和賀勇介 和賀勇介

『キングオブコント2011』『2012』決勝進出、『オンバト+』初代チャンピオン、『THE MANZAI 2014』認定漫才師選出など、輝かしい栄光をつかみながらも、相方の不祥事によりコンビは解散。現在は週5で土木作業に精を出しつつも、ピン芸人やスーパー銭湯パフォーマー「強烈」として活動する43歳、和賀勇介。

そんな和賀が、かつて同じ土木現場で働いていたマシンガンズ・西堀亮のYouTubeチャンネル「西堀ウォーカーチャンネル」にて「土木作業の日給を一日で使いきる男」(通称「土木めし」)として紹介されると、「なぜか幸せになれる」「魅力がある」「生き様がかっこいい」とじわじわと人気を集めるように。

芸人仲間がオープンした行きつけの居酒屋に和賀を呼んで吞ませつつ、現況を聞きながらその魅力にせまる!
(前編はこちら)

***

■この記事だって一週間ぐらいで消えるようにしてほしい

――賞レースにも興味がない和賀さんが、いま残したいものってありますか?

和賀 なんもないっすよ。俺、遺伝子すら残したくないと思ってるんですよ。

――じゃあ精子バンクに登録しましょう。

和賀 それは面白そうだね(笑)。いや、子供は嫌いじゃないんだけど、自分の子は絶対嫌だ。残したくない。

――遺伝子以外でもいいんですよ。ネタを動画にして残すとか、最近だったら芸人さんで本出してる人もたくさんいるじゃないですか。

和賀 いや、何も残したくないですね。この記事だって一週間ぐらいで消えるようにしてほしい。だってこれ、永遠にウェブ上に漂い続けるんでしょ? 何も残したくないのに残るじゃん。デジタルタトゥーじゃん。俺、今デジタルタトゥーをずっと作り続けてるわけでしょ? もう20年以上やってるから分かりますよ。昔のインタビュー記事って絶対恥ずかしくなるもんだから。

こないだも後輩が『お笑いTYPHOON』(2002年)っていう本を持ってきてたんですけど、恥ずかしい写真と文章ばっかりで。当時は分からなかったけど、絶対に恥ずかしいものになるんですよ。で、忘れた頃に変な客が来て「あの時ああ言ってましたよね」とか言ってくるんですよ。

――「あれ、和賀さん子供嫌いって言ってたのに作ってるじゃないですか」とか。

和賀 そうそうそうそう! もうこっちは大して何も考えずに追い込まれて言ってんのに、それが自分のアイデンティティーかのようにデジタルタトゥーにされるわけでしょ。困っちゃうよなーって思うよ。だから何も残したくない。

――でも、もう西堀さんのYouTubeに動画が残ってますし、コンビ時代の動画も配信されてますよ。

和賀 だからそうなのよ。もうみんなデジタルタトゥーなのよ。取材なんてみんなデジタルタトゥーなんだぞ。明日には考えが変わってるかもしれないのに。

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■なすなかにしやアルコ&ピースに思うこと

――話は変わりますが、周囲の仲間や先輩後輩で売れた人ってたくさんいると思うんですけど、「俺もああなりたい」とかって思います?

和賀 ああなりたいというより、みんな「よかったな」って思いますよ。昔から、売れてない芸人同士の競争意識みたいなものってあんまりなくて、仲間が売れていくのは純粋に「よかったな」なんですよ。

ただ、いくつか思うところがあるのは、例えば俺らはAKB48とずっと一緒に仕事をしていて、突然コンビが無くなって、俺らの役の代わりに入ったのが、なすなかにしだったのね。その仕事のおかげってワケじゃないけど、その頃からすげえ売れていって。

昔からずっと一緒のライブに出てて「なすなかにしはなんでこんなに面白いのに売れないの?」って思ってたから、やっぱり「よかったな」って思ったけど、自分の仕事が1つ持っていかれた上で売れたのもあって、その時はちょっとシュンとしちゃったね。グッと来たし、シュンとした。

俺らはロケなんてダメダメで、なすなかなんてあんなロケ上手な人らは見たことない。そりゃ比べられたら絶対なすなかのほうが強いのは分かってるけど、その時は「俺らよりもうちょっと面白くない人にしてよ~」って思ったな。でもそれはジェラシーではないのよ。

――人生の歯車が1つ違ったら、俺たちがああなってたかもしれないみたいなことは考える?

和賀 そこまでは思わないけど。でも、例えばアルコ&ピースもずっと似たような場所にいたんだけど、やっぱり売れて。そりゃあアイツらは面白いから売れて当然だし「よかったな」って思うんですけど、もし俺がコンビのままでいられたら、その世界線での俺らはどうなってたのかなとは思いますね。

俺らもコンビとして続けてて、それでもやっぱりアルコ&ピースのほうが面白くて、「やっぱりアイツらのほうが選ばれて売れたんだ」ってちゃんと思いたかった。それは嫉妬とかではないのよ。ただそこだけは悔しいと思う。

――アルピーさんとは良きライバルだった?

和賀 いや、別にライバルとも思ってないですよ。なすなかにしもアルコ&ピースも本当にめちゃくちゃ面白くて、そういう人たちが周りにたくさんいたから。例えば同じようなところにいた三拍子なんかはアナウンス学院からの同期で、いまだにずっと頑張っていて、アイツらなんか本当に「突き抜けろ!」って思いますよ。

――和賀さんは突き抜けないんですか?

和賀 だってどうしようもないじゃん。俺に何ができるのよ。

――西堀さんのYouTubeを見て和賀さんに好意的なコメントを残してる人の中には「和賀さんこそ突き抜けろ!」って思ってる人もいると思いますよ。

和賀 いや、土木作業やっててほしいだろ。それで1日で日給を使い果たして。

――いやいや、違います違います。和賀さん、夢なくなっちゃっていいんすか。

和賀 違う違う。逆にね、俺YouTubeで西堀さんに「俺売れたいんすよ」なんて言ったことあります? ないでしょ。だって売れたいと思ってないんだから。動画を面白いと思ってくれてる人がそんなにいるのは嬉しいですけどね。

――事務所的にはどうなんですか?

中原マネージャー どちらかといえば突き抜けさせたいのはやっぱり若手の方で、和賀には「生きててほしい」って思ってますね。

和賀 ほら。「生きろ」ってもう『もののけ姫』レベルですよ。Xをちょっとやってないと「生きてるか?」とか言われるし。西堀さんのYouTubeも「コイツ、いつかうっかり死ぬかもな」っていう意味も込めた動画なんでしょうね。

――いや、そんなことないですよ。やっぱり何か起きる前に何か残しましょうよ。芸人さんなら一発ギャグを流行らせるとか、ギャグじゃなくても例えば「最初はグー」は志村けんさんが作ったとか言うじゃないですか。

和賀 そうなの!? そういう発想がこっちにないのも問題だよね。だから、そもそも何も残したくないし、文章も書けないし、筆不精でブログやSNSもできないし、TikTokとかも分からないし。なのに芸人なんて人前出ちゃってウィキペディアだって勝手に作られて、もう十分残っちゃうんだよ。

最近土木を一緒にやってる人がTikTokを見せてくれて、ギブ↑大久保さんが出てるらしいのよ。ギブ↑大久保さんよ? みんなのたかみち(たかみち店長)も人気らしいし、レイラちゃん(池田レイラ/完熟フレッシュ)と一緒にすげえ凝ったドラマみたいなことをやってる。俺にはあんなの無理だわ。

@takamichihorror

♬ オリジナル楽曲 - たかみちホラー

――和賀さんは呑んでくだを巻いてる動画を上げればいいじゃないですか。

和賀 でもそれも、俺が撮影して編集できるものじゃないから。西堀さんがいないんだもん。

――西堀さんの跡を継ぐ人が必要ですね。

和賀 だからなんでまた恥をかかなきゃいけないの。最近、ジグザグジギーの池田に「和賀さんはもうフリー素材になってください」って言われたんですよ。「ギャラはどうすんの?」って聞いたら、「いや、ギャラは出ないですよ。フリー素材なんだから」って。それはやだよ。なんで事務所入ってる芸人がノーギャラでフリー素材になるんだよって。

――でも、「いらすとや」みたいになるってことですよね。いろんなところで謎のおじさんを見かけるようになって。いいじゃないですか。

和賀 そうそう、池田も「いろんなところで使われればいい」って言うのよ。なんで俺がフリー素材になるの。どっかで勝手に使われるんでしょ。

――和賀さんは何も残したくないからイヤでしょうけど、なるべきですよ。

和賀 いるか、そんな人間! なるべくしてフリー素材になる人間なんて。

――池田さんの言いたいことは分かりますよ。謎の土木おじさんマスコットがミッキーマウスやキティちゃんみたいになるかもしれないですよ。コラボとかタイアップとかすればいいじゃないですか。

和賀 なるほど。俺のヘルメットに「太田プロ」とか、つなぎに「居酒屋なっちゃん。」(取材場所)とか入れて、その権利を売っていくのか。それだったらまだ分からないこともないけど。でもそれもどうせ詐欺広告に使われるだけだろ。

――まあ、「いらすとや」のイラストみたいに最低限のルールは必要でしょうけど、いいじゃないですか。ネットのおもちゃですよ。夢がひとつできましたね。

和賀 俺、フリー素材になりたい夢はないんだよ。別にそんな夢を持ってるわけじゃないの。やっぱりそれ人間でやっちゃダメだよ。

――じゃあ結局今のところの夢は、芸人や「強烈」として舞台に絶やさず立ち続けるっていうことだけですか。

和賀 まあね。これと言って「バイトを辞めたい」とかもうなくなりましたもんね。バイトを続けたいというとそれも違うけど、なんかもう覚悟ができちゃった。死ぬまで土木やるんだろうなって。

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■芸人の種火

――じゃあ和賀さんが幸せな時ってどんな時ですか?

和賀 そんな大袈裟なことじゃなくても、サウナ入ってる時とか、目分量で作った酒の濃さが完璧だったとか、財布に思ってたより100円多く入ってたとか。幸せなんてもう見つけようと思えばいくらでもあるんじゃねえかな。

――減ってる時もありましたけどね。

和賀 『ゼルダ』でな(笑)(※前編を参照)。シラフの時は減ってることはないよ。風呂入って酒飲んで、そういう小さな幸せを噛み締めるっていうのが一番......いや、それはおかしいな............。いやいや、劇場でウケた時だろ!

――急に芸人の心が戻りましたね。いま一瞬、ただの土木おじさんでしたよ。

和賀 あっぶねえ! 何が小さな幸せだよ。何を言わせてんの。今、1日で一番何が幸せかなって考えちゃったけど、もっと広く広く人生を見ないと。一番の幸せはウケた時だよ!

――まだ芸人の種火が残ってましたね。

和賀 危なかった。消えるとこだった。土木が常に押し寄せてきて気付くと飲まれてるんだよ。危ない危ない。

――その芸人の火を絶やさずに60まで舞台に立ち続けたいっていう、そこにこだわり続ける理由は何かあるんですか? 周囲に辞めちゃった人もいっぱいいるじゃないすか。

和賀 他にやりたいことがなかっただけなんですよ。北海道から出てきた時からずっとそうで、やりたいからやってるだけ。今、ついに土木に飲み込まれそうになってましたけど、あの時の情熱を忘れてましたね。

――それは賞レースに出るとか、西堀さんみたいに売れて多忙になるみたいなことじゃなくて、細々と続けていくっていうことですか?

和賀 さっきから言われてる「何かを残す」なんてこと、芸人はみんな、もともとそんなこと思って始めてないですよ。もちろん今はM-1とか賞レースに向けて情熱をこめてやってる人とかもいますけど、最初は違いますよ。やりたいから、楽しいからやるだけ。

それにさ、ある程度やってたら自分のことも分かってくるし。俺、去年R-1出たけど1回戦で落とされてんの。1回戦くらいは大丈夫だろうって思ってたけど、落とされてもうビックリして。しかもそこそこウケたのに、俺よりウケてない人が受かって俺は落ちた。

――今年(2025)は出なかったんですか。

和賀 出ないでしょ。また恥かかせたいんすか。

――いやいや違いますよ。今、消えかかってた芸人の炎がちゃんと残ってたから、またもうちょっと大きくする気なのかなって思って。

和賀 だって情熱がいくらあっても結果が出なきゃダメだもん。それだったら小さくてもいいからライブでウケてる方がいいです。なんでわざわざ金払って落とされて恥かかなきゃいけないんですか。

――でも今年もそうそうたるメンバーが出てましたけど、チャンピオン以外はみなさん落ちるわけですから。

和賀 おい、それ甲子園で優勝できなかった高校球児にも言えるか? みんな落ちますからねって。しかもチャンピオンになっても売れるとは限らないし。

――挑戦しないよりかは挑戦して落ちたほうがいいのかなって。

和賀 それは別にどっちでもいいと思うよ。でも、マツモトクラブとかルシファー吉岡なんかはR-1に出過ぎちゃってて、あれだけ面白いのに何回やってもチャンピオンにはなれなくて、挑戦しては落ちるの繰り返しから抜けたくて続けてるようなところもあるんじゃないかな。

――なるほど。じゃあ和賀さんは挑戦しないんですね。舞台でウケたら幸せっておっしゃってましたけど、集客とか会場の規模をデカくしたい気持ちとかはないですか?

和賀 それもあんまりないね。芸人って、どんどん売れたいとかいいクルマに乗りたいとか言わなきゃいけないみたいな風潮があるけど、俺はそれが全然分かんないです。

――西堀さんの本(『芸人という病』)でもタワマンのこと言ってましたね。タワマンを見て突然「俺には関係ねえ!」って叫んだと。

和賀 そうそう、タワマンなんて住みたくもねえ。何でも、ある程度のところでいられたら幸せなんですよ。舞台だったら、もう本当50人とかのお客さんに笑ってもらいたい。それでいいんです。

――いいこと言いましたね。ちょっと赤くなってますけど照れですか? 酔いました?

和賀 赤いのは土木焼けだから。

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■SNSを見るな! ネットの記事も信用すんな!

――無欲でも幸せそうな和賀さんに聞きたいんですけど、今って些細なことでもSNSですぐ炎上するし、怒ってたりネガティブだったりする人が多くないですか?

和賀 まずはSNSとかネットニュースを見ないことですよ。それに、ニュースの記事で「ネットではこういう意見も出ています」ってよく書いてあるけど、それ誰の意見なんだよ、お前なんじゃないの?って思うよね。

ライターか記者か知らないけど、誰かが裏アカで何か過激な意見を言って、そのお前の意見をネットの記事にしてませんか?って。だからSNSも見ないし、ネットの記事も信用すんなってこと。大事なのは他人が何を言ってるかじゃなくて、自分がどう思ったか。それでいいじゃないですか。

ネットにネガティブな人が多いのは、だってSNSしかはけ口がないからでしょ。他に言える場所がないからSNSで言うしかないんですよ。例えばムカつくママ友がいたとして、そのママ友に直接「ムカつく」って言えない人がSNSに書くわけ。他に発散できる場所がないんだよ。

――和賀さんはネガティブな気持ちにはならない?

和賀 なんか西堀さんのYouTubeでずっと笑ってるせいか、俺ってまだ明るく生きてると思われてんだよな。YouTubeの一部分だけ切り取られて、「あの人はいつも楽しそう」だって。でも、「お前、酒呑み始めるまで一回も笑顔がなかったな」みたいな日もある。だって笑顔で仕事してる人なんかそうそういないでしょ。

――和賀さんの動画を見て、「ほっこりする」とか「元気が出た」っていうコメントがあったから、いつも笑顔でポジティブでいる方法を聞こうかと思ったら、「俺だって明るくねえんだぞ」と。

和賀 もし西堀さんのYouTubeの俺を見て元気が出た人がいるなら、それはすごくありがたいことですよ。でも、ずっと明るい人なんかいないんだから。テレビ見て、「この人明るそうだな。楽しそうだな」って思うことはあるけど、その人だって悩みはあるし、「その人のように生きる」とか思わない方がいいですよ。そんな簡単に自分を変えることなんか無理。

それよりも、もし俺の動画を見て元気が出たんだったら、そういうものをどんどん探したほうがいい。今なんてYouTubeにもNetflixにもコンテンツなんかいっぱいあるんだから。そっち探したほうが早いですよ。

まあ、中にはずっと明るくポジティブに生きてる人もいるかもしれないけど、そんなやつはイカれてるよ。みんな絶対暗いところがある。こんな国で生きてて「ストレスを感じない」なんて言ってるやつは、絶対誰かにストレスを与えてるやつだから。ストレスフリーなやつなんて、ろくなやつじゃない。

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■「芸人たるもの、いつかまっとうになるんだ!」

――芸人さんは、芸人仲間と呑んでストレス発散できるからいいじゃないですか。仕事上で仲間がいない人もたくさんいますよ。

和賀 いやいや、芸人だってバンドマンとか社長さんとばっかり呑んでるやつもいますよ。ただね、芸人はお笑いライブがあったら、例えば17時くらいに会場入りして、19時に始まって、21時に終わるようなスケジュールなわけです。そしたら2時間は呑めるじゃないですか。だから芸人同士で一緒に行くのにちょうどいいっていうだけですよ。

ただ、最近変わってきたのが、俺らの世代になると子供がいるから帰るみたいな人が増えてきて、どんどん一緒に呑んでくれる人は少なくはなってはいる。昔はみんなちゃんぽらんやってましたから、朝の8時まで吞みましょうとかありましたけど、今はそんなことないです。

――いまだにちゃらんぽらんは和賀さんだけですか。

和賀 どんどんそうなってきました。昔は朝まで呑んで、昼に起きて、コンビニの夜勤があるからまたそこまで12時間呑んで、それからバイトとかもしてましたよ。でももう体力もないし守るものもできて、みんな帰っちゃう。だから、芸人は芸人仲間と呑んでると思ったら間違いですよ。みんな減りました。

――和賀さんはどっちでいたいですか? ちゃらんぽらんなままか、守るべきものを作るか。

和賀 おい、俺は妖怪人間みたいに「早く人間になりたい」と思って芸人やってねえから! 「芸人たるもの、いつかまっとうになるんだ!」じゃないのよ!

ただ、こんなふうに呑みに誘ってばかりいると、芸人仲間の奥さんからどんどん俺が嫌われていくじゃないですか。「今日は和賀がいたから呑んできちゃったよ」みたいな。それで誰かに嫌われたりするのはショックだな。やっぱりライブの後は誰かと呑みたい。それはちょっと寂しいな。

――若手を捕まえるとかはないですか?

和賀 だって、あんまり若手と一緒のライブがないもん。みんなおじさん。たまに若手ライブのMCを任されることもあるけど、そこで誰かを誘うのもなんかな。後輩が気を遣うじゃないですか。「本当は来たくなかったよな、ごめんな」みたいな。

――和賀さんと呑んで、いろいろ教わりたい後輩もいるんじゃないですか? 呑みだけじゃなく、ライブにも誘いたいとか。

和賀 まあそれは全然、嬉しいですよ。同世代との呑みが少なくなっていく以上、ここからはもう後輩しか俺を救ってくれないと思ってるし。そんなのあったら全然行きますよ。

中原マネージャー 和賀は何事も受け身なんですよね。

――じゃあもし、後輩からコンビ組みませんかって言われたらどうします?

和賀 そりゃ可能性はありますよ。コイツ面白いかもなって思えば、全然あります。もう二度とかたくなにコンビを組まないっていうわけじゃないです。

――じゃあ相方を募集しましょうよ。

和賀 プレイボーイで? ほら、またそうやって俺をオモチャにしたな。

――いやいや、真面目にですよ。昔は賞レースでいいところまで行って、訳あってコンビは解散して、今は土木に飲み込まれそうになってるけどまだ情熱は残ってるおじさんが、一人では無理っぽいので相方を募集します、と。

和賀 そんなやついるわけないだろ。今なんか芸人は掲示板とかで組むんだぞ。

――掲示板って(笑)。別にネットニュースで募集したっていいじゃないですか。写真載せて「相方募集します」って。で、もちろんその写真はフリー素材にして。

和賀 おかしいです。言ってることおかしいです。なんでプレイボーイが大々的にフリー素材ですって写真を出すんだよ。そんな媒体ねえぞ。

――「あと相方じゃなくても、気兼ねなく呑みに行ける後輩や、僕を救ってくれる後輩も募集します」って。「え、あの和賀さんが? じゃあ声かけてみようかな」って人もいるんじゃないですか。

和賀 え、救ってくれる? それならいいけど......その呑みのお金はどこから出すの? まさか土のついた俺の茶色い封筒から出すの?

――日給をその日で全部使わずに1日は我慢して、後輩との呑みの日に2日分使えばいいじゃないですか。

和賀 何言ってるか分かんない。

――じゃあ応募条件に、「※ただし割り勘でもいい人に限る」って書きましょう。

和賀 おかしいでしょそれ。誰も来ないって。

――じゃあちょっと募集しましょう。

和賀 こういうのが文字になってネット上に残るってことですよね。それが一番怖いって言ってるじゃん!

***

■和賀勇介(わが・ゆうすけ)
1981年生まれ、北海道出身。2001年2月、太田プロよりコンビでデビュー。『キングオブコント2011』『2012』決勝進出、『オンバト+』初代チャンピオン、『THE MANZAI 2014』認定漫才師選出などの記録を収めるも、2018年にコンビ解散。同年よりピン芸人として活動を始める。マシンガンズ・西堀亮のYouTubeチャンネル「西堀ウォーカーチャンネル」で「土木作業の日給を一日で使いきる男」として話題に。

■和賀さんの相方を募集します!
土木作業に飲み込まれそうになっている和賀さんの、芸人としての心を絶やさぬような相方を募集します!(芸人として活動している・していた方に限ります) また、気兼ねなく呑みに行ける後輩芸人や、和賀さんを救ってくれる後輩芸人も募集中! ※ただし割り勘でもいい人に限る
応募は太田プロダクションのお問い合わせページから
https://www.ohtapro.co.jp/about/contact.html
※応募締め切り:2025年4月25日

酒井優考

酒井優考さかい・まさたか

週刊少年ジャンプのライター、音楽ナタリーの記者、タワーレコード「bounce」「TOWER PLUS」「Mikiki」の編集者などを経て、現在はフリーのライター・編集者。

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