的中です。

小宮 合格を聞いた瞬間、「高校だけは絶対に卒業しなきゃ」と思いました(笑)。もちろん、うれしかったですけどね。子供の頃は『セーラームーン』が大好きで、『百獣戦隊ガオレンジャー』などの特撮ドラマも見ていたので、漠然とヒーローへの憧れがあったんです。私もその世界に行けるんだ、変身できるんだって。親も喜んでくれたし、頑張るしかないぞって感じでしたね。

――『ゴーバスターズ』はメインキャストが3人で年齢もバラバラ。シリーズとしては5人編成が多い中、ちょっぴり異色の世界観となっています。

小宮 鈴木勝大くん(桜田ヒロム/レッドバスター役)も馬場良馬くん(岩崎リュウジ/ブルーバスター役)も、追加戦士として途中参加した松本寛也(陣マサト/ビートバスター役)もお芝居の経験があったので、完全なる新人は私くらい。一番年下だったこともあり、かなり甘えさせてもらいました。

現場入りしてすぐ馬場くんが「敬語はいらないから」と言ってくれたおかげで、すぐに打ち解けられたというか。作中でも、リュウジとヨーコは血の繋がりのない兄妹のような関係性でしたが、それは役の外でもあまり変わりませんでした。

――もうひとり女性メンバーがいてくれたら、とは思いませんでした?

小宮 そんなふうに思ったことは一度もないです。人数が少ないからこその絆もあると思うし、その分、お芝居でスポットライトが当たる機会も多いし、スタッフさんにもたくさん可愛がってもらえたし(笑)。

明日に備えて早く家に帰って寝たいのに、鈴木くんと馬場くんに「メシ、いくぞ!」「こういう時間は今しかないんだから!」と撮影終わりに連れ回されて。スタッフさんにも、たくさんゴハンをご馳走していただきました。


――愛を独り占めできたと(笑)。みんな、小宮さんが可愛くって仕方なかったんでしょうね。

小宮 「女子ひとりで寂しい思いをしているだろう」って、みなさん気を遣って誘ってくださったんだと思います。ありがたいですね。イエローバスターのスーツアクターを務めていらした蜂須賀祐一さんとは、今でも時々ご連絡を取らせていただきます。ご自宅にお邪魔して食事を振舞っていただいたこともあれば、結婚記念日の日に奥さんとの食事に同席させていただいたことも......。

――もう、娘じゃないですか!

小宮 挨拶や現場での立ち振る舞いなど、この先、外に出て私が恥ずかしい思いをしないよう、人として大事なこともたくさん教わりました。トイレに行って現場を待たせたら「お待たせしてすみません」って言うんだぞ、みたいな。

鈴木くんの20歳の誕生日の日にみんなで食事に行く約束をしていたのに、私だけ撮影が入ってしまい、お祝いができないことに不貞腐れて大泣きしたのも、今となってはいい思い出です(笑)。ほんっと子供ですよね! 「そんなことで泣くな」と叱ってくれたのも、お兄ちゃんたち。当時はまだ世間知らずの高校生。大人に囲まれて、社会勉強をさせていただく場でもありましたね。

――作品の話に移ります(笑)。小宮さんが演じた宇佐見ヨーコは、バディロイド(ゴーバスターズの活動をサポートする補助ロボット)のウサダ・レタスとしょっちゅう喧嘩をするなど、気が強くて生意気な性格の女のコでした。

小宮 役作りは特にしていなかったんじゃないかな。やり方も分からなかったし、ヨーコのキャラクターは自然としっくり来ていた気がします。メインで脚本を担当された小林靖子さんも、結構「あて書き」をしてくださいましたし。幼い頃に親を亡くしてしまった暗い過去もありましたけど、あまり深くは考えていなかったです。

――ヨーコといえば蹴りのアクションも印象的です。

小宮 小学生の頃からバレエを習っていたので体が柔らかくて。足がよく上がるから足技を増やそうと、アクション監督の福沢(博文)さんにおっしゃっていただいた記憶があります。素面での戦闘シーンが多く、いろんなアクションを経験できたのはよかったです。ビルの7階からワイヤーで吊るされたり、東京ドームシティのシアターGロッソで開催していたヒーローショーでは自ら希望してスライダー(ロープ)を使ったアクションに挑戦したり。

――自らアクションを志願していたとは! ヒーローへの憧れゆえでしょうか?

小宮 そうですね。ただ、ヨーコの衣装ではメンズの靴を履いていて。24cmなのに26cmを履いていたんです。統一感を出すという理由だそうですけど、さすがに動きづらかったですね。全員で走るシーンも私だけ足が遅くて。ただでさえ男のコのスピードにかなうわけがないのに! ホント、酷でしたよ(笑)。 

――こまめに甘いものを摂取しないと充電切れして動けなくなるという弱点もヨーコの特徴です。大事な場面でウエハースなどのお菓子をよく食べていましたよね。

小宮 カメラマンの松村(文雄)さんに「ヨーコはお菓子を食べるシーンが多い。太るからケータリングのおにぎりは一個だけ、唐揚げは食べちゃダメ」と言われていました。でも食べ盛りの10代。マカロンやラスクなど、美味しそうな差し入れを前にガマンはできなかったです。


――先ほどお聞きした可愛がられっぷりから想像するに、皆さん「食べな、食べな」と言ってくれそうですね。

小宮 まさに。みんな勧めてくださるので、ありがたくいただいちゃっていました。衣装の裏に詰め込んだお菓子を、本番中に撮影用のチョコレートと間違えて取り出しちゃったことも(笑)。おかげさまでしっかり太りました。

――ちなみに全50話ある中で、特に印象に残っているエピソードはありますか?

小宮 第29話「亜空間への突入!」と第30話「メサイア シャットダウン」ですね。靖子さんが『ゴーバスターズ』で描きたかったテーマがこの2話に詰め込まれていると言っていいくらい、すごく大事な回で。

――3人がゴーバスターズとして活動していたのは、ヨーコやヒロムの家族を含む、現実世界と乖離した亜空間に閉じ込められた人たちを救い出すため。しかし、すべての元凶であるウイルスに感染したメインコンピューター・メサイアの暴走を止める(シャットダウンする)には亜空間そのものを犠牲にしなければいけないことに......。物語の肝となる切ないエピソードでした。

小宮 『ゴーバスターズ』は、東日本大震災発生の翌年に始まった作品。なくなったものは戻ってこないという現実と向き合い未来へと向かっていく3人の姿は、まだ傷が癒えない子供たちへのエールでもあったんです。日曜日の朝に放送する内容としては重ためでしたが、だからこそ、しっかり演じなければと改めて身が引き締まりましたよ。

――現在は声優としても活躍中。その道に進むきっかけもまた『ゴーバスターズ』だったとか。

小宮 バディロイドの声を当てているプロの声優さんたちと一緒にアフレコをさせていただいたのが、声優業に興味を持つ直接的なキッカケになりました。アクションしかり、一気にいろんな経験ができて、未来が広がりました。本当にありがたいです。

――オーディションを受けて良かったですか?

小宮 結果的には! 無事に高校も卒業できましたからね(笑)。もし『ゴーバスターズ』が決まっていなかったら、そのまま大学に進学して、普通に就職していた可能性もありました。将来を考える時期に、いい意味で退路を断ち、芸能の道で生きていく覚悟を与えてくれた。人生なるようになるものですね。


――その後も女優として『仮面ライダーゴースト』『仮面ライダーゼロワン』に、声優として『宇宙戦隊キュウレンジャー』の悪の幹部・アキャンバーを演じるなど、東映作品とのご縁を感じます。

小宮 東映さんのスゴいところは、10年以上前にお世話になったスタッフさんがいまだに現場に立っていらっしゃるところ。普通は10年も経てば、だんだん偉くなられて現場から離れてしまうもの。でも久々に東映さんの現場に帰らせていただくと、顔馴染みのスタッフさんばかりでホッとするんです。10代のイメージで止まっているのか、年齢を言うとビックリされますけど(笑)。

――その東映が作り続けてきたスーパー戦隊シリーズも今年で50周年。長く愛される魅力はどこにあると思いますか?

小宮 まず第一に、地球を救うヒーローというだけで無条件にカッコいいですよね。私がそうだったように、女のコの憧れにもなり得るのは、スーパー戦隊シリーズの魅力のひとつ。これからも子供達に夢を与え続けてほしいです。

●小宮有紗(こみや・ありさ) 
1994年2月5日生まれ 栃木県出身 ◯2015年 、『ラブライブ!サンシャイン!!』の黒澤ダイヤ役で声優デビュー。同作の声優ユニット「Aqours」のメンバーとして
も活動中のほか、俳優としてドラマ、映画などにも出演

(衣装協力/MERCURYDUO)