ミユキニシジマ ミユキニシジマ
『秘密戦隊ゴレンジャー』(1975~1977)の放送をきっかけにスタートしたスーパー戦隊シリーズが2025年に50周年を迎える。2月17日発売の『週刊プレイボーイ9・10号』の特集「素顔のスーパー戦隊ヒロイン大集結」では、歴代ヒロイン5名のインタビューを最新撮り下ろしカットとともに連続掲載した。

そちらの本誌特集では掲載しきれなかったインタビューの<完全版>を週プレNEWSで4日間に渡って配信。今回はシリーズ第27作『爆竜戦隊アバレンジャー』(2003~2004)で、今中笑里を演じたミユキニシジマさんが登場。

今中笑里は、ムードーメーカー的な存在感を放つ女子高生。「アバレピンク」に変身する願望を抱き、アバレンジャーたちへ積極的に協力して、危機を救う。物語の隠れたキーパーソンだ。当時の心境や秘蔵エピソードなどを通じて、作品の魅力を語る。

*  *  *

――まずはオーディションを受けた時のことを教えてください。

ニシジマ 当時は高校生で、グラビアのお仕事をやっていたんですが、自分には向いていない気がしたので、事務所をやめて大好きなダンスに集中したいと思っていた時期でした。『もうやめます』と事務所にも伝えたところ、『じゃあ、最後にこの営業だけ行ってきて』と言われて行ったら、そこが『スーパー戦隊』シリーズと『仮面ライダー』シリーズのオーディションの現場。騙されました(笑)。オーディションの最中は『マネージャーさんの嘘つき! なぜやめるのにオーディションを受けなきゃいけないんだ! 早く帰りたい!』と思ってました。


――その頃は、『スーパー戦隊』シリーズと『仮面ライダー』シリーズのオーディションが同時期に行われていたんですね。

ニシジマ そうなんです。今は別々にオーディションしますけど、当時は放送開始時期が同じだったので。

――そして、オーディションの結果は合格。『爆竜戦隊アバレンジャー』の今中笑里=えみポン役を演じることに。

ニシジマ 私、東京駅の八重洲口にある『ローソン』でバイトをしてて、からあげクンを揚げたりしてたんですよ。合格して最初に思ったのは、店長に何て言ってやめようかなってことでしたね(笑)。

――その後、撮影がスタートするわけですが、当初の「騙された」という気持ちからはすぐに切り替えられたんですか?

ニシジマ 簡単には無理でした。だって芸能界をやめようと思っていたし、どうして選ばれたかもわからない。もともとはお芝居をやりたくて芸能界に入ったんですけど、そんな心境だから、お芝居にものめり込めない。

それに撮影は毎日早朝からで、それもまた辛い(苦笑)。富田翔くん(三条幸人/アバレブルー)や阿部薫くん(アスカ/アバレブラック)によく愚痴をこぼしていましたよ。2人は自分にとってお兄ちゃん的存在だから言いやすかったんでしょうね。

――その後ろ向きな気持ちを切り替えられたのはどんなきっかけで?

ニシジマ 翔くんが思い切り怒ってくれたんです。『たくさんの人がオーディションに落ちて悔しがってるのに、受かったお前がそんな姿勢で演技をしてたらダメだろう!』って。そこでやっと目が覚めました。気持ちに切り替えて、楽しくえみポンを演じられたと思います。

――えみポンは、奇抜なルックスでもファンの記憶に残っています。

ニシジマ 赤縁メガネに三つ編みで、カラフルすぎるヘアピンと派手なリボンがトレードマークの女子高生でした(笑)。実際の私はショートカットだったので、撮影のたびに三つ編みのウィッグをつけるのが大変だったことを覚えています。


――あのえみポンには、誰かモデルはいるんですか?

ニシジマ (パイロット監督を務めた)小中肇監督からは、『シノラー(1990年代後半、タレント・篠原ともえの奇抜なファッションを真似た若者たち)のイメージで!』って言われました。正直、戸惑いましたね(笑)。でも、監督が抱くえみポンのような天真爛漫な女子高生のイメージって、当時はシノラーだったんでしょうね。

――当時、ニシジマさんはお芝居の経験はまだ浅かったと思います。撮影現場で厳しく指導されたこともあったのでは?

ニシジマ 今思えば、厳しかったのかなと思うんですけど、当時はほかの現場をほとんど知らないので、それが当たり前という感覚でしたね。マネージャーさんから、『厳しい現場だからね』とは事前に言われてたんです。

『衣装を脱いだら自分でかけなさい』とか『カメラの前を通るときは一言声をかけなさい』、あとは『カメラのレンズは鏡じゃないぞ!』など注意されましたね。ただ、ピリピリした緊張感があるのは、ケガをしちゃいけないから当たり前だし。そういう現場を10代で経験した結果、どこに出ても恥をかかない人間に育ててもらったと思っています。

『アバレンジャー』のあとに出演したドラマで、スタッフさんに褒められましたもん。『アバレンジャー』の現場で教えてもらったことが、こうやって活きるんだなって実感しました。

――全50話の中から、印象的な回を教えてください。

ニシジマ 第11話(『アバレサイキック。ブヒっ。』です。えみポンって"心はアバレピンク"でも、実際には変身できない普通の女の子。でも、11話で超能力を身につけて、"アバレピンク"に変身できそうになるんです。

なのに、「ピンク」と「ピッグ」を間違えて、人の言葉を話す子ブタに変身しちゃう(笑)。アフレコではアドリブで「ブヒっ!」って言い過ぎて、監督に怒られたことも今は笑い話です。

翔くんが「全部にブヒってつけろ。悲しいブヒっとか」って隣で言うんですよ。それでセリフにないのに全部にブヒってつけたら、優しくて温厚なことで知られる11話を担当していた諸田敏監督に「お前、ふざけてんじゃねーぞ!」と怒鳴られて。「いやいや、私じゃない!」って思いました。

――面白いエピソードですね(笑)。後半で印象に残っている回はいかがでしょう?

ニシジマ 第38話(『花咲けるアバピンク』)ですかね。自作のピンクのヘルメットを被って初めてアクションの演技ができるということで、すごく張り切っていたんです。アクションって気を抜いたら危ないし、いろんな段取りがあるからちょっと現場がピリついて。そんな中、撮影を眺めるギャラリーが集まってきて、さらにアクション監督の厳しい声も飛ぶ。その状況に私はわーってパニックになって、過呼吸になっちゃったんです。

――かなり過酷な状況だったんですね。

ニシジマ すぐに病院に行けって言われたんですけど、「ここは私の見せ場だし、吹き替えなしでアクションシーンがやりたいんです。頑張りますから!」と言いました。でも、当然病院を優先することになり、「すぐに帰ってきます!」と言って病院に行ったけど、撮影中に戻ることはできず、結局、えみポンのアクションシーンは診察の間に吹き替えで撮影されました。

撮影も終わり、そのまま帰宅して家で泣きましたね。そのときに10円ハゲができていることにも気づいて、びっくりしたことも覚えています。それほど自分を追い込んでいたんだなって。そういった裏話も含めて、印象に残っている回ですね。


――『アバレンジャー』は、ニシジマさんにとってどういう意味合いを持つ作品になっていますか?

ニシジマ 『アバレンジャー』は、私の古巣ですね。自分の中に古巣があるというのは、すごく大きいんじゃないかと思うんです。お仕事の上で心の支えにもなりますし、『スーパー戦隊』出身だと言うとどの現場でも話の輪が広がるし、『スーパー戦隊』出身同士であれば縦のつながりもできる。人間関係を作るときにプラスになることがありがたくて楽しいし、今は出演できて本当に良かったなと思っています。最初は騙されたと思ってましたけど(笑)。

――現在、ニシジマさんは、振付師としても活躍中。『魔進戦隊キラメイジャー』のエンディングテーマの振付を手がけるなど、古巣=『スーパー戦隊』シリーズとの関係が現在も続いています。

ニシジマ 不思議ですよね。大好きなダンスに集中したいと思って芸能界をやめる決意をして、なぜか最後の仕事でオーディションに合格して、そこから役者を続けて、今は巡り巡ってダンスの仕事をしていて。しかも、そのダンスで古巣と関わっている。人生って面白いなって思います。

●ミユキニシジマ(みゆきにしじま) 
1985年3月28日生まれ 東京都出身 
○現在は振付師・俳優として活躍。『魔進戦隊キラメイジャー』のエンディングテーマ、VTuberの振り付けなどを手がけている。2023年には『爆竜戦隊アバレンジャー』の20周年作品に再び笑里として出演した